Jan. 18 〜 Jan. 25 2010




” 美容整形手術に中毒性はあるのか? ”


今週水曜の1月20日で、早いものでオバマ政権誕生から1周年を迎えたけれど、 そのアニヴァーサリーに水を差すように、前日1月19日のマサチューセッツ州上院議員補欠選挙で 当選したのが共和党のスコット・ブラウン州議会上院議員(50歳、写真右)。
この補欠選挙は、昨年死去した民主党のエドワード・ケネディ上院議員の席を埋めるために行われたもので、 当初は 同じ民主党の女性候補、マーサ・メアリー・コークリー氏の有力が見込まれていたもの。 しかしながら、終盤戦に入って ブラウン氏の猛烈な追い上げが伝えられ、健康保険改革法案を可決するために 民主党の議席を失う訳には行かないオバマ大統領は、何度もコークリー候補の応援に駆けつけており、 この選挙は全米で大きな注目を集めていたのだった。

その結果、オバマ大統領の健康保険改革法案に強く反対したブラウン氏が当選し、民主党は上院における安定多数を失った訳であるけれど、 そうしたオバマ支持の低下ぶりは、1月20日版のウォールストリート・ジャーナル紙が掲載した 過去1年間のオバマ政権に対するアメリカ国民の世論調査にも 如実に現れているのだった。
このウォールストリート・ジャーナルの調査は、2000人のアメリカ人を対象に12月〜1月にかけて行った聞き取り調査で、 その結果はざっと以下のようなもの。(括弧内の数字は約1年前の2009年2月の調査時での数字です)



昨年の1月20日にはアメリカ国民に大きな希望と期待を抱かせながらスタートしたオバマ政権であるけれど、1年後にはその希望は色褪せて、 期待もすっかり萎んでしまった印象が ぬぐえない結果になっているのだった。
でもオバマ大統領自身については、「好感が持てる」という意見が72%、「率直で正直である」と評価する人々が 51%で、 大統領は政策よりもイメージ・コントロールで成功していることを裏付ける数字になっているのだった。

いずれにしても、期待を裏切られた国民のフラストレーションが 1月19日のマサチューセッツ州選挙の勝敗を決めたことは 明らかな事実で、 ホワイト・ハウスはこれを受けて、大統領就任1周年の1月20日に、「オバマ大統領は、選挙結果を真摯に受け止めている」という セレブレーション・ムードとは ほど遠いコメントを発表。
メディアも、オバマ政権発足時は、「オバマ大統領 最初の100日間のレポート」といった特番を頻繁に組んでいたものだったけれど、 オバマ人気が低下してきた今では、視聴率が取れないと判断したのか、1周年の際にはそうした特番は製作されずに終わったのだった。

さて選挙に勝利し、一躍時の人となったスコット・ブラウン氏であるけれど、彼はその甘いマスクも手伝って、 多くのメディア関係者、政界関係者が、今後 共和党のスター的存在になるであろうと予測する存在。
その彼は、今から28年前の1982年、当時ブラウン氏が22歳の法律学校に通う学生時代に、 コスモポリタン誌の見開きグラビアでヌード姿を披露し(写真左)、同誌が選んだバチェラー(独身男性)No.1に 選ばれていたことが その当選と同時に全米で報じられていたのだった。 ブラウン氏いわく、「学費を払うためにしたこと」 だそうだけれど、写真自体はヌードとはいえ控えめなもので、 同氏の評判を落とすことはなく、逆に女性ファンを増やしたとさえ言われているのだった。
またブラウン氏の娘は人気リアリティTV、「アメリカン・アイドル」のオーディションを受けて トップ16にまで残ったこともあり、 今週は、その娘のオーディション結果を家族と共に喜ぶブラウン氏の姿もリピート放映されていたのだった。

そもそも共和党は、2008年の大統領選挙の際のサラー・ペイランのように、 ルックスの良い候補者を FOXに代表される共和党寄りのメディアで上手くプロモートしてしまう政党。
田舎訛りの英語で、あまり偏差値が高いとは言えなかったサラー・ペイランに比べて 、スコット・ブラウンは 頭脳明晰で、洗練されているとあって 彼は今後の共和党のアンチ・オバマ勢力の旗印となりそうな気配を漂わせているのだった。


