![]() 2007 春夏 パリ・オートクチュール・コレクション レビュー
1月22日月曜から、3日間のスケジュールで行われたのが、2007年春夏パリ・オート・クチュール・コレクション。今回もランウェイ・ショーをメインに、様々なプレゼンテーションがファッション・プレスやクチュール顧客、セレブリティを招いて行われている。 前回の2006年秋冬シーズンの記事でもご説明したとおり、オート・クチュールとは、通称サンディカと呼ばれる パリ高級服飾組合 (La Chambre Syndicale de la Couture Parisienne / ラ・シャンブル・サンディカール・ド・ラ・クチュール・パリジェンヌ )にクチュール・メゾンとして登録されているデザイナーによる 最高級のオーダー・メイド・コレクション。 今回サンディカのオフィシャル・カレンダーにリストされていたのは17のショーで、その内訳は、サンディカが定めるクチュール・メゾンの 厳格な規定を満たした8つのフレンチ・ブランドと、9つのゲスト・ブランド。 今回のオートクチュール・コレクションは、映画界の授賞式シーズンの真っ最中、ことにオスカーの授賞式を1ヶ月後の2月24日に 控えているだけあって、ノミネート女優がオートクチュールからオスカー・ドレスを選ぶ可能性が大ということあって 注目されているものであったけれど、蓋を開けてみればオスカーのレッド・カーペットに相応しいようなシックでゴージャスなドレスは 少なく、その意味では不作と言えるシーズンであった。 このため、プレスの関心事はランウェイよりも客席に行ってしまったようで、シャネルのショーにヴィクトリア・ベッカムとケイティ・ホルムズが 訪れた様子や、そのケイティ・ホルムズのウェディング・ドレスを手掛けたアルマーニのショーにケイティが、アルマーニ・プリヴェの イヴニング・ガウンを着用して現れたニュース等の方が大きく報じられていたのが実状。 またオスカー・ノミネート女優としては、ケイト・ブランシェットがアルマーニ・プリヴェのショーに姿を見せていた。 ケイティ・ホルムズ、レイチェル・マクアダムス、ケイト・ブランシェットがアルマーニ・プリヴェのショーに会場入りする様子と、 一部のランウェイはこのリンクからムービーで観ることが可能です。 以下では、メジャー・メゾン8つのクリエーション、各20点(ディオールのみ18点)をご紹介します。 各写真は、画像が変わって行くようになっています。画像が動かない場合は、ページを再度読み込んでいただくようお願いします。 Armani Prive / アルマーニ・プリヴェ
今回もグレー、ブルー、ブラック、シルバー、ホワイトといった抑えたトーンのカラー・パレットで、スーツ、カクテル・ドレス、 イヴニング・ドレス、チュニック+レギンス等、今シーズン最多であると同時に、アルマーニ・プリヴェにとっても過去最多である 62作品を発表したコレクション。 しかしながら点数が多い分、コレクションを間延びさせるだけのような似通ったアイテムや、ラインに不必要と思われる 作品も含まれており、40点程度に纏めた方がはるかに中身の濃いコレクションとなったであろう印象は否めないところ。 また、モデルの殆どが全てターバンを巻いたようなヘッド・ピースやトーク帽を被って登場しており、 これが前シーズンに引き続きコレクションを古臭く見せる要素になっていた。 会場にはケイティ・ホルムズの他に、オスカーにノミネートされているケイト・ブランシェットも姿を見せていた。 Chanel / シャネル
今回はアルマーニに次ぐ59点を発表したカール・ラガーフェルドがデザインするシャネル。 オープニングから数点の、シャネル・ジャケット+タイツのコーディネートは、既にプレタポルテでお馴染みのスタイルであるのに加えて、 クチュールらしいラグジュアリアスさや素材の贅沢さが感じられないもので、コレクション自体もこれに代表されるように 地味に仕上がっていた。 でも今シーズンの問題は、カクテル・ドレス、イヴニング・ガウンといったオートクチュール・コレクションの目玉となる部分に、 これと言った秀作が見られなかったこと。ことにイヴニング・ガウンについては、着こなしが難しいものが多く、 フィナーレを飾ったマリエもシンプル・かつモダンではあるものの、女心をくすぐるような美しさ。華やかさに欠いているものだった。 会場にはヴィクトリア・ベッカム&ケイティ・ホルムズ、ケイト・ブロスワース、菊池凛子が姿を見せていた。 Christian Dior / クリスチャン・ディオール
