Oct. Week 3 2017
★ "Am I a Victim of the Corporate Culture?"
"身に覚えのないセクハラ、自分は企業社会の見せしめになったのでしょうか?"



秋山さん、
長くサイトを愛読する男性です。先週の秋山さんのキャッチ・オブ・ザ・ウィークのコラムを読んでから、 今までずっと考えてきた自分の問題の答えが見え掛かってきたように思えて、思い切ってメールをしました。よろしくお願いします。

実は私はセクハラが原因で何年も前に会社を辞める羽目になりました。 自分ではセクハラをした意識など全くありませんでしたし、女性の身体に触れるようなこともしていません。ある時、 私が言ったことが原因で女性スタッフの1人が落ち込んでしまい、その相談相手の女性スタッフと人事に文句を言いに行ったせいで セクハラ容疑を掛けられました。
最初は、「こういう事があるから女は怖いよ。ほとぼりが冷めるまで大人しくしてろよ」などと上司に言われた程度でしたが、丁度その頃に世の中でセクハラの定義などが 改めて話題になっていたこともあって、人事が同じ部署の女性たちに意見を求めたようで、私が飲み会の席で言った冗談がセクハラの発言だとか、 残業中に元気を出させようと思って言ったつもりの言葉がセクハラだという意見が出てきて、最初は気が弱い女性を落ちこませただけの話が どんどん大きくなっていって、周囲が自分を見る目が日に日に変わっていったのを今でも憶えてます。 終いには 私の発言が他の男性社員にも影響を与えるので 女性にとって居心地の悪い職場にしているとまで言われました。

仕事を続けるにはやっても居ないセクハラを認めて謝罪しなければならなかったのと、一度そんな騒ぎになると会社に居残っても昇進が無いどころか 左遷されると思ったので、 長年勤めた会社を辞めて今は違う仕事をしていますが、その時のことはずっと納得出来ない心の傷になってきました。 どうして突然女性たちが示し合わせたかのように それまで普通に笑っていた冗談とかをセクハラだと言い出したのかが分からず、 時々思い出しては夜中に眠れなくなることもあったんですが、今週の秋山さんのコラムを読んで 自分がセクハラで辞めることになったのは 女性よりもむしろ社内の男性によって 葬られたような気がしてきました。
その頃の私は声も大きく、しょっちゅう冗談を言ってムードを盛り立てる役割をしているつもりでしたが、そんな私を気に食わないと思う男性が居たのは確かです。 もし男性がかばってくれたら、普通の女性は文句を言わないですから、私がセクハラで追い込まれた原因は 当時の会社の中に自分を敵視している連中が居たからだったことが見えてきました。 今まではずっと納得がいかなかったんですが、大袈裟な言い方をすれば「敵にハメられた」みたいな舞台裏が見えてくる思いをしています。

そこで秋山さんにも是非意見を聞きたくてメールをすることにしました。今は私も言動に気を付けていますが、今後のために何か役立つアドバイスがあったらそれも是非お願いします。

- A -





アメリカはハーヴィー・ワインスティンのセクハラ・スキャンダル以来、ハリウッドだけでなく、音楽業界やオリンピックの女子体操など、様々な分野のセクハラ犠牲者が 名乗り出ている状況で、Aさんから頂いたご質問はタイムリーであったので 先に取り上げることにしました。
Aさんのケースは、ハーヴィー・ワインスティンのようにレイプや女性にマッサージを強要するような行為が絡む訳ではありませんので、 現在アメリカで取沙汰されているセクハラとは全く異なるレベルですが、 それだけに Aさんから言われた言葉を女性がどう受け取ったか、どんな思いで聞いていたかというファジーな状況と、日本ならではのカルチャーが絡み合って ”セクハラ”という観点においては、白黒がはっきりしない様子が窺えた次第です。

