May. Week 2, 2013
★ It's Offensive!


いつも秋山さんのコラムやこのコーナーをとても楽しみにしています。
アメリカに暮らしていて、家族や親しい友達と離れているので、今は 相談事が出来る人が殆ど居ないのですが、 このコーナーを読むたびに、秋山さんのアドバイスが まるで 自分に言われているような気持になることがとても多くて、 実際にとても役に立っています。 ありがとうございます。

実は私にも 頻繁に不愉快な思いをする問題があるので、ご相談したいと思ってメールをしました。
職場の とある男性が私が日本人ということで、 ユーモアのつもりなのかもしれませんが、日本のカルチャーをおちょくったような事を言ったり、したりします。
彼と 一緒に仕事をするようになって2年近くが経過しますが、 未だに私の顔を見ると、挨拶代わりに「Hey、xxxx(私の名前)、ハーラキーリ!」と言いながら、お腹に刀を差すようなジェスチャーをします。 ランチタイムにサンドウィッチを食べていれば、「You're Japanese, Eat Sushi!」等とからかって来ますし、 私のデスクの傍にやってきて、棒を振り回して「I am a Samurai」などと 言います。 これを一緒に仕事をするようになってから、何度繰り返してきたか、数え切れません。最初はお愛想で笑ってあげていましたが、 今では「この人は、本当に馬鹿なんじゃないか」とさえ思うようになりました。

同じ職場のスタッフなので、あまりキツイ事を言いたくありませんが、もう2年もこれが続いているのでウンザリです。
ただでさえ、日本人として外国に暮らしていると、例えばパーティーで初対面の人に会うと、 今でも「メモアール・オブ・ゲイシャ」の本のことを訊かれたり、「アイ・ラブ・スシ」などと言われて、 日本人だと思うと、この程度の会話しかしてくれないのかと思って情けなくなることも少なくありません。
それは仕方ないとしても、職場で毎日 「ハーラキーリ!」」と言われたり、手を合わせる合掌のポーズでお辞儀をされたりするのは、 気が滅入ってしまいます。 でも 先方に悪気が無いのは分かっていますし、人種差別的な言動という訳でもないので、 どういうリアクションを示したら良いのかが 分からなくて 困っています。
秋山さんはニューヨークに長く暮らしていらっしゃるので、もしこういう経験をしていらしたら、 どんな風に対処したら良いかを教えて頂けると嬉しいです。
よろしくお願いします。

−M−






Mさんがおっしゃる通り、職場の男性は全く悪気は無いものと思います。
その男性を良く観察してみたら、きっと他の人に対しても、毎日同じように 自分では面白いと思っている挨拶や接し方を繰り返しているはずです。 周囲にこうしたワンパターンの接し方をするのは、精神的に稚拙な部分がある 男性に多い傾向です。
女性は古代から 先天的に言葉による コミュニケーションに長けているせいか、 私の経験では Mさんの職場の男性のような振る舞いをする 女性には 出会ったことはありません。

こうした男性は 基本的に社交、特に会話が下手で、人に対する接し方のバラエティを持っていないのです。 本人が社交上手でないことを自覚している場合も少なくありませんが、それでいて、人の関心を引きたい、 相手に好かれたいという気持が強いので、ユーモアを使おうとします。 とは言っても、気が利いたユーモアを 相手やオケージョンに合わせて使い分けることが出来ないので、 外観やバックグラウンドなど、簡単にピックアップできる相手の特徴をネタにしますし、 自分が面白いと思うジョーク、一度でも ウケが良かったジョークは 周囲がウンザリするまで言い続けるのがこのタイプです。
Mさんと職場の男性は 親しい間柄ではないとお察ししますが、相手のことを良く知ないけれど 気を引こう、好かれようとするケースで、こうしたパターンは 特に顕著になるようです。

このタイプの人々が、社交が下手なのは 自分のウケ狙いばかりを実践して、人のリアクションに気を配っていないためで、 コミュニケーションが双方向だということを忘れている、もしくは理解していないのです。 なので 周囲が自分のワンパターンの言動に ウンザリしたり、「またか!」と思っていることには 気付いていませんし、 このタイプは まともな会話をしようとしても 話題に乏しかったり、話し上手でも 聞き上手でもないので、人と長い会話が続かないケースが殆どです。
要するに コミュニケーション力が身につかないまま、大人になってしまったのがこうした人々なのです。 ですから 小さな子供が、相手の関心を引くために 同じ事を何度も繰り返して言うのと 大差無いことを、大人になってからもやっいると 判断しても間違いではありません。
大人になってからも、4歳児のように 人が言ったことをリピートすることによって他人をからかう人も、こうしたコミュニケーション力に乏しい 人が殆どです。

