Dec. 31 2007 〜 Jan. 6 2008




”マスター・クレンズ・ダイエット と スロー・イーティング”



今週は火曜日がニューイヤーズ・デイで、この日ばかりはアメリカも休日であったけれど、 日本を含むアジア諸国に比べると 欧米のニューイヤーというものは本当に事務的で、 年が明けたことをお祝いするというよりは、1年の初めの日という程度の意味合いしかなかったりする。
なので多くの企業、及び銀行や証券取引所などが1月2日から平常営業となっていたけれど、 その翌日1月3日にアイオワで行われたのが、大統領選挙のために民主、共和の両党がそれぞれの候補者を選び出す 党員集会で、民主党は黒人初の大統領を目指すバラック・オバマ上院議員 が2位のジョン・エドワード候補に大差をつけて勝利を収めたのは日本でも報じられている通り。 予想外に苦戦したのがブッシュ大統領でさえ 「民主党の大統領候補に選ばれるだろう」と予測していたヒラリー・クリントン上院議員だったけれど、 よく日本から来た友達に訊かれるのが、「黒人や女性が大統領になるのをアメリカ人はどう思っているか?」ということ。
その答えは地域によって異なるもので、アメリカの中でもコンサバな南部、中西部といった共和党支持者が多い州では、 マイノリティに対して根深い偏見があるのは周知の事実である。でも、そういった人々は そもそも共和党の候補者(白人男性)にしか投票しないものである。 でも 基本的に この国では 候補者が黒人だから、女性だから という理由で支持しないことは、人種差別、性差別に当たる訳で、 アメリカ人は 内心はどうであれ、こういった部分ではあまり本音を言わない国民なのである。
では民主党支持層や無党派のリベラル層はマイノリティ候補をどう捉えているかといえば、 コメディアンで 3年前にオスカーのホストも務めたクリス・ロックのコメントを借りれば、「バカ(ブッシュ大統領)でも 米国大統領が務まるんだから、女性だろうが、黒人だろうが関係ない」という見解が 少なくとも表向きは多かったりする。
その ”バカ”な大統領のせいで、アメリカが国力を落としたことは 多くのアメリカ国民が実感しているだけに、 民主党候補は「Change / 変革」を強調し、共和党候補もブッシュ路線とは距離を置いた政策を打ち出しているのが 今回の大統領選挙なのである。

さて、共和党では元アーカンソー州知事のマーク・ハッカビー氏が予想外の勝利を収めたことが注目されていたけれど、 私が好んで見ているHBO( 「セックス・アンド・ザ・シティ 」や「ソプラノ」を製作放映しているケーブル・ネットワーク )の ポリティカル(政治)・トークショーでは、2007年秋の時点で彼を大統領選のダークホースとしてゲストに迎えていたのだった。 私はその番組でのインタビューで初めてマーク・ハッカビーの存在を知ったけれど、彼はユーモアのセンスに長けていた上に、 リベラル派にもアピールする視点を持っていて、「共和党から こんなに頭の柔らかい候補者が出るなんて・・・」と思って 見ていたのを覚えている。
彼は筋トレで体重を50キロ落としたり、バンドでベースを弾いていたりと、ユニークな経歴やパフォーマンスで資金不足を補っている 候補者として知られているけれど、トークショーのインタビューを見ている限りにおいては バラック・オバマ、ジョン・エドワーズ よりはずっと 喋りが面白いし、人間的にも興味深いというのが私の個人的な意見である。 そもそもアメリカの大統領はユーモアのセンスが無ければ務まらない職業。ブッシュ大統領にしても、 その政治手腕は 過去7年を見ての通りであるけれど、ユーモアのセンスだけは持ち合わせていたのである。 その意味で、私はハッカビー候補はかなり有力な存在になりうると見ているのである。

さて、アメリカでは 毎年のように 人々がホリデイ・シーズンに身体に悪い 高カロリー、高脂肪、高塩分の食事を、 アルコールで流し込み、デザートを沢山食べて 体重を増やし、新年になった途端にエクササイズを始めて、 食生活を改めるというルーティーンを繰り返しており、毎年このコラムで書いている通り、1月はジムが非常に混み合うのである。
そして年明けのペーパー・メディアのダイエット特集、エクササイズ特集のヘッドライン(見出し)によく用いられるのが 「New Year, New You」というもの。 実際には年が明けただけで 新しい自分になれる筈は無いけれど、それでも年が変わるというのは 新しいことを始めたり、それまでの習慣を改めるのには良い時期であるのは確かなのである。
こうして多くのアメリカ人は年明け早々、様々なダイエットに取り組んだり、慣れないジム通いなどを始める訳だけれど、 今年の場合、非常に多くのメディアが取り上げているのがダイエットと同時に「Detox / デトックス」、すなわち身体の内側からの クレンジングである。
このデトックス・ダイエットの代名詞のような存在になりつつあるのが、アンジェリーナ・ジョリーや映画「ドリームガールズ」に出演した際の ビヨンセが行ったと言われるマスター・クレンズ・ダイエットである。
これは、2007年に最もグーグルで検索されたと同時に、最も多くの人々が取り組んでは挫折したと言われるダイエット。 ビヨンセは、映画「ドリームガールズ」の中で 細身で知られるシンガー、ダイアナ・ロスをモデルにしたキャラクターを 演じるために、マスター・クレンズ・ダイエットで体重を10キロ落としたというけれど、 このダイエットが如何に辛いものであったかは 本人も認めるコメントをしているほどである。

