Dec. 28 2009 〜 Jan. 3 2010




” America's Top 10 New Year's Resolutions ”


今年もタイムズ・スクエアのカウントダウンで新年を迎えたニューヨークであるけれど、 2010年のボール・ドロップのために新たにクリエイトされたクリスタル・ボール(写真右)は、 昨年 使用されていたボールの2倍のお値段(約2億円)に加えて、2倍のサイズ。
2668枚のウォーターフォード・クリスタルのトライアングル・パネルを全面にあしらい、3万2256個のフィリップス・ルクセオン・レベル・LEDバルブを その内側に擁したもので、ボールの表面には 1600万色を用いた10億種類もの模様を描ける上に、 1時間の電力消費は 昨年のボールより20%少ないという エコ・コンシャス・ヴァージョンに仕上げられていたのだった。

私は長年 ニューヨークに住んでいるけれど、今年のカウントダウンを友人宅のパーティーで眺めている時に、そこに居合せたゲストから教わって 初めて知ったのが タイムズ・スクエアが何故 ”タイムズ・スクエア ”と呼ばれるようになったか?の由来。
タイムズ・スクエアの タイムズとは ニューヨーク・タイムズ紙のことで、1904年にニューヨーク・タイムズ紙が ロングエーカー・スクエアと呼ばれていた 当時ニューヨークで2番目に高いビルに そのオフィスを移した際、タイムズ紙のオーナーがニューヨーク市を説得して、同社ビルのエリアを ”タイムズ・スクエア” と改名させたのだという。 そして、この年の年末から タイムズ紙のオーナーのアイデアで ニューイヤーズ・イブのセレブレーションがタイムズ・スクエアで行なわれるようになったけれど、 20万人が足を運ぶ大イベントとなった当初のセレブレーションは 花火とストリート・フェアで、ボール・ドロップは行なわれていなかったという。

ボール・ドロップがタイムズ・スクエアで初めて行なわれたのは1907年のことで、 この年は 同エリアでの花火が禁止されていたことから、何か新年を祝うセレモニアルなイベントが必要だと考えたタイムズ紙のオーナーが、 発案させたのが、電球をあしらった直径1.5mのボールが鉄柱をつたって降りてくるという現在のスタイルのボール・ドロップ。
でもボール・ドロップというコンセプト自体は1800年代から行われていたもので、ニューイヤーズ・イヴのタイムズ・スクエアがオリジナルという訳ではないのだった。

1914年にニューヨーク・タイムズ紙が別ロケーションにオフィスを移した後も、 タイムズ・スクエアというネーミングと、ニューイヤーズ・イヴのセレブレーションはそのまま引き継がれて今日に至ったとのこと。
カウントダウンは1942年、43年の第二次大戦中は、戦争時のライティング制限のため 行なわれておらず、 また1981年〜88年までは、当時の「アイ・ラブ・ニューヨーク」キャンペーンとタイアップして、 ニューヨークのニックネームである ” ビッグ・アップル ” にちなんだ リンゴをかたどったボール・デザインになっていたのだった。
今年のボールは、昨年のボール・ドロップ100周年の際にデザインされたものをアップスケール化させたもので、直径3.7m、重さは5,386キロ。 昨年ヴァージョンのボールの重さは550キロであったというから、大きさは2倍でも重さは10倍になっているのだった。


2010年はあいにくの小雨の中での カウントダウンであったけれど、私が皮肉無しで アメリカ人が偉いと思う部分は、 現実的な視点を持つ一方で、年が変わったというだけで楽観的な希望を抱けるメンタリティを備えている点。
APが行なった世論調査によれば、アメリカ人の3分の2近くは収入のレベルは2009年と同等、もしくはそれより悪くなるだろうと予想しているにも関わらず、 82%もの人々が 「2010年に明るい展望を抱いている」と回答しているのだった。
そのアメリカも高齢化が進んでいて、1990年には孫が居るグランド・ペアレント世代が4700万人だったのに対して、2010年にはその数字が7000万人にアップ。
また、リセッションがスタートして以来 続いている失業率が現在のレベルを持続した場合、2010年半ばには 女性の就業人口が史上初めて男性を上回る計算になるという。 この要因は女性の方が 教育、ヘルスケアといった 失業問題の煽りを受けない仕事に従事しているため というけれど、 2009年はアメリカ史上初めて 女子大学卒業者数が男子を上回った年でもあり、女性が社会でマイノリティと見なされる時代の終焉を感じさせる現象となっていたりする。
マイノリティと言えば、人種別にアメリカで最も著しく人口を増やしているのがヒスパニック。そのヒスパニックが白人層を上回ってマジョリティになるのは、 今から50年後の2060年と予測されているのだった。


