Sep. Week 1, 2016
★ " My Friend Stole My Design! "
友達にデザインを盗まれました


秋山曜子様、
いつもウェブサイトの更新を楽しみにしています。 特にこのコーナーが好きで、欠かさずに読んで勉強させてもらっています。
私も考えた挙句、是非アドバイスをお願いしようと決心してメールをしています。 お忙しいかと思いますが、よろしくお願いします。

私はあるデザインのクラスを取っています。 少し前にクラスの優秀作品2点をコンペに出品することになったのですが、そこで選ばれた友達の作品が、 どう考えても以前の私のデザインの真似としか思えないものでした。
私がそれをデザインした時は、去年の秋の別の課題で、仕上がったデザインをクライアントの意向でアレンジする練習のために、 クラスのメンバー3人がクライアントの役を演じて、私のデザインについて批評して、アレンジのリクエストをするというセッションでした。 そのクライアント役の1人だったのが、私のデザインを真似した友達です。
その時、友達は私のデザインに批判的で、私は自信を持っていたデザインでしたが、 「どうしてそんなにキツいことを言うんだろう?」とちょっと意外だったので、益々その時のことを良く覚えていました。

彼女の作品がコンペの出品に選ばれたのを見た時は、私は唖然として何も言うことが出来ませんでしたが、 彼女はそのデザインのコンセプトを、好きな小説のストーリーがそのデザインのコンセプトにぴったりだと思ったことや、 「その小説のストーリーを考える度に、ある有名なデザイナーの以前の広告写真を思い出していた」と言って、 まるで他にデザインのアイデアがあったかのように振舞っていましたが、 私からは明らかに私のデザインをパクったとしか思えないものでした。
以前彼女と一緒にクライアント役になった別の友達にも聞いてみたのですが、その友達には「デザインの詳細を覚えていない」と言われて、 もう1人のクライアント役だった人は妊娠を理由に既にクラスを辞めた後でした。
悔しさが抑えられなかった私は、問題の作品を先生のところに持って行って「盗作ではないか?」と抗議したのですが、 「確かにデザインは似ているけれど、全く違うタイプの課題に対するデザインだ」、 「ディテールも含めて全く一緒でない限りは、盗作とは認めがたい」、 「私のデザインにしても、過去に似たデザインを見たことがあるから、100%オリジナルとは言えない」と言って、取り合ってもらえませんでした。

彼女はコンペの作品に選ばれてからというもの、クラスではしゃいでいることが多くて、そんな姿を見て益々悔しい気持ちが高まった私は、 彼女に そのデザインが私の作品に似ていると直接抗議をしてしまいました。すると彼女は 「人の昔のデザインなんていちいち覚えてない」と言ってきて、それだけでなく 私が彼女のデザインを盗んだと一方的な被害妄想になっていると クラスの別の友達にふれ回ったので、あっという間に私が悪者になってしまいました。
ただでさえデザインを盗まれて悔しい思いをしていましたが、今はそれに悲しい気持ちが加わって、 クラスに行くのが気が重くて、デザインをしようという気持ちにもなれません。 以前はクラスに行くのが楽しくて、街を歩いていて新しいデザインが思い浮かぶとそれを書き留めたりしていたのですが、 今は彼女にデザインだけでなく、デザインを楽しむ気持ちまで奪われた感じで、どうしたら良いか分からなくなってしまいました。
この悔しくて 悲しい気持ちとどう向き合ったら良いのでしょうか?  友達にデザインを盗まれては、気持ちがそちらに奪われているので、良いデザインもできません。
私はどうすれば良かったのか、これからどうしたら良いのかを 堂々巡りで考えているのに嫌気がさしてご相談することにしました。
何かアドバイスをもらえたらとても嬉しいです。よろしくお願いします。
これからも、お身体に気を付けて頑張ってください。

- A -




実は私もライターとしてAさんと同様の経験をしたことがあって、それは私が未だ業界紙のマガジン・エディターをしていた時のこと。 私が書いた某企業に関する記事が、数箇所ほど表現を変えただけで、ほぼそのまま日本の某雑誌に掲載されていることを 日本の読者の方や、 その記事の内容についてインタビューを受けた日本の他の雑誌の編集者から聞かされました。
実際に読んでみると、その記事は確かに私が書いた記事と殆ど同じで、無理やり表現を変えた部分が全体の文章のトーンと 全く噛み合っていなかったのを今でもはっきり覚えていますし、やはり気分が悪い思いを味わいました。
周囲からは雑誌社に抗議をするように言われましたが、大手の出版社はライターのせいにするだけなのは目に見えていましたし、 何より当時の私は次の記事のリサーチと執筆に忙しかったので、それどころではありませんでした。 その後もしばらくの間、何人もの人から その非常に似た記事の話を聞かされましたが、私はそれについて何もしないと決めていたので、 特にそれがストレスになることはありませんでした。 
Cube New Yorkのサイトをスタートしてからも、お客様からキューブの記事や商品説明が他のウェブサイトにそのまま掲載されている というご連絡を時々頂くことがあって、これについては悪質なものには抗議をする方針にしています。

