Jan. 2 〜 Jan. 8, 2012

” Recycled Resolutions ”

今週のアメリカは特にメジャーなニュースが無かったとあって、政治の世界では共和党の大統領予備選挙が大きな話題。
ニューヨークでの報道も、もっぱらローカル・ニュースが中心であったけれど、 1月の1週目と言えば、メディアが必ず特集するのが、ニューイヤーズ・レゾルーション、すなわち新年の決心。
アメリカ人のニューイヤー・レゾルーションと言えば、体重を落とす、エクササイズをする、健康的なライフスタイルを心掛ける、 借金を減らす、といったものが毎年上位にランクされるけれど、2012年にニューイヤーズ・レゾルーションのトップに返り咲いたのが、 「ストップ・スモーキング」、すなわち「タバコを止める」というもの。

リセッションや失業問題などで、人々のストレスが溜まっていた2010年のニューイヤーズ・レゾルーションでは、 第7位にまでランクダウンしていた「タバコを止める」という課題であるけれど、それが再びNo.1になった背景は、 単なる健康志向やタバコ税のアップだけではなく、 だんだんスモーカーに対する社会的な風当たりが強くなってきているため。
実際、企業の中には人材採用の際に「喫煙者を雇わない」というポリシーを掲げているところが増えているという。 その理由の1つは、喫煙者は仕事を抜け出して タバコを吸いに行くため、その分のプロダクティビティが落ちるというもの。 今や禁煙のオフィス・ビルが多いだけに、タバコを吸おうと思ったら建物の外まで出ることになるので、 戻るまでに時間が掛るのに加えて、吸い終わって デスクに戻っても、直ぐに仕事モードには戻らないため。 なので企業側が 「ノンスモーカーを雇った方が、仕事の効率が上がる」と判断するのは当然と言えば当然のこと。
でも企業が喫煙者を雇いたがらない最大の理由は、喫煙者の方がノンスモーカーに比べて深刻な病気になる傾向が強く、その結果、 健康保険料の掛け金がアップして、企業の経営を圧迫するため。 これを受けてペプシ・コーラのペプシコ社では、2011年末に喫煙者の社員が毎月50ドル余分に健康保険料を支払うというポリシーを決定しているのだった。
ちなみに、アメリカの企業の多くは、社内の喫煙者に対して禁煙プログラムをオファーしているけれど、 そうしたプログラムによって露呈しているのが 禁煙を試みると、殆どの社員が2週間ほど 仕事の効率が非常に落ちるということ。 なので、そんなデータも企業が喫煙者を雇いたがらない理由になっているのだった。



デパートメント・オブ・ヘルス・アンド・ヒューマン・サービスの調べによれば、アメリカでは 成人とハイ・ティーンの20%、約4000万人が喫煙者とのことで、喫煙がもたらすヘルスケアのコストは年間1930億ドル(約14兆8425億円)。 アメリカ人の死亡原因の5件に1件が 喫煙がらみのもので、その年間の死亡者数は約44万3000人。 また肺がん患者の85%が喫煙者&元喫煙者となっているのだった。

ニューヨークでも 「One Cigarette, One Too Many / ワン・シガレット・ワン・トゥー・メニー」、すなわち 「その1本が、1本吸い過ぎ(1本たりとて 多すぎる)」 という新たな禁煙キャンペーンが年末からスタートしており、喫煙量を半分に減らしたといって安心している人々、 週末しかタバコを吸わないから自分はスモーカーではないと信じている人々に、「タバコを1本でも吸っている限りは 健康のリスクは回避できない」 と警告しているけれど、実際、タバコ1本どころか、その横で煙を吸いこんだだけで、発ガンの要因となるDNAのダメージがもたらされるのは 医学的に証明されている事実。

