Dec. 26, 2011〜 Jan. 1, 2012

” Year 2011 Was... ”


まるで春のような陽気の中で、新年を迎えたのがニューヨーク。
今年の大晦日、元旦が如何に暖かかったかといえば、私は大晦日の午前中にセントラル・パークでテニスをしていたけれど、 タンクトップを着用して、軽く汗ばむような状態。 今日の元旦は、大勢のニューヨーカーがセントラル・パークを走っていたけれど、 半袖のTシャツにショートパンツという人がかなり居て、フリースのような厚手のトップを着て走っている人は あまり見かけない有り様。
ピザのデリバリー・マンにしても半袖 Tシャツ姿で、街中を歩いている人々は レザー・ジャケットやスウェット・パーカー姿が目立っていたのだった。
そんな、暖かさに加えて、ミュージック・シーンの2大スーパースターであるレディ・ガガとジャスティン・ビーバーが パフォーマンスを行ったこともあり、毎年恒例のタイムズ・スクエアのカウントダウンは、記録破りの 人々が訪れたことが報じられているのだった。
ちなみに、例年カウントダウンは 約100万人がタイムズ・スクエアを訪れ、 その様子を全米の数千万人、世界の10億人以上がTVで見守ると言われ、世界最大規模であると同時に、最も歴史のあるカウントダウン・イベント。
そのカウントダウンの後には、40〜50トンのゴミがNY清掃局によって除去されているのだった。

タイムズ・スクエアは、カウントダウン時に限らず、常に旅行者で賑わうエリアであるだけに、 世界で最も旅行者が訪れるアトラクション。
逆に旅行者だらけな上に、大衆店とエレクトリック・ビルボードしかないタイムズ・スクエアは、ニューヨーカーが最も嫌うエリア。 私もたまに、日本から来た友人に「タイムズスクエアに行きたい!」と言われて、「タイムズ・スクエアに何をしにいくの?」 と訊いてしまうことがあるけれど、実際に旅行者が行ってみても、お馴染みのネオン・サインや ビルボードがあるだけの場所でしかないのが世界一の旅行者アトラクション、タイムズ・スクエアなのだった。

次いで世界第2位の旅行者アトラクションになっているのは、セントラル・パーク。 ニューヨーク市の犯罪が過去20年で激減したのに従って、ニューヨークの公共パークでの犯罪数も大きく減っているけれど、 それはセントラル・パークにおいても然り。1981年には731軒もレポートされていたパーク内の強盗事件は、 2011年には僅か17件となっており、散歩をしていた男性がアイフォンを盗まれた事件がTVで報道されるくらい 犯罪が珍しくなっているのだった。
セントラル・パーク内での犯罪が減っている要因は、パークを午前1時でクローズしていることと、 パーク内専門のポリスが見回りを強化していること。このため、今では午後11時過ぎでもニューヨーカーが犬を散歩させたり、 ジョギングをする姿が見られているという。
セントラル・パークはマンハッタンの面積の6%を占める 巨大なパークであるけれど サーヴェイランス・カメラ(監視カメラ)は 設置されているようで、昨年にはABCの女性ニュース・キャスターがレイプ未遂の被害を訴えたものの、 そのキャスターの証言と警察がチェックしたカメラ映像の内容が一致しないため、事件が狂言であることが明らかになっているのだった。



さて、今週は1年最後の週とあって 2011年を振り返る特集が様々なメディアで行われていたけれど、 エンターテイメントの世界では、2011年は結婚と離婚の年。
4月には英国のロイヤル・ウェディングが行なわれ、8月にはグーグルのサーチ件数ではロイヤル・ウェディングを遥かに上回った キム・カダーシアン&クリス・ハンフリーの挙式が行なわれたけれど、 この2人の結婚が72日後に破局を迎え、リアリティTVのためのやらせ結婚だったという疑いで、 キム・カダーシアンが大バッシングを受けたのは、2011年で最も大きなニュースの1つ。
また、ジェニファー・ロペス&マーク・アンソニー、アーノルド・シュワルツネッガー&マリア・シュライバー、 デミー・ムーア&アシュトン・クッチャー、そして年末にはNBAレイカーズのコビー・ブライアントや、 14ヶ月前に結婚したシンガーのケイティ・ペリーとコメディアンのラッセル・ブランドが 離婚を表明しており、それぞれ大きな報道になっていたのだった。


