Jan. Week 2, 2016
★ How to Get Paid as a Freelancer
「フリーランス=タダ働き」を脱却するためには?


Yoko Akiyama様、
はじめまして。いつもサイトを、特にこのコーナーをとても楽しみにしているキューブさんの大ファンです。
Yokoさんの、表面的なだけでない こころから感銘する ”教え”を頂いているお陰で、イライラすることや、 落ち込んだりする出来事の割り切り方や、対処法を勉強させていただいています。 いつも本当にありがとうございます。

今までにも、何度もご相談をしたいと思っては、出来ずにいたのですが、やはりこのままではいけないと思って メールを致しました。下らない質問かもしれませんが、アドバイスをいただけたら嬉しい限りです。
私は現在外国に暮らして、あるフリーランスの仕事をしています。 外国に住むきっかけになったのは、以前日本でしていた仕事が、解雇同様のフリーランス扱いになってしまったためで、 どうせ同じことをするならば、外国に出て少し勉強しながらの方がと思って、こちらに住み始めました。
でも、思った以上に生活していくのは大変で、日本で貯めた貯金を食いつぶしながらの生活になっていたので、 かなり積極的に以前の日本の職場や、仕事関係の知人全てに 仕事の依頼が無いかを尋ねて、 いろいろ営業めいたこともしているのですが、 ふと気づくといつもタダ働きや、それに等しいことばかりで、全くと言って良いほど収入に繋がりません。

連絡が来て 仕事を頼んでくる人はいますが、お金の話になると 「今回はバジェットが無いプロジェクトだから」、とか 「次に埋め合わせをするから」、「今後のために、この仕事はタダでも受けておいた方が君のため」などと言われて タダ働きになって、 たまにその人達が こちらに来た時にアテンドめいたことを頼まれた時は、微々たる日当と日本からのお土産を貰って、 ランチやディナーをご馳走になることがある程度です。
あまりに生活が苦しいので、つい最近ベイビー・シッターのアルバイトを始めましたが、今私にはそれしか安定した収入がありません。
外国行きを決めたきっかけになったのは、日本で以前仕事をしていた人たちから、「XXXに行くんだったら、今度こういう仕事を回してあげる」 ちょうど「XXXでこういう事をしてくれる人が居なくて困っていたんだ」など言われて、いかにも定期的に日本から仕事がもらえそうなことを 言われていたからだったのですが、そんな人達がもってきてくれる仕事と言えば、全然お金にならないものばかりで、 日本からのお土産のおせんべとか、酵素入りの何か等を貰って、6時間も働いても一銭にもなりません。

そんな風になっている原因は私にもあります。私は、頼まれるとどうしても断れないのと、お金を請求することが出来ない性格なんです。 私の知り合いには、外国で立派に同じ仕事でフリーランスをしながらお金儲けをしている人が居て、自分で言うのも何ですが 私はその人と同じくらいか、それ以上のお仕事が出来る自信があります。なのに私にはお金を請求して、しっかり受け取る強さがありません。
いつも、「次回埋め合わせをするから」などと言われる度に、内心 「また?」と思っても、顔に出さず(出しているかも知れませんが)、 引き受けてしまって それが何度も続いている間柄もあります。 そういう人達は時々 別の人を紹介してくれますが、その紹介された人達も、凄く安い仕事や、タダ同然の仕事ばかりしかくれなくて、 「今、ここで恩を売っておいたら、後に繋がるから」などと、報酬を先送りするようなことを言います。
友達に話すと、「最初は仕方ないんじゃない」とか、「そのうち悪いと思って仕事をくれるんじゃない」と言われますが、 本当にそうなんでしょうか? 先日も、仕事があるから日程を空けておいて欲しいと言われて、日本への一時帰国のチケットを確保していたのに、 それを延期してまで待機していたのですが、仕事自体が無くなってしまって、それを考えながらベイビー・シッターで 泣いている子供をあやしていたら、自分の方が泣きたくなってしまいました。
何時の間に こんな仕事をしながら 涙しなきゃいけないような状態になってしまったのかと思うと、本当に情けなくて仕方ありません。
どうやったら今の状況を打開して、本来の仕事でお金が儲けられるようになれるでしょうか。 是非、Yokoさんにアドバイスを頂きたいと思って、すがるような気持ちでこのメールを書いています。
情け無い、だらしないのは承知していますが、何かお言葉を頂けたら助かります。 どうぞよろしくお願いします。

