Nov. Week 4 2017
★ "What is Sexism?"
"欧米で言われるセクシズムやセクシストというのが 今一つ分かりません"



秋山さま、
キューブ・ニューヨークを愛読する男性です。 仕事柄、イギリス人やアメリカ人とコミュニケートすることが多いのですが、その時によく指摘されるのが、 日本のセクシズムとか、日本人男性がセクシストだという事です。 セクシズムが性差別で、セクシストが性差別主義者だということは分かりますが、 どうしてこれが?と思うようなところでそう言われることが多くて、混乱することが少なくありません。
説明されるとなるほど、と思うことも少なく無いのですが、 欧米では、セクシズムがセクハラ同様に問題になったり、企業イメージを損ねると言われているそうなので、 知識を深めたいのですが、欧米人とは価値観が違うのか説明されてもあまりピンと来ないので、 思い切って秋山さんに解説してもらえたらと思ってメールをしました。
これまでは日本は島国で隔離されてきた感じでしたが、東京オリンピックも控えていますし、 SNN(ソーシャルメディア)上ではどんどん国境が無くなってきていると思うので、 この機会に欧米で批判されるセクシズムについて知識を深めたいと思います。
変な質問で恐縮ですが、よろしくお願いします。

- F -





セクシズムについては、日本に限らず 欧米でも これまで野放しになっていたエリアなので、 政治家の発言から広告にまで かなり酷い状況が展開されていましたし、 それは未だ続いていますが、それに対して数年前から非常に厳しい目が向けられるようになってきました。 特にソーシャル・メディアが普及してからは、そのバッシングがあっという間に世界中に広まるようになったので、 企業広告などはかなり慎重にモニターされるようになったと言われますが、 それでも後を絶たないので、これまで如何にセクシズムが意図する以前の無意識のうちに行われてきたかを立証する結果となっています。

一般的にセクシズムと判断されるのは以下のような行為で、それを肯定、もしくは実践する人がセクシストと見なされます。

  1.  女性に家事、育児などの、伝統的な社会的役割を押し付ける思想や発言
  2.  女性の行動、態度、服装、発言等を制限したり、規定する思想、表現、発言
  3.  女性の社会的地位が男性より下と見なす発言、思想、表現、待遇
  4.  女性やその能力を蔑視、もしくは正当に評価しない発言、待遇
  5.  女性のボディ・パーツや顔をからからかったり、侮辱する態度や発言
  6.  女性の生理やPMSをからったり、侮辱する態度や発言
  7.  女性をセックス・オブジェと見なす表現や発言、態度
  8.  男性から見た理想の女性像が 完璧な女性像であると謳ったり、定義付けたりすること

アメリカでは、知らず知らずのうちにセクシスト的なコメントをして批判を浴びる政治家が少なくありませんが、 中でもそれが最も酷いと指摘されるトランプ大統領の過去の語録から、上記それぞれの具体例を挙げると以下のようになります。

  1.  「女が面倒を見る限りは、赤ん坊は可愛いもの」 子育ては女性がするものという発言
  2.  「アメリカ軍において告発されない性的虐待が2万6000件で、訴追されたのが僅か238件。男と女を一緒にすれば当然起こるべきこと」 アメリカ軍で女性兵士がレイプや性的虐の対象となるが 当たり前と語った2013年のツイート。
  3.  「女はクソみたいに扱わなければならない」 NYマガジンのインタビューで語った、彼の友人へのアドバイス。
  4.  「ナイスなオッパイ、脳ミソ無し」 2人目の夫人であるマーラ・メイプルについて語ったコメント。
  5.  「あの顔を見てみろ、誰があんな顔に投票するか!」 2016年大統領選の共和党対立女性候補、カイリー・フィオリーナに対する発言
  6.  「彼女の何処かから血が出ている」 共和党予備選のディベートで、自分に対して厳しい質問をした女性キャスターが生理中で機嫌が悪かったかのように語ったコメント。
  7.  「もしイヴァンカが自分の娘じゃなかったら、デートしていたと思う」 娘のルックスを褒める際に、自分のデート相手というステータスを持ち出したコメント
  8.  「胸が平らな女性は どう考えても10点満点(=完璧なルックス)とは見なされない」 ラジオのインタビューで、女優の二コレット・シェリダンについて語ったコメント。

トランプ氏の発言は過激すぎるので、今時ここまでのセクシストはそうそう存在しないと思いますが、 かつて日本のコーポレート社会で言われたような「女性は職場の花であるべき」という台詞や、「女のくせに…」、「女性なんだから」というような言い回しもセクシズムと見なされますし、 仕事を終えた女性に対して男性が「これから帰って夕食の準備でしょ?」といったコメントも、相手の生活のルーティーンを熟知して語った場合でない限りは、 「女性が仕事から帰宅して、夫や子供のために夕食の準備をするのは当然」、「家事は女性の仕事」と 社会的役割を一方的に押し付けていると見なされるので、セクシズムになります。
また男性に対して「女みたいにメソメソするな」とか、女性に対して「男並みに優秀」と言うのもセクシズム。もちろん母親が「男の子なんだから泣いちゃダメ」と子供に言えば、 泣くのは女性がする行為と言っている事になるので、それもセクシズムということになります。

