Jan. 1 〜 Jan. 7



”Every Year Resolution ”



年明けのニューヨークは引き続き記録破りの暖冬で、ことに今週末は気温が20度を超えて 半袖で街を歩く人々が 目立っていたほどの温かさであったけれど、 それと同時に民間ヒーローの活躍で 心温まるニュースが続いていたのが ニューヨーク。
まず最初のヒーローは1月2日、地下鉄の線路に転落した男性を助けたウェスリー・オートリー(50歳)。 2人の娘と共に地下鉄を待っていた彼の前で、気分が悪くなって倒れたのが20歳の学生キャメロン・ホロピーター。 ウェスリーと2人の女性が彼に助けを差し伸べて、一度は気分を持ち直したように見えたキャメロン・ホロピーターであるけれど、 そのままフラフラと歩いてホームから転落してしまい、その時には既にホームからダウンタウン行きのNo.1 トレインの ヘッドライトが見えていたという。 ウェスリーは咄嗟に自分も線路に降り、レールの間に転落したキャメロンの上から被さりながら、自らも身を沈め 2人の上を5車両が通り過ぎたものの、青あざとかすりキズ程度で2人は無事。その後 地下鉄の電源が落とされ、 駅員によって2人は保護されたけれど、車両とウェスリーの距離は僅か数センチだったそうで、 文字通り 命がけの救出劇だったのである。
以来 彼はニューヨークのヒーローとしてニューヨーク・ポスト紙の第一面に写真入りで報じられ、ニュースやトークショーに 引っ張りだこになった他、ブルームバーグ市長からは一般市民に対する最高の栄誉であるブロンズ・メダルが、 そしてニューヨークの地下鉄を運営するMTAからは、向こう1年間分のアンリミテッドのメトロ・カードが贈られ、 さらに家族全員がディズニー・ワールドに招待された他、ドナルド・トランプ氏が彼に1万ドル(約119万円)をプレゼントするという サプライズ・ギフトを授かることになったのだった。 ウェスリーは、トランプ氏からの1万ドルのうち5千ドルは娘達の学費に回し、残った5千ドルは、フィルム・ステューデントである キャメロンの学費としてプレゼントすると語っている。

そして2つ目のヒーロー・ストーリーはその2日後、1月4日木曜のこと。ブロンクスを歩いていた フリオ・ゴンザレス(43歳)とペドロ・ネヴァレス(40歳)は通りの反対側のビルの4階の非常用外階段から 3歳になるティモシー・アッドが落ちそうになっているのを発見。 古くからの友人同士であった2人はビルに駆け寄り、始めはビルに入って子供が落ちそうになっていることを 親に知らせようとしたというけれど、入り口に鍵が掛かっていたのでこれを断念。 そうするうちに、もう打つ手が無いと判断した2人は、腕を広げて落下してきた子供を受け止め、 彼の幼い命を救ったのだった。 ティモシーは約21キロほどの体重であったというけれど、 落ちてきた彼を胸と腕で受け止めたペドロ・ネヴァレスにはティモシーが「その3倍くらいの重さに感じられた」と語っており、、 彼は受け止めた衝撃で倒れたものの、子供はその後フリオ・ゴンザレスが抱き止めたので 全くの無傷。
翌日、金曜のニューヨーク・タイムズ紙は 「2 More City Heros」 として彼らのことを大きく報じたのだった。

ニューヨークに住んでいない人から見ると意外に思えるかもしれないけれど、ニューヨーカーというのは本当に見ず知らずの人を 積極的に助ける人々で、時に自分の命を省みない リスクを冒してまで人を救おうとするものである。
でもこうした救出劇が起こる背景には、やはり一般市民の間に兵役経験者や、消防のボランティアを行っている人々が多いことが指摘されており、 人を救出するトレーニングを受けたことがある人間は、瞬時に救出の機転を利かせられるのだという。 ちなみに先述のウェスリー・オートリーも元海軍ベテランで、今でこそ 泥沼化したイラク戦争のせいで兵役志願者が減っているものの、 アメリカでは大学の学費を得るために兵役を志願する若者が非常に多いのが実情。 また消防のボランティアは、少年時代の消防士になる夢が叶えられると 志願する人々が多いとも言われ、 またこれによって税金が一部免除になるのも魅力になっているようである。

さて 年明けにアメリカ人が話題にするものと言えば 毎年このコラムに書いている通り ”New Year Resolution / ニュー・イヤー・レゾルーション (直訳すれば「新年の決心」、 要するに「 新年の目標」)” である。
そしてアメリカ人が 毎年のように 「ニュー・イヤー・レゾルーション」 として挙げるのは、「減らすこと」、「増やすこと」、「止めること」、「始めること」である。
「減らす」ものの対象は体重、「増やす」ものの対象はお金や財産。 これを逆に行うのは いとも簡単であるけれど 「体重を減らし、お金を増やす」というのは 非常に難しい訳で、だからこそ毎年のように アメリカ人のニュー・イヤー・レゾルーションとして これらの目標が登場する訳である。