−I.T.−





私もニューヨークで勤めていた雑誌社が無くなった後、Cube New Yorkをスタートする以前に、フリーランスでライター&リサーチャーをしていた時代が3年ほどあります。 当時は周囲にフリーランスのライター仲間が何人も居ましたので、I.T.さんの現在の状況は少なからず よく理解出来ます。
フリーランスへの仕事の依頼に限らず、世の中にはプロに対して お金を払わずに その仕事、もしくはそれと同等の行為をさせようという人がいるものです。 医師や弁護士などをしていたら、知人から「夜中に体調が悪くなった」、「こういう事は法的にどう解釈するのか?」といった 連絡を受けることは少なくありませんし、かなり以前にヘア・スタイリストをしている方から、「お正月で家族が集るたびに 子供のヘアカットをタダでせがまれる」といったご相談をこのコーナーで受けたことがありました。
かく言う私も、フリーランス時代に 日本の企業の方に ある米国ビジネスについて「簡単に書いて送ってくれる?」などと いとも簡単に、しかも全くお金を支払う意図など無しに頼まれたことなどが何度もありましたし、 ニューヨーク在住の自称コーディネーターの人には 「クライアントを紹介するから」と言って、ディナーに呼び出されて さんざんその場でニューヨークのビジネスについてのレクチャーをさせられて、 クライアントの方が 有料のリサーチを私に依頼して下さった途端に、 自称コーディネーターが割り込んできて 「こんな仕事をしても、貴方のキャリアのためにならないから、簡単に要点をまとめてくれたら、 自分がレポートを出しておく」などと言われたことがありました。

私もフリーになりたての頃は、ある程度 営業が必要かと思って、「後で埋め合わせをするから」という人のために仕事をした経験がありますが、 1度限りで、2回以上はタダ働きをしないと決めていた私でも、「都合よく 利用されているだけ」という思いを味わったのを覚えています。 その結果悟ったのは、「お金を払ってくれるクライアントというのは、最初からタダ働きなどさせない」ということでした。
そう悟ってからは、「簡単に書いて送ってくれる?」というリクエストは全て無視してきましたし、 前述の自称コーディネーターの人には その時の一件以来、一度も連絡をしていません。 そういう事を平気で言ってくる人とは、絶対に仕事にならないということはその時点で熟知していたので、 気を使って お断りのメールを出す時間や手間は 自分のために使うべきだと判断していました。
見方を変えれば、そのくらい「タダ働きをしない」という断固たる姿勢を取らないと、 お金が稼げないのがフリーランスだというのが私の考えでした。

「ある程度 恩を売ったら、きっとそのうち良い仕事をくれる」というようなことは決してないのが実情なのです。 I.T.さんとて、何度も無料で食事をご馳走になったレストランがあったとしたら、その後 改めてお金を払ってそこで食事をしようと思うでしょうか? 多くの人は、「いつもご馳走になっていて悪いから」というような気持ちで、 ドリンクに立ち寄る程度のことは義理でするとは思いますが、また無料でご馳走してくれる時以外は そうそう足を運ばないのが普通です。
要するに、クライアントを獲得しようとタダでやってあげたことが、逆に「タダでも仕事をする」と見下されるきっかけになってしまって、 何をしてあげたところで、感謝されない状況を作り出してしまうのです。 私はそういったフリーランスの人にタダで仕事をさせようとしている側のミーティングにも立ち会ったことが何度もありますが、 「XXちゃんだったら、ご飯1回くらいでやってくれるんじゃない?」という扱いなのが その舞台裏です。 ご飯1回くらいをご馳走してくれるよりも、その分をキャッシュで貰った方がよほど助かるフリーランスの立場など 全く理解されていないのです。 したがってタダで仕事をさせた人、させようという人から、お金を儲けようというのは最初から無理なのです。

