June Week 3 2018
★ " Engagement Ring in Broken Engagement"
私に借金があるのに「婚約指輪を返せ」という彼


秋山さま、
10年以上に渡るCUBE New Yorkの読者で、このコーナーは必ず読んでいます。 電子書籍の出版、おめでとうございます。

私は30代半ばで 1年ほど前に外国人男性と婚約しました。 指輪は2人で婚約旅行に出かけたニューヨークのティファニーで私が以前から欲しかったリングを彼にプレゼントしてもらいました。
彼はその頃、新しい会社をパートナーと立ち上げている最中で、 その資金を捻出するためにサンフランシスコの家を売りに出すことになりました。 サンフランシスコはここ数年 不動産価格が急騰して、しかも売り手市場です。 そこで売却益の半分を会社の運転資金に当てて、 残りをハネムーンとウェディング、新婚生活の家の探しに当てることにしていました。 それまでは会社の立ち上げでお金が掛かるので、彼はキャッシュが不足していて、 私もそれは納得していました。

少しして売りに出している家の買い手がついたのですが、物件の最終チェックをしている最中に水漏れが発見され、 その施工費用はキャッシュでないとダメということになって、私がお金を貸してあげることになりました。 最初は彼が自分の401Kを解約してキャッシュを調達すると言ったのですが、ペナルティの額が馬鹿らしいことや 不動産が売れたお金の一部が私達の結婚の費用になることを思って 彼にお金貸すことにしました。
婚約者とは言え もちろん借用書を書いて貰って、不動産の売り上げから 私に対して最優先でお金を返済することも明記してもらいました。 結局、施工が予想以上に大変だったせいで 一度決まりかかったバイヤーを逃してしまい、 途中で見積もり以上のお金が掛かることが判明したので、最初は100万円の予定だった彼に貸すお金は150万円になってしまいました。 それでも サンフランシスコの物件がそれ以上で売れるのは確実でしたし、売れた場合には彼のビジネス資金よりも優先して 私にお金を返すことになっていたので心配はしていませんでした。

ところが何時まで経っても物件が売れる気配がないので、知人に調べてもらったところ 彼が所有しているという不動産は 実は未だ父親の名義であることが発覚し、それを尋ねたところ 父親が介護施設のようなところに入っていて 既にそこに住んでいないこと、 父親の死後に直ぐ売りたかったので 物件の水漏れを直したのは正しい選択だと言われました。
でも私が物件の名義を調べたのがよほど嫌だったらしく、それ以来 何かを尋ねる度に 「どうして自分の結婚相手をそんなに疑うんだ」と 私が悪いような言い方をするようになってきて、さすがの私も彼への疑いが深まってきました。 そのため考えた挙句、婚約を破棄して「借金を返して欲しい」と要求しました。 すると彼は 「私が一方的に婚約を破棄したのだから、まずは婚約指輪を返せ」と言い返してきました。 借金も返さないうちに指輪だけ返せだなんて 身勝手もいいところです。
だから未だ返していませんし、私にとっては以前から欲しかったティファニーのリングなので 彼にはウンザリですがリングは気に入っています。 そもそも婚約指輪は婚約時のプレゼントなはずですから 私のものだと思うんです。 だから「返せ」なんて酷いと思うのですが、両親は 「嘘つきの男性からもらったリングなんて早く返して、 お金を返してもらいなさい」と言います。 彼にリングを返したら きっとリングを売りに出すと思うのですが、名前を彫ってしまった中古のリングなんて高くは売れないと思います。

そこでアメリカ事情に詳しい秋山さんにアドバイスをお願いしたいのは、普通アメリカでは婚約を解消した場合、 婚約指輪をどうするのが一般的なのかということと、彼に一日も早く借金を返してもらうにはどうしたら良いかという事です。
この問題が起こってからというもの、両親との喧嘩が絶えなくて 不愉快な思いをしています。 お金が戻らなかったらという心配もストレスになっています。
早くこの状況から抜け出したいので、何かアドバイスを頂けたら嬉しいです。 よろしくお願いします。