さて、今週は比較的ニュースの少ない週とあって、芸能メディアで最も話題になっていたのがC級セレブリティ、 ハイディ・モンタグが 1日に 10箇所もの美容整形手術及びトリートメントをこなしていたというニュース。
ハイディ・モンタグは、MTVのやらせリアリティTV 「ヒルズ」に出演しており、彼女と 「ヒルズ」の共演者であり、夫でもあるスペンサーは、 パブリシティ獲得のためなら何でもすることで知られる存在。
そのハイディは、既に2007年に鼻の整形と、豊胸手術を行っており、当時のインタビューで彼女は「手術の結果に至って満足しているので、 もう整形手術はしないと思う」と語っていたのだった。
その彼女が 僅か2年後に行ったのが、10時間に10箇所に施術を施すという ボディの大改革。 その10の施術の内訳はと言えば以下の通り。


この全ての施術を行った後、ハイディ自身は 「一時死んでしまうかと思った」 とインタビューで語るほど具合が悪くなったそうで、写真右上のピープル誌の表紙撮影に臨めるほどに回復するまでには、 自分の姿を鏡で見て 後悔した時もあったというけれど、今では すっかりその手術の成果に満足しているとのこと。
23歳の若さにして、彼女がこれほどまでに全身を美容整形で変えたがった理由については、 「ハリウッドでより大きな成功を収めるには、より完璧な容姿が要求される」と考えているためで、 「ブリットニー・スピアーズだって、あのボディを手術で手に入れたのだから・・・」と ブリットニーの豊胸手術を例に挙げて人々の理解を求めているのだった。

メディアの報道でコメントを求められたドクターや、専門家は ハイディ・モンタグが 「美容整形の中毒になっている」とコメントしていたけれど、そうした中毒症状は ハリウッドという完璧が求められるカルチャーもさることながら、 やはり本人の自信の無さが原因になっていると指摘されるもの。
そもそも、ハイディがこれだけの美容整形をしようと決心したのは 昨年プレイボーイ誌でセミ・ヌード姿でグラビアを飾ったのがきっかけで、 グラビアがエアブラシで修正されていたにも関わらず、それを見ながら 自分自身の完璧でない部分に次々と気付いてしまったのだという。

私に言わせれば、これは典型的な整形手術を繰り返すタイプで、私の友人でもかなりの美女でありながら、 やはり自分に自信が無いためにまず豊胸手術をして、次に太ももとヒップのリポサクションをして、 次に腕のリポサクションをして・・・と、最初は 「胸だけ」と言っていた美容整形がどんどん全身に広がっていっている 女性がいるのだった。
そして彼女の場合も 自分が美人であることは自覚しているものの、どこか自分に自信が持てず、 自己愛が欠落していると感じられる部分があるのだった。

私の友人のケースでは、まず「ヒップが大きい割りにバストが小さすぎるから、ボディのバランスを取るため」といって豊胸手術をしたけれど、 それからほどなく、「どんなにエクササイズしてもヒップと太ももについた脂肪が落ちないから」といった脂肪吸引をして、 その直後は「これで生まれて初めてボディのコンプレックスが無くなった」 とハッピーにしていたのだった。
でも ほどなくして、「どんなにエクササイズしても腕が細くならない」、「足に比べて腕が太い」という理由で 腕の脂肪吸引をすることになり、 その時に、医師に薦められるままに下腹部のリポサクションもしたそうで、その脂肪を頬にインジェクト(注入)するという ハイディ・モンタグと同じ施術も行っていたのだった。
その後 彼女は、再び「もうボディのコンプレックスがゼロになって、着たい服が何でも着られる」と喜んでいたけれど、 それも束の間。 やはりハイディと一緒で、「バストのサイズをもう一回り大きくしたい」などと言っているのだった。 私から見れば彼女のバストのサイズは、身体の脂肪のつき方や、胸の盛り上がり方から フェイクだとすぐに分かるので、 それ以上 大きくするメリットは理解できないけれど、彼女に言わせれば もっと大きい方が男性の視線が集められるのだという。