私がAさんのメールを読んで最初に頭をよぎったのは、 私がニューヨークにやってきた直後に こちらに長く暮らしていた日本人女性から受けたアドバイスで、それは「品性を疑うようなジョークに対しては 日本に居た時のように愛想笑いなどをせずに、不愉快さの意思表示しないと、自分の品性まで疑われる」というものでした。 今では私もニューヨーク生活が長くなってきたので、不愉快なジョークに対しては表情だけでなく、はっきりと口頭で批判したり、無言でその場を去るようなボイコットをするケースもありますが、 そんな私でも数年前に日本で あまり聞いていて楽しくない冗談を言う男性と同席した際には、その場の雰囲気を損ねないために 不愉快さを顔に出さないように努めたのを覚えています。
ですのでAさんのケースでも、女性達が たとえその場では笑って聞いていた冗談でも 実は居心地が悪い思いをしていたと考えられますし、 そういう思いは意外に記憶に残るので、自分からわざわざ文句を言うほどではなかったとしても、 誰かから「Aさんの言動のせいで不愉快な思いをしたことは無かったか?」等と誘導尋問的に尋ねられた場合に、 直ぐに記憶の中から引き出せる様子は容易に想像がつくところです。 また人間というのは、事件の目撃証言等においてもそうですが、 目的があって尋ねる側の意図する通りの答えを 知らず知らずのうちにしてしまったり、 尋ねる側の探求・詮索欲を満たすために、気にも留めなかったことを持ち出してきたり、 実際よりも大袈裟に自分の思いや体験を語ることは決して珍しいことではないのです。
したがって Aさんのような口頭のセクハラ・ケースは、「何でもないこと」として片付けられた一方で、 誘導尋問で証言を引き出すことによって必要以上に取沙汰することも出来た訳で、その行方を決めたのは 10月2週目のキャッチ・オブ・ザ・ウィークに書いた通り、 社内の男性達であって、被害を申し立てた女性ではないと思います。

でもAさんがここで勘違いしてはいけないのは ご自身のセクハラ・ケースが メールに書いていらしたような「敵にハメられた」という状況ではないという事です。 Aさんが敵も味方も居るお人柄である様子をメールに書いて下さいましたが、コーポレート・カルチャーというのはそんな風に敵、味方にはっきりと分かれるような簡単な世界ではありません。 むしろ自分の味方だと思っている人間に足を引っ張られるケースの方が多いと考えるべきです。 またその背景にあるのも 「人を陥れよう」というような 悪意だけとは限らないのです。世の中には常に誰かを攻撃しているのが好きな人も居れば、その攻撃のターゲットが自分でないことに安堵感を覚えながら 内心楽しんでいる人も居ます。 誰もが強い側について、弱い側には肩入れをしないので、相手に力があると思われる時には批判を控えたり、かばったりするものですが、一度相手が窮地に陥ったとなれば、 ここぞとばかりに攻撃したり、代わりに力をつけてきた人物に加担して 相手をさらに不利な状況に追い込むことは決して珍しくありません。 本人の前では同情して見せても、裏に回れば周囲と同じように噂や不利な情報を広める人、常に中立を決め込んだふりをして 噂話にはしっかり加わる人などがいる反面、 不利な人間を助けようとする人は殆ど居ないものなのです。

たとえAさんに目を掛けてくれていた上司が居たとしても、助けてくれるのはAさんが自分の味方として有益な時、もしくは簡単に助けられる時だけで、自分が批判されてまでAさんをかばおうとは思いません。 一度Aさんを社内のセクハラ問題のスケープゴートと見なしたら、Aさんに対して持っていた好意は 出来る限り傷みの無い処罰で済ませる計らいに反映される程度です。 ですが それがAさんでなかったとしても、周囲のリアクションは同じですので、その人たちがAさんを嫌っていたとか、Aさんの敵であった訳では無いのです。 人間の態度は状況に応じて変わるものなので、自分に追い風が吹いて来れば、敵だと思っていた人々が味方に転じるものコーポレート・カルチャーなのです。

ですから、もしAさんがセクハラ問題に見舞われた当時に 「会社を辞めるべきか?」とご相談下った場合は、私は辞めることをお薦めしなかったと思います。 仕事をする人間にとってプライドというのはとても大切なものですので、事実上 職を追われたような形で辞めることは その後のAさんが自ら経験された通り、心に傷を残すだけなのです。 おそらくAさんは自分のプライドを守るためにお辞めになったものと思いますが、プライドというのは「やってもいないことは認めない」という形で示すものではなく、 自分の言動が意図せずして誰かに不愉快な思いをさせていたことを認めて、それについて反省・謝罪をしながらも、仕事は堂々と続けることによって示すべきというのが私の考えです。 たとえそれがきっかけで職場に失望して辞めたいと思っても、それは自分の汚名を払拭してからするべきことで、問題の渦中から逃げ出すような辞め方はするべきではないのです。
これはAさんの退社の決断が間違いだったという指摘ではなく、人間のプライドというものの真意を理解して頂きたいという気持ちから申し上げる次第です。

