Feb. Week 2, 2016
★ Balance Between…
女性にはキャリアと家庭の両立はできないのでしょうか?


秋山曜子さま、
まだ独身時代にニューヨーク旅行をしたのをきっかけにキューブ・ニューヨークを知って以来、ずっとホームページを拝見している 90年代からの愛読者です。 子育てで忙しくて、御社のホームページから遠ざかっていた時期もありましたが、 これほどまでにコンテンツが充実したウェブサイトは無いと思っています。
いつアクセスしても、ためになる情報が満載なのですが、特にこのコーナーは本当にためになって、 人生についていろいろ学ばせて頂いています。
いつもは皆さんの悩み事と それに素晴らしいアドバイスをされる秋山さんのコメントを拝読していましたが、 私もこのところ家族や友達にも言えない悩みをかかえておりまして、 秋山さんからアドバイスをいただけたらと思ってメールをすることにしました。

私は独身時代はキャリア志向だったのですが、いわゆる”できちゃった結婚”をしたのをきっかけに、 しばらく仕事はお休みして、子育てに専念することにしました。 本当はもっと早く仕事に戻るつもりでいたのですが、いざ子育てを始めるとそう簡単にはいきませんでした。
やっと子供がティーンエイジャーになって、部活などで帰宅時間が遅くなり、手が掛からなくなったと思っていた時に、 以前の職場の上司から仕事のお誘いがあり、夫に相談したところ、夫も出張が多く、帰宅時間も遅くなっていて、私に悪いと思っていたみたいで 直ぐに承諾してくれました。

それで働き出してみると、「やっぱり自分には仕事をすることが合っているんだ」と思うほど楽しくて、 それに加えてラッキー出来事も重なって、働き始めて6ヶ月後には昇進して、責任も増えた分、ますますやり甲斐が出てきました。 お給料も増えて、仕事絡みで人に会う機会も多くなったので、子供ができてからあまり構わなかったファッションにも お金をかけるようになって、ヘアカットやメークもちゃんとするようになって、 友達に会うたびに”変身ぶり”を驚かれるようになりました。 そうなってみて、今までの自分がいかに外観に手を抜いていたかを実感したのですが、 そんなことが夫と子供から、私が浮気をしていると疑われる原因になるとは夢にも思ってみませんでした。

少し前に子供と口論になった時に、子供に 「私が浮気をしているのでは?と夫と子供が疑っている」といわれた時には、 身に覚えがないことなので 腹立たしかったり、悔しかったりで、どうしたら良いか分からなくなってしまいました。
職場には男性もいますが、私よりずっと若くて 部下の立場の人達なので、浮気などしようがありません。 身なりやメークをきちんとするようになって、仕事で帰宅するのが遅くなってきたことで、 浮気されていると思われるなんて、家族のためにも働いているつもりでいた私には、言葉に出来ないほどショックでした。

反省することがあるとすれば、仕事が忙しくなってからは子供にお金を渡してコンビ二で夕食を買って食べてもらうことが多くなって、 夫も私が料理している時間が無いのが分かっているので、外で会社の人達と夕飯を食べて戻る日がどんどん増えていってしまい、 家族で一緒に食事をしたり、会話をしたりということが無くなってしまったことです。 週末が唯一、一家団らんの時間ではあるのですが、ティーンエイジャーの子供は土曜日は友達と一緒の方が楽しいようで、 日曜に1日だけ家族で夕食をするだけですが、最近では私の頭の中が仕事のことで一杯で、だからと言って仕事の話をしても 夫と子供には嫌がられるだけなので、何を話したら良いのか分からなくなって 家族全員にとって義務的な夕食になってきています。 さらにショックだったのは、 私が料理をしている様子を見た子供に、先日 「買ってきた物の方がおいしいのに」と言われた時でしたが、 よく考えてみると私も最近は以前ほどは料理が楽しくなくなっていました。 というか、どんな料理を家族に食べさせようかと考えるゆとりが無くなってきていました。

