Aug. Week 2, 2016
★ "Can We Mix Friendship & Business? "
友達のビジネスへの投資、夫は乗り気なのですが、私は…


秋山さま、こんにちは、このコーナーとキューブ・ニューヨークの大ファンです。
いつもこのコーナーを読みながら、皆さんが状況は若干違っても、同じようなことで悩んだり、 苦しんだりしている様子、そしてそれに常に筋が通って一貫したアドバイスをしている秋山さんをすっかり尊敬しています。 私も一時は占いや、タロット・カードなどで将来を見てもらったことがありますが、やがてはこうなるだろうとか、 この人はこういう人だとか言われても、それにどう対処したら良いのかを具体的に教えてくれることはありませんでしたし、 その時はそうかと思っても、言われたことが当たっていないことも多くて、そういうものにお金を払うのを止めることにしていました。 ですので、このコーナーがとても新鮮で、自分に対してのアドバイスではないのに、自分のために言われた占いよりもずっと私の支えになってきました。
そんな秋山さんに、私も是非アドバイスをお願いしたいと思ってメールをすることにしました。

私と夫は3組の友達夫婦と仲が良く、一緒に旅行に行ったり、普段も食事をしたりと、良い友達関係を夫婦単位で続けてきました。
少し前からその3組の夫婦と、一緒にビジネスをする話が出てきました。というのも そのうちの1組の夫婦が新しいビジネスを考えていて、上手く行きそうな感じなので 最初は冗談みたいな感じで皆で「投資しようかな?」などと言っていたのですが、 その後も 会うたびに良さそうなスタッフの候補が見つかった話、仕事関係の良い人脈ができた話などを聞かされているうちに、 その投資の話がだんだん現実味を帯びて来てしまいました。具体的な投資話はもっぱら夫達がしていて、 妻組は夫達が話し合っていることを、後から「こういう話になっているんだけれど、どう思う?」みたいに言われる感じです。

ビジネスを始めようとしている夫婦は、私たち夫婦と仲が良く、信頼できる人たちで、 夫婦揃ってこれから始めようとしているビジネスでの経験があります。奥さんの方は定収入を得るために 今も大きな企業で働いていますが、ビジネスが上手く行き始めたら、会社を辞めて 新しいビジネスに夫婦で専念することも考えているようです。
残りの2組の夫婦は、私たちよりもずっとお金に余裕がある人たちです。 夫によればそのご主人の1人が「儲かりそうなら、金出すよ」みたいに投資話を持ち掛けたことから、 それがどんどん具体的になったそうです。夫もそれに巻き込まれている感じだったので、 「あんなにお金がある夫婦と私たちは違うから」と言っていましたが、 「資産を増やすには何かに投資をしなければ」と考えると夫は 投資を前向きに考えるようになって、 私も説明を聞かされると納得できることは沢山ありました。それに、上手くいったら楽しそうな感じもしました。

でも私は深く考えるとあまり乗り気でなかくて、このまま決断せずにいれば そのうち投資の話に飽きてくるのでは?と思って静観していたのですが、 突然早めにそれを決めなければならない状況になりました。というのも ビジネスをスタートするための物件が思いのほか早く見つかってしまったのです。 その物件を以前に借りていた会社が倒産してしまい、リースを引き継ぐことになったようで、とても有利な条件で家賃も安いため、 まだまだ先だと思っていた話が急展開し始めました。
投資に乗り気な夫は 早く決断してスッキリしたいと思っているようなのですが、 私はそういう気になれず 夫がその話を持ち出してくると 「今日は疲れているから、その話はやめて」という日もあれば、投資の話で喧嘩にはならなくても口論になることがあり、かなりのストレスになってきていました。

夫は私に決断を急がせようと思ったようで、先日、夫に連れられてビジネスの物件を見に行きました。 私はその物件の第一印象が嫌な感じで、それについては夫も同意見でした。 でも夫は「これから利益を上げて大きくなろうとする会社は、出費が少なければ少ないほどビジネスに回せるお金が増えるから、 家賃は安い方が…」という友達夫婦の言い分に説得されてしまい、気が変わることはありませんでした。
それからは夫婦で投資の話をする度に だんだん喧嘩のようになっていたのですが、 お金の話になると妻側の方が慎重なのはうちだけではなかったようで、 前回皆で集まった時には、「もし出資金を使い切ってもビジネスが上手く行かなかった時には、深追いはしない」という話になり、 ビジネスは上手く行くとは思うけれど、上手く行かなかったらズルズルとお金を投じないということになりました。 最初は私も納得しかけたのですが、頭を冷やしてみると それがそんなに良い話なのか分からなくなってきて、夫とさらに口論することになり、 今では夫は自分のお金だけで投資をすることまで考えています。

