Jan. 18 〜 Jan. 24 2016

”#OscarsSoWhite Controversy”
”オスカー・ソー・ホワイト” 何故黒人俳優はオスカーにノミネートされないか?


今週のニューヨークで最も報道時間が割かれていたのは、アメリカ東部一帯を襲ったスノー・ストーム”Jonas / ジョナス”のニュース。
ニューヨーク市では 土曜日午前零時を前後して降り始めた大雪は、土曜日1日だけで セントラル・パークで約63cmの積雪を記録。 ニューヨーク史上最大のスノーストームに、わずか0.1インチ積雪が及ばなかったという史上2番目の大雪となっていたのだった。 週半ばの時点で、既に30万トンの塩を用意して この事態に備えていたニューヨーク市では、土曜日には ”Travel Ban / トラヴェル・バン”、 すなわち外出禁止令が発令さていたけれど、これは徒歩で外に出るのはOKでも、車での外出は緊急時以外認めないという臨時措置。
市内にはNYPD(ニューヨーク市警察)によるチェック・ポイントが設けられて、自家用車の使用に対する厳重な取り締まりが行われていたけれど、 この理由は除雪作業を効率的に行うためで、この外出禁止令を受けて 土曜はブロードウェイの劇場がパフォーマンスを中止したのに加えて、 多くのストアやレストランが休業、もしくは閉店時間を早めた結果、週末にも関わらずマンハッタンはゴーストタウンのようになっていたのだった。
ストームが去った日曜には、セントラル・パークでクロスカントリー・スキーやソリ遊びをする人々の姿が見られていたけれど、 雪の量が尋常ではないだけに、まだまだ除雪作業には時間を要する気配なのだった。




今週、エンターテイメントの世界では 2年連続でオスカーの主演&助演部門に黒人俳優がノミネートされなかったことを受けて、 女優でウィル・スミス夫人でもあるジェイダ・ピンケット・スミス (写真上左) が1月18日のマーティー・ルーサー・キング・デイに フェイスブックのビデオを通じて呼びかけたのがオスカーのボイコット。
既にノミネーションが発表された時点から、ソーシャル・メディア上では ”#OscarsSoWhite/ハッシュタグ・オスカー・ソー・ホワイト” がトレンディングになっていたけれど、ジェイダ・ピンケット・スミスのビデオ・メッセージを受けて、 今週にはジョージ・クルーニー、マーク・ラッファロらがそれに同調するコメントを発表。 その一方で、過去にオスカー受賞経験があるベテラン俳優で、アカデミーのメンバーでもあるマイケル・ケイン (写真上右) が「黒人だからという理由で、 俳優に投票はできない」とコメントしたかと思えば、 今回のオスカーの助演部門にノミネートされているベテラン女優、シャーロット・ランプリングが #OscarsSoWhiteのムーブメントを「アンチ・ホワイト」とコメントするなど、 「演技と人種を切り離すべき」という反対意見も聞かれていたのだった。
今回の#OscarsSoWhiteの物議を受けて、アカデミー・オブ・モーション・ピクチャー・アンド・サイエンス側は、 現在のメンバーシップの構成を2020年までに改めて、黒人&ヒスパニックを含むマイノリティ人種と 女性メンバーの数を2倍に増やすと発表したけれど、 現時点では 6261人のアカデミーのメンバーのうちの 94%が白人。黒人層は2%、ヒスパニックが2%。そのうち男性が占める割合は77%になっているのだった。
これがアカデミーの役員になると全51人中 50人が白人という 状況で、少なくともメンバーについては ”オスカー・ソー・ホワイト”と言われても仕方がない状況。
センサス・ビューローの調べによれば、今やアメリカにおいて 白人以外のマイノリティ人種の占める割合は40%にも達している一方で、 女性人口も男性を上回っているけれど、2015年にハリウッドで製作された305本の映画の殆どは 白人男性が主演、監督を務める作品。マイノリティ人種と女性が監督を務めた作品は2桁に及ばない とレポートされているのだった。