セクハラというのは 度合いに違いはあっても、やっている本人はそれをセクハラだと思っていない、もしくは罪の意識が無い場合が殆どで、 パワフルな男性ほどそれが自分に許される特権だと考える傾向にあるようです。またセクハラを行う男性というのは、 被害者の女性の精神的なダメージなど省みない身勝手さも持ち合わせていますが、それも罪の意識が無いからこそだと言えます。
今週に入って50人以上の女性が被害を訴えているハーヴィー・ワインスティンにしても、 「合意の無いセックスはしていない。セクハラは女性たちの一方的な言い分」と語り、全く反省の様子を見せていないとのことでしたが、見方を変えれば 今 反省するようなメンタリティがあれば、彼が30年以上に渡って当たり前のようにセクハラ行為を行うことは無かったはずです。 これまでは彼の周囲も、女性が被害を訴えても 「ハーヴィーはいつもそうだから…」というセリフで片付けて、相手にもしていなかった様子が伝えられていますが、 突如、女性側の言い分がまかり通って、それがセクハラだと見なされ出したのは、ハーヴィー・ワインスティンが映画の不振を受けて金策に追われるようになり、 そのパワーの減速を誰もが感じ始めた段階で ニューヨーク・タイムズ紙のような有力メディアが彼のセクハラ・スキャンダルを暴いたためでした。 ワインスティン自身は、何故自分が今まで普通にしてきたことが突然犯罪のように扱われるのか理解できない様子を見せていることが伝えられています。

ハーヴィ―・ワインスティンを Aさんへのアドバイスに持ち出してくるのは適切ではないかもしれませんが、 要するにセクハラというのは、やっている本人にはジャッジ出来ないものなのです。 そもそも世の中には同じ事を言っても、女性に嫌われる男性と 嫌われない男性というのが存在しますし、 セクハラがレイプや痴漢行為のようなアクションではなく、言動である場合は 言っている側は単に周囲を笑わせる努力が空回りしているだけであったりします。 中にはセクハラ絡み、下ネタ絡みジョークの方がインパクトがあって、特に日本の社会の場合、周囲は内心どう思っていても とりあえず笑うので、 そのリアクションを過信して、知らず知らずのうちに無神経で品性に欠くジョークを言うようになってしまう男性も居ます。
でも本人の意図はどうあれ、言われた側や 聞いていた側が不愉快な思いをすれば、そこに問題が生じる訳で、 発言した側の意図や価値観はその問題や状況の判断基準にはなり得ません。 社会の中で人々と共存して生きて行く人間である限りは、周囲の気持ちや意見を尊重する謙虚な姿勢を持つべきで、 自分の意図や主張ばかりを押し付けていたら、やがてはセクハラで無かったとしても 違う形で社会から制裁を受けることになるものです。

その意味で、Aさんは「今は気を付けていますが」とメールに書いていらっしゃいましたが、同様の事態を防ぐためには、 自分の価値観の中だけで気を付けるのではなく、 オープンに周囲の協力を仰ぐべきだと思います。そもそも男性は女性ほどは”変わる”ということには長けていませんので、 「今の自分は以前とは違う」と思っていても、必ずしもそうとは言えないケースが多いのです。
ですから、周囲の女性たちに「自分は日ごろから不用意な言動をする傾向があるから、セクハラまがい等、 気になることがあったら注意して欲しい。こればかりは女性の意見を聞かないと男性では分からない」と言うなどして、 自分がたとえ失礼な発言をしても悪気が無いこと、批判に対してオープンに耳を傾ける姿勢を打ち出して、 周囲の理解と協力を得ながら、コミュニケーションを向上させるべきなのです。 頭の中で気を付けて自制している状態は何かのきっかけで直ぐに元通りになってしまいますが、 日頃から口に出して心掛けている場合、徐々にその姿勢が身に付くだけでなく、それによって自分の言動も変わってくるはずです。

最後に私は、セクハラというのは男性が女性に対して同じ人間としての敬意を持って接している限りは、決して起こらないものだと思っています。 セクハラを行う男性は、女性をセックスの対象としてジャッジしていたり、男性より社会的地位が低い 自分が見下し目線で扱える存在であると考えている、もしくは潜在的にその意識を持っていて、それが態度や視線、言動、行動に現れるのがセクハラです。 それは時に女性に対する劣等感の裏返しであったり、思春期の性体験コンプレックスの反動であったりもしますし、 両親の夫婦関係や、母親の影響で歪んだ女性観を持つ男性も少なくありません。 ですから職場のセクハラ問題は、単に女性好きの上司の自制心が欠落しているだけの話ではないのが実情です。
そうかと思えば、世の中にはセックスを武器に欲しい物を手に入れようという女性、男性もいる訳で、ポルノ業界でセクハラが問題にならないのは そんなギブ&テイクの意識が双方で一致しているからかもしれません。

Yoko Akiyama


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執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。 丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。

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