ところで、年が明けるとアメリカ人が 毎年懲りずに掲げるのが このコラムで既に何度も書いている ”ニューイヤー・レゾルーション”、日本語でいう ”新年の目標 ” である。
アメリカでは毎年、新年の目標というと 時代に関係なくそのトップ2が 「体重を落とす」、「タバコを止める」であったけれど、 昨年2009年の年明けは、さすがにリセッションの最悪期とあって 「借金の返済 」 がNo.1。そしてトップ10 は以下のようになっていたのだった。


これに対して2010年に、アメリカ人が抱いている ニューイヤー・レゾルーション のトップ10は以下の通り。


トップ5が全てお金と健康絡みになっているけれど、 2009年は リセッションの影響で アメリカ全体でも、ここニューヨークでも、ヘルシー・モードになる人と、 不健康モードになってしまう人が 両極端に分かれたことが伝えられているのだった。
ヘルシー・モードになる人は、交通機関の使用を止めて、自転車や徒歩通勤に切り替え、自宅からヘルシーなランチを持参するようになり、 夜も外食をするよりもジムに出掛けるなどして、お金の節約と健康志向を兼ねる ライフスタイルになっているのだった。 その結果、ニューヨークでは自転車通勤者が2009年中に激増しており、自転車ショップは リセッションの中でも 好調なビジネスが伝えられていたほど。
逆に、不健康モードになってしまう人は ストレスから 止めていたタバコを再び吸い始める、もしくはタバコの量が増えると同時に、 アルコールの量も増えており、エクササイズをするだけの気力やエネルギーが無い一方で、お金を節約するために ファスト・フードなどの高カロリー、高脂肪、高塩分の安価な食事で体重を増やしてしまうパターンに陥っており、 こうした人々は夜も眠れないため、処方箋、もしくは非処方箋の入眠剤を摂取する傾向にあることが伝えられているのだった。

事実、リセッションに入ってからというもの 喫煙者が再び増えていることは ニューヨークのストリートを歩いているだけで感じること。
それほど 外でタバコをふかしている人、歩きながらタバコを吸っている人が増えているのが昨今のニューヨークで、 今日のニューヨーク・タイムズ紙のスタイル・セクションでも、ニューヨークのナイトクラブで 本来違法であるはずの喫煙が、 かなり堂々と カムバックを遂げていることが記事になっていたのだった。
とは言っても、今やニューヨークではタバコ1箱に10ドル以上を支払わなければならないご時世。 それだけに、私の友人などは 「タバコは自分では買わずに人から貰う」 というのをニューイヤーズ・レゾルーションにして、 お金の節約と 喫煙量の軽減を目指しているのだった。

さて、今年再びニューイヤーズ・レゾルーションのNo.1に返り咲いた 「体重を落とす」という目標は、 今やアメリカ社会にとって非常に深刻な問題。
ナショナル・ヘルス・アンド・ニュートリション・エグザミネーションの調査結果によれば、アメリカでは1980年〜2004年の15年間に 成人の極度な肥満が倍増しており、この原因として説明されているのが ポーション・サイズが大きくなっていること、 フードの価格、特に肥満を促すファスト・フードの価格が安く、低所得者の経済力でも それらを過食することが出来てしまうこと、 さらに 現代人のライフスタイルから身体を動かす機会が減っていること などが指摘されているのだった。
後進国とは異なり、貧困層ほど 肥満人口が多いことが指摘されて 久しいアメリカであるけれど、 昨今の深刻なリセッションのせいで 貧困層の肥満には さらに拍車が掛かったことが伝えられており、 裕福な層が野菜や魚を中心とした 健康的な食事と、スポーツやエクササイズの機会に恵まれる一方で、 貧困層は、食費を削るために 高カロリー、高脂肪のファスト・フードやスーパーで売られているようなスナック類を主食にして、益々体重を増やしているという。