何度もこのコラムに書いているように、私はかなりの嫌煙家で、タバコを吸っている人の傍を歩く時は、呼吸を止めるし、 タバコを吸っている人が前を歩いていて、その煙が自分に掛かりそうになると、走ってその人を追い越したりするほど、セカンドハンド・スモークを 防ごうという涙ぐましい努力をしているような状態。
もちろん総資産が何十億ドルあろうと、スモーカーとだけはデートをしないとも決めているけれど、 アメリカ国内だけで、年間に5万3800人がセカンドハンド・スモークが原因で死亡していることを考えるにつけ、 「他人が吐き出した煙で 命を縮めるなんてまっぴら!」と思ってしまうのだった。

私の個人的な観察では、40歳くらいまで特に大きな病気もせずにきたような人で、仕事が忙しい人ほどタバコを何時までも止めようとしないけれど、 この2つの条件は言ってみれば早死のフォーミュラ。30代、40代で一度何らかの病気をした人は、それだけ早い時点でライフスタイルを改めるチャンスが 与えられるけれど、自分を健康だと思って、 健康管理を怠って 忙しくしていると、結局は 何かが起こったときには 「肺がんがステージ4まで進んでいた」など、手遅れというケースが非常に多いのだった。
でもそんな手遅れになる以前に 喫煙者とノンスモーカーとでは、35〜40歳をターニング・ポイントに 肌の透明感や張り、目の澄み具合などに明らかな差が出てくるもの。 ビバリーヒルズのセレブリティが通う某フェイシャリストは、「喫煙者の肌はフェイシャルをしたところで、やりがいがないないので お断り」という ポリシーを掲げているというけれど、それは確かに意味を成していることなのだった。



ところで、毎年1月というのは ジムが混み合うと同時に、セントラル・パークに多くのランナーが溢れる時期。
特に今年は気温が例年を上回るとあって、今日、日曜日もセントラル・パークを多くのニューヨーカーが走っていたけれど、 ランニングのような持久力を養うエクササイズは、体重を落とす、落とした体重を保つ役割を果たすだけでなく、 若さを保つ、若さを取り戻すことを可能にするのだった。
これは、エクササイズがミトコンドリアのダメージを修復するためで、ミトコンドリアは若いうちは ダメージを受けても、それが自然に修復されて、人間は成長を続けることになるけれど、 ある年齢に達した時点から ミトコンドリアのダメージが修復のペースを上回るようになるのが老化の始まり。 このある年齢というのは、人間の場合20歳。
ミトコンドリアがダメージを受けて、やがて死滅してしまうと 人体に何が起こるかと言えば筋肉がしぼみ、脳のボリュームが減って、 頭髪が抜け落ち、肌が衰えていくなどの典型的な老化現象。 でもエクササイズをすれば、その修復をスピードアップさせることが出来るので、 結果的に若さの維持や、 若返りを実現するのだった。



私がエクササイズとミトコンドリアの関係を初めて知ったのは、2011年3月にニューヨーク・タイムズ紙に掲載された 「Can Exercise Keep You Young?」という記事を読んだ際であったけれど、 記事の中で紹介されていたのが、カナダのオンタリオのマックマスター大学の教授、マーク・ターノポルスキー博士が ネズミを使って行なった実験。
これによれば、ネズミは生後3ヶ月で人間の20歳に相当し、その時点から老化がスタートするというけれど、 ターノポルスキー博士は そんな生後3ヶ月のネズミを2つのグループに分け、1つ目のグループには週3回、45分間、踏み車の上で走らせるという エクササイズをさせ、2つ目のグループには 全くエクササイズをさせなかったという。 ちなみに、ネズミが行なったエクササイズは人間が10キロを50〜55分掛けて走るのと同等のもの。
その状態を5ヶ月続け、ネズミが生後8ヶ月を迎えた段階というのは、人間の年齢にして60歳前半に当たるそうだけれど、 エクササイズを行なわなかったネズミは、毛が抜けている上に 白髪が混じり、筋肉が衰え、脳が縮み、心臓が肥大するという 老化現象が進んで、殆ど動けない状態。 結局、生後1年を待たずして、全て死んでしまったという。
これに対して、エクササイズをしたネズミは、黒々した白髪の無いフサフサの毛で覆われ、筋肉も、脳も、心臓も 若さを保っているだけでなく、活発に動き回っており、ありとあらゆる老化現象が食い止められていたという。
この実験は、エクササイズが心臓や筋肉を鍛える といった 一般に知られるメリットをもたらすだけでなく、細胞のレベルでも 大きな健康的メリットをもたらすことを立証しているけれど、 私が常日頃から感じるのが、ランニングを続けている人の方が ヨガをやっている人や、ゴルフやテニスをやっている人より、 遥かに若々しいということ。
歩くのも身体には非常に良いけれど、1日1時間の歩行は体重と健康の維持には役立っても、 若さの維持には役不足。 またヨガについては、体重を落とす効果が無いことは指摘されて久しい状況で、 ヨガで細い体型が保てるのは、生まれつき痩せ型の体質の人。
アメリカでは ヨガでウエスト・ラインの拡大が防げないと悟った人々が、ランニングを始めている というのは メディアが指摘するトレンドでもあったりする。 さらに ヨガのエクスパートと呼ばれる人々の外観が決して若くないことからも分かる通り、若さを保つ効果も あまり期待できないのがヨガ。従ってヨガには様々な精神的&肉体的メリットはあるものの、減量と若さの維持の効果には乏しいのが実情なのだった。