ではマスター・クレンズ・ダイエットとはどのようなものか?と言えば、 スプリング・ウォーターにレモン(もしくはライム)の絞り汁、メープル・シロップ、カイエンペッパーを混ぜた、レモネードを作り それだけを最低10日間 飲み続けるというもの。最も好ましいと言われるのはこれを20日間続けることだいう。
これは本来、デトックスを目的としたものであるけれど、何も食べずにレモネードだけ飲み続ければ体重が落ちるのは当然のこと。 でもダイエットの最中には、まず食欲との戦いがあり、次には身体のだるさ、疲れを感じ、 その後 身体の痛みや吐き気などの症状が出る場合があるそうで、精神的に落ち込む人も少なくないという。 さらに、日頃からコーラなどのソフト・ドリンクやコーヒーなど、カフェインの摂取量が多い人は 頭痛を味わうケースが非常に多いという。
この苦しいステージを超えると、だんだんと身体が軽くなり、身体の浄化が味わえるようになってきて、 精神的にもポジティブになっていくというけれど、多くの脱落者が出ることからも察しが付く通り、 ハリウッド・スター並みのギャラでも支払われない限りは この苦しさを乗り切るのは難しいようである。
それを乗り切ったとしても、その後にも難関は控えていて、それはレモネードを飲むのを止めて、 普通の食事に戻す段階。 どんなに加減して 徐々に食事を増やそうとしても、一度目覚めた 猛然と湧き上がる食欲を 抑えるのは、液体を飲んで空腹と戦うよりも 難しく、 体重を激減させた人でも この時点で体重を戻してしまう、もしくは以前よりも体重が増えてしまうケースは非常に多いという。
このことは私も 大学時代に10日間断食をした際や、ニューヨークに来てからデトックス・ダイエットをした時の経験で 身にしみて理解できるけれど、デトックスだけが目的であれば「少しくらい体重が増えるのは仕方が無い」と諦める人もいるようである。

でも、このマスター・クレンズ・ダイエットは、期間中 たんぱく質、ミネラル、ヴィタミンといった身体に必要な栄養分を 摂取できないことから、多くの医療関係者やダイエット・ドクターの間では 批判が集中しているもの。中には デトックスはプラシーボー効果、すなわち身体に良いことをしたという精神的なポジティブ効果しか もたらさない というドクターも居るし、デトックスでは 魚に含まれる水銀など、身体に蓄積される毒は除去出来ないと 指摘する声も聞かれている。
でもこのマスター・クレンズ・ダイエットがあまりに大きなセンセーションとなったために、 同様のデトックスのためのリキッド・ダイエットは 今では 数多く登場しており、 3日で終わるものから、10日〜2週間というものまで期間も様々。 こうした新たに登場したデトックス・ドリンクのダイエットは、身体に必要なカロリーや栄養分をドリンクで補うタイプが殆どで、 このためマスター・クレンズ・ダイエットよりは 楽に行えるという。
でもお値段は、本を買ってレモネードを作るだけのマスター・クレンズ・ダイエットよりもずっと高額で、 1日分が65ドル〜150ドルまでという価格帯。 もちろんデトックスをスパで泊り掛けで行った場合、ろくなものも食べさせてもらえないのに 1日500ドル以上を支払うのは、 ごくごく一般的である。

