Paris: la haute couture automne-hiver 2007-2008
2007-2008 秋冬 パリ・オート・クチュール・コレクション レビュー




7月2日から、3日間のスケジュールで行われたのが、2007年秋冬パリ・オート・クチュール・コレクション。
昨年のこの頃はワールド・カップでのフランス・チーム決勝進出で街中が湧き上がっていた中での開催で、 メディアと人々の関心はもっぱらサッカーであったけれど、今回は落ち着いた雰囲気の中で ランウェイ・ショーをメインに、 約30前後のプレゼンテーションが ファッション・プレスやクチュール顧客、セレブリティを招いて行われている。

今回に関しては、毎シーズン パリで クチュール・コレクション、プレタ・ポルテ・コレクションを発表しているヴァレンティノが ブランド創設45周年のセレブレーション・イベントと同時にオートクチュールのショーをローマで行ったのが 目新しいところ。
さて、オートクチュール・コレクションと言えばこれまでは利益目的ではなく、ブランドのイメージと アートとしてのファッションのためにクリエイトされるものという概念が強かったけれど、 クチュールを手掛けるデザイナーにとって朗報となっているのが、 このところオートクチュールが売上を伸ばしているというニュース。 ことにクリスチャン・ディオールは、今年1月に発表した日本をテーマにしたコレクションが 通常の2倍の売上を記録したとのこと。 またアルマーニ・プリヴェではデイタイムのスーツが、ジャン・ポール・ゴルティエではイヴニングが、 良く売れているとのことで、シャネルでも売上の好調が伝えられている。
この傾向は貧富の差が広がって、リッチな人々がよりリッチになった結果とも言われているけれど、 オートクチュールが ”赤字覚悟のビジネス” の汚名を返上できたことは明るいニュースとしてファッション業界には捉えられています。

ここでは、いつものようにメジャー・メゾン8つのクリエーションをご紹介します。





Armani Prive / アルマーニ・プリヴェ



「ロック・シンフォニー」と名づけられた今回のアルマーニ・プリヴェのコレクション。 ジョルジォ・アルマーニ自身によれば、彼が今回のコレクションをデザインするにあたってインスピレーションを受けたのが デビッド・ボウイ。彼のグラム・ロック・ファッションもアルマーニの手に掛かるとウエストを絞ったスペンサー・ジャケットのスーツの ようなアイテムで表現されるのは興味深いところ。 これまでシックなエレガントさを追求し、突飛なデザインを一切見せてこなかったアルマーニであるけれど、 今回のエンディングに見せた3点のイヴニングは、丸いシルエットのスカートで成功している、していないは別として ブランドの新しい一面を感じさせた作品。





Chanel / シャネル



最も古いクチュール・メゾンの1つでありながら、常に最もモダンなアイデアを感じさせるコレクションを見せるのがシャネル。
今回のショーはパリ郊外のサンクルー公園にテントを張って、モデル達が公園内の庭園道をランウェイにして歩くという設定。 ”ハイ・プロファイル” とカール・ラガーフェルドがネーミングしたコレクションは、 正面がフラットでサイドにデコレーションをあしらった服の数々。
また目立っていたのがミニ丈のツイード・アウトフィットに、タイツのようなレザー・ブーツをコーディネートするスタイル。 マリエを着用したモデルがサングラスで登場したのはちょっと意表をついた演出。





Christian Dior / クリスチャン・ディオール



ジョン・ガリアーノがデザインするクリスチャン・ディオールは、今年ブランドが60周年記念を迎えるということで、 オートクチュールのファッション・ショーも 作品がゴージャスで美しかったのはもちろんのこと、 モデルも新旧のスーパーモデルが勢揃いしたランウェイとなっていた。
写真上左のジゼルが着用したスーツで幕を開けたコレクションは、アンバー・ベレッタ、ナオミ・キャンベル、リンダ・エヴァンジェリスタ、 そしてフィナーレのシャローム・ハーローなど、超豪華キャスト。 残念だったのは、同ショーに出演するためにパリ入りしていたケイト・モスが プライベートな理由で出演をキャンセルすることになってしまったことだったけれど、 ヴェルサイユ宮殿のオランジェリーを舞台に行われたランウェイ・ショーは、 マリー・アントアネットを彷彿させるようなドレスや、いかにも50年代のディオールを思わせるシルエットまで登場し、 今回のオートクチュール・コレクションで最も華やかなもの。
ちなみに会場にはジェシカ・アルバ、シャリース・テロン、モニカ・ベルーシ、ケイト・ハドソンが姿を見せていました。





