Jan. 9 〜 Jan. 15 2017

"Trump's Golden Scandals and Inauguration Forecast"
ドナルド・トランプのゴールデン・スキャンダル&前代未聞の就任式のブループリント


今週のアメリカは、メディア関係者でさえもが こんなに毎日のように政治的な出来事が起こった週は無いというほど ポリティカル・ニュースに溢れていた週。
まず先週の日曜に行われたゴールデン・グローブ授賞式で、ライフタイム・アチーブメント・アワードである セシル・B・デミル賞を受賞した メリル・ストリープが、ドナルド・トランプの名前こそは出さなかったもの、明らかにトランプを批判するスピーチを展開したことを受けて、 誰もが予測した通り、月曜にメリル・ストリープに対して「ハリウッドで最も過大評価された女優」と、バッシング・ツイートを繰り広げたのがドナルド・トランプ。
これを受けてソーシャル・メディア上では、メリル・ストリープを支持するリベラル派とトランプ支持派が、 大論争を繰り広げていたけれど、オスカーを3回受賞し、ゴールデン・グローブ賞に30回ノミネートされたメリル・ストリープに対して 「過大評価」という言葉を使ったことについては、エンターテイメント・メディアのコメンテーター達がこぞって”不適切”と指摘したもの。

同じ月曜には、そのドナルド・トランプが 大統領の身内を政権スタッフに起用できないタブーを破って、 自らの娘婿、ジャレッド・クシュナーをシニア・アドバイザーに任命。 ちなみに身内の起用はジョン・F・ケネディ大統領が、弟のロバート・F・ケネディを司法長官に任命して以来、法律で禁じられてきたこと。 これを受けて娘のイヴァンカは、トランプ・オーガニゼーションを含む自らのビジネスの株式を全て売却。 一切のコマーシャル・ビジネスから手を引くことを明らかにしているのだった。




翌日火曜日には、今週のアメリカで最大の報道となったドナルド・トランプの”ゴールデン・シャワー・スキャンダル”が、インターネット・メディアのバズフィードによって報じられ、 それをCNNが大きく取り上げたことから アメリカ中の誰もが同スキャンダルを話題にする結果となったのは周知の事実。 今週末の「サタデーナイト・ライブ」でもオープニング・スケッチのネタとなり、人々を大爆笑させたのが同スキャンダル。

このスキャンダルを明かした文書は、ロシアによる米国大統領選挙への介入をレポートした35ページに渡るもので、問題のゴールデン・シャワーの部分はそのうちの僅か2ページ。 先週末にこの文書がトランプに提出された際には、この部分が割愛されていたというけれど、 同文書自体は、2016年初夏の時点で既にワシントン政界の誰もがその存在と内容を知っていたと言われるもの。
それだけでなく、トランプに提出される以前に ほぼ全てのメディアが全容を把握していたと言われるもので、 「この文書のコピーを持っていなかったら メディアではない」と言われるほど、同文書が出回っていたことはワシントン・ポスト紙でも報じられていたのだった。

その信憑性はさておき、「国民に知る権利がある」としてこれを公開したのがバズ・フィード。 その内容は、トランプが2013年、モスクワのリッツ・カールトンに滞在中、複数のロシア人娼婦を雇い、 ゴールデン・シャワーのパフォーマンスをさせ、その様子をロシア政府が密かにビデオに収めていたというもので、 このスキャンダルを掴んだのは、イギリスの諜報部員。
ロシアを訪れたビジネスマンや政治家が、滞在中に高級娼婦をアレンジする、もしくは接待でアレンジを受けるというのは、 決して珍しくはないことで、その様子がビデオ撮影されていることも同様に珍しくないと指摘されること。 しかしながら 娼婦にさせたパフォーマンスと、その動機が 同じ部屋にかつてオバマ夫妻が滞在し、 そのベッドで眠ったことを知って、あえてそこで行ったという部分がこのスキャンダルのニュース性を高めている部分。
さらに今週のメディアでは、 この文書をFBIが選挙前に公開せず、ヒラリー・クリントンのEメール疑惑に絞って捜査をしていた様子に不信感を抱く声が ワシントン政界で2016年夏の段階から囁かれていたことも同時に報じられているのだった。