- R -



アメリカにおいて、婚約指輪というのは法律上、”Conditional Gift / コンディショナル・ギフト”、すなわち条件付きのギフトと見なされるのが普通です。 要するに結婚することを前提に受け取るギフトですので、Rさんのように相手と結婚しなかった場合には 本来受け取る権利が無いギフトということになります。
もし彼がリングをバースデーにプレゼントしてくれて、その時にプロポーズをした というのであれば 「純然たるギフト」 と申し立てることが可能かもしれませんが、 Rさんの場合は「婚約旅行で出かけたNYのティファニーで購入した」とメールに書いていらした通り、 お互いに婚約を前提としてのギフトであることは了承の上でのやり取りなので、 コンディショナル・ギフトと見なされる状況は避けられないと思います。
もちろん一度結婚が成立した場合には、その結婚生活が短くても 女性側はリングの所有権を主張することが可能です。 例えば約70日の結婚生活後に離婚したキム・カダーシアン&NBAプレーヤー、クリス・ハンフリーのケースでは、 クリスから受け取ったロレーヌ・シュワルツのリングを気に入ったキムが 彼からリングを買い取り、 クリス側はそのお金をチャリティに寄付していましたが、世間体やプライドが絡まないのであれば キム側にリングの所有権があったのがこのケースです。

Rさんは婚約を破棄した訳ですので、本来は彼にリングを返却するべき状況です。 ですが私は彼に直ぐにリングを返却するべきではないという立場で、それというのは 現時点では 彼に貸したお金が戻るとは確定していないためです。 Rさんには元婚約者としてリングをキープする権利はありませんが、債権者として ”借金の担保” という名目で お金が戻るまで リングをキープする権利があるのです。
それとは別に 私がRさんのメールで非常に気になったのは、「借用書を書いて貰って 不動産の売り上げから 私に直ぐに返却することも明記してもらいました」という 点です。 借用書というのは一種の契約書であり、誓約書な訳ですが、そこに ”不動産の売り上げから直ぐに返却する”と明記されている場合、 ”不動産の売却益が彼に入らない限りは、彼に借金返済の義務が生じない” と保証している書類とも受け取れます。 すなわち、婚約指輪がコンディショナル・ギフトであるのと同様に、Rさんが彼にとって有利な条件で ”コンディショナルな借金” をさせてしまっているかもしれません。
その場合、返済を求めるプロセスが複雑になりますので、まずは有能な弁護士に借用書を見てもらうことを強くお薦めします。

もし彼が家の施工を名目に Rさんから借りたお金をビジネスに流用していて、 その不正使用が証明できるのであれば 詐欺として訴えることが可能ですが、 彼が借用書の額面を本来の目的通りに使用して、「不動産が売れた場合に、その売り上げから返却する」と書面で限定していた場合、 しかもRさんがそれを承諾するサインをしていた場合は、父親の死後に 彼が家を売却せずに住み続けるような事があれば、 お金が戻ってくることはありません。 たとえ覚え書き程度でも書面にサインするというのは法的に大きな効力がありますし、 サインした書類が自分が意図した目的とは異なる形で使われることは決して珍しいことではないのです。

もし彼が意図的に返済方法を限定した借用書を用意してRさんに署名させていたとしたら、 相手はかなり計画的で 法律の知識があると言えますので、今後同じようなトラップを防ぐためにも 法律の専門家を味方につけるのは不可欠です。 たとえRさんが婚約指輪を買い取ることにして その差額のみのやり取りになった場合でも、 Rさんの買い取り価格の設定など、法律の専門家に任せた方が良い事が沢山ありますので、 状況を軽視せずに弁護士を雇って、今後同じ問題の蒸し返しが出来ない形で解決することをお薦めします。

正直なところ 新しく立ち上げるビジネスにお金が必要な男性であったら、普通はビジネスが軌道に乗った段階で 高額なリングを贈ると約束して、シンプルな結婚指輪のみにするのが通例なので、 何故彼がキャッシュが無い状況で Rさんにティファニーのリングを贈ったのかが分からないのですが、 もしそのエンゲージメント・リングの存在が無かったら、「この婚約自体が詐欺だったのでは?」と疑いたくなる状況です。
いずれにしても、私が尊敬するベンジャミン・フランクリンの語録に 「 Honesty is the best policy when there is money in it.」 とあるように、お金絡みで信頼できない男性との結婚は絶対に避けるべきですので、婚約破棄は正解です。
「こんな男性に引っかかってしまった」と考えると後悔や苛立ちの原因になりますので 「こんな男性と結婚しないで済んで良かった」と考えて、専門家に事後処理を任せるのが最善策だと思います。


7月号のOggi誌で CUBE New YorkのQ&ADV.のコーナーを7ページに渡って特集して頂きました。
同誌の守屋編集長直々にご連絡を頂いて実現した企画で、ページの中では Oggi誌の読者の方々から寄せられた5つのご相談にお応えしています。
このコーナーを5年間続けてきた ご褒美のような 企画を頂けて、とても嬉しく思っています。 同記事掲載に際しましては Oggi誌の編集部の方々に大変お世話になりましたことを この場を借りてお礼申し上げます。 ありがとうございました。

Yoko Akiyama



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執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。 丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。


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