今はあまり家庭のことは出来ない代わりに、家計には随分貢献するようになっていて、 私が仕事を始めてからの方が、家族旅行にも多めに予算が割けるようになりましたし、貯金も増えています。 でも、私が仕事をするのは 夫にも子供にも歓迎されていないのは手に取るように分かります。
やはり女性は家庭と仕事を両立することは出来ないということなのでしょうか。 仕事を始めてから、私はとても楽しく、若返ったような気持ちで取り組んできましたが、 反面、家庭の中が冷めてきたことには むなしい気持ちで一杯です。 かと言って仕事を辞めろといわれたら、私の生き甲斐が無くなってしまうような気がします。
仕事を続けながら、家庭もしっかり守って、上手く両立していくにはどうしたら良いのでしょうか。 秋山さんのこれまでのアドバイスを拝見して、私にも何かお知恵をいただけたらと思ってメールをしています。 お忙しいと思いますが、ぜひよろしくお願いします。

−F−




私がFさんからいただいたメールを読んで最初に思い出したのが以下のベンジャミン・フランクリンの語録でした。
「A house is not a home unless it contains food and fire for the mind as well as the body.」
(家というものは、心と身体を温める食事と火がともっていなければ 家庭とは呼べない)


メールを拝読した限りでは、現在のFさんのご家族は一緒の家に住んでいても、そこが家庭ではなくなりつつある印象を受けました。
このことは結婚して子供を設けた家族でなくても、1人暮らしの人にも言えることです。 シングルが 単に寝るためにだけに帰るアパートというのは、住んでいる人間のパーソナリティが全く感じられない、 冷たくて素っ気無い空間になっていますが、思い入れを注ぎながらデコレートされたアパートで、 そこで友達を招いてディナーやパーティーをしたり、料理をしたり、読書やヨガをするなどして、 アパートに居ることが 住んでいる人間にとって心からリラックスできる大切な時間になっている場合は、招かれた人にとっても居心地が好く、 住む人間の好みやキャラクターを反映した落着ける空間になっているものです。
すなわち、家そのものに命がもたらされて、住む人間の心と身体に安らぎと栄養を与えてくれるのが家庭というものなのです。

誰もが1日の終わりに帰りたくなるような家庭を築くためには、妻がアンカーとなって家事や育児をこなしてくれることは 家庭のオーガナイズ、メンテナンス、マネージメントを専門的に、しかもそれを24時間担当してくれるわけですから、 この上なく理想的と言える状況です。 特にFさんのようにお仕事が出来る方であれば、ご自分でさほど意識していなくても、家事、育児の様々な面で 有効かつ 有益なご尽力をされてきたものとお察しします。
ですからFさんがお仕事を始めて、そのエネルギーや情熱、時間が仕事にシフトされてしまえば、 ご主人やお子さんが「手を抜かれている」という気持ちになってしまっても不思議ではありませんし、 「構ってもらえなければ、構わなくなる」というのも人間の自然な心理です。

私が知る ”妻が働き出して夫婦仲が悪くなったケース” にはいくつかのパターンがありますが、その1つは ご主人が 「家のことをちゃんとやってくれるのなら、空いている時間に働いても構わない」とか、 「外に出て、自分がやりたい仕事をやっているんだから、家に帰ってきたら頭を切り替えて家のことに専念するべき」といった考えの持ち主で、 専業主婦だった時代と同等レベルの家庭への献身を、働き始めてからも妻に要求するというものです。 こんな無理な状況ではお互いに不満が高まるだけですので、夫婦仲が悪くなるというのは必至のシナリオです。
それ以外のパターンは、妻側の収入が多くなってきて、ご主人が競争意識を抱いたり、男性としての威厳を保とうとする焦りから 仲たがいをするケース、 妻が社会に出ることによって、夫よりも自分を認めてくれる男性に出会い、不倫には発展しなくても 夫からの扱いに不満を抱くようになるケースなどがありますが、 オールド・ファッションな価値観を持つご主人の場合、妻側の収入の方が多くなったり、妻の方がサクセスフルになってしまうと、 殆どと言ってよいほど 離婚をする傾向にあります。 このケースでは、夫が妻より若い女性と浮気をする、もしくは妻が 夫より社会的地位が高く、経済的にサクセスフルな男性と 不倫をするなど、第三者の存在が絡む場合も少なくありません。