政治の世界では、指導者、独裁者の失脚や死去が続いたのが2011年。
その顔ぶれはアメリカ軍特殊部隊によって射殺されたオサマ・ビン・ラディンを筆頭に、反政府運動が起こり、現在裁判にかけられているエジプトのムバラク前大統領、 同じく反政府勢力によって殺害されたリビアのカダフィ大佐、そして12月17日に病死した北朝鮮のキム・ジョンイル総書記まで。 キム・ジョンイル総書記の死去については、死後2日もそのニュースが伝えられなかったことが、 アメリカのスパイ情報収集能力に疑問を投げかける結果になっていたのだった。

セレブリティの死去で大きな報道になっていたのは、3月23日に79歳で死去したエリザベス・テーラー、7月23日に死亡したシンガーのエイミー・ワインハウス、 そして10月5日に長年のガンとの闘いに終止符を打ったのがアップル社の創設者、スティーブ・ジョブス。 スティーブ・ジョブスについては、2011年5月の時点で、アップル社はアメリカ政府よりもキャッシュを保有するメガ企業となったけれど、 その約3ヶ月後にCEOを辞任。それから僅か6週間後の死去は、 非常にショッキングなタイミング。 スティーブ・ジョブスを敬愛した多くのファンが、彼の死去のニュースをアイパッドやアイフォンを通じて知ることになったのは、 スティーブ・ジョブスのサクセスを象徴している とも指摘されていたのだった。

加えて 2011年は著名人のメルトダウン、すなわち”自滅”や”自らの失策による失脚”も話題になったけれど、 セレブリティでその筆頭に挙げられるのは、ドラッグやアルコールの問題を抱え、問題発言を繰り返した挙句、 TV界最高のギャラを受け取っていた人気長寿番組の主演を解雇されたチャーリー・シーン。
彼は「タイガー・ブラッド」、「ウィニング」といった2011年の流行語を生み出しているのだった。
またホテルのメイドをレイプした疑いで逮捕された元IMF(国際通貨基金)のトップ、ドミニク・ストラウス・カーンも、 今年の話題を集めた人物。結局は被害者が信頼性に乏しいことから、ストラウス・カーンのレイプ容疑は立件されずに終わったけれど、 本人はメイドと合意の上でのセックスをしたことは認めているのだった。
この他、住み込みのメイドとの間の隠し子が発覚し、やがて離婚に追い込まれたアーノルド・シュワルツネッガー、 セクスティングが原因で、未来を嘱望されながら辞任に追い込まれたニューヨークの代議士、 アンソニー・ウェイナー、セクハラの被害を訴える女性に加えて、14年間交際した愛人がメディアに登場したため、大統領候補を 事実上辞退することになったハーマン・ケイン、 長年に渡る青少年に対する性的虐待行為が明らかになったペン・ステートの元アシスタント・コーチ、ジェリー・サンダスキー など、セックス絡みのスキャンダルが多かったのも2011年。
ファッションの世界では、ジョン・ガリアーノがユダヤ人蔑視発言でクリスチャン・ディオールのデザイナーを解雇され、 ディオールは未だ後継者が決まらないだけでなく、以来そのクリエーションはガタガタになっているのだった。

国内政治では、失業問題がなかなか改善されないのに加え、リーダーシップに欠けるとしてオバマ大統領が大きく支持率を落とした一方で、 国民の利益より政治の駆け引きを優先させる上院、下院の議会にアメリカ国民が不信感をつのらせたのが2011年。
特に国民のフラストレーションが頂点に達したのが、2011年8月2日のデフォルト(債務不履行)のデッドラインまでに、 法律で定められた 14兆2900億ドルの累積債務上限を 引き上げるための、 オバマ大統領&民主党 VS. 共和党 のダラダラした駆け引き。
そのアメリカの累積債務は2012年年明けの時点で、約15兆1384億ドル(約1,163兆2,200億円)。 この数字は 2007年9月28日以来、1日39億4000億ドル(約3,027億円)のペースで増えていることになるのだそうで、 3億1200万人のアメリカ国民が、1人当たり4万8,526.35ドル(約363万円)の借金を抱えている計算になるのだった。