私は正直なところ、彼女が美容整形などしなくても 魅力があるのに 自分に自信が持てない様子を気の毒に思って見ているけれど、 それ以上に驚かせられてしまうのは、彼女が美容整形のために貯金を使い果たしてしまい、 これからやろうとしている豊胸手術のために借金を抱えるつもりでいるところ。
そんなにまでして、完璧な容姿を追求したがるのは、恐らく子供の頃から 可愛い からといってチヤホヤされ続けてきたので、 自分が可愛くてキレイでないと、人を引きつけられないと思っているのかもしれないけれど、 実際には 女性に完璧な容姿を求める男性なんて、ろくな人間が居ない上に、そういう男性に限ってどんどんアップグレードを狙っているから、 よりキレイで、より若い女性に次から次へと乗り換えていくものなのだった。
彼女もまたそういう男性とデートばかりしているから、「きれいじゃないと捨てられる」、「誰もプロポーズしてくれない」などと 思っているようだけれど、昨今の彼女は 28歳にして 若さへのこだわりも出てきたそうで、噂ではボトックスを2ヶ月に1回の割合で打っているとのことなのだった。

かなり以前のこのコラムにも書いたことがあるけれど、私の考えでは 美容整形を行う人には2種類のタイプが存在していて、 1つは目はエイジングのプロセスを感じて、自分の姿を維持するために行う人。 そしてもう1つは年齢に関係なく、自分とは別人になるために行う人で、 前者が持ち合わせていて、後者が持ち合わせていないのが自己愛である。
「若い自分を保ちたい」という理由でボトックス注入などを行う人は、自分自身以上の存在になろうとはしていない訳で、 自分の姿を維持、保存しようとしていると解釈できるのである。 でも、自分自身を作り変えてしまうような 美容整形を望む女性というのは、概して自分が嫌いで、別の人間になりたいと思っている人。 鏡を見ても自分の欠点ばかり見えてしまうタイプで、 しかも作り変えた自分の姿にも満足が出来ないので、どんどん美容整形の回数が増えていくのである。

加えてお金を払って手に入れたものというのは、服やシューズと一緒で、どんなに似合っていて気に入っていても、 時が流れたり、もっと良いものを見たりすれば直ぐに飽きてしまったり、満足できなくなってしまうもの。 それは美容整形で手に入れた顔やボディも同様で、しばらくは美容整形で得た新しいボディ・パーツに満足していても、 直ぐに「もっと細く」、「もっと大きく」 というような不満や欲求が出てきてしまうのである。
これは目がその細さや大きさに慣れてきて、以前のような満足感をもたらさなくなってくる せいもあるかと思うけれど、 手術をしてまで完璧なボディを手に入れるほどの 強迫観念がある人というのは、 やはり適当なところでは止められないものなのである。

ところで、どんな女性にとっても 大きさに慣れてきたら、もっと大きなものが欲しくなるものと言えば、バストよりもジュエリー。
CUBE New York では、Cubicle Julesのセクションが長年一番人気になっているけれど、 よくお問い合わせを頂くのが、1カラットと2カラットのどちらにするべきか?といった石のサイズについての質問。 スタッフには、「最初は大きすぎると思っても、直ぐに石のサイズに慣れてきてしまうから、大きめを選ぶ方が 飽きが来なくて賢明です」と アドバイスするように教育しているけれど、これは紛れも無い事実。
でも美容整形の見地からは、これは商売が下手だと見なされるようで 豊胸手術は 最初は患者にあえて小さめに入れるように薦めるのだという。 そうすることによって 「慎重な医者」というイメージが付けられる上に、一度小さめに胸を入れた女性は 2〜3年後に その殆どがサイズを大きくして欲しいと言って 戻ってくるそうで、その分 儲けが増えるのだという。
すなわち美容整形というカテゴリーは ドクターがマーケティング戦略を持って 患者に接する不思議な世界。 今回のハイディ・モンタグにしても、マイケル・ジャクソンにしても、世間では 「こんなになるまで美容整形をするなんて・・・」と本人の 美容整形中毒を責める姿勢があるけれど、そんな姿になるまで実際の施術を繰り返しているのは、ほかでもないドクターなのである。





Catch of the Week No. 3 Jan. : 1月 第 3 週


Catch of the Week No. 2 Jan. : 1月 第 2 週


Catch of the Week No. 1 Jan. : 1月 第 1 週


Catch of the Week No. 4 Dec. : 12月 第 4 週





執筆者プロフィール

秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。
丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、1989年渡米。以来、マンハッタン在住。
FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。
その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。





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