その翌日の水曜日には、ドナルド・トランプが大統領に選出後、初のプレス・カンファレンスが行われたけれど、 この席で発表されたのが、山積みの書類を前に、ドナルド・トランプがいかに個人のビジネスと大統領としての職務を切り離すかについての説明を含む、 新政権のプループリント。 これについては「全てに具体性が無い」というキャンペーン中と同じリアクションが聞かれた一方で、 ゴールデン・シャワー・スキャンダルについて報じたCNNのレポーターに対して、ドナルド・トランプが壇上から 「You're fake media!」と何度も叫ぶ猛攻撃を展開。
CNNレポーターも質問を受けて貰おうとしているのか、それともトランプの神経を逆なでようとしているのか分からない言動を繰り広げ、 お互いに怒鳴り合うシーンが 質疑応答のセッション中、何度も見られていたのだった。




その翌日木曜に報じられたのは、司法省がヒラリー・クリントンのEメール疑惑捜査に当たったFBI長官、ジェームス・コミー(写真上左)に対して、 その正当性についての捜査に入ったというニュース。 多くの政治&メディア関係者が「ドナルド・トランプの大統領選挙勝利を決めた」と指摘するほど、ヒラリー・クリントン陣営にダメージを与えたのが、 選挙の10日前に ヒラリー・クリントンのEメール疑惑の再捜査を発表したジェームス・コミーのコメント。 FBIが捜査結果ではなく、捜査再開を議会やプレスに明らかにするというのは前代未聞の異例の出来事。
しかも10月の段階で捜査再開の対象となったEメールは、既に7月に捜査が終了していたもので、 このFBI長官による選挙への影響を狙ったかのような行為に対する捜査は、民主・共和両党の要請で行われるもの。 民主・共和両党が何かに合意するというのは近年の政界、特にオバマ政権下では、全くあり得なかった出来事なのだった。

そして金曜には、ジョージア州アトランタの下院議員で、公民権運動のレジェンド、ジョン・ルイス(写真上右)がNBCとのインタビューで、 「ロシアが選挙に介入して選出されたドナルド・トランプの大統領としての正当性を認めない」と語り、その就任式もボイコットする意思を表明。 ジョン・ルイスについての知識が無い人や、他国の政治関係者から見れば、彼の発言は単なるアンチ・トランプ派の言い分にしか聞こえないけれど、 彼はマーティン・ルーサー・キング牧師亡き後、公民権運動のレガシーを引き継いできた人物。 民主&共和両党から深く尊敬される政治家で、その実績と高潔さが称えられてきた存在。
そのジョン・ルイスのバックグラウンドを知らずに、トランプが 「口先ばかりで、全く行動しない」、「自分の選挙区の酷さを見てみろ」とツイートしたことから、 ジョン・ルイスをサポートすると同時にドナルド・トランプの政治的無知さを攻撃するツイートが数多く寄せられたのが土曜日。 それもそのはずで、ジョン・ルイスは前述のように輝かしいキャリアの持ち主。しかも彼が選出されたアトランタは、 ミドル・クラス以上の生活レベルを維持する裕福なエリアで、トランプのツイート内容とは全く異なる状況。
これには さすがのトランプも態度を軟化せざるを得なかったようで、「ジョン・ルイスと協調の用意がある」というツイートに変わっているけれど、 ジョン・ルイスに対するツイートを受けて、下院議員の大統領就任式ボイコット者数は19人に増えているのだった。

この木曜と金曜の出来事は、一部のメディアではトランプ弾劾へのファースト・ステップになり得るとして注目されているもの。
というのも、もしトランプ陣営がロシアの協力を取り付けて選挙戦を戦っていたことが立証された場合、それが弾劾裁判に発展するのは避けられない状況。 そもそもトランプ陣営では、国家安全保障担当補佐官に任命したマイケル・フリンがロシア大使と頻繁に電話連絡を交わす様子がレポートされ、 プーチンと個人的に親しいエクソン・モービルの元CEO、レックス・ティラーソンを外交の最高ポストである国務長官に任命。 また娘のイヴァンカがプーチンの愛人と噂されたウェンディ・デンと親友であるなど、露骨なまでのロシア寄り姿勢を見せているのが実情。
既にそんなドナルド・トランプのロシアびいきを巡っては、与党である共和党内が分裂する事態を招いていることから、 今週には ”Impeach/弾劾” という言葉が、かなり頻繁にアメリカの政治メディアに登場していたのだった。
ちなみにアメリカの歴史上、大統領で弾劾されたのは2人で、最初が1868年のアンドリュー・ジョンソン。そして1998年には、ビル・クリントンが モニカ・ルインスキー・スキャンダルで弾劾裁判を受けているのだった。