私も自分の独断で自分のお金の投資先を決めているので、 夫が自分のお金でしようとしていることには口出しできる立場ではないですし、 もしビジネスが上手く行って、他の夫婦が楽しくお金儲けをしていたら、 夫は私が慎重すぎるせいで 儲け損ねたと思うでしょうから、私もあまり強く言うことはできません。
秋山さんならば、こういう状況でどうなさるでしょうか? 夫が納得する形で、投資をさせないようにする方法はないでしょうか? 単なる投資話だったらもっと簡単だと思うんですが、友達が絡んでいるので単なるお金儲けの話ではなくなってきているところがあります。
何かアドバイスをしていただけたら嬉しいです。
どうぞよろしくお願いします。

- S -




アメリカでは、友達や家族の儲かりそうなビジネスに投資をするケースが少なくないのですが、 それはビジネスに失敗した場合でも投資した金額がキャピタル・ロスになって、税金申告の際に少しずつ取り戻すことが出来るという後ろ盾があってのことです。 その後ろ盾があったとしても、私がもし友達のビジネスに投資をすることがあるとすれば、 既に上手く回っているビジネスをさらに拡張するための資金等、勝算が極めて高い場合のみです。
1からスタートするビジネスの場合、どうしても友達同士で楽しく思い描くような形で進むことは無いことは、 自分自身の例や、他の人の例を見て 散々学んだことなので、 たとえどんな状況であろうと 「決して投資はしない」と断言できるほどです。

Sさんが危惧していらっしゃる投資話については、私が最大の問題点だと感じるのは ご主人および、お友達のカップルが、 友達とビジネスをする難しさを軽視しているようにと思えるところです。 通常サクセスフルなビジネス・パートナーシップというのは、 お互いに同じビジネス分野に居て、同じゴールを目指しているもの同士が 仕事で結ばれた信頼感で事業をスタートするケースです。 その逆の 友達になったもの同士がビジネスをスタートするケースにおいては、友情だけが失われるケースが殆どと言えます。

友達としては頼りになる、日頃からしっかり仕事をしていそうに思える人でも、実際にビジネスの現場でその仕事ぶりを見ると、 相手に対するイメージが変わることは少なくありません。 特に安易な気持ち、もしくは希望や勝算に満ちた状態で一緒にビジネスをスタートするケースでは、友達のビジネス・パフォーマンスに 失望するケースが殆どです。これはお金だけ出す場合でも、お金と労力を出し合う場合でも同様です。
労力も出し合うケースでは、相手との仕事のペースの違いや 能力の差が 仲たがいの原因になります。 友達という同じ目の高さの関係にあると、能力が劣る側にはその優劣は分かりませんし、たとえ自覚していても 友達関係が邪魔をして、 それを認めて報酬に反映させることなどは考えませんので、それがほどなく不満や不仲に繋がります。 出資だけをするケースでも、仕事ができると思っていた友達が、余計な事にこだわって 時間や費用を無駄にする様子を数字で突きつけられると、途端に信頼が不信感に変わったりします。

またその分野の企業で働いた経験があっても、経営者として ビジネスを回していくのが初めての場合は、どんなにそのキャリアが長くても 初心者と考える方が賢明です。ビジネスの規模が小さければ小さいほど、 経営者の手腕やビジネス・ストラテジーが業績に大きく反映されますので、 お友達が経営の初心者である場合、その会社に投資をするのは かなりのハイリスクと思われます。

私自身も、Cube New Yorkの前身になった会社を 元ボーイフレンドと、彼を私に紹介した共通の友人と3人でスタートしましたが、そのことは私にとって 「ビジネスと交友関係は全く別物」ということだけを思い知らされた 最も苦い経験の1つになりました。 私は彼らとは一緒に仕事をした経験など無かったにも関わらず、お金と労力を出し合う形でビジネスを始めてしまいました。 ビジネスというのは スタート時は希望に溢れて楽しいものですが、ほどなくそれに飽きて来ると パートナーは何もせず、 私1人だけが働いていたのに利益は3等分、3人の中で銀行口座にアクセスできないのは私だけという不当な扱いでした。 私が不満を訴えると、必要経費を差し押さえる等の嫌がらせをしてくる悪質さで、最終的には弁護士を雇って 彼らと決別する事態になりました。当然のことながら2人との交友関係もその時点で終わりました。
他人の失敗例の中には、個人的に仲良くなったお気に入りのシェフに投資をして レストランを出店させたところ、 シェフには経営能力が無かったので、食材費や人件費の無駄が嵩んで閉店を余儀なくされた例もあれば、 友達と一緒に実際にビジネスをしてみて、お互いに甘えがある関係で仕事をするよりも、 単にお金で雇うスタッフを使ってビジネスをした方が遥かに簡単だと気付いてパートナーシップを解消した例などがあります。

