Nov. Week 3, 2016
★ "Future Farther in Law Discriminates Me?"
婚約者の父親が日本人嫌い、私のせいで親子の仲が険悪になっています


いつも楽しくサイトを拝見しています。 私は今、アメリカ事情に詳しい秋山さんにどうしてもアドバイスをお願いしたい問題が直面しています。 お忙しいところ申し訳ないのですが、よろしくお願いします。

私はアメリカに住んで2年半ほどで、過去2年近く交際した2歳年下のアメリカ人の彼と婚約中です。
彼はあるスポーツの英才教育のために子供のころから親とは別々に暮らしていて、何度も外国で生活したことがあるので 3か国語を話します。 でも彼の家族は南部の町の敬虔なクリスチャンの保守的な家庭で、 父親は元海軍だそうで 息子が年上のアジア人と結婚することなんて考えられないような人です。 彼にはお姉さんと弟が居ますが、どちらも同じ南部出身のアメリカ人と結婚して、お姉さんは私と同じ年齢で既に子供が5人もいて、 弟にも2人の子供がいるそうです。
父親は高齢で心臓病や糖尿病を患っていることもあって、彼の家族は今年のサンクスギビング休暇も彼が実家に戻ってきて、 一緒にターキー・ディナーを食べるように言っていますが、昨年のサンクスギビングのディナーの席で、彼と父親が 私との仲をめぐって 口論になってしまい、彼は私を連れていけないのなら今年はサンクスギビングに実家に帰らないと宣言しています。
彼の家族が住むのはアジア人など全く見かけない町ですし、そういう地域はドナルド・トランプの選挙キャンペーンで 今までになく移民感情が悪くなっているようなので、私は正直なところ「特に一緒に行かなくても」と思っています。 でも秋山さんもご存知の通り、アメリカではサンクスギビングは日本のお正月のように、家族揃ってターキーを食べるのが伝統で、 彼にとっては、私が彼の家族と一緒サンクスギビング・ディナーに参加するのはとても大切なことだと思っています。

父親は軍隊にいたせいか、頭が古くて固くて、日本はパールハーバーを奇襲した憎い国としか思っていないのだそうで、 それを彼から聞いた時は私も「そんな半世紀以上前のことを言われても」と唖然としました。 彼の家族は父親ほど強烈に私との結婚を反対しませんが、それでも私と結婚することで、彼が家族から距離を置くようになることは感じているみたいです。
昨年のサンクスギビングの時は、私が友達の結婚式で日本に一時帰国していたのと、その時は結婚は話し合っていても 婚約する前だったので、 彼が1人で出かけましたが、今年は彼がどうしても私を連れていくといってかなり頑固になっています。 それだけでなく、私を連れて行った場合は 彼の家に私を泊まらせることを主張していますが、それについては私を連れてきても良いと言ってくれているお姉さんも、 私にはホテルに泊まってもらうべきと言っています。
私は、彼が私のせいで父親や家族と険悪になっているのが嫌ですし、もし彼が今年のサンクスギビングに実家に帰らず、そのまま父親が 亡くなるようなことがあったら、きっと後悔すると思うので、彼一人でも出かけるべきだと思っていますが、 彼はそんなことをしたら、家族が私のことを認めなくなるといって、私たちの間でも時々それが口論になります。

私は彼の家族がそんなに保守的な人たちだと思ってもみなくて、 移民の国アメリカのはずなのに、彼の家族は世の中から隔離されたところで昔ながらの生活するレイシストという雰囲気で、彼とは全く違います。
つい最近も彼が電話でサンクスギビングのディナーについて父親と話した時に、私のことを、「そのうちトランプの移民政策で追い出されるから、結婚なんてしても無駄だ」と言ったそうで、 それには彼も私も激怒状態で、それ以来は彼の父親に会いたいかさえも分からなくなってきましたし、だんだん腹が立つ思いです。 もしサンクスギビングのディナーに出かけたとしても、父親に今更パールハーバーのことなんて言われたりしたら 「アメリカだって原爆を落としたくせに!」と抗議してしまいそうです。

秋山さんだったら、この状態でどうされるでしょう? 全く解決策が無いので、何かアドバイスをよろしくお願いします。
これからも、お体にご留意して頑張ってください。

- M -




Mさんと婚約者の彼と直面しているのはとても難しい問題です。 
同じ日本人同士でも、娘や息子の結婚相手が気に入らない、結婚前から未来の義理の家族と上手く行かないという問題を耳にすることがありますが、 それに人種問題や個人の価値観、世界観が絡んでくると、単なる好き嫌いでは片づけられない問題になります。 Mさんも指摘されていたように、特に今回の大統領選挙中からドナルド・トランプを支持していた南部、中西部においては 移民に対する感情が悪化していますし、 そもそも南部、中西部ではそれ以前から脈々と人種差別的な思想が残り続けていることは周知の事実です。 したがって彼のお父様だけが特別なのではなく、そこに住む人々が同様の価値観、世界観を持つと考えた方が理解し易いかもしれません。
おそらくMさんの婚約者もそのエリアで育った訳ではないだけに、日本人であるMさんとの結婚を昨年のサンクスギビングで話題にするまで、 家族が自分とは全く異なる人種観を持っていることなどさほど気に留めたことはなかったものと思いますし、それを悟るチャンスさえもなかったものと思います。

