July Week 1, 2016
★ "Hostess Or Chef? "
おもてなし料理で批判されるなんて!


秋山 曜子さま、
長くキューブ・ニューヨークのウェブサイトを愛読していて、特にこのコーナーの大ファンです。 私もアドバイスをいただきたいことが出来てしまいました。
日ごろのみなさんのご質問とちょっと違うような気もしますが、よろしくお願いします。

私は料理が好きで、頻繁にではありませんが友達を家に招待しておもてなしをすることもあります。ある時、主人のアメリカ帰りの友人夫妻と、 アメリカ人男性と日本人女性のカップルが うちに食事に来ることになりました。 おもてなしが好きな私は、張り切ってアメリカ人が喜びそうな料理をインターネットで調べて、失敗しないように事前にちゃんとレシピをトライして、 アペタイザーとスープ、そして主人が友達の好物だと話していたステーキをメインにして、添え物の野菜にポテト・グラタンと芽キャベツのソテー、 そして美味しいと評判のケーキをデザートにしました。
お料理はほぼ完璧というくらい上手く行きましたし、ワインもお料理に合ったものをあらかじめ選んでおいてお出ししたので、 皆さん「美味しい」と言いながら食べて下さいました。 ですから私は良いおもてなしができたと思っていました。

ところがそれから少しして、今度は主人と私がアメリカ人カップルの家に招待されて、私はそれには用事があって出かけなかったのですが、 戻ってきた主人から 私のおもてなしは 正式すぎてあまり喜ばれていなかったと聞かされてショックをうけました。
別にうちの食事のことがアメリカ人宅の会で話題になったり、批判されていたのではなくて、 主人がその会でとても楽しい思いをして、その会のことを興奮気味に話している時に、 それに比べるとうちでやった食事の会は、かしこまりすぎていて 皆あまりリラックスしていなかったと夫に批判されることになってしまいました。
アメリカ人宅で出てきたのはリブと焼いたとうもろこしとか、アメリカ人の友達の得意料理のチーズマカロニとか、私の料理に比べたら 全く手が掛かっていないものですが、主人いわく そういう料理の方が皆が喜んで、食も進むし、リラックスできるので、皆でワイワイ喋りながら楽しめたのだそうで、 うちでも ああいう食事の会をするべきだったと言われました。

それだけでなく、私が料理に夢中になり過ぎて、キッチンから出てくると料理のことしか話さないことや、 私が次のコースを出すのに焦っていて 食べるのを急かしているみたいだったとか、 ステーキの後、すぐにケーキとコーヒーが出てきて、早く帰らなきゃいけないみたいな雰囲気になっていたとも言われました。 でも私は早くお料理を全部出して、ホッとしたところでお喋りに参加しようとしていたので、そんな風に言われたのもショックでした。 それにお料理の説明をするのは大事なことだと思っていたので、それを料理の話しかしないって、言われたのもショックでした。 美味しいものを食べてもらいたいという気持ちで頑張ったのにと思ったら、涙が出てきました。

あと、これも主人と私で考えが違うんですが、主人は友達が持ってきてくれたワインをその場で出すべきだと言います。 私はお料理に合うワインを選んであったので、それを出す方がお料理を美味しく味わってもらえるように思います。 アメリカ人の友人の家の会では、呼ばれた人が持ってきたビールやワインが全部空くほど盛り上がったのだそうで、 実際、その日は夫も帰りが遅かったんですが、私がやったことが全て悪かったようにいわれました。
私は自分のお料理を食べてもらうのも好きで、いろいろなお料理のクラスで腕を磨いて、お料理を作ることに熱意を注いで、 それをおいしく、きれいに見せるため、お皿や盛り付けも工夫してきたのに、 手抜き料理の方が良いみたいに言われたのは、悲しいを通り越して悔しい感じさえしました。 そこで、NY生活が長い秋山さんにお伺いしたいのは、 アメリカでは自宅に友達を招待したり、パーティーをする場合にどんな風なおもてなし方法になるのでしょうか? 以前キューブさんのサイトで、スーパーボールのウォッチ・パーティーのお料理の写真を見たのを記憶していますが、 主人が喜んで帰ってきた会のお料理は 多分そんな感じのお料理です。
主人には私のスタイルの食事は、女性の友達同士の集りには向いているけれど、アメリカ人の男性をもてなす場合は もっと気楽なメニューでないと 相手が疲れてしまうと言います。 本当のところはいかがなんでしょう?
それと持ってきてくれたワインを出さないのはアメリカでは失礼なんでしょうか?それも併せて教えてください。 どうかお願いします。
これからもこのコーナーと、キューブさんのサイトを楽しみにしています。

