Dec. 28 2015 〜 Jan. 3 2016

” The Rich Get Even Richer in 2016 ”
2016年のアメリカで貧富の差が更に広がる2つの要因と、2016年に拡大が見込まれるビジネス


例によってタイムズ・スクエアのカウントダウンで幕を開けたニューヨークの2016年。
今年は平年より暖い気候も手伝って、テロの危険など物ともしない100万人以上のスペクテーターがタイムズ・スクエアに集ったけれど、 NYPD(ニューヨーク市警察)が ”テロに対する万全の体制を誇る街、ニューヨーク”を全世界にアピールするため、6000人の警官と1000台の監視カメラを配備した 厳重の警戒で臨んでいたのは多くのメディアで報じられていた通り。
そして 新年の到来と共に1トンの紙吹雪が上空に舞い、100万人以上の人々が46トンものゴミを残していったけれど、 そこから始まるのが毎年恒例の二ューヨーク市清掃局による 壮絶なクリーンアップ。 これによって毎年元旦の午前7時には タイムズ・スクエアが元通りの 状態に戻っているのだった。
ところで、意外に知られていないのがタイムズ・スクエアのカウントダウンのボールドロップの起源であるけれど、 これは1904年から同ロケーションに本社ビルを構えたニューヨーク・タイムズのオーナーのアイデアで 1907年の大晦日からスタートしたもの。 初代のボールは、高さ1.5mのブラス製のものだったとのこと。 ちなみにタイムズ・スクエアの地名のタイムズはニューヨーク・タイムズのこと。
その後、ニューヨーク・タイムズ社が本社ビルを移転した後も この伝統が続いて現在に至っているけれど、1942年と43年は第二次大戦のワータイム・ブラックアウトのために カウントダウン&ボールドロップが行われていないのだった。


ところで、年が明けてアメリカでは例年のごとく「ニューイヤーズ・レゾルーション(新年の決心)」がメディアで取り沙汰されているけれど、 それによれば、67%の人々が掲げているのが体重を落とすということ。でも6ヶ月も経たないうちに85%の人々が挫折するのが例年のデータ。
それに次いで多くのアメリカ人がニューイヤーズ・レゾルーションに挙げているのが、貯金を増やす、借金を減らすといった経済的な目標。 でも、世の中は貧富の差がどんどん開いている真っ最中で、2016年はそれに益々拍車が掛かることが見込まれる年。 どうしてそうなるかと言えば、現在進行中の2つの現象がそれに大きく加担すると言われるのだった。

まず1つ目は、ロボット導入拡大で 人間の仕事がどんどん減って行くという現象。 アメリカのみならず、全世界においてコンピューターとインターネットの普及で、 それまで人間が行っていた仕事が 減少の一途を辿ったのは歴史が立証するとおり。 まず90年代には Eメールの普及のせいで郵便物が激減。以来、郵便職員の数が激減しただけでなく、 アメリカの郵政省に当る USPSは倒産に追い込まれたほど。 新聞にしてもデジタル版の普及で、新聞配達員が激減。 映画館も、チケット売上げの70%以上がオンライン・オーダーになって久しい状況を受けて 従業員数を減らしており、企業の会計業務にしても クレジット・カードやオンライン・ペイメントが ありとあらゆる分野で普及して 会計管理が簡略化された結果、会計担当者が解雇されたり、パートタイムになるのは全く珍しくない話なのだった。
航空会社のパイロットも、自動操縦システムの普及で コックピットに入るのはキャプテンと副操縦士の2人が当たり前の時代。 80年代には4人がコックピットに座っていたことを思うと、その数は半分。 それだけでなく、セルフ・チェックインが当たり前になったせいで、チェックイン・カウンターで働くスタッフの数も減少中で、 人間の仕事をどんどん機械が行うようになってきたのは全く新しくないニュース。


2015年には あっという間のドローンの普及により、建物の屋根やトンネル内の破損の点検やスキー場のリフトの点検などが、 ドローンによって正確かつ安全に行われるようになり、経費も大幅に削減されたことは先週のコラムにも書いた通り。 その削減された経費というのは もっぱら人件費で、コンピューターやドローン、ロボットの導入が進むことは、 それまでその仕事をしていた人々の収入の激減、もしくは仕事そのものが無くなることを意味する厳しい現実を突きつけられるのが これからの世の中なのだった。

