Jan. 10 〜 Jan. 16 2005



キャリアか? 子供か?




恋人と後味の悪い別れをした女性が 必ずと言って良いほど する事と言えば、2人が一緒に写っている写真を お互いが離れ離れになるように破いたり、ハサミでカットすること。
でもこれを、 たとえ本人がやらなくても、世界中のメディアがやってくれるのが、ハリウッド・セレブリティたるもので、 今週はブラッド・ピットとジェニファー・アニストンが一緒に写っている写真が引き裂かれた映像を、 TVや 雑誌の表紙、タブロイド記事などで 何度となく見せられることになった。

2年の交際を経て結婚した2人が、4年半の結婚生活にピリオドを打ったことが発表されたのは、1月7日のこと。
2人が共同で発表したコメントでは、離婚の原因については一言も触れられていなかったけれど、 メディアが一斉に指摘した要因は、「子供を欲しがるブラッドと、キャリアを優先させるジェニファーの行き違い」というもので、 本当の離婚の原因は、「本人のみぞ知る」にも関わらず、今週のアメリカでは 2人の離婚の原因を それと決め付けて、メディアでも、一般の人々の会話でも、「キャリアか?、子供か?」論議が盛んに取り沙汰されることになった。
こうした論議を巻き起こすのは、もちろんブラッド&ジェニファーが、ハリウッドのセレブリティの中も ハイ・プロファイルで、人々の関心が集中するカップルであるためだけど、 実際にアメリカには同じ問題を抱えて離婚するカップルは非常に多く、 もし2人が本当に「キャリアか?子供か?」で離婚したのであれば、 彼らはハリウッド・セレブリティにしては、かなり庶民的かつ、一般的な理由で別れたことになるのは 事実である。

今日、1月16日付けのニューヨーク・ポスト誌は、「ザ・ペアレント・トラップ」というタイトルで、 「子供を作る時期」をめぐって意見が対立する一般のカップルが いかに多いかを報じており、 カウンセラーによれば、「この問題は カップルが解決策を模索するよりも、お互いに早く 別の相手を見つける方が、 それぞれの求めるものが 確実に手に入る」として、離婚を勧めているのだという。
また、「キャリア志向の女性が、無理に子供を作ったところで、夫婦仲を救うことは出来ない」ことも同時に指摘されており、 その理由は、妊娠、出産後に体形を戻すための肉体的負担、築き上げてきたキャリアを 少なくとも ある程度は諦めなければならない犠牲、子供の世話と仕事に追われる時間的、肉体的困難が、 女性側に掛かってくるためで、夫や夫の役割に疑問やフラストレーションを持つキャリア・マザーが、 非常に多いのは、察するまでもなく 明らかな事実である。
その一方で、「ベイビー・シッターに大金を支払うよりも、仕事を辞めて、家に居て欲しい」と主張する夫も少なくない というけれど、 キャリア・ウーマンにとって仕事を辞めることは、社会との接点や、自分のアイデンティティ、ソーシャル・ステイタスを 同時に失うことであり、「自分が稼ぐから、家で子供を育ててくれば良い」と夫側が考えるほど、簡単な決断では無いのが実際のところなのである。
さらに、キャリア・マザーの中には、仕事を辞めて 子育てに専念しても、それが終わった時に「何をしたら良いのか分からなくなる」、 もしくは「その時には夫と離婚しているかもしれない」という憶測から、ある種の”保険”的な意味合いで、 仕事を続けたがる女性も少なくないという。