これを受けて毎年、年明けの新聞、雑誌にはお金の節約法やダイエットについての記事が増えてくるけれど、 こうした記事の共通点は、「出費」 や「食べ物のカロリー」 という消費しなければならないものを把握して、 それらに対処する という切り口が多いこと。
例えば、ダイエットの記事を見てみると、スターバックのホイップ・クリームをのせたグランデ・サイズのモカ・フラッパチーノが420カロリー、 ブルーベリー・マフィンンが465カロリー、ビッグマックが560カロリー、ピザ1 スライスが468カロリー、 マティーニ1杯が274カロリーといった表示と共に、これらのカロリーを消費するのに必要な運動量がリストされているけれど、 体重やそのスピードで違いはあるものの、平均的に1分間に燃やせるカロリーは 徒歩が3.9カロリー、ジョギングで9.3カロリー。 すなわちビッグマックを食べたら、その分のカロリーを燃やすのに144分歩くか、60分ジョギングをしなければならないことになるという。
でも、モカ・フラッパチーノを毎日飲んでいた人がこれをスキン・ミルクのカフェ・ラテのスモール・サイズ+低カロリー・シュガー変えただけで、 他にダイエットやエクササイズをしなくても1ヶ月で3キロの体重が減らせることになるとのこと。
またサラダに掛けるクリーム・ドレッシングをヴィネガー・ベースのノンファット・ドレッシングに変えるだけで、カロリー的には 10分ジョギングをするのと同じくらいの違いが出てくるし、マティーニをワイン(1杯 97カロリー)に変えただけで、 徒歩45分のカロリーの違いが出てくることになるという。 すなわち、食べ物、飲み物のチョイスを少し変えるだけで、ダイエットをしているのと同様の効果が得られるという訳である。

これに対して、お金に関する記事では 毎日飲んでいるスターバックスのカフェ・ラテを普通のコーヒーに変えただけで1年で730ドルの節約になること、 クレジット・カードの負債を5000ドル支払うだけで、利息分が1年で約300ドル節約できること、 週3回の外食を1回に減らすだけで、1人5000ドル、カップルでは1万ドル(約118万円)が節約出来ることなどが記載されている。 さらに家の中にある必要の無いものは、サルべーション・アーミーに寄付すればその分、所得税が免除になるなど、 収入が増えなくても、支出を減らすことによって貯金を増やす提案がなされていたりする。

その一方で、アメリカ人がニュー・イヤー・レゾルーションで「止めること」の筆頭に挙げているのはやはり喫煙。
ティーンエイジャーに関しては10年前に比べて52%も喫煙者が減っているとのことで、アメリカでは吸い始める人口は 確実に減ってきているのは事実。 また1日1箱吸っていたタバコを止めれば 1年で約2737ドルが節約出来るというから、 禁煙は健康的にも経済的にも実りあるものである。
これに対してアメリカ人がニュー・イヤー・レゾルーションで「始めるもの」として挙げるのが、毎年のごとくエクササイズ。 なので新年からジムのメンバーになるニューヨーカーは毎年多いけれど、3日坊主、3ヶ月坊主にならず、 ジムに通い続けるニューヨーカーは全体の17.8%、5.6人に1人の割合である。 でも平均的なニューヨーカーは1日に2〜6キロを歩いているというから、その点は健康的と言えるもの。

ちなみにニューヨーカーの死亡原因の第1位は女性も男性も心臓病、第2位がガンで、ことに肺ガンの死亡率が高いとのこと。 そして第3位はインフルエンザが原因や引き金となる死亡となっている。
昨今それほど騒がれなくなったAIDSについては、2004年の時点で3653人が新たにHIVポジティブ(陽性)と診断されており、 その内訳はやはりホモ・セクシャルの感染が多いだけに男性が2502人、女性が1151人となっているという。 同じ2004年のデータで、ニューヨークーには10人に1人の割合でAIDSを始めとする何らかの性病感染者が居ると言われていたから、 今もニューヨークで プロテクション無しのワンナイト・スタンド(一夜の火遊び)をしようと思ったら それは命がけの行為である。

このように ニュー・イヤー・レゾルーションでアメリカ人が目標とするものは、往々にしてWelth (ウェルス=裕福さ)と Health (ヘルス=健康) であるけれど、毎年のように これらを目指すお国柄というのは 前向きで好感が持てるというのが私の感想である。
ところで私のニューイヤー・レゾルーションはと言えば、先ず「よく眠ること」。 そしてフランス語とイタリア語の勉強をすること。 睡眠については、2005年の秋から8時間睡眠をトライしたものの、どうしても上手く行かず 昨年は5〜6時間が平均的な睡眠時間になっていたので、これを7時間に増やすのが今年の目標である。
でもフランス語とイタリア語を勉強しようと思うと、どうしても夜、それも睡眠時間を削って勉強することになるので、 この2つの目標を両立させることは難しそうな気配である。



Catch of the Week No.5 Dec. : 12月 第5週


Catch of the Week No.4 Dec. : 12月 第4週


Catch of the Week No.3 Dec. : 12月 第3週


Catch of the Week No.2 Dec. : 12月 第2週






執筆者プロフィール

秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。
丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、1989年渡米。以来、マンハッタン在住。
FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。
その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.設立。以来、同社代表を務める。