企業においては従業員の男女比に比べて女性がエグゼクティブが少なく、男女で給与格差がある企業は セクシズムで批判される傾向にあり、アメリカでその筆頭に挙げられているのはグーグルです。 そのグーグルでは、男性エンジニアが「女性は生まれつきエンジニアになる能力が備わっていない」という内容の発言をソーシャル・メディアにポストしたことから、 解雇されていますが、これは典型的なセクシズムの発言です。
同じく企業ではセクハラが横行し、やはり女性スタッフの能力が軽視されているカーシェアリングのUberが セクシズムで批判される存在ですが、Fさんがおっしゃる通り こうしたことが企業イメージを損ねる要因になっているのは言うまでもないことです。

政治家やセレブリティの発言や企業の経営姿勢と共に、セクシズムが批判されるのが広告、及び広告業界で、 その最たる例が 車やビール等の広告にそのターゲット層である男性の関心を引くためにビキニ姿の女性を登場させるという常套手段で、 アメリカでは 今もその何が悪いのかを理解出来ない男性は少なくありません。
例えば、写真上左側はハンバーガーの広告フォト、右側はそれを同じセッティングとポーズで男性が真似たパロディですが、 左側の広告を見て 男性が女性のビキニ姿に意識を奪われる一方で、現代女性が思いを巡らせるのは 「何故ハンバーガーを売るために 女性がビーチでビキニ姿で、セックス・ファンタジーを抱いているかのようなポーズをしなければならないのか?」という疑問です。 真夏のような天候のビーチでピナコラーダのようなカクテルをすすっているのならまだしも、こんなスリムな女性がボディにサンタン・オイルをベッタリ塗って、顎(あご)をしゃくり上げながらハンバーガーにかぶりついているというのは ほぼあり得ない光景ですし、男性が同じポーズをすれば それはジョークでしかありません。
ですがこれが企業広告になってしまう背景には 広告業界、企業側のエグゼクティブ、その企業がターゲットとする男性客層がこぞって 女性をセックス・オブジェとして捉えているという事実がある訳で、肌を露出した女性の姿を男性の視線や関心を引き付けて 物やイメージを売るための道具として 当たり前のように利用する姿勢には、女性の存在を意識的、もしくは無意識のうちに軽視、蔑視している様子が現れています。 こうした広告は 「女のくせして…」というような 日常のさりげない会話に登場するセクシズム同様、性差別の意識を社会に植え付ける役割を果たし、 男性に対しても、女性に対しても洗脳とも言えるインパクトをもたらしています。 こうしたことは近年になるまで 女性さえもが気付かずに容認していたことですし、本来そんな世の中の風潮を一早く理解して、それを媒体に反映させなければならない広告業界が 未だに間違いを犯しては、企業がバッシングを受ける要因をクリエイトしている状況です。


その広告の劣悪な例を挙げるとすると、写真上左は中古のBMWの広告ですが、誘惑的な視線のモデルをフィーチャーした広告フォトにフィーチャーされたコピーは 「自分が最初じゃないって分かっていても、それを本当に気にする?」というもの。 すなわち 「こんなセクシーな美女なら、どんな男性でもヴァージンじゃなくてOK」という暗黙のメッセージを、男性が頭の中で「車だってBMだったら 中古でもセクシーな美女並み」 というメッセージに すり替えるように意図した広告。 これは女性を車と同等に見なしたり、考えたりする意識を男性に植え付けるだけでなく、女性に対する優位やイニシアティブを男性が抱く要因となりうるもの。 加えて品性に乏しいというのもこの広告の大きな問題点。

写真上右側も同様に品性が欠落した酷い広告で、写真自体は暗いバーのようなセッティングでビキニ姿にハイヒール・サンダル、しかもポーズと言い顔の表情と言い、 多くの人々がストリッパーを想像するものですが、驚くなかれ、これは臓器提供のドナ―を募る公共広告。 そのコピーは「臓器提供者になることが、おそらく貴方が彼女の中に入っていける唯一の手段」というもの。 これはアメリカの広告ではないものの、もしこんな広告でドナーを募っていたら、アメリカ人女性はフェミニストが多いので 男性の臓器提供者を拒むのでは?とまで思えてしまう劣悪広告。
世界的なこんな酷いセクシズムが個人の発言だけではなく、企業広告や公共広告としてまかり通ってきた訳ですから、 セクハラがこれまで まるで社会のシステムのように横行してきた背景も十分に理解出来る状況となっています。