「資産を増やすには何かに投資をしなければ」というSさんのご主人の主張はもっともなのですが、投資というのは逆に資産が減る可能性もある訳ですから、 利益よりもリスクにフォーカスして考えるべきものです。加えて、私が気になったのは「出資金を使い切ってもビジネスが上手く行かなかった時には、深追いはしない」という点です。
出資金を使い終わったら止めるビジネスというのは、「1000ドル負けたら止める」と決めてラスヴェガスのカジノに出掛けて行く旅行者のようなもので、 ラスヴェガスにとっては そういう旅行者が最高のカモであり収入源です。 そんなビジネスに投資をするのは、誰かにお金をくれてやるのと大差がありません。 終わることを考えてスタートするビジネスなど、最初から始めるべきでないというのが私の考えです。

でも私の言い分は、最初からこの投資に対して消極的だったSさんには ご自身の主張をサポートするものになりますが、 「自分のお金だけでも投資をする」つもりでいらっしゃるご主人に話したところで、その効力は期待できません。 アメリカの大統領選挙を見ても、既にドナルド・トランプを支持すると決めている人は、 彼が何度もビジネスを倒産させている事実や、中小企業への支払を踏み倒している前例を付きつけられても 彼が優れたビジネスマンであると信じて疑わない姿勢を崩すことはありません。 それどころか説得すればするほど、意固地になっていきます。
それと一緒で、この投資について既に何度も口論をしてきたSさんがご主人を説得しようとするのは逆効果になるケースが殆どです。

また男性にはプライドがありますから、妻が「私が言った通りでしょ?」というようなことは ご主人にとっては認めがたい部分もあります。 ですからご主人に投資を止めさせる方法としては、まずSさんが「私はこう思う」という主張を控えて、 ご主人にどうしてこのビジネスがそんなに良い投資だと思うのかを訪ねたり、ご主人の考えに理解を示す姿勢を見せながら、 ご主人が 実は心のどこかに抱いているものの 自分で掻き消そうとしている投資への不安点を引き出すことをお薦めします。
ご主人は Sさん同様、ビジネスの物件を見に行った時に良い感触を抱かれなかった訳ですから、ご主人とて盲目的に投資に傾いている訳ではないと思います。 ですから、その物件の問題からスタートして、ご主人が物件を見た時に何を感じたか、以前のテナントも倒産しているので縁起の悪い物件ではないのか?、 有利な条件を提示しているということは、ひょっとしたらその前のテナントも倒産している鬼門のような物件ではないのか?、 それをお友達はきちんと調べた上でリース契約を結ぼうとしているのか?など、 問い詰めるのではなく、ご主人が自分で「これがそんなに確実な投資なのか?」悟ったり、自問自答するように持っていくことをお薦めします。

物件の問題で揺るがなかった場合は、友達の仕事ぶりや脳力を本人の言い分以外で実際に把握しているのか?、 友達に経営の経験があるのか?、もし上手く行かなかった場合に今は「深追いをしない」と言っていても 「あと少し頑張れば…」ということになって、さらなる出資を迫られる可能性はないのか?、 その場合、当事者のカップルと、財力がある他2カップルはさておき、Sさん夫妻はそれを断ることが出来るのか?、 それによって交友関係が変化したり、利益配分で不当に扱われるリスクはないのか?、 そんな不確実要素が多い投資よりも、数字のデータや自分の判断だけで出来る投資の方が 手が掛からず、好結果をもたらすのではないか? など、ご主人と対立するのではなく、ご主人の側に立って、その投資の問題点に気付かせるガイドをするつもりでお話ししてみてください。

このやり方であれば 口論になることは無いので、話し合っていてもストレスはかなり軽減されると思いますし、 時に自分が考えていることと反対のことに同意をして見せなければならないオケージョンもあるかもしれませんが、 同じ意見を装って 相手を自分の考えに引き寄せる方が 対立して不本意なまま妥協するよりも好結果をもたらすはずです。

またご主人に「この投資の話が始まってから、口論が増えて夫婦仲が悪くなったように思う」ということ、 そして「投資を反対するのは、このままこれに関わっていると、 夫婦仲がどんどん悪化するような気がして不安になる」 という形で、投資のリスクを夫婦関係にシフトさせる方法もあります。
実際に投資が原因で離婚するカップルは、ここアメリカでは珍しくありません。私が知る例では3組のカップルで投資したレストラン・ビジネスが、散々お金を使った挙句倒産して、 3組とも離婚したケースもありますので、たとえご主人がご自分のお金だけで出資をする場合でも、 そのビジネスの行方が夫婦間に影響を及ぼすことをご主人は考えるべきだと思います。

いずれにしても、お金儲けがそんなに簡単ならば、誰もが大金持ちになっているはずなのですから、上手い話や、確実そうに思える話ほど疑ってかかる方が賢明です。 それを既に分かっていらっしゃるSさんには、それをご主人に対して教えたり、説得するのではなく、ご自身で悟っていただく方法をこの機会に身につけていただければと思います。

Yoko Akiyama

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執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。 丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。

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