では、一体どういった人々がデトックスを行うべきかと言えば、主に きちんとした食生活をしていない人で、 具体的には、糖分、塩分、脂肪、カフェイン、アルコールを取り過ぎている反面、繊維質、ビタミン、たんぱく質などをきちんと摂取しない バランスの悪い食事をしている人、ファスト・フードを週に2回以上食べる人、便秘をしがちな人、喫煙など不健康な習慣を持つ人、 疲れや身体のだるさを常に感じる人 などであるという。
どうしてデトックス・ダイエットが ドリンクによるリキッド・ダイエットであるかというと、 これは消化器官の負担を最低限にするためで、デトックスの最大の目的は 日頃 酷使している 消化器官に休息を 与えることによって、本来の機能を取り戻すこと、効率良く必要な栄養分を摂取するため と説明されている。
でもアメリカ人というのは時に日本人が考えられないような食生活をしている場合があるのも事実で、 年末に出掛けたパーティーでサラダが出てきた際に、その場に居た若くてキレイなブロンド嬢が、 「野菜を食べるなんて2週間ぶり・・・」と言っていたので、一同ギョッとしてしまったのだった。 彼女にとってのビタミン源は、ジュースバーのフルーツ・シェークで これは普通の人が飲み続けると太るくらいの高カロリーのもの。 繊維質はシリアルをボリボリとスナック代わり食べることで補っているのだそうで、朝食はコーヒーだけ。 前の日のディナーは、「チョコレート・ケーキとポテトチップだった」 とケロッとした顔で答えていたけれど、 北欧系のDNAがたっぷり入った26歳とあって、肌はその食生活を感じさせないほどに きめが細かくて 羨ましくなってしまった。

その一方で、年末には 以前より明らかにスリムになった女友達とも久々にパーティーで再会したけれど、 彼女が成功したダイエットというのが シンプル極まりなくて、ポーションを小さめにして、それを時間を掛けて食べるというもの。
人間の脳が胃の満足感を認識するまでには20分が掛かるそうなので、1人で簡単にランチを済ませる場合も 最低30分はかけるようにしているという。
友人によれば、例えば2切れのサンドウィッチがあったら、そのうちの1切れをあっという間に食べ終わっても良いけれど、 もう1切れを食べるまでに20分〜30分開けるべきなのがこのダイエットだそうで、 水やカフェインの入っていないお茶はたっぷり飲むように心掛け、 お腹が空いた時はノンシュガー・キャンディーやガムで空腹感を紛らしているという。 カロリー計算は特に必要ではないものの、従来食べていた量の70〜75%が目安で、朝食、ランチ、ディナー、ディナー後のスナックという 4回の食事を摂取し、低脂肪、糖分と塩分も抑えるのがルールだそう。 食事に時間を掛ける方法としては、TVを見ていても良いし、雑誌や新聞を読みながら食事をしても、家族や友人と話をしながら 食事をしてもOKであるけれど、仕事や家事をしながら食べるのはダメであるという。 ちなみに彼女はこの ”スロー・イーティング” を4ヶ月続けて、何の苦も無く 5キロを落としたという。
これを聞いて、その場に居た友人達は 興味津々で「本当にそれだけで痩せるの?」と 、すっかりやる気になっていたけれど、 ふと自分のことを考えてみると、朝食こそは新聞を読む時間があるからゆっくり取るけれど、 ゆっくりしているのはコーヒーを飲む時間で、食べるのはめっぽう早く終わってしまう。 平日のランチは座って食べたことなど思い出せないほどにあという間。 夕食は、外食をするときはスローにならざるを得ないけれど、自宅で済ませる時は やはり あっという間に食べ終わってしまうことが多いのである。
友人の話では、私のように早食いの人は、先述のサンドウィッチのように食事を分割して間を開けることが 薦められているけれど、このスロー・イーティングは試していない人が想像するほど 簡単には出来ないような気がするのが 私の意見である。
とは言え、自宅で食事をしている時は 自分でも時々 「こんなに急いで食べると消化に悪いのでは?」と反省してしまうほど 早く食べ終わってしまうので、ダイエット目的だけでなく、健康のためにもトライしてみようと思い始めているのがこのスロー・イーティングである。

私の考えでは、マスター・クレンズ・ダイエットのような 苦しい思いをして 10日で7〜9キロ 痩せるような 瞬間芸のようなダイエットは、ハリウッド・スターのように短期間の役作りのためのボディが必要な場合に行うべきもの。
そもそも人間の体型というのは、メタボリズム(新陳代謝)が低下してくる 20代後半以降は、 その時々のライフスタイルを如実に反映するものであるから、 フィットしたボディを手に入れて持続するには、それに見合ったライフスタイルを実現しなければならないのである。

最後に、CUBE New York の読者の方々やショッピングのお客様より 多数の新年のご挨拶を頂戴いたしましたことを、 ここにお礼申し上げます。皆様にとって2008年が 良い思い出が沢山残る 素晴らしい年になりますよう お祈りしています。





Catch of the Week No. 5 Dec. : 12 月 第 5 週


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Catch of the Week No. 3 Dec. : 12 月 第 3 週


Catch of the Week No. 2 Dec. : 12 月 第 2 週






執筆者プロフィール

秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。
丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、1989年渡米。以来、マンハッタン在住。
FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。
その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.設立。以来、同社代表を務める。