その一方で、昨今大きく問題視されるようになってきているのがジェンダー・ステレオタイプです。
例えば、写真上はウェブサイトの男性のセクションと女性のセクションを分けるための画像ですが、 男性がウォータースポーツをしているフォトで、女性がビーチでビキニで寝転がっているフォトをフィーチャーするのはセクシズムと見なされます。 ここで問題になっているのは、「いかにも男性と女性がそれぞれやりそうなアクティビティを描いている」という点で、 スポーツは男性がやるべきアクティビティ、ビキニで日光浴をするのが女性というのは、 「家事と育児は女性の仕事で、社会に出て働くのが男性の仕事」というメッセージと同じことになります。 したがって、この設定が逆ならばセクシズムとは見なされることはありません。


写真上は、同じくジェンダー・ステレオタイプで批判を浴びたギャップの広告ですが、これも男児のコーディネートのところにつけられたタイトルが「ザ・リトル・スコアラー(小さな学者)」 であるのに対して、女児のコーディネートのタイトルは「ザ・ソーシャル・バタフライ(社交上手に使う表現)」となっています。 すなわち男児は頭脳明晰でやがては世の中でサクセスを収め、女児は社交に興じる毎日を過ごすべきというような ステレオタイプを押し付けていると見なされるもの。
イギリスでは、こうしたジェンダー・ステレオタイプの広告が今年から法律で禁止され、女児が人形遊びをする一方で、 男児が天才エンジニアの卵のようにミニ発明をする様子などを描くことが違法となりましたが、今の世の中はソーシャル・メディアの影響で人々の意識の方が どんどんセクシズムに敏感になってきている一方で、企業や広告業界、ましてや政府の意識がそれに追い付いていないのが実情となっています。



私が個人的に最もセクシズムを恐ろしく思ったのは 写真上のUN(国連)ウィメンの広告で、広告自体がセクシズムなのではなく、 世の中のはびこるセクシズムを描いた広告。 女性の口の部分に見られるのは、グーグル・サーチに「Women Should」とタイプした場合に出てくるプルダウン・メニュー。 すなわち「Women Should」という書き出しで始まる検索で最も多い例を示したもの。 それによれば、「女性は家に居るべき」、「女性は奴隷になるべき」、「女性はキッチンに居るべき」、「女性は教会でスピーチ(説教)をするべきじゃない」というのがトップ4. これが「Women Shouldn't」という書き出しで始まるサーチだと「女性は権利を主張するべきじゃない」、「女性は投票するべきじゃない」、「女性は仕事をするべきじゃない」、 「女性はボクシングをするべきじゃない」など、世の中の人々の本性が最も正直に表れると言われるグーグル・サーチにおける セクシズムの実態を露わにした広告。
グーグルのトップ・サーチのプルダウン・メニューに出てくるということは、世界中のかなり多くの人々がこうしたセンテンスのサーチをしているということですが、 これらサーチをするセクシストが必ずしも男性とは限らないのは 女性として嘆かわしい事と言わなければなりません。

でも前述のように世の中は急速に意識が変化していますので、例えば先週2017年度のピープル誌が選ぶ”セクシエスト・マン・アライブ”に選ばれたブレーク・シェルトンは、 2011年にゲイ・ピープルをからかうようツイートを何度も行っていたことでソーシャル・メディア上でバッシングされていましたが、 それらは6年前の時点では全く批判されることなどなかったもの。 今、問題になっているセクハラについても、これまではオープン・シークレットとして隠すことも無く まかり通っていた訳なので、 セクシズムやセクシストについても、意味合いや解釈が分からないまま、言いたい事を言ったり、ツイートしたりすれば、 それが後に反発を買ったり、それによって偏見を持たれたり、 敵視されるリスクや可能性をもたらすと私は考えます。 そしてそのことは人種問題から同性婚を含むゲイ・ライツ(ゲイの人々の人権問題)等においても然りです。

差別的な発言に敏感に反応して反発する傾向には 今後ますます拍車がかかることが見込まれるだけに これからは社会問題における無知や鈍化した姿勢を露呈して許される時代ではなくなってきてるのです。 またその過ちの解釈には国境が無くなってきていますので、Fさんのように 分からない部分を放置せずにクリアにしようとするのはとても大切なことだと思います。
特に、日本人は日本語をそのまま英語にして話そうとする傾向があるので、 時に日本からやって来た男性が片言の英語で、「日本では女性はこうするものなんです」という内容を言おうとして 「In Japan, Women Have to ・・・」というような明らかにセクシストと受け取られるセンテンスを語っている様子に遭遇することがあるだけに、 国際舞台に出て行こうという日本人男性は、意識の問題だけでなく、言語の表現においてもセクシズムというものを 勉強する必要があるように思います。

Yoko Akiyama


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執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。 丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。

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