Jan. 7 〜 Jan. 13 2008




” American Economy Mess ”



私がこれを書いている今日1月13日は、本来だったらゴールデン・グローブ賞の授賞式がビバリーヒルズ・ヒルトンで行われていたはずの日。
でも 昨年秋から続いている脚本家組合のストライキのために 授賞式は中止となり、 今回は ホストが受賞者を発表するだけの1時間番組の放映ということになってしまった。
このため 視聴率が見込めないとあって、同受賞式のスポンサーの一部が手を引いたことが伝えられたのに加えて、 ハリウッド最大のイベントであるアカデミー賞授賞式への影響も非常に懸念されているのが現状である。

でも今週のアメリカの最大のニュースと言えば、火曜に行われたニュー・ハンプシャー州の大統領予備選挙で、 民主党のヒラリー・クリントン候補が事前のアンケート調査では10%以上をリードして圧勝が見込まれていた バラック・オバマ候補を破って勝利したことで、世論は投票が行われる前から 勝者を決め付けたような報道をしていたメディアに対して 非常に批判的なりアクションを見せていた。
一部にはヒラリー候補が勝利したのは選挙の前日、一般の人々からの質疑応答のセッションを行っていた最中に、 「彼女が涙で目を潤ませて、声を詰まらせるシーンを見せたから・・・」という指摘があったけれど、 確かに私もこのシーンを見て、ヒラリー候補は日頃は男性顔負けの強い女性像を見せていても、いろいろ辛いことがあるんだろうなぁ・・・と 少なからず同情してしまったのは事実だった。 現在の20代、30代の女性達ならば、医者や弁護士、インベストメント・バンカーになっても当たり前で、 男性並み、もしくはそれ以上稼ぐ場合も珍しくないけれど、ヒラリー・クリントンの世代の女性達というのは、 周囲の男性達よりずっと優秀で、彼らよりずっと努力しても 女性であるというだけでキャリアの世界では 足を引っ張られて、 女性差別と戦い続けてきたジェネレーション。 現在のコーポレート・ワールドで男性達と同じように働けば、肩を並べてやって行ける女性達は、 ヒラリー・クリントンを始めとする 女性の社会進出を切り開いて来たベビー・ブーマー世代の女性達の強さや頑張りの 恩恵を 多大に受けている訳で、私は個人的にはそういった ジェネレーションの女性が 「ヒラリーは強すぎる」などと 批判するのは、 身勝手で了見の狭い考えだと思っていたりする。

さて話をゴールデン・グローブに戻すと、脚本家組合のストライキのせいで授賞式イベントのレッドカーペット上のファッション・ショーが なくなってしまったことで、TV局側は視聴率ダウンとそれに伴う広告収入の激減に嘆き、 一流デザイナーは世界中に作品をアピールするためのパブリシティを失ったことに嘆き、 二流アパレルは、レッド・カーペット・ファッションのコピーという収入源を失ったことを嘆いていたけれど、 最近では脚本家組合を支持する人々でも このストライキが最悪のタイミングで行われたことを批判する傾向が見られていたりする。
特に今週は今後のアメリカの景気不安材料が次々と報じられていただけに、 ゴールデン・グローブのような ハリウッド映画、ファッション、メディアのお祭りイベントが縮小化してしまうことは、 消費者の先行き不安ムードを益々 掻き立ててしまうように受け取れるのは事実なのである。

その今週発表された景気の不安材料としては、まず12月にアメリカ国内の失業率がアップしたのに加えて、 各小売業の12月の売り上げが予想以上に落ち込んでいたことで、コーチ や デパートのノードストロームなどは 今後も業績不振が続くと見込まれているという。
これに加えて 報じられたのが アメリカン・エクスプレス が 支払い滞納者が増えたために 業績不振に陥ってるというニュース。 アメリカン・エクスプレスといえば、従来はカード・メンバーに収入条件を付けるなどして、毎月の請求額を耳を揃えて払ってくれる 比較的裕福な人々を対象にビジネスをしてきたけれど、昨今は 特に若い利用者を増やす目的で、 年会費ナシ、月々請求額の一部を返済すれば良いという VISAやマスター同様のカードを発行し始めたところ、 その 売り上げは13.3%も伸びたという。 ところが、そうした新たなカード・メンバー達は支払い滞納者が多く、多額の延滞債権を抱えることになってしまい、 アメリカン・エクスプレスの株価は過去4ヶ月間に約3分の2に落ち込んでしまったのだった。
アメリカでは先述のように失業率が増え始めていることから、アメリカン・エクスプレスの業績不振は 2008年も続くであろうという見方が有力であるけれど、 現在アメリカ人が抱えるクレジット・カード負債の総額はなんと9200億ドル(約101兆円)。 そのうち支払いが30日以上滞った、いわゆる焦げ付いている債権の総額は173億ドル(約1兆9000億円)と言われており、 2007年のアメリカ国内での個人倒産の申請数は80万件。これは2006年から40%もアップしていると言われている。