-F-




Fさんがお料理が上手で、おもてなしするのもお好きでいらっしゃるのは素晴らしいことだと思います。
自宅に招待してお友達と食事をするのは、レストランとは全く異なる醍醐味がありますし、アメリカでは自宅に招待して 手料理を味わってもらうのは、交友関係が深まる良いきっかけになるので、社交の武器にもなることです。

さて、ご質問についてですが、私は”おもてなし”というものには 様々なスタイルがあって然るべきという考えです。 でもFさんご自身が 「早くお料理を全部出して、ホッとしたところでお喋りに参加しようとしていた」と書いていらしたように、 ホステスが料理を出すのに忙しかったり、そのプレッシャーが掛かり過ぎて、キッチンとテーブルの行ったり来たりを引っ切り無しに続けているというのであれば、 6人程度のディナーの場合、特にアメリカ人のゲストにとっては あまり落着けない状況だと思います。
そもそも家に招待するということは、文字通りアットホームな雰囲気で ゲストと共に楽しい時間を過ごすことが ポイントなので、ホスト側の負担になるような料理やサーヴィングは避けるのが通常です。 美味しい料理を食べるだけが目的の会であれば、レストランに行けば良い訳で、 少なくともアメリカ社会では 友人&知人を家に招待する場合、 実は料理以外の部分が重要性を占めているのです。
その重要性の最大のポイントを握っているのはホスティングです。 ホストというのは お酒や料理、そして何よりも会話と雰囲気をゲストに楽しんでもらうために、常にその場に居るべき存在です。 したがってキッチンに篭っている時間が長い、座ったと思ったら 直ぐに何かを取りに行く、ゲストが何を喋っているかを把握していない というような状況は 避けなければなりません。

アメリカでは料理が苦手な人、ゲストの人数が多い場合、仕事が忙しくて料理をしている時間や体力が無いケースでは ケータリングをオーダーします。 友人、知人を招待したら 必ず手料理でもてなすべき というようなルールはありません。 少なくともアメリカ人は、ホストがキッチンで格闘していて ろくに会話に加わらないけれど、料理が美味しいディナーよりも、 フードがケータリングで賄われて、ホストがリラックスしながら その場を楽しく 仕切ったり、盛り上げてくれるディナーを評価します。 それほどまでに家にゲストを招待するディナーやパーティーの場合、ホストの存在が要(かなめ)になるのです。

また自宅に知人、友人、職場仲間を招待するということは、自分が暮らす生活空間や 日頃食べている食事、もしくは食やお酒へのこだわり、 家族が居る場合は その家族をお披露目することでもあります。したがって特別なご馳走を作るよりも 自分が得意とする料理や日頃から家族で楽しく味わっている料理などをサーヴィングする方が、人間性を理解してもらえたり、 ファミリーの暖かみが表現出来て好感が持たれる場合が多いのです。 またその方がホストがリラックスできるので、ゲストも同じようにリラックスしてくれたり、楽しんでくれるケースが殆どです。
その意味では、Fさんにとっては ”手抜き料理”と受け取れてしまったご主人のお友達宅のリブやチーズ・マカロニですが、 私の考えでは 会の主旨にマッチしたメニューだったのだと思いますし、何よりご主人を始めとするゲストの方達が喜んで、 持ち寄ったお酒が全部無くなるまで皆さんが長居をして楽しんだのですから、 素晴らしいホストぶりだったのだと思います。

私がFさんのメールを拝見しながら、状況を想像した限りで申し上げるならば、 ご主人が Fさんのディナーについて ”かしこまりすぎていて 皆あまりリラックスしていなかった”と おっしゃっていたのは、 料理のメニューのことではなく、サーヴィングの仕方だったのでは?と感じられました。 恐らくFさんは、アペタイザー、スープ、メイン、デザートをできる限り完璧なコンディションで皆さんに味わって頂くことに集中して、 神経を注いでいただけでなく、きっと忙しくしていらしたことと思います。
それはそれで悪いことではないのですが、もしFさんが あまり会話に参加せず、黙々と次のコースのことを考えながら さっさとお料理を食べて、 「話込んでいないで、早く食べ終わってくれないと次のコースが出せない!」と内心ジリジリしながらゲストのお皿を眺めていたり、 食べ終わった途端にお皿を下げたり、次のコースを持ってきた時だけ その料理の説明を熱心するようなことがあれば、 せっかく作った美味しいお料理も、さほどゲストに喜んで頂けなかったことと思います。
そこまで極端でなくても、もしFさんが 「お料理をきちんとサーヴィングすることで頭が一杯で、 ゲストとの会話に参加している余裕が無かった」、「自分の役割はお料理だと思っていた」という場合、 Fさんが ”おもてなし”という名の下にしていたのは ”ハウス・シェフ”ではあって、ホストではないのです。

