Dec. Week 1, 2016
★ "Problem : I'm Too Smart"
頭が良すぎて損をしていると言われます


Yoko AKiyama様、
Cube New Yorkのサイトを知ったのは少し前で, ショッピングのサイトとして教えてもらいましたが、コンテンツが素晴らしくて すっかりはまってしまいました。 中でもこのコーナーは遡って全て読みましたが、お金を払ってもこれだけのアドバイスはもらえないと思います。
そこでYokoさんに私もご相談したいと思いました。よろしくお願いします。

私は、頻繁に「あなたは頭が良すぎるから」とか、「頭が良すぎて損をしている」と周囲の人に言われます。
仕事で質問を受けて、私はちゃんと教えているつもりなのですが、ある時上司に「皆はあなたよりも頭の回転が良くないのだから、 もっとステップ・バイ・ステップで親切に教えるように」と言われたこともあります。 また他のスタッフからも「私は頭が良過ぎるから、教え方が下手だ」と言われたこともあります。
そう言われてみると、確かに私はスタッフに仕事を教えていて、「どうしてさっき教えたばかりなのに、もう忘れているんだろう?」とか、 「どうしてこんな簡単なことが出来ないんだろう」とちょっとイライラしてしまうことがあります。 あと誰にでも分かるような大したことでない事にも感心しながら聞いている人が居ると、 一緒に喜んで聞くような態度が取れないので、後から「つまらなそうに聞いていた」と言われたりすることがあります。

それは愛想が無いという事なのかと思っていましたが、先日ある仕事の機会を逃すことになってしまい、 その理由として「スタッフが私を怖がっている」、「下に教えるよりも自分で仕事をやってしまうのは好ましくない」と言われました。
怖いというのはどういう意味かと思ったら、分からないことをスタッフに訊かれた時に、「さっき教えたはずだけど」と言ったり、 「仕事のスピードが遅い」と指摘したりするので、それが怖くて質問が出来ないとか、仕事の進行状況を私に訊かれるとスタッフが ビクビクしてしまうのだそうで、「私は頭が良すぎるから、そういう人達の気持ちが分からないかもしれないけれど」 と言われましたし、私は時間通りに仕事を終わらせるために、出来ない人の仕事をさっさと自分で片づけてしまうので、 そのままだと下が育たないと言われました。

私からすれば 他人の仕事の覚えの悪さのせいで、私の教え方や私の能力まで劣っているように思われたり、そのせいで 私が仕事の機会を逃すのは納得できません。 私から見て仕事が出来る、覚えが良いと思えるスタッフは何人も居るので、誰もが能力が劣っているように 扱った覚えもありません。
私の替わりにその仕事の機会を獲得したのは、私より仕事が出来ない人で、それは周りも認めています。 でもそれを決める上司も 自分にチヤホヤする人を好んで、能力で人を評価しないところがあって、 考えれば考えるほど憂鬱な気分になります。

Yokoさんは、私のような状況をどう思われますか。この状況を改善するためにどうしたら良いと思いますか? 是非アドバイスをお願いします。
ニューヨークはこれからクリスマスを迎えて素敵な季節ですね。 羨ましいです。お身体に気を付けて頑張って下さい。

- E -




人には様々な仕事のスタイルがあるもので、特に組織の中においては、チーム・プレーヤーか個人プレーヤーかによって 適したポジションが変わってくるものです。
Eさんは仕事の能力があるのに加えて、自分のペースで仕事をするのを好む印象を受けましたので、典型的な個人プレーヤーなのだと思います。 このタイプの方が実力を発揮できるのは、自分の裁量と自分のペースで様々な事に取り組めるポジションで、チームで仕事をする場合は 自分が選りすぐった信頼できる少数のメンバーと仕事をするケースです。
したがって、もしEさんが逃したお仕事の機会が能力にバラツキがあるメンバーをリーダーとして纏めるようなポジションでしたら、 それは少なくとも現時点ではEさんに向いていなかったと思いますし、向いていないポジションに就くことは、仕事で認められない思いをするのと同等のフラストレーションを感じることになりますので、 逃したチャンスについては深く考える必要は無いと思います。

それでもEさんがその職場に居続けるか否かは別として、これからも組織の中で仕事をしていこうとする場合には、 自分の能力だけではやっていけないということを認識する必要があると思います。 周囲との協調が大切ですし、仕事を教えなければならなかったり、他人のミスをカバーしなければならないケースは沢山あります。 そしてそれらが自分の手柄になることなどは殆どありません。
往々にして組織が大きくなればなるほど、仕事が出来る人が 出来ない人のミスや能力をカバーしなければならない状況が生じる一方で、 それが給与やポジションに反映されないという不公平が起こりがちです。

でも私が経営者の立場として感じるのは、能力があって人に教えるのが苦手な人よりも、 覚えはさほど早くはないけれど、丁寧に人に教えることができる人の方が 組織にとっては有難いということです。 その理由はEさんが上司に指摘された通り、下が育ってくれる方が組織にとって有益であるためです。
逆にEさんにどんなに優れた能力があっても、下が育ってくれなければ せっかくの能力が常にエントリーレベルの仕事のカバーに費やされて、新しいプロジェクトやビジネスの向上などに使われず、宝の持ち腐れになってしまいます。 組織というのは、能力別に適材適所に人材を置いて初めて機能的に回っていくものですから、能力がある人が その下のレベルの仕事を 「自分がやってしまった方が楽で速い」と考えてしまえば、下のレベルのスタッフは何も覚えないだけでなく、やる仕事もやる気も無くなってしまいます。