私が知る限り、「今後に繋がる」、「何かに繋がる」というような 収入が生じない仕事ばかりしていると、その後何にも繋がらないだけでなく、 ビジネスが続けられなくなるケースが殆どです。 プロとしての仕事をした見返りはフィー、すなわちお金であるべきで、何の確約も保証もない未来の”良い仕事”ではありません。
そもそも 近い将来の仕事のために1回タダで仕事をするということは、やがて貰えた仕事で2回分を支払われるのでなければ、 1回分の料金で 2回分の仕事をしているのですから、自分の仕事が50%オフのバーゲンになっているのと同じです。 でも、それは実際にその後 お金がきちんと支払われる仕事が来ての場合の話です。
ですので、まずI.T.さんには、ご自分の仕事にプライドを持って、”今後に繋がるタダ働き” のオファーを断る習慣を付けることをお薦めしますし、 労力と時間、必要経費などを考慮して、自分が受ける仕事で 正当な利益を上げるためには、 幾らの支払いを受けるべきかをしっかり把握する必要があります。 フリーで仕事をしていると、フィーを安くしないと他に仕事を取られると考えたり、自分の手間を深く省みずに 安い価格をセットしてしまう傾向にありますが、 「安かろう、悪かろう」と判断されるのはフリーランスも然りです。
そして 仕事に掛けた 時間と労力や出費に見合わない金額を支払われたとしても、それは”利益=儲け” とは言えないことをしっかり頭に刻み付ける必要があると思います。 仕事に対してお金を払ってもらうことはビジネスの大前提ですが、そのお金が利益を生む金額でない限りは、どんどん貯金だけが目減りしていきます。

私自身は フリーランス時代は、一部上場の大企業3社を 年間契約のリサーチ・クライアントとして抱えて、そこからの収入をベースとして確保して、 それ以外に単発のプロジェクトや、雑誌の執筆などをしていましたが、何時 居なくなっても不思議ではないクライアントを当てにするのは 海外生活ではリスクが大き過ぎると判断して、フリーランスを続けながら 程なく スタートしたのがCube New Yorkのビジネスでした。
クライアントをゼロにして Cube New Yorkのビジネス1本にするまでには その後2年半が掛かりましたが、 フリーのライターを続けていた以前の友人は、当時 突然クライアントから それまでと全く同じ仕事に対して 30%もフィーをカットされて 本当に苦しい生活を強いられていました。 そんな友人を見てきただけに、私の考えでは フリーランスという仕事は人生の過渡期の仕事であって、 一生のビジネスとは言えないということです。

ですので I.T.さんのビジネス・カテゴリーが何であれ、フリーランスとして上手くやっていくことよりも、 仕事が来なければ、仕事にならないフリーランスという状態を脱却することに 本腰を入れる方が建設的な人生へのアプローチだと私は考えます。
そもそもI.T.さんは 「外国に出て勉強する」ことを目的に日本を離れたのですから、 もっと広い視点から外国に暮らす意義を見つめ直してみたら、何か違う収入源を見つけることも出来るかもしれません。 そのためには この機会に 自分に何が出来て、本当は何がやりたいか、今まで何に時間を無駄にして、誰に利用されてきたか等を 出来る限り 正直に洗い出して、ご自分の人生やキャリアを今一度考え直してみることをお薦めします。

直ぐにそこから答えが出なくても、誰が”今後の何かに繋がる”というような エンプティ・ホープ(空虚な希望)を I.T.さんに与えて 翻弄してきたかを理解するだけでも、今後のストレスや労力の無駄を大きく軽減することが出来ます。 誰の人生にでも 霧に巻かれたように、何処へどう進んだら良いのかが分からない時期がありますが、 諦めずにいろいろな可能性を模索していたら 必ず道が開けてきます。 I.T.さんだけが人生のそんな時期を迎えて苦しんでいる訳ではありませんので、 ストレスを貯めないように、息抜きをしながら、そして健康に留意しながら頑張ってみてください。
一年の始まりの時期は、そうした軌道修正には非常に適した時期ですので、 ここ2ヶ月ほどを大切に過ごして下さい。

Yoko Akiyama


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執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。 丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。

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