Feb. Week 4, 2016
★ Coaching by Uninspiring Coach
直感的にダメだと思ったコーチによるコーチング


秋山曜子さま、
いつも楽しくサイトを拝見している このコーナーと秋山さんの大ファンです。
皆さんのさまざまな悩みを読んで、皆さんそれぞれに似たような悩みや問題を抱えているのだと思うことが多いのですが、 それにキッパリと、気休めでない的確なお答えをしている秋山さんをすごく尊敬しています。 これだけいろいろな事をはっきりアドバイスしてくれる人は居ないと思っています。

私はと言えば秋山さんとは正反対で、いつも迷うことが多くて いろいろ考えているうちに実行できず終いになってしまいがちで、 昨年には転職のチャンスを逃してしまいました。 今から考えれば、本当にどうしてあの時に決断ができなかったのか不思議なのですが、 そのチャンスを逃して、情け無い思いが吹っ切れなかったので 少し前に 申し込んだのがコーチングでした。 「あの時、誰かが後押ししてくれたら」という気持ちと、悔しさで申し込んでしまった感じです。

初めてのセッションを受けに行きって、一目自分のコーチになる女性を見た途端に心の中で思ったのが、 「このオバサンじゃダメ」ということでした。 その人は、実際何歳か分かりませんが、私よりはもちろん年上で、白髪もあります。 私が直感的にダメだと思ったのは、服装が全然おしゃれでも センスが良いわけでもなくて、 こんな言い方をすると失礼なんですが、普通のオバサンにしか見えない人です。 話すスピードものろくて、私の方がずっと早口なので、ペースが合いません。 初対面の遠慮がある時でさえ、こんなペースで喋っていたら頭がおかしくなるとイライラしたほどでした。

私の気持ちが態度に出ていたので、それは あちらも感じていたようで、 「ネガティブで、オープンじゃない」、「お若いから、自分の置かれている環境に不満や怒りの気持ちを持っているけれど、 それを克服してないと前に進めない」と言われて、まずはそこから取り組むべきだといわれました。
最初はそうかと思いました。が、私がネガティブになるのはその人と一緒に居る時だけなんです。 友達には、私はオープンな人柄だといわれます。 そのコーチと一緒に居る時だけが、相手の会話ののろいスピードが我慢できなくて、 イライラして ネガティブになってしまう原因です。
既に3回コーチングのセッションを受けて、その度に自分が大人気ないだけと考えようとしました。 相手に合わせて、何かを学び取ろうと努力しましたが、どうしても話しているとイライラしてきます。 ですから、セッションの終わりではいつも「そのネガティブなエネルギーを、自分のためにポジティブに使わなければ」 という締めくくりになって、セッションが終わると「そうか」と一瞬は納得して、続ける気持ちが起こります。 ですが家に戻って セッションのことを考えると、そのコーチのことが嫌いなのでは?と思うほど、一緒に居てイライラしていたのが分かりますし、 コーチが言う内容が 時代とズレていることが少なくないので、内心 馬鹿にしてしまう時もあります。

周囲に相談しましたが、一応もう少し我慢してみたらという人も居れば、 わざわざイライラすることにお金を払わなくてもという人も居ます。
「こんなはずじゃなかった」という気持ちが強いのですが、 セッションが終わると 自分がイライラする相手とも付き合えるような忍耐をこの機会に養うべきなのでは?という気持ちも沸いてくるので、 成果や前進を全く感じていないのに、止めるきっかけを持てずにいます。
秋山さんみたいな方にコーチングがお願いできたら、きっとこんな事は起こらないと思うのですが、 何かこの状況についてアドバイスをいただけないでしょうか。私は今のコーチングを続ける価値はあるのでしょうか?

これからも ずっとこのコーナーと秋山さんの他のコラムを愛読させて頂きます。 お身体に気をつけて頑張ってください。

−K−




私がKさんのメールを読んで、まず思い出したのが90年代に1回だけセッションを受けたフィジカル・セラピストのことでした。
当時、ワークアウトのし過ぎで、膝を痛めてしまったため フィジカル・セラピストに会いに行ったのですが、 その人は体重が120キロ以上あるような巨漢で、 彼の身体を見た途端にまず私が思ったのが「この人がフィジカル・セラピスト?」ということでした。 膝のコンディションを含めて、いろいろな事を尋ねたのですが、なんとも煮え切らない解答が多くて、 お金を損したと思って帰宅したのを覚えています。

私が次にフィジカル・セラピストを訪ねたのは、2009年にランニングをスタートした際でしたが、その時は 「ランニングのようなシンプルな動きを長く、何度も続けるエクササイズは、 フォームをチェックしてもらってから始めないと、骨や筋肉に掛かる負担で逆に怪我や身体の歪みの原因になる」 と言われて、知人に紹介されたお墨付きのフィジカル・セラピストのところに行きました。
すると そのセラピストは、贅肉のかけらもないような筋肉質でバランスの取れたボディの持ち主。 肌のツヤも良く、髪もふさふさで、雰囲気も若々しく、白目によどみがないクリアな眼差しで、 一目見て 自分の身体をしっかり管理している人だというのが分かりました。 実際、彼にランニングのフォームをチェックしてもらったところ、「靴底はいつも こちら側から擦り切れるでしょ?」とか 「スキーの時はこちら側の足に体重を乗せ切れないはず」とあまりにもズバズバと 私の身体の動きの癖を指摘されて、私は直ぐに彼の信者になってしまいました。