ところで、私が年に一度の婦人科検診に出かける度にドクターに言われるのは、 女性の身体は 質の良いキャベツやレタスのようであるべきということ。 質の良いキャベツやレタスというのは、葉っぱの巻きが硬いので、手に持ってみると 見た目よりもドッシリ重たく感じられるもの。
それと同様に、女性の身体も見た目よりも体重が重たいのが、特に35歳を過ぎてから大切とされること。 体重が見た目より重たいということは骨がしっかりしていて、筋肉質であるということ。 筋肉は骨や関節を守る働きをするだけでなく、メタボリズムをアップさせるので、体脂肪がつくのを防ぐ働きもしてくれるもの。
なので、痩せているよりも 引き締まったボディ、怪我や病気に強いボディというのが、今の私の目標になっているのだった。

私の知り合いの女性は、きれいで理想的な筋肉をつけるために、まず脂肪を徹底的に落としてから 筋肉をつけるというプログラムをやっているそうだけれど、 これは医学的な見地からは大きな間違い。 というのも、脂肪を徹底的に落とすということは、エネルギー・レベルとメタボリズムが下がるので、 その状態から筋肉をつけるというのは、並み大抵な努力では出来ないこと。
それよりもダイエットとエクササイズで、脂肪を落としながら、筋肉をデベロップしていく方が、 遥かに健康的なトランスフォーメーションであると同時に、苦しい思いや虚脱感を乗り越える必要も無いのだった。
また、脂肪を落とした段階で肌がたるんでしまうと、年齢によってはその後に筋肉をつけても肌の張りが戻らないケースもあり、 スリムなボディを手に入れても、しなびた野菜のようになってしまうのも このメソッドに伴うリスクと言えるのだった。

アメリカでは、ニューイヤーズ・レゾルーションで、人々がダイエットやエクササイズを目標に掲げて、 毎年 それに挫折するということで、ダイエット産業を大儲けさせているけれど、 たとえ減量に成功したとしても、殆どの人々は1〜2年掛けてもとの体重にもどってしまうという。
すなわち、減量よりも難しいのが落とした体重の維持。 単に体重を落とすだけなら、一時的に不健康なほどの低カロリー・ダイエットをしたり、マスター・クレンズのような、ほぼ断食状態を することによって実現できるし、痩せることだけを考えている人は そうした無理なダイエットをトライしがち。 でもダイエットが苦しければ苦しいほど、落とした体重の維持も難しいのが実情。
結局のところ、減量は地道に取り組んで、ヘルシーなライフスタイルを身につけるのが一番確実な方法ということになるけれど、 それを実践するのが いかに難しいかは、アメリカ社会が立証していることなのだった。





執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。 丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。


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