最新のデータでは、アメリカの成人人口のうち、オーバー・ウェイトと見なされる人々は何と67%。 このうちの34%が極度の肥満と見なされているのだった。
また肥満は未成年者にとっても深刻な問題とありつつあって、12〜19歳の肥満人口も18%に達していることが 明らかになっているのだった。
男性と女性を比較すると、肥満が多いのは女性で、人種別では黒人女性、メキシコ人女性が最も 肥満の割合が高いと指摘されているのだった。 年齢層別に最も肥満が多いのは男女とも40〜59歳。ちょうどメタボリズムが下がっているのに、 食欲が衰えない年齢層と一致しているのだった。
肥満は糖尿病、心臓病、高血圧の原因と言われているけれど、アメリカでは健康保険改正案が施行された場合、 これまで保険に加入していなかった低所得者層の肥満とそれに伴う健康問題が、 一般国民の保険料の値上がりという形で跳ね返ってくる訳で、軽視できない問題になりつつあるのだった。


ところで、私自身が毎年のようにニューイヤーズ・レゾルーションに掲げては、全く実行出来ないことの1つが、 「今年こそよく眠る」というもの。
私は、学生時代から睡眠というものにあまり重きを置いたことが無くて、「眠るという行為は1日の残った時間にする事」 とさえ考えてきたのだった。でも眠りの重要さに目覚めてからというもの、1日8時間睡眠を目指したけれど、 これが何よりも難しいのである。
ところが 最近になって眠りの専門家達がこぞって掲げ始めたのが、「人間に必要な睡眠時間には個人差があり、誰もが1日7〜8時間眠る必要は無い」という セオリー。これによれば、8時間眠っても深い眠りを得られない人も居れば、それを効率良く5〜6時間で得られる人、時に4時間でも十分な人さえ居るのだそうで、 後者の方が、8時間掛けて浅い眠りしか得られない人より 気力や集中力、運動能力に優れているという。
なので、私は今年から「よく眠る」という目標を「効率良く眠る」に変更することにしたのだった。

眠りでも仕事でも、何でも効率良くこなせれば、ストレスも少ないし、時間を有効に使えることになる訳だけれど、 眠りの効率を上げるための確実、かつ唯一の方法は、日中の運動量を増やすこと。
エクササイズでも、徒歩通勤でも身体を動かしている人は、たとえストレスや心配事があっても、比較的問題なく 眠りにつくことが出来るというけれど、 身体が疲労していなくて、精神が疲れているという場合、眠ろうと思っても 頭や心が心配事やストレスに思いを巡らせたり、 眠れない焦りを感じるなどして、効率の良い眠りが得られないことが指摘されているのだった。


ところで、アメリカ人が新年の目標を掲げるのと同様の行為は、メキシコを始めとするラテン・アメリカではユニークな形で行われているのだった。
それは新しい下着を身につけることだそうで、その下着のカラーが新年の目標や願い事を象徴するのだという。 従来であれば、メキシコで年末に最も売れた下着のカラーは、” 愛情・恋愛 ” を象徴するレッド。 ところが、今年に限っては イエローが飛ぶように売れて、売れ切れ状態が伝えられているのだった。
そのイエローが象徴するのは ”お金・財産”。メキシコの地元紙には、「今の世の中では、 人々は愛情よりお金を必要としているんだ」というショップのオーナーの コメントが掲載されていたというけれど、 愛情のためならお金なんてかなぐり捨てていたような ラテン・アメリカの人々でさえ 今や「愛情よりお金」というコンセプトに走る様子は 私にとっては非常にショッキングに思えたのだった。


最後に、CUBE New York の読者の方々やショッピングのお客様より 多数の新年のご挨拶を頂戴いたしましたことを、ここにお礼申し上げます。 皆様にとって2010年が 充実した 素晴らしい年になりますよう お祈りしています。





Catch of the Week No. 4 Dec. : 12月 第 4 週


Catch of the Week No. 3 Dec. : 12月 第 3 週


Catch of the Week No. 2 Dec. : 12月 第 2 週


Catch of the Week No. 1 Dec. : 12月 第 1 週


Catch of the Week No. 5 Nov. : 11月 第 5 週





執筆者プロフィール

秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。
丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、1989年渡米。以来、マンハッタン在住。
FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。
その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。





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