Cafe & Restaurant in Films

パリと言えば、 ロマンス映画の舞台として最も相応しい街というイメージがあるけれど、 美しい街並みと共に、よく映画の中にフィーチャーされるのがカフェやレストラン。
パリにはカフェやレストランは星の数ほどあるけれど、ロケーション・ハンターが吟味して選んだスポットは、 映画を思い出す時に、そのシーンが目に浮かぶほど、ストーリーや映画の雰囲気にぴったりマッチしているもの。
ここではハリウッド映画 「ビフォア・サンセット / Before Sunset」と、「恋愛適齢期 / Something's Gotta Give」に登場した 2つのスポットをご紹介します。










Le Pure Cafe in "Before Sunset"
ル・ピュア・カフェ In 「ビフォア・サンセット」



2004年度のアカデミー賞で、脚本賞の候補にも上った 「ビフォア・サンセット/ Before Sunset」は、1995年に公開された 「ビフォア・サンライズ / Before Sunrise」の続編。 この「ビフォア・サンライズ」には、何故か「恋人までの距離(ディスタンス)」という意味不明な邦題が付けられていて、 邦題からは、続編である 「ビフォア・サンセット」 とのコネクションが見えないものになっている。

同作品は、欧米では大ヒットには程遠かったものの、批評家は公開時から大絶賛。 一般の人々の間での人気が高まってきたのは DVDが発売されてからだった。 その台詞の妙や、主演のイーサン・ホークとジュリー・デルフィーのごく自然なケミストリー(阿吽の呼吸)が口コミの評判を呼んで、 今では前編と共に、映画ファンの間で熱烈な支持を獲得しているのが同作品である。

旅行中の列車の中で出逢い、お互いに惹かれあったアメリカ人のジェシー(イーサン・ホーク)と、フランス人のセリーヌ(ジュリー・デルフィー)は、 その後、ウィーンで14時間を共に過ごし、明け方のプラットフォームで 半年後の再会の約束をして別れるところまでが 「ビフォア・サンライズ」。
そして、「ビフォア・サンセット」では、それから9年の月日が経過。 作家となったジェシーが、ウィーンでの2人の思い出の半日を綴ったベストセラー著書のプロモーションにやって来たパリの書店で セリーヌと再会するところからスタートする。
2人は ジェシーがアメリカに戻る飛行機までの時間を一緒に過ごそうと、パリの街を歩きながら、会話を続けるけれど、 85分の同作品のほぼ全編が2人の会話をリアルタイムに描いたもの。そして、その前半に2人がまず立ち寄るのが ここに紹介するル・ピュア・カフェ。

「アメリカにもこんなカフェがあればいいのに・・・」というジェシーはコーヒーを、セリーヌはシトロン・プレッセ(レモネード)をオーダーし、 お互いの外観が変わったか?を語るうちに、セリーヌがポニー・テールにしていた髪を下ろして、 前作と同じようなロングヘアにするのがこのカフェである。









「飛行機の時間までに もっとパリの街を見たい」というジェシーのリクエストで、2人はカフェを後にし、 ガーデン・パスを歩き、セーヌ川のボートに乗りながらも、ユーモアとケミストリーに溢れる二人の会話は続く。 その後ジェシーは彼を迎えにきたリムジンでセリーヌをアパートまで送っていくものの、 再会を終わらせたくない2人の時間はどんどん引き延ばされていく。
そしてセリーヌの部屋でのラスト・シーン。「Baby, you're gonna miss that plane / 飛行機に乗り遅れるわよ」 という彼女の言葉に、 ソファーに深々と身を沈めたまま 「I know / 分かってる」 と静かに答えたジェシーの無邪気な微笑み、 部屋に流れるニーナ・シモーンの音楽に身をゆだねるセリーヌの姿は、 素晴らしい余韻と共に、2人が「その後どうなったんだろう?」という憶測を見る側に抱かせずにはいられない絶妙の30秒間。

それぞれに様々な経験を積んだ後に再会した2人の 「大人のロマンス」を描いた同作品と、未だ若かった2人の偶発的でありながら、ピュアなロマンスを描いた前作を比べると、 やはりロマンスは大人になってからの方が思いが深くて、知的であり、理性的といった印象。 お互いに、お互いのような「ソウル・メイト/ Soul Mate (心が許しあえるパートナー)」には、そう簡単に巡り会えないことを自覚した2人が、 残された時間で、お互いをもっと知り合おうとする姿、2人の出会いの意味を確かめようとする姿が 見事に描かれていた同作品。そんな2人の飾り気のないロマンスにピッタリの雰囲気を提供していたのがこのル・ピュア・カフェで、 同作品の雰囲気に浸りたい人には、絶好のスポットと言えるでしょう。