さて、今日1月15日にワシントンDCで行われたのが大統領就任式のリハーサル。
放映TV局のカメラ・アングルのテストを含む、就任パレードと宣誓式の予行演習が行われたけれど、 そのトランプの就任式がスター・パフォーマー不在のものになっているのは以前もこのコラムに書いた通り。 今週だけでもマリー・オズモンド、ポール・アンカといった1960〜70年代のスターが出演を断り、 現時点でセレブリティと呼べる知名度があるパフォーマーは、カントリー・シンガーのトビー・キースのみ。
ドナルド・トランプは先週、「記録的な数のセレブリティが列席するだろう」と強気のツイートをしていたけれど、 今週のメリル・ストリープに対するツイートで、メジャーなハリウッド・セレブリティの列席者はほぼ望めないと言われる状況。

もう1つ注目されているのは 果たしてメラニア夫人の就任式用のアウトフィットと、晩餐会用のイヴニングを どのデザイナーが担当するのかということ。 というのも、多くのデザイナーがアンチ・トランプ派であることに加えて、ボイコットを恐れるあまり、夫人のアウトフィットの担当を拒んでおり、 現時点では トランプの就任式のパフォーマー同様、誰も聞いたことが無いようなデザイナーのみがその担当に名乗りを上げている状態。 例外と言えるのはトランプと個人的に親しいトミー・ヒルフィガーとキャロリーナ・へレラであるけれど、どちらも夫人が着用したことが無いブランド。
そのメラニア夫人は、大晦日のトランプ主宰のニューイヤー・イヴのパーティーではドルチェ&ガッバーナのカクテル・ドレスを着用。 これをドミニコ・ドルチェがツイートをした途端に、インターネット上でバッシングされたのは記憶に新しいところだけれど、 夫人が就任式でドルチェ&ガッバーナを着用する訳には行かないのは、 歴代の大統領夫人が着用した就任式と晩餐会のアウトフィットが スミソニアン博物館に寄贈&展示されることになっており、 アメリカ人デザイナーの作品を着用するのが歴代のファースト・レディのしきたりになっているのだった。

1月20日のトランプの就任式で、ワシントンDCのナショナル・モールに詰めかける人々の数は、2009年のオバマ大統領の就任式の際に集まった 180万人の半分以下の規模が見込まれているけれど、当時よりも増えるのがセキュリティ・スタッフで、その数は2万8000人。 既に63の団体が抗議活動の申請をしていることが伝えられ、中でもトランプの女性蔑視に抗議する女性団体は 20万人規模の抗議デモを計画しているとのこと。
したがって参列者は少なくても、抗議活動者を加えると、オバマ大統領の就任式の規模に近付くのがドナルド・トランプ就任式。 しかも当日のワシントンDCは、晴天&温暖が予報されているため、抗議活動者の数が増えることはあっても、減ることは無いと言われるのだった。
既に全米各都市では、今週末からドナルド・トランプに対する抗議活動が数千人規模で行われているけれど、 ニューヨークで1月19日の就任式前夜、コロンバス・アベニューのトランプ・インターナショナル・ホテル前で計画されているのが、 ニューヨーク市長、ビル・デブラジオが中心となり、俳優のマーク・ラッファローや、映画監督のマイケル・ムーアらと 主宰する抗議集会。 ニューヨーク市長が参加を呼びかける次期大統領に対する抗議集会というのは前代未聞であるけれど、 そんな前代未聞の状況は 大統領選挙の最中からずっと続いてきたこと。
もうここまで来ると 果たしてどんな大統領就任式になるのか、怖いもの見たさの興味の方が高まってくるのが正直なところなのだった。

執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。 丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。

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