要するに妻が働き始めるというのは、それほどまでに 家庭内のダイナミックスが変ってしまうということなのです。
家庭というものを守りながら、Fさんがお仕事をバリバリこなしていくというのは、”両立”というような簡単な言葉で語れるほど安易なものではありません。 Fさんが育児をしながら、なかなか仕事に戻れなかったことを振り返ってみられれば、 1つのことに情熱を注ぎながら、もう1つのことを専念するのがいかに難しいかがお分かりになると思いますし、それはそのまま 仕事に情熱やエネルギー、時間の多くを注いでいるFさんの現状のように思われます。 したがって、どちらも同等にこなそうとする”両立”というコンセプトが間違っていると考えてしまった方がシンプルなのだと思います。

いずれにしても、今まで家庭に注いでいたFさんの情熱やエネルギー、時間が仕事にシフトした状況で、家庭もきちんと守っていこうとした場合、 ご主人とお子さんからのサポートが不可欠になります。 そのためには、まずは Fさんの妻として、母としての役割に対する ご主人とお子さんの意識を改めて頂く必要があります。 すなわち、Fさんにも人生の生き甲斐を求める権利があり、今までご主人とお子さんのサポート役を務めてきた分、 これからはFさんがお仕事をしていくために お二人の協力とサポートが必要だということを理解して頂かなければなりません。 それを実現するには、ご主人とお子さんとの距離がどんどん遠くなっている今の状況を早急に打開する必要があります。

メールには 週に一度の家族揃っての食事も億劫になりつつあるご様子が書かれていましたが、 機械でも 家族関係でも、毎日油をさす方が 週1度まとめて油をさすより故障しないものなのです。 ですからどんなに短くても1日に1度は 連絡の伝達以外の会話をしたり、優しい言葉をかけてあげる方が、 週に1度居心地の悪いディナーをするより有効です。
以前、このコーナーで親子関係についてのご相談をお受けした際に 、 父親が毎晩、息子が寝静まった頃を見計らって 彼の寝室の扉を開けて 「I Love You, Son」と呟いていたただけで、 息子は「父親からの最高の愛情を注がれた」と思って育ったというエピソードをご紹介しましたが、 小さなことでも毎日何らかの形で愛情を示す方が、高額の家族旅行に出かけるより 遥かに心の琴線に響くものです。
親子というのは 何を喋ったら良いか 分からない関係になってしまうと、親がどんなに愛情をこめて言った言葉でも、 子供にとっては口うるさいとしか受け取れない場合があります。 ですから余計なことを言うより シンプルで有効な毎日のコミュニケーションで、Fさんにとって無理なく続けられることを考えて、 それを欠かさずに実践してみてください。 同様のことはご主人に対しても もちろん行ってください。

また「仕事の話をしても 夫と子供には嫌がられるだけなので」とメールに書いていらしたのですが、それは仕事の話の切り口や会話の進め方が悪いのだと思います。 仕事の愚痴や自慢話をされたら お子さんやご主人も楽しくないと思いますが、Fさんの場合はお仕事を楽しんでいらっしゃる訳ですから、 そんな職場での出来事や人間関係、面白いエピソードなどを話す習慣を持てば、浮気の濡れ衣など着せられずにお仕事が続けられると思います。

私がメールから判断させていただいたFさんの最大の問題は ご家族間のコミュニケーション不足です。 Fさんのキャリアと家庭の両立などではありません。 家族なのですから、お互いに不満や問題があったら、それをぶつけ合ったり、それがきっかけで喧嘩をしたとしても、 その方がお互いのための解決策が模索できるのです。ショックなことをお子さんに言われたら、 黙って考えてしまうより、言い返したり、そんなことを言う理由を尋ねて、時に口論をした方が、 会話の無い家族になるよりも 遥かにお互いの愛情が確認できるはずです。

円満な家庭は、仕事への意欲や活力を高めてくれるもので、決して仕事の重荷になるものではありません。
家庭というものは Fさんが仕事で疲れた身体に鞭を打って、何とか纏めていく努力をするプロジェクトではなく、 Fさんにとっても、ご主人やお子さんにとっても、1日の終わりにリラックスが出来て、 短くても家族で楽しい時間がシェアできる 愛情溢れる空間であるべきだということを今一度考えてみてください。
また円満な家庭のためには健康が第一ですので、どんなにお忙しくても ご自身とご家族の健康管理は決して怠らないようになさってください。

Yoko Akiyama


このセクションへのご質問は、ここをクリックしてお寄せください


Will New York 宿泊施設滞在


執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。 丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。

Shopping



PAGE TOP