そのアメリカの累積債務を増幅させる一端を担っていたのが、2011年に起こった数多くの自然災害。
竜巻、山火事、ハリケーン、干ばつ、洪水など、全米各州で非常事態宣言が出される災害が相次いだせいで、 州政府のみならず、アメリカ政府も緊急事態の資金が底をついていたあり様。
でも2011年にもっともショッキングだった災害は、やはり日本の震災と津波、そして福島原発の放射線漏れの問題で、 震災から暫くは、アメリカの新聞に日本の震災関連の記事が掲載されなかった日が無かったほど。 それほどまでに地震と津波という2つの自然災害の恐ろしさと被害の甚大さ、そして原発の危険性をアメリカ社会に強烈に 印象付けたのが この大災害。
それと同時に被災者の人々の高潔で、マナーを重んじる姿は、「日本人のモラルの高さ」として アメリカのメディアが大きく報じたもので、そんな被災者の人々の姿がアピールしてか、 夏に行なわれた女子ワールド・カップ・サッカーの決勝で日本とアメリカが戦った際には、「震災で被害を受けた日本に勝たせてあげたい」、 「日本が勝って良かった!」と、自国より日本を応援したアメリカのサッカー・ファンは決して少なくなかったのだった。


ところで、タイム誌は毎年、その年を象徴する人物や人々を「パーソン・オブ・ジ・イヤー」に選出しているけれど、 2011年のパーソン・オブ・ジ・イヤーに選ばれたのは「プロテスター」。 アラブ諸国の反政府運動に始まり、ニューヨークを発祥地に、各地に飛び火したオキュパイ・ウォール・ストリートなど、 様々なプロテスト(抗議活動)が社会に大きく影響を与えたのは周知の事実。
そうしたグラスルーツ・ムーブメントが、大きなプロテストに発展するのに一役買っていたのが、 ツイッター、フェイスブックに代表されるソーシャル・メディア。
個々のプロテスターの点を線にして、それを大きなブーブメントにする役割を果たしていたソーシャル・メディアであるけれど、 前年、2010年のタイム誌のパーソン・オブ・ジ・イヤーに選ばれていたのが、フェイスブックの創設者、マーク・ザッカーバーグ。 世界最年少でビリオネアになったマーク・ザッカーバーグは、2010年には映画「ソーシャル・ネットワーク」で 一躍脚光を浴びたけれど、2011年はそのフェイスブックを始めとするソーシャル・メディアが世論を発信し、社会的ムーブメントを生み出す という政治的役割をも担っていたのだった。

その結果、これまで銀行を含むビジネスに 一方的に搾取される側であり続けた消費者がパワーを取り戻したのも2011年。
DVDレンタルで知られるネットフリックスは、サービスの値上げに加えて、DVDレンタルとダウンロードのサービスの 分割を発表して以来、ソーシャル・メディアで大バッシングを受け、サービス分割を断念。 80万人の利用者を失い、かつての優良企業が あっという間に株価の大暴落と 業績悪化に見舞われることになったのだった。
またバンク・オブ・アメリカは、デビッド・カードの利用費として月々5ドルをチャージするプランを発表したところ、 やはりソーシャル・メディアを通じた抗議が殺到。シティ・バンク、JPモーガン・チェイスなどが同様のプランの導入を見合わせただけでなく、 バンク・オブ・アメリカも利用費のプランを撤回せざるを得ない状況に追い込まれてしまったのだった。
最も最近では、ケーブル&電話会社のヴェライゾンが 料金の自動引き落としシステムに加入していない利用者から、 毎月2ドルの料金支払い手数料をチャージするプランを発表したところ、ツイッターを中心に批難に次ぐ批難が集中。 僅か2日でそのプランを撤回するに至っているのだった。