普通ならカード負債を抱えているというと、子供を3人を育てるシングル・マザーや 住宅ローンに苦しむ低所得ファミリーを想像しがちであるけれど、 実際には若いジェネレーションにもカード負債は蔓延しており、現在のアメリカでは 25〜34歳の女性の 32%が 最低1万ドル(110万円)のカード負債を抱えているという。 こうした若い世代の負債内容は、単にやりくりが下手で、毎月の請求額を全額返さないうちに借金と利息が膨らんだタイプから、 学費ローンの支払いに負われているうちにカード負債が膨らんでしまった例まで様々であるけれど、 支出が収入を上回り、それをカードでカバーしているうちにカード負債が払い切れなくなる というのが全てに共通したパターン。 経済のコンサルタントによれば、年収の8%以上の負債を抱えることは、極めて危険であることが指摘されている。

これらの不安材料に加えて 金曜に発表されたティファニーの業績も、メディアが景気のスローダウンのシグナルとして深刻に受け止めていたもの。
それによれば、ティファニーは 全体的にはヨーロッパからの旅行者による購買がクリスマス商戦を支えたため、売り上げ自体は2%と 僅かに伸びているものの、 1000〜1万ドル(約11〜110万円)の商品を購入するミドル・ラグジュリークラスの消費が激減したことが伝えられており、 ミドル・クラスが景気不振への警戒感を高めて、財布の口を硬くしていること、それが引き金になって 消費が衰え、景気が冷え込むことが懸念されていたのだった。
ちなみに、ティファニーでは最も売れているのは1000ドル以下のシルバーを中心としたアイテムで、 500万円以上の婚約指輪やジュエリーを購入するカストマーからの売り上げは例年通りであったという。
でも私に言わせれば、10〜100万円程度のジュエリーというのは、財産としてはあまり買っても仕方が無いもの。 というのも同じ宝飾品でも 600万円以上クラスのジュエリーになると、どんな一流店でも値切れるのに加えて、 ピンクダイヤなど 希少価値で 高値が付く石でも使っていない限りは、 この価格帯の商品は 宝飾店側の利益率が最も低い価格帯なのである。
したがって、出したお金に見合う価値の商品が手に入るのがこの価格帯。 そもそも店側としては、50万円のリング1つ売るのも、650万円のリング1つ売るのも同じ手間な訳であるし、 価格が高くなれば買う人も限られてくることは熟知しているので、価格が高いジュエリーほど、 宝飾店側は利益率を落として販売しているケースは多いのである。 それでも店側としてはリング1つを売っただけで 200万円、300万円の利益が上がるのは大きな魅力なのである。
ところが10〜100万円程度の ミドル・クラスの人々が クリスマスやバースデー、アニヴァーサリー等の オケージョンに購入する価格帯のジュエリーは、宝飾店側がダイヤやプラチナを使っていることを理由に利益をガッポリ上げているもの。 なので、80万円のジュエリーを売りに出してみれば10万円程度、物によってはそれ以下の引き取り価格の見積もりを もらうのは珍しくない話なのである。 大体その差額を宝飾店側が儲けていると想像すれば、 ミドル価格のジュエリーに手を出すことは、よほどそれが気に入っていて、 つけているだけで幸せになれるような個人的付加価値を見い出さない限りは、 ”お金の無駄使い” 的要素があると言っても過言ではないのである。
ただし同じ宝飾品でも 時計はこの例外で、リミテッド・エディションのロレックスやブライトリングが、中古市場で2倍の価格になったという話は 良く聞くもの。

要するに、お金というのはその使い方によって 価値が8分の1になったり、2倍になったりする訳で、 人の豊かさというのは、いくら稼いでいるか?いくら財産があるか?もさることながら、 どうやってお金を生かしているか?でも 計られるものだったりする。
それが証拠にブリットニー・スピアーズは73万700ドル(約8000万円)の月収がありながら、 電話代だけで約27万円、外食費が50万円、 旅行や夜遊びに1100万円、住宅ローンに540万円、ファッションに180万円といった 激しい金遣いで、そのうちの一銭も 投資や貯蓄に 回さず使い切ってしまうことが伝えられている。 とは言っても 3年連続ワーストドレッサーに選ばれて、常にろくな服装をしていない彼女が 月々180万円も服にお金を 掛けているとは とても信じがたいもの。 もちろん彼女は月収のうちの 170万円は 現在彼女の子供の親権を持つ 元夫のケヴィン・フェダラインに 養育費として支払わなければならない訳だけれど、恐らく 元夫に養育費を払った方が 彼女自身が育てるよりも 子育て費用は安上がりであろうと見込まれている。
いずれにしても 彼女のお金の使い方は あまりに馬鹿げていて、もし 彼女がブリットニー・スピアーズというセレブリティでなければ、 誰も彼女を 8000万円の月収があるリッチだとは思わないし、 彼女のように毎月8000万円の月収を使い切って、 挙句の果てに精神錯乱で病院に運び込まれるのは 誰も羨ましいとは思わない人生である。
でも、ブリットニーが破産申請をするようなアメリカ人よりも褒められる点は、少なくとも彼女は 自分で稼いで、自分が実際に持っているお金を使っている点。 いくら使い方が下らなくても、不良債権にならない限りは ブリットニーがお金を使い続けることは、 何らかの形でアメリカ経済に貢献していると言えるのである。





Catch of the Week No. 1 Jan. : 1 月 第 1 週


Catch of the Week No. 5 Dec. : 12 月 第 5 週


Catch of the Week No. 4 Dec. : 12 月 第 4 週


Catch of the Week No. 3 Dec. : 12 月 第 3 週






執筆者プロフィール

秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。
丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、1989年渡米。以来、マンハッタン在住。
FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。
その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.設立。以来、同社代表を務める。