それは、さておきコーチというものには2つの種類があります。 1つはチーム・スポーツのコーチのように、組織によってあてがわれたコーチ。 もう1つは Kさんが申し込まれたコーチングやプロ・テニスプレーヤーのコーチのように コーチを受ける側が自分のために雇うコーチです。
前者のコーチについては、コーチのことが好きでも嫌いでも、そのチームや組織に属する限りはその方針や 指示に従って、人間関係についても相手の立場を尊重しつつ 上手くやっていく必要があります。 でも後者のコーチは 自分が雇い主であり、自分のためになる 必要な指南を 分かり易く、受け入れ易く与えてくれる相手を 自分の判断で選ぶべき状況です。 したがって、肩書きや人の推薦よりも、相手との相性や、 自分が相手を信頼、尊敬できるか?というポイントが大切になってきます。

Kさんのメールを拝見した限りでは、Kさんの現在のコーチは、自分で雇っているにもかかわらず、 まるでチーム・スポーツの あてがいぶちのコーチのような存在になっています。 すなわち、特に相性が良いわけでも、尊敬できるわけでもないのに、 とりあえずコーチなので、相手の言う事を聞くという関係です。 したがって、同じコーチでも本来の目的とは異なる人選ですので、 成果が上がらず、前進できなくても不思議ではないように思います。
Kさんは セッションが終わるたびに ”「そうか」と一瞬は納得して、続ける気持ちが起こります”と書いていらっしゃいましたが、 それはセッション中のイライラから開放された安堵感がもたらす 瞬間的なエモーションに過ぎません。 実情は、自分のキャリアや人生を向上させようと思って始めたコーチングそのものが Kさんの生活の中の問題になってしまっているわけですから、それでは本末転倒です。

人間というのは往々にして 「止めることは簡単、続けることは難しい」と考えて、続けることに価値を見出しがちですが、 実はそうでもないのです。 私は数年前、ランニング中に軽い脱水症状で 気分が悪くなったことがあるのですが、その時に初めて分かったのが 倒れるまで走ってしまう人の状況でした。それまでは、「そんなに苦しいなら、どうして止まらないのだろう?」と 不思議に思っていたのですが、トレーニングを積んで走り慣れてくると、 気分が悪い状況下では 止まることの方が難しいのです。 というのは 走ることは無意識のうちに継続的に行っていることなので、決断やイレギュラーな身体の動きを必要としないのです。 逆に 止まるためには 「ここで止まろう」と決断して、それに合わせて身体は 止まるための動きをしなければなりませんが、 それは体力と意思が弱っている時には とても難しいことなのです。 ですからそれが出来ずにいると、倒れてしまうのです。

人生においてもそれは同様で、不満が多くても、幸せでなくても同じ職場や人間関係にとどまることの方が簡単ですし、 その状況で手一杯で、変化や革新を求める余裕が持てない場合もあります。 Kさんはコーチングを止めるためのきっかけを求めていらっしゃいましたが、止めることには きっかけもさることながら、 勇気や決断が必要な場合が多いのです。
でも そんな勇気や決断力で 自分の人生や生活に不必要なもの、自分に有益とは思えない人や物を 切り落としていかなければ、 大切な人や、大切な事に注ぐエネルギーや時間は十分に確保できません。

またHさんは、転職のチャンスを逃した悔しさがきっかけでコーチングを申し込んでしまったとのことでしたが、 その状況と類似していると思ったのが、先日発表された エクササイズとモチベーションの関連を調査した結果でした。 それによれば 調査に参加した人々は 「これだけエクササイズをしたら これだけの賞金がもらえる」という獲得型のご褒美にはさほどモチベーションを煽られることはなく、 逆に「エクササイズ・プログラムに申し込んだ貴方にはこれだけの賞金が与えられます。でもエクササイズをサボると 1回ごとに そこから これだけの金額が引かれて行きます」という ”自分の取り分が減っていく”プログラムにした方が 遥かに効果的だったとのこと。 すなわち一度は自分のものだと思いかけたものが 取られたり、減ったりするという 危機感を煽る方が、 モチベーションが掻き立てられるようなのです。
もちろんこれには個人差があって、獲得型で増えて行くことに充実感やモチベーションを感じる人も居ると思いますが、 Hさんの場合、転職を逃したという状況がコーチングを申し込むという行動に駆り立てたモチベーションになっていましたので、 今後は自分を行動させたいと思った場合には、何らかの危機感でご自分を駆り立てる訓練をすれば、特にコーチは必要ないかも知れません。

さらに”人は皆師なり”ですので、お金を払ってコーチングをしてくれる人だけが、人生やキャリアのコーチではないということも 頭に入れておくと、特にセッションを受けなくても、日常の様々なことから 学べることも多いはずです。
それでもコーチが必要な場合には、自分の直感で 「この人!」と思える人、信頼と尊敬が出来る人に お願いすることがまず第一条件。そして 問題点を指摘されるようなコーチングではなく、 Kさんが主導権と決定権を持って、コーチがKさんが目指す目標達成のために 力や知恵を貸してくれるアドバイサーやサポーターである関係になるべきだと思います。

Yoko Akiyama


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執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。 丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。

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