Le Pure Cafe
14 rue Jean Mace 75011 Paris
Tel: 01 43 71 47 22







Le Grand Colbert in "Something's Gotta Give"
ル・グラン・コルベルト In 「恋愛適齢期」



熟年の恋愛をユーモアとスター・キャストで描いたのが2004年に公開された「恋愛適齢期 / Something's Gotta Give」。
メイン・キャラクターは、63歳になるヒップ・ホップ・レコード会社の社長で、30歳以下の美女としかデートをしないハリー(ジャック・ニコルソン)と、 54歳の離婚したブロードウェイの脚本家、エリカ(ダイアン・キートン)。
2人が出会ったのは、エリカの娘、マーリンが 彼をボーイフレンドとして ハンプトン(ニューヨーク郊外)にあるエリカの別荘に連れてきたのがきっかけ。 しかし、ハリーはそこで軽い心臓発作を起こしてしまい、彼の体調が戻るまで 別荘で一緒に過ごすうちに、エリカとハリーは惹かれ合うようになる。
そして、初めて2人がベッドを共にした際、パリが大好きだというエリカに彼が訊ねたのが、「パリではどのレストランが好き?」という質問。 これに対して「パレ・ロワイヤルの傍のル・グラン・コルベルト。この世で最高のグリルド・チキンがあるの」と答えたエリカは、 もし、1月の彼女のバースデーまで付き合っていたら、2月の彼の誕生日も兼ねて、一緒でパリで過ごすことを提案する。

その後 ハリーは回復し、マンハッタンに戻ると、それまでの独身生活を取り戻し、エリカを思いながらも 彼女の愛情に背を向けてしまう。 傷ついたエリカは、彼とのロマンスの体験をブロードウェイのコメディに書き上げるが、 時を同じくしてエリカは、 かねてから彼女に思いを寄せていたハリーの担当医、36歳のジュリアン(キアヌ・リーブス)とのロマンスに目覚める。
その一方でハリーは、心労と心臓発作の勘違いを続けるうちに、自分が過去に傷つけた女性を訪ねて、 自らの過ちを正そうとする。そしてマーリンを訪ねたハリーは、エリカが誕生日を祝うためにパリに居ることを聞き、 自分の思いを伝えるために 追い掛けてパリに向かい、エリカが居ることを見込んで ル・グラン・コルベルトを訪れる。

案の定、エリカと再会を果たしたハリーであるものの、そこにやって来たのが彼女と交際中のジュリアン。 2人の再会が偶然だと思った彼は、何のためらいもなく、ハリーを誘って 3人でエリカのバースデー・ディナーを楽しむことになる。 最初はエリカとジュリアンの仲睦まじさを見せ付けられるハリーであるが、やがて食事が進むうちに 状況は変わって、ジュリアンが エリカとハリーの断ち切れない思いを察するようになる。
食事を終えて、ジュリアンとエリカがタクシーで去った後、小雪が降るパリの街を歩きながら1人意気消沈するハリー。 しかし、彼を追いかけて来たエリカが、ジュリアンが身を引いたことを告げると、 ハリーは「63歳にして 初めて恋をした」と その愛情を打ち明け、ストーリーはハッピー・エンドとなる。







ル・グラン・コルベルトは、パリのクラシックなブラッセリーを絵に書いたような雰囲気で、ミシュランで星を獲得するようなレストランではないけれど、 カジュアルで暖かみのあるダイニング・ルームは、再会を果たしたエリカとハリーの 「ディナーが進むうちに、 徐々にリラックスして来て、以前の感情が蘇る」 というシナリオにはピッタリのレストラン。
エリカがオーダーしたロースト・チキン、 ハリーがオーダーしたステーキ等、料理はいずれもボリュームのあるポーションで、 特にサイド・ディッシュは「不必要なほど多い」と時に指摘されるもの。 この映画で、あまりに料理が美味しそうに映し出されたために、ル・グラン・コルベルトは、パリジャンやパリジェンヌだけでなく、旅行者にも大人気となっており、ことにアメリカ人旅行者の間では、「パリで訪れたレストラン」の第8位にランクされているほど。 だから、ディナーはよほど早い時間に行かない限りは、必ず予約が必要となっている。







レストランの力量としては、メニューはエスカルゴや、オニオン・スープ、カモのフォアグラ、ステーキ・タルタルなど、シンプルなブラッセリー・キュジーヌで、 味は飛びぬけて美味しいという訳ではない。評判が良いのは むしろデザートで、 ラム酒が好きであれば ”ババ・オ・ラム” (写真上、左側)や、アイスクリーム・シューにチョコレート・ソースをかけたデザート、”プロフィトロール” 等は、 パリならではの味わいとなっている。
でも店が混みあってくると ウェイターを捕まえるのが大変で、そのサーヴィスには波があるのが実情。 それだけに同映画に見るようなディナーを想像して、期待に胸を膨らませて出掛けて ガッカリしてしまう人々も少なくないようである。
なので、もし芸術的な料理や、「これぞグルメの都パリ!」というような食体験を望む場合は、もうちょっと予算を増やして 同店から直ぐ近くの、 パレ・ロワイヤル内の3つ星レストラン、ル・グラン・ヴェフールでの食事をお薦めするけれど、「気軽に、気取らず、友達や恋人同士で、 会話や雰囲気を楽しみながらの 手頃な価格の食事」 というオケージョンであれば、同店に出掛けてみる価値はあるというもの。
特に 同映画が気に入っている人なら、観光名所や縁の地を訪ねる気分で、大きな期待さえ抱かなければ、 「来て良かった!」と思える体験がエンジョイできるでしょう。


Le Grand Colbert
4, Rue Vivienne 75002 Paris
Tel: 01.42.86.87.88