2016年から進むと見込まれるのはロボット導入の拡大で、特に人件費とは切っても切れない関係にあったサービス業に深く入り込んで来ることが見込まれるのだった。
例えば アメリカでは 一部のレストランで ウェイターやウェイトレスを使わず、来店客がテーブルに設置されたタッチ・スクリーンやタブレットから フードやドリンクをオーダーするシステムが既にスタートして久しい状況。 これによって何が起こっているかと言えば、人件費の節約もさることながら、オーダーの聞き取りミスによるレストラン側の損失がほぼゼロになり、 どのメニューが何食売れたかなどのデータ入力を 来店客がオーダーと同時に行ってくれるので、 売上げデータを簡単に把握出来る上に、会計も作業も簡単になる等のメリット。
もちろん、現時点では料理を運ぶのは ウェイター&ウェイトレスの仕事であるけれど、 今後、そこに割り込んでくると言われるのがロボット。

同様のカテゴリーでは、2016年から本格実用化がスタートするのが ホテルのルーム・サービス・ロボット。 「スター・ウォーズ」の人気キャラクター、R2D2のようなロボットがホテル内を徘徊して、 フードやドリンク、新聞のデリバリーなどを こなすことになるけれど、滞在客にとっては人間のスタッフが現れるよりも気を遣わず、 プライバシーが守られるとして、これを歓迎する意見が多いことが伝えられているのだった。

サービス業にこれだけロボットの労力が入っているということは、生産業では尚のこと。 アディダスのスニーカーは、徐々に全工程ロボット生産になることが見込まれており、 今や賃金の安い国に 生産をアウトソーシングするのは時代遅れ。 過疎地に無人工場を建設して国内生産にした方が、輸送費と関税が節約できる上に、 政府から税金免除も得られることが指摘されているのだった。




貧富の差が益々開く2つ目の要因になると言われるのは罰金の強化。
現在全米の多くの州で、80ドルのスピード違反のチケットを切られた人が、その支払いをしようとして ギョッとするのが、 罰金額がいつの間にか3倍、4倍に膨れ上がっていること。 これは手数料を含む、様々な加重罰金が加わるためで、ミリオネアには 何でもない金額でも 低所得家庭にとっては、家計が成り立たなくなる大出費。 その結果、罰金を支払わない人々が増えているけれど、滞納をし続けていると、免許の書き換えの際など、どうしても支払いを逃れられない時には 利息と更なるペナルティが加算されて、大金の支払いを強いられるのは言うまでもないこと。

一方、ドローンにしても 相次ぐ事故や飛行禁止区域での使用が問題視されて、2015年末から オンラインによる所有者登録が 手数料5ドルを支払って 義務付けられることになったけれど、この登録を怠った場合のペナルティは 日本円にして約300万円。
また2015年の秋冬の温暖な気候が幸いして 利用者を増やしたニューヨークの自転車シェア・プログラム、シティ・バイクにしても、 その収入の15%が延滞料などのペナルティであることが報告されているのだった。