招待した方達が たとえご主人の交友関係であったとしても、ゲストが来て下さる目的、興味を抱いて下さるのは 奥様のFさんです。Fさんとご主人がどんなご夫婦なのか、どんな家庭を築いていらっしゃるのか、 どんな家に住んで、どんなおもてなしをするのか というゲストの好奇心を満たしながら、Fさんご夫婦の人となりをアピールするのが ご自宅に招待するディナーやパーティーです。
「あそこの奥さんは料理は熱心に作るけれど、全然話に加わらない」というお宅は、残念ながら どんなにお料理が美味しくても、 ゲストはそれほど喜びませんし、また来たいとは思ってくれません。 それだったら、前述のように料理が美味しくて、それを気兼ね無しに味わえるレストランの方をゲストは好みます。
逆に例えデリバリーのピザを出しても、楽しい会話とリラックスした雰囲気で ゲストが心から楽しい時間を過ごせば、 必ずまたゲストが来てくれるはずですし、その時には美味しい食べ物をお土産にしてくれたり、お料理を手伝ってくれたりして、 より楽しい時間を過ごすために、ゲストがホストの至らない部分を補ってくれるようになるものなのです。

さらに もう1つ申し上げるならば、 デザート&コーヒーというのは ディナーを終わりにしたい時にサーヴィングするものであったりします。 それを出したら、Fさんは御役御免でリラックスができるかも知れませんが、ゲストにとっては「切りが良いところでお帰り下さい」 というメッセージに受け取れたりします。 それよりメインを出し終わったところで、チーズ・プレートなどを出して、Fさんが会話に加わって一緒にワインを楽しむスタイルにした方が、 ゲストと打ち解けて、Fさん自身も楽しい時間が過ごせたのではないかと思う次第です。

そのワインについては、ゲストが持ってきて下さったものをサーヴした方が良いかはケース・バイ・ケースです。 Fさんがお料理に合わせて自分で選んだワインをどうしても 出したいというのであれば それで構いません。
でも時にゲストがワイン通で、予めご主人にメニューを訊いて ステーキに合うワインで自分が飲みたいものを持って来て下さった場合などは、 それを出した方がゲストに対する印象が良いのが実際のところです。 ワイン好きは自分が選んだボトルを飲んだ人の感想を聞くのが好きなので、 そういったゲストが楽しめる話題をもたらすのもホストの役割なのです。 逆にあまりワインを知らない人が、適当に持ってきたようなワインであれば、先にFさんが用意したワインを味わって、 飲み足りない時にお出しするので構わないかと思います。
私の友人達のように沢山飲むメンバーが揃っている場合は、シャンパン、ホワイト、レッドの順番で、それぞれ軽いテイストのものを先に出して、 深みがある重厚な味わいのものを後で開けることになりますが、沢山ボトルが開くのは 楽しい会という意味でもあります。

英語では、自宅で食事などをホストすることを”エンターテイン”という動詞で表現します。 ですので、特にアメリカ人のゲストを招待した場合には、会食だと思って準備するよりも 人を楽しませる”エンターテイメント”だと思って 対応した方が上手く行くと思います。
ホストというのは会話上手である必要はありません。むしろ聞き上手の方が良い場合も多いのです。 既にFさんは素晴らしいお料理が作れるのですから、これからはホスティングについて少しずつ工夫をされると どんどん素晴らしいおもてなしが 出来るようになると思います。そのためには、ご主人の意見も Fさんへの批判と思わずに、 お友達のおもてなしの何処がそんなに良かったかを学ぶつもりで今一度聞いてみることをお薦めします。
またホスティングは夫婦の場合、2人がチームで行うべきことなので、ご主人が批評家に徹するのではなく、 ご主人と一緒に より良いおもてなしについて考えてみるべきだと思います。

Yoko Akiyama

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執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。 丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。

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