こういう論議が浮上してくると、日本では「女性の社会進出が出生率を下げている」として、 「子供を産まない」、「1人しか産まない」、「産む時期を遅らせる」といった傾向の槍玉に挙げられるのが 女性のキャリアである。
では、女性のキャリアと子供というのは、果たしてそんなに相反するものなのか?と言えば、 シングル・マザー達が、子育てにも キャリアにも生き甲斐を見出して、どちらに対しても時間と労力を注いでいるところを見ると、 決してそうではないようなのである。 でもこれに「夫」という要素が絡んでくると、途端にギクシャクしてくる訳で、その理由は 子供というものが夫婦の共同プロジェクトでありながら、往々にして「子供の面倒を見るのは妻の仕事」 になってしまう不公平感、そして時に、夫自身も妻が面倒を見なければならない対象になってしまうためである。
このため離婚して、元夫から子供の養育費が払われ、経済的に安定しているシングル・マザーは、 夫の面倒を見る時間と労力が省けること、子供を夫に預ければ、無料のベイビー・シッターになってくれること、 自分の決断で子供のことを決めても滅多に文句が来ないという点で、 結婚しているキャリア・マザーよりも、生活にゆとりがあるとも言われていたりする。

日本には「子はかすがい」という表現があるけれど、アメリカでは、それとは逆に 子供が出来た時点から夫婦仲が悪化し、 それが離婚に発展して行く というケースが非常に多いことが認識されて久しかったりする。 でも、その危機を乗り越えて、子供が大学の寮に入ったり、結婚したりして、いわゆる「エンプティ・ネスト」状態になると、 夫婦関係は途端に良好になるという統計も得られており、実際には「子はかすがい」どころか、 居ない方が 夫婦仲は良いはずなのである。
それでも、ブラッド&ジェニファーのように 子供を産む以前に、子供のことで揉め(たと言われ)て 別れるカップルが 多い訳であるから、子供というもは物理的に存在しなくても、コンセプトとして夫婦間にあるだけで、 問題を生み出すようである。
でも世の中の人間は全て、夫婦仲を悪化させてまで、産んで 育ててくれた親達の苦労のお陰で存在している訳であるし、 子供とて、夫婦仲は悪化させるかもしれないけれど、それ以外の幸福感や満足感を親達にもたらしているのも事実なのである。

さて、私は個人的には、今回の離婚でブラッド・ピットが益々嫌いになったけれど(私は以前からブラッド・ピットが嫌いである!)、 その理由は、「子供を作るか?」、「何時子供を作るか?」ということは夫婦が話し合って決めるべきプライベートな問題で、 メディアのインタビューを受ける度に 「子供が欲しい!」、「そろそろ子供を作ろうと思っている」 などと口にするのは、 妻に対して メディアを通じてプレッシャーを掛けているだけでなく、かなり失礼なことだと思うからである。
私の友人で、結婚していて、子供が居ないカップルは、家族や友人から 「そろそろ子供を作ったら?」、「未だ出来ないの?」などと、 ”大きなお世話”的 な事を言われるのを非常に嫌っているけれど、ジェニファー・アニストンの場合、それと同じ事を 世界中のメディアからされていた訳で、ブラッド・ピットが「自分は子供が欲しいのに、妻が仕事で忙しすぎる」と 事あるごとにインタビューで語るのは、言ってみれば「子供が出来ないのは自分のせいではない」という責任回避とも取れる訳である。 それを思えば、子供について訊かれる度に「こうのとりのご機嫌」発言をしていた、日本の皇太子の方が 報道の見地からは面白味が無くても、遥かに紳士的であったと私は思っていたりする。

ちなみに、私はブラッド&ジェニファーが結婚した時点で、「5年以内に離婚する」と予言していたけれど、その理由は 私には結婚当時からこの2人にはケミストリーが感じられなかったし、まるで兄妹のような間柄が、 お互いに一生懸命好きになろうとしているように受け取られて、特にブラッド・ピットに関しては、 自分がジェニファーに夢中だと振舞っているだけのように見えてならなかったためである。
だから、私から見ればこの離婚は予想通りであったし、子供だの、キャリアだのという以前の問題があったに違いないと いうのが 個人的な憶測である。



Catch of the Week No.2 Jan. : 1月 第2週


Catch of the Week No.1 Jan. : 1月 第1週


Catch of the Week No.4 Dec. : 12月 第4週


Catch of the Week No.3 Dec. : 12月 第3週





執筆者プロフィール

秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。
丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、1989年渡米。以来、マンハッタン在住。
FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。
その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.設立。以来、同社代表を務める。