Givency / ジヴァンシー



引き続きリカルド・ティッシがデザインを手掛けるジヴァンシー。 前回のコレクションには登場していたクチュールらしい、ラグジュアリアスな素材や高度な縫製技術が 今回は目立たない形で登場しており、プレタポルテ・コレクションと見紛うようなコレクションが展開されていた。
秀作も見られ、プレタポルテであれば評価されたかも知れないショーであったけれど、 目玉になるような作品が欠落していたのは寂しいところ。





Jean Paul Gaultier / ジャン・ポール・ゴルティエ



97年からオートクチュール・コレクションを発表しているジャン・ポール・ゴルティエの今シーズンは、 モデルの多くが服のマテリアルにマッチした王冠を頭に載せて登場。 これはゴルティエ特有の性別を捻じ曲げたユーモア。
彼がクリエイトしたアウトフィットは、プリンス、それもおとぎ話に出てくるプリンス・チャーミングを イメージしたものであるけれど、もちろん着用しているのは女性のモデル達。 エンディングのマリエでは花嫁=プリンスに助けられてプロポーズされるようなプリンセスが登場するかとおもいきや、 シルバーのターバンを頭に巻いた 結婚式に臨むインドのプリンスのアウトフィットが 男性モデルの着用で登場。サロン・スカートを巻いて、ビーズのサンダルを履き、シルバーのペディキュアをした プリンスが花嫁を演じ、女性モデルがプリンスのアウトフィットを着用するという、性の逆転ユーモアが盛り込まれた コンセプトになっていました。





Christian Lacroix / クリスチャン・ラクロア



クリスチャン・ラクロアのオートクチュール・コレクションというと、必ずモデルが同じようなウィッグをつけて登場する傾向にあるけれど、 それは今回も同様。 今回、モデル達はヘアを積み重ねたようなブラック・ヘアやブロンドのウィッグを付け、 そこにハットを斜めに被るというより縦に被って登場していた。
そんなプレゼンテーションの今回のコレクションは、デコラティブではあるものの、 クチュール・コレクションとしては大人しい印象のアウトフィットが多く、ドレスのフォルムよりも ドレープの美しさや、素材の美しさに目が行く作品が多かった。





Valentino / ヴァレンティノ



先述のように今回はローマで行われたヴァレンティノ・ガラヴァーニのショーは、 これまでのヴァレンティノのベストヒットを集めたようなコレクション。
ホワイトのファー付きスーツで幕を開け、エレガントなスーツ、カクテル・ドレス、イヴニング・ガウンと 展開したコレクションは、ピンクのカラー・パレットでフィナーレを迎えたけれど、 まさにオートクチュールのエレガントさとゴージャスさを地で行くファンウェイ・ショー。
サラー・ジェシカ・パーカー、エヴァ・メンデス、ウマ・サーマン等、数々のセレブリティが お祝いに駆けつけていたため、客席も一段と華やかで、通常よりも数多くのメディアが取材に駆けつけていました。





Elie Saab / エリー・サーブ



クチュールの世界では新参者であるエリー・サーブ。 オートクチュールと呼ぶに相応しい華やかなドレスをクリエイトするようになってきたものの、 今回のコレクションに感じられたのは少々マンネリと言える状況。
今回もこれまでのコレクション同様、ブラック、ホワイト、グレー、シルバーといったモノトーンを中心に ビーズやラメでデコレートされたカクテルドレス&イヴニング・ドレスが登場したけれど、 作品の質が高くても、先シーズンもその前にも見せられたようなコレクションが続くと、 少々見る側もがっかりしてしまうというもの。
美しいドレスをクリエイトする力量があるデザイナーであるだけに、残念なコレクション。