Jan. 13 〜 Jan. 19, 2014

” Career Focus Life ”


今週は、あまり政治、経済で新しい大きな動きが無かったこともあり、週末にミッシェル・オバマ夫人が50歳のバースデーを迎えたニュースや、 フランスの大統領、フランソワ・オランドの2人のガールフレンド、ジャーナリストのヴァレリー・トリールヴァイレールと女優のジュリー・ガイエについての 報道が行われていたけれど、アメリカのリアクションは、フランソワ・オランドが 似たようなルックスの女性に惹かれる傾向がある と指摘する程度。
それよりも今週のアメリカの関心が集中していたのは、週末に行われたNFLのリーグ・チャピオンシップで、 史上初めてニューヨーク・エリアで行われる今年のスーパーボウルは、デンバー・ブロンコ VS. シアトル・シーホークスというカードに決まったのだった。
今週のスポーツ欄やTVのスポーツ・ニュースは毎日のようにフットボール関連の報道、 特に歴史に残る名クォーターバック、ペイトン・マニング VS. トム・ブレイディの対決にフォーカスが集中していて、 現在、メルボルンで行われているテニスのオーストラリアン・オープンなどは、アメリカ勢の試合結果が簡単に伝えられるのみ。 大のテニス・ファンであり、テニス・プレーヤーでもある私でさえ、一体同トーナメントがどんな展開になっているのか、 全く把握していない状態なのだった。
そのオーストラリアン・オープンの記事がやっとニューヨーク・タイムズ紙のスポーツ欄の第一面に小さく掲載されたと思ったら、 その記事は記録的な暑さと、その中で無理やり行われていたトーナメントについてのもの。 記事によれば 試合途中でリタイアしたプレーヤーの数は史上最高記録に並んでおり、コートがあまりの熱さで、 プレイヤーのシューズの底やコート上に置かれたペットボトルの底が溶け出していたとのこと。 また熱中症で試合中に嘔吐したり、試合直後に病院に直行したプレイヤーも居れば、試合中にあまりの暑さで意識が朦朧(もうろう)として、 コートの中にスヌーピーの幻覚を見たというプレーヤーまで居て、 そんな殺人的な環境にもかかわらず、まるで何も起こっていないかのように予定通り試合を続行させているトーナメント運営側に対して 皮肉交じりの厳しい批判が記事で展開されていたのだった。


それとは別に、今週もう1つメディアが取り上げていたのが、2009年1月15日に起こったユナイテッド・エアライン1549便のエンジン・トラブルによる 飛行機事故から5周年を迎えたという報道。
事故を起こしたエアバスA320は、 ラガーディア空港の離陸から約3分後に翼の両側のエンジンにダメージを受け、ラガーディアに戻ることも、 ニュージャージーの飛行場に辿り着くことも 出来ないと判断した チェスリー・サレンバーガー機長が 同機を ハドソン川上、 マンハッタン・ミッドタウンの48丁目沖にウォーター・ランディング(水上着陸)させ、 乗客、乗組員、155人が全員無事に救出されるという奇跡的な結末となったのが この事故。 その救出劇は、当時「ミラクル・オン・ハドソン」と呼ばれ、機長のチェスリー・サレンバーガーは あっと言う間に国民的英雄になったのだった。
この事故はニューヨーカーにとって 非常にインパクトが強かっただけに、メディアに街頭インタビューされたニューヨーカーは、 こぞってこれが2〜3年前の出来事だと思い込んでいたけれど、同事故が起こった当時は 未だジョージ・W・ブッシュ大統領の任期中。 オバマ氏が大統領就任式を迎える5日前の出来事なのだった。

同事故は、メディアの世界では違った意味で 意義深いイベントとなっており、それというのも この救出劇を川沿いで見守った 一般人のツイートが 報道メディアより先に事件を的確に報じた 初の出来事であったため。 以来、ソーシャル・メディアが報道メディアに取って替わる役割を果たすようになったのは周知の事実であるけれど、 「ミラクル・オン・ハドソン」が、その最初の例であったことが伝えられているのだった。



話は全く替わって、年明けに友人とブランチをした際に話題になったのが、「理想的な人生」。
私の友人の理想の人生は、45歳までに 十分な財産を築いてリタイアして、後は投資をしながら、世界中を旅行して、 趣味に打ち込んで、これまでやりたかったことを全てやって、チャリティに生き甲斐を求めるというもの。 最後のチャリティの部分はいかにもアメリカ人らしいと思って聞いていたけれど、 彼女の理想の人生は私とは、全く異なるものなのだった。

では私が理想とする人生はどんなものかといえば、生涯リタイアせず、自分のやりたい仕事を続けて、 何度もこのコラムに書いてきた通り 125歳以上まで 五体五感満足に生きて、介護施設や病院に決して入ることなく、人生最後の日まで働いて、 眠っている間に人生を終えることなのだった。
そんな私が感動して読んだのが年末のニューヨーク・タイムズ・マガジンの記事(写真上)。 この記事は、2013年に死去した著名人から 一般の人々までの生涯のハイライトを纏めたもので、 20人近くがフィーチャーされていたけれど、中でも私の目に留まったのが、見るからにシニアという印象ながらも、 鍛えられたボディをした女性ランナーの写真。 これは1926年生まれで、2013年に86歳でこの世を去ったジョイ・ジョンソンという女性ランナーの記事なのだった。