要するにオスカーで黒人俳優がノミネートされないのは、黒人俳優が出演する映画がさほど製作されていないためで、 ハリウッド関係者の間では #OscarsSoWhite の問題の根源は、アカデミーよりも むしろ 映画の製作決定権を持つハリウッドのスタジオ側の問題と指摘する声が少なくないのだった。
でも映画の製作現場に詳しく、映画「トラフィック」でアカデミー監督賞を受賞したスティーブン・ソーダバーグ監督によれば、 ハリウッド・スタジオが黒人俳優を起用した、黒人カルチャーを描いた作品を製作しないのは、 決して人種差別ではなく、ビジネス上の決断であるとのこと。 それについてソーダバーグ監督は、 「黒人のオーディエンスは、白人主演の映画を喜んで観に行くけれど、白人オーディエンスは 黒人主演、もしくは黒人カルチャーを描いた作品にはさほど興味を示さない」として、 黒人主演&黒人カルチャーを描いた作品のマーケッタビリティの低さを指摘しているのだった。

その一方で、ハリウッド映画の収益の約半分はアメリカ国内から、 そして残りの半分がアメリカ以外の諸外国から来ているけれど、 黒人主演、黒人カルチャーを描いた作品の場合、海外における興行売上げが激減することが数字のデータとして表れているのだった。
したがって、映画というものが全世界から収益を得なければならない商品である以上、 全世界のマーケットにアピールするキャスティングやストーリーで映画を製作しようとするスタジオ側の姿勢は、 ビジネスの見地からは決して批判できないとも言われるのだった。

オスカーに話を戻せば、毎年 ノミネーション、及び受賞作品の投票が行われる前には、 ハリウッド・スタジオが アカデミーのメンバーに対して毎年のように 自社映画の”売り込み”を行うのが常。 これは主に、メンバーを招待したパーティーや 賄賂に当らないギフトなどであるけれど、 ”アカデミー賞ノミネート作品”という ふれ込みは、海外で映画をプロモートする際に非常に効果的な宣伝要素。 このため、スタジオ側は海外ウケが良い 白人主演の作品を アカデミーのメンバーに積極的に売り込む傾向があることも伝えられているのだった。



人によっては今回の #OscarsSoWhite の問題を、 全米のいくつかの州で問題になっている 警官による黒人容疑者に対する発砲や、過剰な暴力の事件と結び付けて、 アメリカ社会に根強い人種差別と見る声も多いけれど、 ハリウッドのインサイダーになればなるほど指摘するのは、アカデミーのメンバーシップがライフタイム、すなわち生涯保証されたステータスであるという問題点。 このため 平均年齢65歳と言われるメンバーの約半分がリタイアした高齢者で、ノミネート対象となる映画の殆どを観て居ないのが実情なのだった。
このことは数年前にニューヨーク・タイムズ紙が アカデミーの匿名メンバーに対して、投票用紙のマークシートを埋める理由を 取材した際にも指摘されていたことで、そのメンバーは作品賞のノミネート作品を 全てを観ていなかっただけでなく、 ジェニファー・ローレンスに投票しない理由について 「”サタデーナイト・ライブ(SNL)”に出演した際の彼女のダイアログが気に入らないから」と 演技とは全く無関係の理由を述べており、こうした傾向は 第一線を退いた高齢メンバーに決して少なくないことがレポートされていたのだった。
したがって、映画をきちんと観るメンバーが投票してさえいれば、2015年のサプライズ・ヒットで、 ヒップホップ・グループ N.W.Aを描いた「ストレイト・アウタ・コンプトン」(写真上、左)が作品賞にノミネートされていたはず という声は非常に多いのが実情。 また、高齢メンバーほど人種やカルチャーのディバーシティ(=バラエティ)にコンサバな姿勢を見せる傾向が強いだけに、 メンバー構成を現役中心に若返らせるだけでも、ノミネーションの公正が図られる と言われるのもまた事実なのだった。

ちなみに、アカデミーのメンバーの94%が白人という割合は、2016年の大統領選挙の先陣となるアイオワ州の人口比率と同様。 でもアイオワ州民の平均年齢は約38歳で、アカデミー・メンバーより遥かに若いのだった。
そのアイオワ州における予備選挙は、他州とは異なり コーカスと呼ばれる 党員集会という形で行われるけれど、 最新の世論調査で勝利が見込まれているのは 共和党がドナルド・トランプ、民主党が僅少差でバーニー・サンダース。 でも今週末になってから、NY元市長であり、セルフメイド・ビリオネアのマイケル・ブルームバーグが独立候補として 出馬に傾いているという噂が流れていて、もしこれが実現した場合、2016年の大統領選挙は かなり面白い展開になる気配なのだった。

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執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。 丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。

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