ニューヨークの2011年で忘れてはならないイベントと言えたのは、9・11のテロの10周年。
ニューヨーカーにとってはテロの記憶があまりに鮮明で、「あれから10年が経過したなんて 信じられない」と感じる人々は非常に多かったけれど、 ワールド・トレード・センター跡地は、テロの10周年を機にやっとメモリアルがオープンし、ダウンタウン・エリアは 立派に復興を果たしているのだった。

この他にも、我が子を殺害した容疑で裁判を受け、人々が有罪と信じて疑わなかったにも関わらず、無罪判決となり アメリカ中の怒りを買ったケイシー・アンソニー。 マイケル・ジャクソンの主治医として過失致死で有罪になったコンラッド・マーレー。イタリアに留学中に起こったルームメイト殺人事件で一度は有罪になったものの、 そのDNA証拠の不適切な採取や、捜査上の問題を明らかにし、第二審で無罪を勝ち取ったアマンダ・ノックスなど、 事件の裁判が大きなニュースになっていたのも2011年。
またタブレットの普及で、2011年はニューヨーク・タイムズ、ウォールストリート・ジャーナル等の新聞のデジタル・サブスクリプション(定期購読)が増え、 ビデオ・ゲームは”アングリー・バード”が大流行。 YouTubeが引き続き、「フィフティ・ミニッツ・オブ・フェイム」と呼ばれる にわかセレブリティを生み出していた一方で、 ツイッターは、”トレンディング”という言葉を生み出し、にわかトレンドがどんどん生まれては消えていったのだった。

ところで、若い世代を中心にTV離れの傾向が顕著であるけれど、そんな2011年の年間最高視聴率を獲得していた番組は、毎年のごとく スーパーボウル。それだけでなく、アメリカの年間視聴率の2位〜12位までは全てフットボールの試合。
フットボール以外の最高視聴率はアメリカンのアイドルのシーズン・フィナーレで、ロイヤル・ウェディングも アカデミー賞授賞式もフットボールの視聴率を大きく下回っているのだった。 実際、かつてのベースボールに替わって、アメリカで最も人気のスポーツになっているのがフットボールで、 メジャーリーグのワールド・シリーズは、オスカー同様、年々視聴率を落としているのだった。

いつも終わってみると、1年はとても短く感じられるけれど、振り返ってみると本当にいろいろなことが起こっているもの。
多くのアメリカ人にとって2011年はリセッションの最中と言われた2008年や2009年よりも厳しい年と見なされているのだった。
事実、アメリカ人の大半はリセッション時代よりも、リセッションが終わったと言われた2009年〜2011年に掛けて、 その収入を減らしており、貧富の差が開き、ミドルクラスがどんどん消滅していることが指摘されて久しい状況。 様々なアンケート調査でも、過半数を大きく上回るアメリカ人(63〜87%)が、「国が間違った方向に進んでいる」という意見を持っていることが明らかになっているのだった。

そんな中、失業した人々が安価な収入の仕事に就くことを余儀なくされた結果、アメリカの ブルーカラー労働者の賃金が大きく下がり、これまでインドなど国外にアウトソースされていた仕事が、 逆にアメリカ国内に戻ってくるという皮肉な状況を生み出しているのだった。
具体的にどんな仕事が戻って来ているかといえば、最たる例が電話によるカストマー・サービスの仕事。 このため、労働賃金の低下が今後、アメリカ国内のサービス業を充実させ、 リッチ・ピープルがバトラーを複数雇う時代が再来すると見込む人々も居るけれど、 様々な意味で、時代の過渡期に差し掛かっていると言えたのが2011年。

世界経済の不安材料を抱えながら迎えた2012年は、オリンピックや大統領選挙を控えている他、12月には地球が滅亡すると信じる人々も居るけれど、 そうしたイベントや様々な事件、その報道や人々の意見&感情が 社会に影響を与えることによって、世の中が何らかの方向に向かって進んでいくであろうことは確か。
でも、それがどんな方向で、どんな波が来ているのかは、時代を過去の歴史として振り返るまでは 明確に分からないのが 実際のところだと思うのだった。





執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。 丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。


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