ジョン・ガリアーノがデザインするクリスチャン・ディオールは毎シーズン、”服”、”ドレス” というよりも、 ”衣装”と呼ぶ方が相応しいデコラティブでシアトリカルなコレクションを見せるけれど、今シーズンもご多分に洩れず。 今シーズンのテーマは、見ての通りの”ジャポネーズ”。 折り紙の鶴を貼り付けたようなドレスや、北斎のような日本画をモチーフにしたような 刺繍、オビ・ベルト、着物からアイデアを得たようなジャケット、ゲイシャや花魁を思わせるルックなど、 ガリアーノなりに解釈した日本的なアイテム、46点が発表されていた。 しかしながら、いつもにも増して個性的過ぎるコレクションは、 ソーシャライトやセレブリティがブラック・タイ・パーティーや レッド・カーペット上で着用するにもトゥーマッチであるだけでなく、明らかにバッド・テイストと言えるものまでが含まれており、 プレスのリアクションは賛否両論。 「セレブリティが このコレクションのうちのどのアイテムを着用しても、オスカーではワースト・ドレッサーに選ばれるであろうことは確実」 とコメントするメディアもあったけれど、見た目のコスチューム的な美しさや面白さ、エンターテイメント性では、 相変わらず群を抜いていたのは紛れも無い事実。 Givency / ジヴァンシー
リカルド・ティッシがデザインを手掛けるジヴァンシー。目下クチュリエの中で最もモダンでエッジーな彼の作風は、 華やかさやゴージャスさではなく、縫製技術やハイテク素材&加工を用いた独特のテクスチャー、 独特のドレスのストラクチャーに贅沢な時間と人手、そして製作費用を掛けたもの。 したがって他のデザイナーと比較するの妥当とは言えない存在であるけれど、 確実にクチュールらしい進化を遂げているのが リカルド・ティッシュの手腕。 同コレクションがセレブリティやソーシャライトに今ひとつアピールしない点は、自閉症的なダークさであるけれど、 今回もフィナーレのマリエは ブラックの重たい雰囲気のドレスに仕上がっていた。 Jean Paul Gaultier / ジャン・ポール・ゴルティエ
97年からオートクチュール・コレクションを発表しているジャン・ポール・ゴルティエ。 今回のコレクションは、宗教、それもクリスチャン・アート、クリスチャン・モチーフをデコラティブに用いたもので、 良い意味でも、悪い意味でも神々しいラインに仕上がっていた。 デコラティブな作品をさらに大袈裟に見せているのは後光が差したかのようなヘッド・ピースで、 これらが 教会のミュラルやステンド・グラスのモチーフや、天空に浮かぶ天使や聖母を彷彿させるディテール重なって、 独特のクリスチャン・カルチャーを表現していた。 ”キッチュな宗教アート” と呼べるようなコレクション。 Christian Lacroix / クリスチャン・ラクロア
色使い、素材合わせの独特のテイストが評価されているクリスチャン・ラクロア。 前半のミニ丈のドレスはクチュールというより プレタ・ポルテのような仕上がりであったけれど、 中盤に登場したイヴニング・ガウンからはフェミニンな秀作が見られており、 カラフルで、オートクチュールらしい華やかさが見られるコレクションになっていた。 こうしたコレクションをオールド・ファッションと見る向きもあるけれど、コンセプトに首をひねることなく、 純粋にドレスの美しさだけを楽しめる数少ないコレクションであった。 Valentino / ヴァレンティノ
常にフェミニンな作品を展開するヴァレンティノであるけれど、今回はレモン・イエローのドレスが僅か見られる以外は、全て ホワイトで製作されたドレス。 それだけに作品のバラエティを表現したり、縫製、素材、刺繍の美しさというオートクチュールの醍醐味を表現し難いテーマを あえて選らんだ印象であったけれど、そのトライアルは結果的には成功しているとは言えないものになっている。 「ヴァレンティノ・レッドの無い ヴァレンティノのコレクションなんて・・・」 という声がプレス関係者から聞かれていたけれど、 単色のカラー・パレットでは、たとえ丈やスカートのシェイプが異なろうと、素材が異なろうと、それが40枚も続くと、 エキサイティングに欠いて、見ているうちに飽きてしまうのは仕方がないというもの。 Elie Saab / エリー・サーブ
レバノン、ベイルート出身のエリー・サーブは、昨今、ビヨンセがありとあらゆるレッド・カーペット・オケージョンで着用しているデザイナー。 今シーズンはシルバーをメイン・カラーにブラック、ブルー、ライラック、グレーでイヴニング・ガウン&カクテル・ドレスの コレクションを展開。他のデザイナーとは異なり、デイタイム・オケージョンの服やスーツ等を見せない分、 ヴァラエティに乏しい印象ではあったものの、今回のオートクチュール・コレクションの中で、ハリウッド・セレブリティがレッド・カーペット上で 着用した時に、最も無難に映るドレスに溢れていたのがエリー・サーブ。 圧巻だったのはフィナーレを飾ったマリエで、刺繍を施した長いオーガンジーのトレーンを完璧に観客にアピールするために、 ブライズ・メイドが3人トレーンをサポートするというプレゼンテーションがなされていた。 |