ところで、Mさんはパールハーバーについて「そんな半世紀以上前のことを言われても」と唖然とされた様子を書いていらしたのですが、 実際には日本で ”リーマン・ショック” と呼ばれているファイナンシャル・クライシスのことを、アメリカの経済専門家は今でも 「エコノミック・パールハーバー」などと評しますし、 9・11のテロの際には、多くのメディアが「パールハーバー以来の決して許されざる出来事」、「アメリカにとってパールハーバー以来の大きな屈辱」と表現していましたので、 アメリカ社会におけるパールハーバーは日本人が考えているほどは過去の出来事ではありません。 実際私が1989年にアメリカにやって来て 最もショックだったのが 12月7日のアメリカのパールハーバー・デイにいかに日本人として肩身の狭い思いをしなければならないかで、 9・11のテロ後はそれが大きく和らぎましたが、私がアメリカに住み始めた時代は、ちょうどアメリカのジャパン・バッシングが最高潮に達していた頃でもあったので、 毎年パールハーバー・デイに気持ちが重くなったのを覚えています。

こうした歴史観における時間差については、「やった側はやられた側より早く忘れる」という見方もありますが、 やはり第二次大戦の敗戦国から あっという間に経済大国に這い上がった日本に比べると、欧米諸国の方が歴史観という時計の針が遥かにゆっくり動いていることを強く感じますし、 諸外国における日本に対する国民感情にしても然りだという様子も私は感じてきました。
ですから、私はアメリカに住む日本人としてパールハーバーは今も非常にセンシティヴなサブジェクトだと思っているので避ける話題ですし、 アメリカに住んで無邪気に「Happy Pearl Harbor Day!」などと言っていた日本人の知り合いを注意したことさえあるほどです。

またMさんが書いていらしたような「アメリカだって原爆を落としたくせに!」という意見を日本人から聞くことは少なくありませんし、 確かに日本の立場から見ると、パールハーバーのお返しが原爆だとしたら 平手打ちをしたら銃で撃ち殺されたような状況に見受けられますが、 アメリカ社会においては 子供の頃から 「先に喧嘩を仕掛けた側が悪い」というモラル教育が行き届いています。 したがって、戦争にしても「先に始めた方が悪い」という意識を持っていますし、日本はドイツが降伏した後も戦争を続けていましたので、 人道的な見地はさておき、「第二次大戦を終わらせるための原爆投下であった」と判断するアメリカ人が多いのも事実です。

このように生まれ育った国や地域が違うと、歴史観も違えば、特定の国や人種に対する考えが異なるのはもちろんのこと、 価値観なども異なりますし、それは簡単に変えられるものではありません。 正直なところMさんのEメールを拝読していて、彼もご家族と離れて育っただけに、 アメリカ南部の人々のコンサバティブさや その歴史観、価値観、人種観の違いを アンダーエスティメートしている部分があるように思います。 またMさんにしても、 そんな保守的で、日本に対して好意的とは言えない彼のお父様を訪ねるには、まだまだアメリカのモラルやカルチャー、 歴史観、そしてアメリカ社会におけるタブー等について 未知の部分が多いように見受けられます。
こうした違いは、”今年のサンクスギヴィングまでに乗り越えよう”というような問題ではなく、時間をかけて徐々に歩み寄るべきもので、 たとえお父様が健康上の問題を抱えていたとしても、急いで解決できるものではないのです。

アメリカの保守的なクリスチャンの家庭では、ゲイの息子とその同性婚の受け入れに何年も掛かって、息子が父親とその間、 一言も口をきいていないという例は珍しくありませんが、そんな親子関係でも時間をかけて修復しているケースは増えていますので、希望を捨てる必要はないと思います。 でもそのためには 時間をかけるだけでなく、頻繁なアプローチを諦めずに行うことが不可欠ですので、「昨年のサンクスギヴィングでは口論になったけれど、 今年は受け入れてもらおう」という ”七夕”のような姿勢では 実現は難しいと言えます。
加えて言葉で説得するよりも 心で通じ合える部分を探さない限りは、こうした価値観や人種観を乗り越えることはできませんので、 この問題でいかに口論が無駄であるかを Mさんと彼が理解する必要があるかと思います。

私が提案するのは、今年のサンクスギヴィングは、”Mさんについて口論しない”、 ”差別的な発言をしない” ということを条件に彼1人でディナーに参加して、 Mさんは彼の家族へのギフトとメッセージを彼に託すという形で、その存在感を柔らかくアピールすることです。 その方がいくら彼が望んでいるからとは言え、いきなり押しかけて行くよりも遥かに奥ゆかしい印象を与えますし、 Mさんとてディナーの居心地や、余計は発言をする心配も無いはずです。
メッセージは 短くスウィートにサンクスギヴィングのグリーティングを贈るに止めることが大切ですが、ホールマーク・カードに印刷されているようなメッセージではなく、 Mさんの優しさや、人間性の良さが伝わるセンテンスを加えること、メッセージは手書きで ご両親、彼の姉弟の名前をきちんと記載することをお勧めします。

お互いの価値観を否定して対立してしまうと、たとえ家族でも離れ離れになってしまいますが、 その違いを譲らなくても 対立を避けて、優しさを見せるだけで少なくとも態度は緩和するはずです。 家族だからといって、すべてにおいて同じ意見である必要はありませんので、 保守的な彼の家族の言い分が気に入らなくても、彼と2人で平和に歩み寄る方向で話し合ってみてください。
彼が今年のサンクスギビングで温厚に振る舞うことができれば、昨年の彼とお父様の口論を見ていたご家族は、 そんな彼の温厚さが 少なからずMさんの影響であると考えてくれると思います。

以前もこのコーナーに書いてきたように、物事には様々なアプローチがあります。 まっすぐ行って衝突するよりも、その衝突を避けて回り道をする方が目的地に早く、そして確実に到達できるケースが多いのですから、 対立に備えていたお父様が拍子抜けしてしまうくらいに平和で和やかなサンクスギビング・ディナーになるように Mさんが彼を送り出してあげることは、お二人にとってとても大切な第一歩だと思います。

Happy Thanksgiving!

Yoko Akiyama

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執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。 丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。

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