ニューヨーク市について言えば、既に非常に厳しくなっているのが、Airbnb / エアビーアンドビーを始めとする アパートを旅行者に貸し出す違法レンタルの摘発とそのペナルティ。 ニューヨーク市では 一般市民が居住用アパートを 旅行者に貸し出す短期レンタルが違法であることは、借りている旅行者にはあまり知られていないものの、 それを行う人々は 違法営業と心得てやっているもの。 ここ数年でその数が大きく増えたことを受けて、ニューヨーク市ではその違法レンタルの罰金を最高5万ドル(約600万円)に引き上げたばかり。
昨年からは、見知らぬ旅行者が自分の住むビルや 近隣のビルに出入りすることを嫌う住人たちからの通報件数が うなぎ上りに増えている状況を受けて、市政府は捜査官を増員して 違法滞在施設の摘発を強化している真っ最中なのだった。
2015年12月には、エアビーアンドビーを通じてアパートを旅行者に貸し出していたテナントに対して、 家主が30万ドル(約3600万円)の損害賠償訴訟を起したニュースが報じられていたけれど、 それと言うのも 違法レンタルが摘発された場合に、市が罰金を請求するのはテナントではなく 建物の所有者である家主。
では何故 家主が 最高5万ドルの罰金の支払いに際して、その6倍の金額をテナントに請求する訴訟を起したかと言えば、 捜査官の調べによれば このテナントは 7月、8月、10月の3ヶ月に渡ってアパートを貸し出していたとのこと。 このため、まず罰金として4万5千ドル(約540万円)、その罰金に対する基本チャージが1万6千ドル(約192万円)、それに加えて 違法経営1日当り1000ドルのペナルティと その他のフィーが科せられる結果、家主が市に支払う罰金総額は25万ドル(3000万円)を超えると見込まれており、 加えて弁護士に支払うフィーなどの諸経費を加えて 30万ドル(約3600万円)というのがその請求の内訳になっているのだった。
すなわち、小遣い稼ぎのはずのレンタルが破産に追い込まれるほどのペナルティ、もしくは訴訟になってしまう訳だけれど、 一般市民の殆どが、実際に科せられるまで 全く理解していないのが、「”罰金”というものが、 その額面だけでは済まされない」という事実。
これまで庶民の生活に響くペナルティと言えば、もっぱらクレジット・カード会社や銀行が支払いの滞納や残高不足の際に科すものであったけれど、 それらは、地方自治体が科すペナルティの雪だるま式の増額に比べたら遥かに良心的な金額と言えるのだった。




2016年以降、拡大&普及するといわれているのがバトラー・サービス。
BBCの人気ドラマ、「ダウンタウン・アビィ」の影響も手伝って、 既に2014年頃から バトラー養成スクールが大繁盛していることが伝えられていたけれど、 そんな本物のバトラーがフルタイムで雇えるのは、もっぱらマルチ・ミリオネアやビリオネア。
そこで 「もっと気軽に雇えるバトラーを」ということで、まずバトラーのアプリが2015年にいくつも登場しているけれど、 これは飛行機のチケットの手配や、トレンディなレストランを選んで予約を入れてくれるサービス、 簡単な調べ物をしてくれるなどのサービスを提供するもの。 しかしながらアプリ自体にパワーやコネクションがある訳ではないので、人気レストランの予約が取れないのは 自分でトライする状況と全く同じ。 でもそれをやっている時間が無い人にとってはありがたいのが こうしたバトラー・アプリ。

ホテル業界でも独自にバトラー・アプリをクリエイトして 宿泊客にデジタル版のバトラー・サービスを提供するところが出ているけれど、 中でも最も優秀と言われるのは ニューヨーク5番街のセント・リジス・ホテルのアプリ。(写真上左) これはホテルの予約と共に送られてきたリンクからアクセス可能なもので、バトラーというよりコンシアージュのようなサービスを提供するもの。 セレブリティのニューヨークのお薦めスポット情報などが盛り込まれた、エンターテイメント性の高さが評価されているのだった。

でも、最もリアリスティックなバトラー・サービスを提供している存在と言えば、”ハローアルフレッド・ドットコム”。 バトラーにありがちなアルフレッドという名前をビジネスの名称にした同サービスでは、雇っているバトラー役のスタッフのことを”アルフレッド”と呼んでいて 現在、マンハッタンとブルックリンで展開されている同ビジネスでは、75人の”アルフレッド”を擁しているとのこと。
「週に一度でも誰かが部屋の掃除をして、冷蔵庫の中のミルクや朝食のプロテイン・バーを買い足しておいてくれたら」とか、 「自分の代わりに洗濯をして、ドライクリーニングをピックアップしてくれたら」というような、忙しいニューヨーカーのニーズを満たすサービスを提供する ”ハローアルフレッド・ドットコム”の料金は、週1回の利用で32ドルからと 至って手頃。 2017年までには全米の10都市にサービスを拡大するという アグレッシブなビジネス・プランを打ち出すスタートアップなのだった。

もちろん床の掃除であれば、ルンバのようなロボット掃除機がやってくれる時代ではあるけれど、 洗濯をしたり、シーツを取り替えたり、常備品の買い足しが頼めるのはやはり生身の人間。 したがって、これらをこなせるロボットが一般に普及するまでは、バトラー・サービスは安泰と言えそうなのだった。

Will New York 宿泊施設滞在



執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。 丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。

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