Aさんが取り組んでいるデザインの世界というは、既に様々なデザインが世の中に出回っているだけに、パテント(特許)を取得するのが難しい分野と言われますが、 それだけに「自分のデザイン」という主張をするのも非常に難しいですし、時にリスキーなフィールドでもあったりもします。
また たとえ誰かが他人のデザインをディテールまで完璧にコピーした場合でも、先にそのデザインを自分の作品として世の中に発表した側がオリジナルと見なされてしまうケースが殆どであるのも言うまでもないことです。 おそらくAさんが抗議をした先生も、過去にも何度か同じようなクレームを受けてきたものと思いますし、こうしたコピーライト絡みの問題は デザインや文章に限らず、音楽やテクノロジー、料理のレシピ等、様々な分野において頻繁に起こっていることです。

さらに「自分の手柄や功績を人に持っていかれてしまう」というところまで拡大解釈をすれば、例えば自分が纏めてきた契約が上司の手柄になってしまうような形で 企業内でも同様の事が起こっていますし、人間関係においても自分がした親切なのに、何もしていない他人が感謝されてしまうケースがあります。
要するに人間というのは、生きている間に 多かれ少なかれ 様々な形で自分のアイデアや努力、功績、親切などが報われない思いを味わうもので、 そのダメージは気分を害する程度で済む場合もあれば、多額の利益が絡む場合もあります。
そんなアイデアやデザイン、功績などが他人のものになってしまった場合、周囲でそれをちゃんと見ている人が居る場合もあれば、 見過ごされてしまう場合もありますが、いずれの場合でもそれに対して 不服や不満を言う人のことは、 たとえそれが正しい言い分でも周囲が否定的なリアクションを見せるのが常で、それを強く主張すればするほど「見苦しい」と捉えられるものです。

Aさんのケースでは、もしAさんがコンペに出品する作品の候補として、お友達に盗まれたデザインを提出していて、 「どちらかが盗作した可能性があるか?」が問題になった場合に、昨年秋の課題の時のAさんのデザインを提示し、 その時にお友達がクライアント役としてそのデザインを批評する立場にあったことを説明すれば、コンペに出品されるのはAさんの作品だったはずです。
でも そのコンペのために Aさんが異なるデザインを提出していて、お友達のデザインが数ヶ月前のAさんの作品とディテール等が異なる場合は、 たとえお友達のアイデア・ソースがAさんのデザインであったとしても、 タイミング良くそれをピックアップして、自分の作品に落とし込んで提出したお友達の手柄になってしまうのは仕方が無いことなのです。 「運も実力のうち」という言葉がありますが、このケースもそれと同じと思って諦めるしか無いのが実情です。

でも、自分の手柄や功績、アイデア等が人に盗られてしまった場合に難しいのは、 それに寛容に向き合って、気を取り直してばかりいる訳にもいかないという点です。 その状態が続けば、周囲は 同情するよりも、人に利用され易い人間的な弱さや、それに策を講じようとしない消極的な姿勢、 そして自分の仕事に対するプライドの無さ等を批判するようになります。
したがって、今回のAさんのケースでは諦めて気持ちを切り替えるしかありませんが、今後はクラスで自分のデザインを発表する際には 自分の作風を打ち出したプレゼンテーションをするなど、自分の作品であるというマーキングを明確に打ち出すことをお薦めする次第です。
クライアント相手のデザイン業の場合、自分の持ち味をデザインに持ち込むのは難しいことですが、 それでも何らかのマーキングをする事は可能なはずですので、ご自身で工夫してみて下さい。

それとデザイナーという仕事は、時代とその風潮に応じて新しいスタイルを生み出し続ける職業であって、 昔の演歌歌手のように1曲のヒットにしがみ付いて、それで一生食べていくような職業ではありません。 今の気持ちさえ払拭すれば、Aさんはコンペの数ヶ月前にクラスから出品されるのと同等のデザインをしていたほどの 感性をお持ちなのですから、古いデザインなどに拘らなければ、新しいアイデアがどんどん生まれてくるはずです。
これからの時代は、そんな斬新さや時代をいち早く取り入れるスピードが大切になってきますので、 今回のことは、今後の飛躍のための苦い経験と割り切って、先を見つめて感性を磨くべきなのです。 一度デザインへの情熱を取り戻せば、古いデザインを盗まれたことに捉われていた自分が 不思議にさえ思えてくるはずです。

最後に、デザイナーなどクリエーター系の職業の方達は、”実力”というものが自分の専門分野だけで 評価されるべきと考えている傾向にあります。それはそれで正しいことなのですが、 残念ながら世の中というのは 世渡りの上手さ、人当たりの良さなどで 先にふるいにかけられてから 実力の勝負が始まるケースが非常に多いのです。
したがって「自分の実力に対して 正当な評価を受けたい」と考える場合、 自分のムードに左右されず、相手の感情を煽ったり、逆撫でしたりせずに、ポジティブな印象を周囲に与える キャリア用パーソナリティというものが非常に大切です。 これは決して”YES MAN”になるべきという意味ではなく、実力だけに着眼してもらうレベルに達するには、 まずプロとしての人間性が評価されることが不可欠なのです。
どんなに素晴らしいデザインをしても、採用側が感情的レベルでそれを嫌うようなことがあれば、せっかくの作品も 陽の目を見ることがありません。 こうしたプロとしてのパーソナリティも、運同様に”実力のうち”ですので、 是非そちらにも磨きを掛けて頂きたいと思います。

Yoko Akiyama

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執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。 丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。

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