その行動の根底にあるのは、幼い子供同様に自分に関心を払って欲しい、自分を受け入れてもらいたいという意識ですし、 精神的に未熟な部分があるだけに、 その言動とは裏腹に 性格的には傷つき易かったり、人に言われたことを気にする傾向にあります。
したがって 不愉快な思いをしたからと言って、キツイ言葉で批難してしまった場合、それを相手がずっと引きずって、 かえってMさんが 気まずい思いや 後悔をする場合も出てくるかと思います。

こうした相手に対しては、子供に接するのと同じで、穏やかな口調で、「貴方に悪気が無いのは分かっているけれど・・・」と 言いながら、Mさんが その職場の男性のユーモアと思しき言動や態度で、どんなに不愉快な思いをしてきたかを 批難するのではなく、明確に説明してあげるべきだと思います。
このタイプの人は 社交に関しては 非常に疎いので、人に言われない限りは、自分から悟って コミュニケーションのアプローチや言動を改めることは 殆どありません。 相手を避けることで解決しようとすれば、本人は避けられている理由が分からないだけに、さらに関心を引こうとして、不愉快なユーモアが エスカレートする かもしれません。

多人種が共存するアメリカ社会に暮らしていると、 どういったことが 特定の人種やカルチャーに失礼に当たるかに敏感になって、 ”Racist / レイシスト(人種差別主義者)”扱いをされないためにも、 人種とカルチャーについての言動に気をつけるようになるものです。 ですから、日本に暮らしている時よりも 他人の人種に対するコメントや、 母国に対する 他人のコメントにも敏感になって行くのは ごく自然の成り行きです。
その見地から言えば、問題の男性のように、Mさんが日本人であるということを 事あるごとに持ち出してくる というのは、 言動の内容に関わらず、日本人を差別していると取れる行為で、十分に人種的嫌がらせに値するものです。
人種やカルチャーに関する言動や行動は、その背景に悪意や人種差別意識などがなくても、 受取る側が 嫌な思いや、ネガティブな要素を感じれば、それは ”オフェンシブ (無礼、侮辱的)” と判断されます。 オフェンシブな言動や行動をした側が、それを正当化しようとすれば 「人種やカルチャーに対する配慮が無い」と見なされるだけです。
そうした配慮の無い、無神経なコメントで、多くのセレブリティや政治家が謝罪をしたり、イメージダウンを招く羽目になっていることからも それは明らかです。

ご相談いただいたことで、1つMさん側に問題があるとすれば、 職場の男性の行為を 2年近く我慢してしまったことです。
日本人を含むアジア人は、自分の国やカルチャーが馬鹿にされているようなジョークを、笑って流してしまうところがありますが、 それが人種や国に対する侮蔑に取れる場合は、はっきり不快感を表すべきなのです。 母国とそのカルチャーに誇りを持っていれば尚のことです。
2〜3回程度ならば おふざけで見逃してあげるべきですが、それが繰り返し続いて、Mさんも不快感を抱かれていたわけですから、 2年近くが経過して 「何を今さら・・・」と思われるようなタイミングになる前に、もっと早い時点で 相手に不快感を伝えるべきだったように思います。

パーティーに出掛けて、「アイ・ラブ・スシ」とか、「アイ・ラブ・ジャパニーズ・フード」と言われるのは私も同様ですが、 今や 社交辞令のパーティー・トークではなく、本当に お寿司や日本食を好む人は アメリカにとても多いですし、 アメリカ人同士の会話でも「アイ・ラブ・スシ」、「アイ・ラブ・ジャパニーズ・フード」というセンテンスは一般的に聞かれるものなので、 私はそれは全く気にしていません。
同じアメリカ人でも、世代がジェネレーションYになると、アジア人、ヒスパニックなど人種の異なるクラスメートが多い環境で 幼い頃から育っていますので、 日本人に会ったからといって 日本の話題を持ち出すようなことはしてきません。 したがって、これからの世代の方が、移民としてアメリカにやってきた場合に、 アメリカ社会に溶け込み易いのかもしれません。


Yoko Akiyama


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執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。 丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。


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