彼女は、ハイスクールの教師で1985年、59歳でリタイアするまでは、エクササイズさえしたことが無かったという。 ところが、健康のためにと夫と1日3マイル(4.8キロ)を歩くようになった途端に身体にエネルギーがみなぎる感触を味わい、 程なく始めたのがジョギング。その2〜3年後には1日12マイル(19.2キロ)を走るようになった彼女は、直ぐに地元のセレブ・ランナーになってしまったという。 そして、彼女は1年に3回のマラソンを走るようになり、毎朝4時に起きては、怪我をしても彼女より若いランニング・パートナーと一緒に 走り続ける毎日を送り、走ることに幸福感を見出していたとのこと。 それは、彼女が何度も「死ぬのならば、スニーカーを履いたまま死にたい」と語っていた言葉にも如実に表れているのだった。

やがて80歳になったジョイ・ジョンソンは、マラソンの完走に7時間が掛るようになり、タイムが落ちたことを実感した彼女が始めたのが 上り坂をリピートして走るトレーニング。 これによって、彼女は翌年のニューヨーク・マラソンで前年よりタイムを51分も縮めるという素晴らしい走りを展開したのだった。
そして2013年の11月3日、連続25回目のニューヨーク・マラソンに臨んだ彼女は、20マイル・エリアで転倒。 参加ランナーに助けられ、病院に行くように薦められる怪我を負ったものの、それを振り切って完走。 翌日には、完走者のメダルをつけてNBCのモーニング・ショーで、毎年マラソン完走者をインタビューする パーソナリティとの旧交を温めるというルーティーンをこなして ホテルに戻り、 昼寝をしている最中に息を引き取ったというのが彼女の人生なのだった。

86歳でこの世を去るというのは、私が目指す人生より約40年短いけれど、それでも五体五感満足な身体で、自分の好きなことにチャレンジをしながら、 最後の一滴のエネルギーまでを使い果たして、眠っている間に息を引き取るというのは私が理想とする人生。 ジョイ・ジョンソンは、高校教師としてのキャリアは59歳でリタイアしたものの、シニア・ランナーとしてのキャリアがスタートしたのは60歳から。 上の記事にフィーチャーされた写真撮影時の84歳にして、彼女が 見事なランナー・ボディをキープしていたことからも分かる通り、 彼女にとってランニングは趣味やエクササイズではなくて、立派なキャリアになっていたのだった。



同じ好きなことをするにしても、趣味として行うのとキャリアとして行うのでは、生活だけでなく、身体や精神に与える影響が全く異なることを実感したのが、 年末にパーティーに出掛けた際に、料理好きが嵩じてレシピ・デベロッパーになった女性と話した時のこと。
レシピ・デベロッパーとは、ダイエット本の著者のドクターや、ダイエット企業、食材メーカー等に依頼されて、要望通りのレシピをクリエイトする仕事。 この女性は 単に家族や友達のために料理をしていた頃は、 彼らが喜んで食べる高脂肪、高カロリーの料理ばかりを作っていて、砂糖2カップとバター2本を使ってケーキを焼いたりしていたという。 当然のことながら、体重も10キロ以上重たかったというけれど、レシピ・デベロッパーになってからというもの、 ヘルシーなレシピの依頼ばかりが寄せられるために、何とか風味を損ねることなくヘルシーなメニューをクリエイトしようと、 ありとあらゆる食材を使った試行錯誤が始まったという。
でもそを続けるうちに、どんどん痩せ始めて、頭がシャープになってきただけでなく、家族の体重も減り始めて、 夫の血圧も大きく下がったという。 加えて、彼女のレシピ・デベロッパーとしての収入も増え始めて、 自分の好きな事をキャリアにしたことで、単なる趣味が生き甲斐やライフ・ワークになったと語っていたのだった。

私にリタイア願望が無いのは、自営業で自分の好きな仕事をしていることもあるけれど、 最大の理由は脳を老化させたくないため。
人間の脳というのは、脳トレのような簡単なタスクでは鍛えられない もっと遥かに複雑なもの。 仕事という義務感の中で、予期せぬトラブルや やりたくないタスク、難しくて頭脳をフル回転させなければならない問題、 限られた時間でこなさなければならない業務等に対処することによって、たとえ何歳になっても向上するのがブレイン・パワー。
ロンドンのタクシー・ドライバーが年齢を重ねても脳が老化しないのも、仕事上、何千という道の名前やロケーションを覚えなければならないのに加えて、 交通事情に応じて その知識を使った対応を常に要求されるからと指摘されているのだった。 すなわち人間の脳も 身体と一緒で、鍛えることによってシャープになるように出来ているのだった。

私は長く、健康的な人生というものに大きな価値を見出していて、それを実現するために必要なものとして掲げているのが、 「長生きをするという決意」、「心身と脳の健康」、そして「サポート・システム」、すなわち信頼できる家族や友人に囲まれて生きること。 このため、仲の良い友達を長生きするように洗脳するだけでなく、脳の健康のために生涯続けられる 何らかのキャリアを持つことをを薦めているけれど、 私が歴史上最も尊敬する女性、ココ・シャネルにしても「もし仕事をしないのなら、人生で他に一体何をするというの?」という語録を残しているのだった。

キャリアが脳を活性化させる一方で、リタイアが老化を早めるというのは、任期を終えた大統領の老け方にも如実に 現れているけれど、リタイア以前に脳を劣化させると指摘されているのがファスト・フード。
実験によれば、ファスト・フードを週に4回食べさせただけで、モルモットがチーズにありつくために覚えたはずの迷路の道順を忘れてしまったそうで、 僅か1週間のファスト・フード食生活が 脳のシャープさの指針となる記憶力を見事に劣化させたことが明らかになっているのだった。 したがって、長生きは別として受験や、大切なタスクを控えている際は ファスト・フードは食べるべきではないと言えるのだった。







執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。 丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。


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