Paris フラワー留学事情、スタージュの経験
By Ange




芸術の都、パリ・・・。世界各国から多くの人々がアートをを学ぶためにやって来るけれど、フラワー・アートもその1つ。
今では日本の花雑誌にも、パリで修行を積んだフローリストがよく紹介されています。
彼らは通常、既に日本ではプロのフローリストとしてまかり通っていた人々。しかも日本のフラワー界の 世界的な水準は非常に高いにも関わらず、 多くの日本人フローリストは何故、そして何を求めてパリにいくのでしょうか・・・?。

日本では、パリ・スタイルのフラワー・アレンジが今も もてはやされる一方で、 パリでは ” Zen / 禅 ”という言葉が流行るほど、多くのフローリストが 日本の生け花 感覚で、空間を大切にしながら花を生けています。 もちろん、いかにもパリらしい ”ブーケロン” を持ち味にしているフローリストも依然多いですが、そんなフローリスト達でさえ、 生け込みに出むく際などは、クライアントの要望で Zen らしさを演出しなければならないことも少なくありません。
それだけに、フランス人の男性フローリストが日本の横浜のフラワー・ショップで働きながら、学んでいるという話なども耳にしますが、 やはり日本人が日本でフローリストとしてやっていこうとすると、 ”パリで積んだ修行” というのが大切な肩書きになるのは事実なのです。


フランスでは、外国人である私たち日本人が、パリのフラワー・ショップで働く場合、”スタージュ”の制度を利用することになります。
スタージュとは、半年間の企業研修やインターンシップのこと。フランスでは 学校を卒業するまでに必ず課せられる単位で、 留学生も8〜9割がスタージュに出るようです。 日本人フローリストの場合、 語学学校に通って、そこで ”コンバンション・スタージュ” という書類を発行してもらって、フラワー・ショップでスタージュ という形を取るのが一般的。このコンバンション・スタージュとは、スタージュの勤め先に提出するもので、これがないとスタージュを受け付けてもらうことは出来ません。
スタージュは 勤め先によって 有給のところと無給のところがありますが、 外国人で 学生ビザの場合、労働ビザに書き替えない限りは 給与をもらうことは出来ません。 語学学校によっては コンバンション・スタージュを発行しないところもあるようなので、スタージュ目的で行く場合は 先ず初めに それを問い合わせてから入学手続きを取るのが賢明です。

日本人フローリストがスタージュ先を探す場合、言葉の問題を除けば 即戦力となるため、見つけるのは比較的簡単です。 しかし、最近ではパリの有名フローリストには、必ずと言って良いほど 日本人スタージュが居るので、直ぐには受け入れてもらえず数ヶ月後、 「今のスタージュが居なくなってから・・・」 と言われる場合もあります。 既に、スタージュしたいフローリストが決まっている場合は、先に連絡を入れたり、もしくは一度パリを訪れて、そのフローリストのところに出向いておくと 良いかもしれません。


私自身、スタージュをしていた時は、フランス人フローリストの色彩感覚、デザインの多様性には大変驚かされました。 パリの街で、都市設計や建築等、すべてに芸術性を感じさせる世界で生活しているフランス人フローリストには、 私たち日本人にはない卓越したセンスがあるのは当然です。芸術的が当たり前の街で暮らしているのですから・・・。

通常パリでスタージュしている日本人フローリストは、前半は花に触れることさえ出来ず、掃除などの雑務ばかりです。 私は、日本のフラワー・ショップで働いた経験が無かったため、花の水替えから掃除まで、 すべてを新鮮に受け入れることが出来ました。 でも日本では一人前のフローリストとして給料をもらって働いていても、パリでは無給です。
後半には、オーナーの行く先々に付いて行って、彼が生け込みをする様子に何度も立ち会うようになりました。 内心では「彼にレッスンを受けたら200ユーロも掛かるんだから」と思いながら・・・。 しかし、レッスンではないので 彼もニコニコなどしてません。時には怒鳴るほど機嫌が悪いこともありますが、 そんな時でも怯まずに、学べるものは学び取らなければ 損をするのは自分です。


私の経験からスタージュについてアドバイス出来ることは、先ず 感じたことがあったら 必ず遠まわしではなく、 ストレートに言うこと。 よく 日本人のフローリストが 「ブーケを作らせてくれない」、「お給料が貰えない」といった不満をこぼすのを耳にしますが、 これも 「ブーケを作りたい」、「お給料が欲しい」 と伝えることで、意外に簡単に解決する場合が多いのです。
とは言っても、務めているフローリストのスタイルが出来なければブーケは作らせてくれませんし、 先方が支払いの必要性を感じていなければ お給料もくれません。
そうかと思えば、「もうここで、これ以上学ぶものはない」と感じて別のフローリストのところに行こうとしたら、 「昇給するから・・・」 と引き止められたという話も聞きますから、仕事に関する希望は伝えてみなければ分かりません。
さらに、私がもう1つ アドバイスをするならば、ここで何を学べるのか?、自分の学ぶべきものは何なのか?を きちんと把握するということです。 私にとってのそれは、「流行に振り回されず、美しいものを美しいと見極められる目を持つこと」、 「日本人には苦手な ”自分”を表現すること」、「アプローチ、アートを自分で創造すること」でした。

前にも述べましたが、日本のフラワー業界は水準も高く、またフラワーに限らず日本はキュイジニエ、パティシエ、メイク、etcの分野でも 学ぶカリキュラムから 技術において 世界のトップレベル。 なので、殆どのことは日本で学んで、身につけることが出来るのです。

パリで学ぼうという日本人フローリストの多くは、プロのフローリストとして日本で働いた経験がありますが、 肝心なフランス語が話せない人が殆どです。 そんな言葉のデメリットを克服しながら、異国で1人で生活していくことは大変ですし、日本の常識も通用しませんから、 フローリストの修行以外の多くの困難に立ち向かって、克服しなければなりません。
でも初心に帰って、何でも学ぶ心構えさえ持てば、パリのフローリストとしての日々は有意義なものになりますし、 花に限らず、沢山の刺激をうけて、多くを身につけることも出来ます。
パリは日本からまだまだ遠く、そして、多くの芸術が花開いた魅力ある街なのです。


スタージュ後帰国したフローリストには、フランス滞在中に作り上げたコネクションで 有名フローリストを日本に招き、 レッスンやデモンストレーション等のイベントを企画する人も居れば、 パリ・スタイルのフラワー・ショップをオープンしたり、パリ・スタイルのフラワー・アレンジメント教室を始める等、 幾つもの選択肢があります。 しかし、多くの日本人フローリストがスタージュ後、帰国し、「パリでフローリストとして活躍していた」という肩書きは、 帰国したフローリスト全員に与えられるもの。
それだけに、そこから実際にビジネスとして広げていけるかは、まさにその人次第なのです。





執筆者プロフィール:
Ange / アンジュ
大学卒業後、ボーイフレンドがフランス人のため渡仏。1999年パリに渡り、ヨーロピアン・フラワー・アレンジメントを学ぶ。
2001年 エリック・ショーバン (un jour de fleur)でスタージュ
2003年 ステファン・シャペルでスタージュ 
2005年 結婚し、パリで在仏日本人を対象にフラワースクールを開講。現在に至る。