Eさんのような能力のある方にこのようなことを申し上げると大変失礼なのですが、よほどのクリエイティブ職や発明・開発のプロジェクトでない限り、 私は一般の職場における人間の能力レベルというのは最終的にはかなり均一であると思っています。
”能力がある”と評価される人というのは、覚えが早い人で、覚えが早ければそれだけ短時間に仕事を覚えて、即戦力になってくれるので 雇う側としては非常に有難い存在です。 でも よほど難度が高い仕事でない限りは、トレーニング段階で覚えが早いとは言えなかった人でも、それを続けていくうちに徐々に習得するもので、 やがては誰もが同じレベルで出来るようになるものです。要するにEさんがご自身で ”仕事の能力” と思っているのは、 実は覚えたり、習得するスピードである場合が殆どなのです。
でも覚えが遅かった人ほど、自分の仕事を過信せずに、 丁寧にチェックをしたり、簡単だと思って手を抜いたりしない分、逆に雇う側から見ると仕事内容や仕事に対する姿勢で勝っていると思えることさえあるのです。

また組織の中で働く限りは、仕事とは無関係な場や コミュニケーションにおいても、自分がその組織の一員である意識を持たなければなりません。
”誰にでも分かるような大したことでない事にも感心しながら聞いている人が居ると、 一緒に喜んで聞くような態度が取れないので、後から「つまらなそうに聞いていた」と言われたりすることがあります」とEさんがメールに書いていらしたのですが、 これは無愛想だと思われているというよりも、「馬鹿にした態度を取っている」と思われているように感じられる状況です。 周囲がそんな目でEさんを見るのは、Eさんが日ごろから頭脳明晰な様子を見せているための先入観もあるかと思いますが、 能力がある人というのは、時に優秀とは思えない人の能力を過小評価してしまう傾向にあります。
ですが職場において、その”能力”の優劣が スピードの差であるのと同様、世の中の様々な分野において”優れた能力” というのは、 悟る速さ、見抜く速さ、察知する速さ、行動を起こす速さであり、それは時間を掛ければ誰もが到達するポイントであったりします。 したがって、Eさんが「こんな事も分からない」と思っていることを Eさんほど頭脳明晰ではないと思われる人々が一生分からないという訳ではありません。 時間をかけて理解するだけなのです。
そのように時間を掛けて物ごとを学んだり、プロセスする人というのは、 そのスローなプロセスで様々な思いや考えを抱いていて、口には出さなくても 周囲の状況に気を配って、人を良く見ているものなのです。 ですからEさんの職場の人達は、Eさんが考えていらっしゃるよりずっとEさんのことをよく見て、その人となりを理解していると考えた方が妥当かと思います。

スタッフに仕事を教えるということについて言えば、世の中の人はお金を払っても物事を習うもので、 きちんと物事を教えてくれる人に対しては、習う側は感謝だけでなく、尊敬の念を覚えるものです。 私は人に仕事を教えるというのは、桃太郎が黍団子を与えるのと同等と考えていて、自分が仕事を教えた人というのは やがて自分を助けてくれて、自分の戦力になってくれるものと解釈していますし、そうあるべきなのです。
Eさんが仕事を教えてあげているのに怖がられたり、ビクビクされるような存在になってしまうというのは、Eさんが教えるという行為を人のためだと思ってやっている証拠で、 自分のためだと思ってやっていないからです。 スタッフに仕事を教えるということは、自分がもっと高いレベルの仕事に専念したり、 次のステップに進むための時間的&体力的余裕を得るため、そして職場に味方を増やすためにも必要なことであって、 自分のために必要な先行投資だと思って取り組むべきことなのです。

ですから今後は、Eさんが覚えが悪い、見込みが無いと思った人でも、忍耐強く、出来るだけ親切に まずは1人でもEさんが満足するレベルの仕事がこなせるように 育てることをお勧めします。そうすれば、Eさんが自分ほど覚えが早くない人の学習ペースを把握することができますので、 その後のスタッフ・トレーニングに大きく役立ちますし、何より 「きちんと教えれば応えてくれる」という確信を持つことができます。 この確信は人に物を教える際に最も大切なものです。 「教えたってどうせ覚えない」、「何時出来るようになるか分かったものじゃない」などと思って教えているうちは、教わる側は何も習得することはありません。

英語には「Gift is curse (ギフト・イズ・カース)」という言葉があって、これは直訳すれば「授かった才能が逆に呪いになる」という意味です。 Eさんの場合、確かに現時点ではせっかくの頭脳明晰さというギフトが生かされるよりも、カースになってご自身に降りかかってきているように思われます。 でもカースというのはリバース出来るもので、そのためには人に対してポジティブな優しい視点を持つことがとても大切です。
そんなポジティブで優しい視点を持つためには、人には誰にでもそれぞれ異なる能力が備わっていること、 そしてそれぞれに能力の発揮し方があると考えて、 自分の周囲の全ての人から学ぼうという謙虚な学習意欲を持つべきだと思います。
そうすることによって、Eさんが今まで能力的に評価してこなかった人の中に 自分に欠けている物を見出すかもしれませんし、 周囲に対して これまで抱いてこなかったレスペクトを感じるようになると思います。
Eさんがそう考えるようになれば、それが自然に言葉や態度になって現れますので、これまでEさんに見下されていたような思いをしていた人達が、 Eさんを見直すようになるはずですし、そうなることによってEさんに備わる実力が今一度見直されるはずです。

ホリデイ・シーズンというのは、そんな自分の周囲の人々への感謝や心遣いを見せるのに最適のシーズンですので、 カードや小さなギフトなどで Eさんの新しい視点と周囲への思いをアピールすることによって 2017年がきっと素晴らしい1年になることと思います。

Yoko Akiyama

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執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。 丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。

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