Jan. 25 〜 Jan. 31 2010




” I'm Eating Carefully ”


今週水曜日の1月27日にアメリカで行われたのが、オバマ大統領による初めての一般教書演説。
一般教書演説とは大統領が毎年この季節に必ず議会で行う 長い長いスピーチで、基本的には政策方針演説なので 特に新しい事が語られる訳ではないけれど、その白々しいまでの熱狂的な拍手やスタンディング・オーベーションで ショーアップ効果を高めているところが年に1度の大イベントという感じになっているのだった。
スピーチには、Job/ジョブ、Economy/エコノミーといった言葉が多数用いられていたことが伝えられていたけれど、 その一方で スピーチが始まって20分後に やっとオバマ政権にとって目下最大の課題である健康保険改正案に触れたことを 不満に捉えるリアクションも聞かれていたという。
私は、この日は出かけていてスピーチを見ていなかったけれど 翌日の新聞で斜め読みした限りでは、 プレディクタブル、すなわち推して知るべしという内容に感じられたのが正直な印象。
ちなみに、このスピーチの中でオバマ大統領が自動車業界のベイルアウトについてふれた際、「 Nation that invented the automobile cannot walk away from it. (アメリカは自動車を発明した国家であるから、自動車業から手を引く訳には行かない) 」 と語っているけれど、翌日のメディアやインターネット上では「自動車を発明したのはドイツのカール・ベンツだ」という揚げ足取りの指摘がされており、 「オバマ大統領もサラー・ペイランの頭脳と対して変わらないのでは?」といった厳しい批判も飛び出し、 下降線を辿るオバマ人気を感じさせていたのだった。

そんな中、金曜になって報じられた 大統領と米国経済にとって明るいニュースは、 2009年第4四半期のアメリカのGDP(実質国内総生産)が前期比年率で5.7%のアップとなったという報道。 これは事前の予測、4.8%を上回っただけでなく、6年ぶりの高い数字。
とは言っても、GDPの3.4%は在庫レベルを保つための生産であるため、経済専門家の中には既に 2010年第1四半期も同じ成長を 保つのは難しいと指摘する声が聞かれているのだった。
アメリカの場合国内生産の増加に不可欠と言えるのは、国内消費であるけれど ギャラップ・ポールの調べによれば、 アメリカ国民は、年齢層に限らず2008年に比べると2009年は 1日に使う金額が平均で30ドル減っているとのこと。 この調査によれば、最も1日に使うお金が多いのが1965〜79年に生まれたジェネレーションX。この世代は、 2008年には1日に平均110ドルを使っていたけれど、それが2009年には71ドルに落ち込んでいたとのこと。
ジェネックス(ジェネレーションXの略称)世代に次いでお金を使っているのは1946〜64年に生まれたベビー・ブーマー世代であるけれど、 この世代も2008年には1日98ドルの消費をしていたところが、2009年にはその金額が64ドルに落ち込んでいることが伝えられているのだった。


ところで、多くのアメリカ人にとって 毎日の出費の内訳の中に必ずといってよいほど 含まれるのが食費。
以前にもこのコーナーで触れたとおり、アメリカは食費が安い上に、安いフードほど高脂肪、高塩分、高カロリーの 不健康食品であるため、貧困家庭ほど肥満が多いという図式が成り立っているのが現状。
ことにリセッションに入ってからは、貧困家庭の人々が価格が安いファスト・フードを主食にして 食費を抑えていることが伝えられているけれど、アメリカで不健康な食べ物がファスト・フードだけだと思ったら大間違い。 CDC(The Center for Disease Control and Prevention) / 連邦疾病予防センターの見積もりによれば、 アメリカでは毎年 フードが原因の疾患が7600万件発しており、そのうちの32万5000件が入院、そして5000人が死亡しているという。
動物とそこに働く労働者の双方にとって劣悪な環境で営まれる食肉業、遺伝子組み換え技術を駆使して生産される野菜や、 それを原料とした様々なプロダクトは、既に長年に渡って人々の身体を蝕んできているのである。

この実態を描いたドキュメンタリー映画が、2009年に公開された「Food Inc. / フード・インク」。 この作品の中では、食品業界が数社のメガ企業によってコントロールされており、 それらが食品の生産プロセスをより早く、より大きく、より安くして莫大な利益を上げている実態が描かれているのだった。
例えば、本来なら出荷までに90日を要するはずのチキンを49日で発育させているという事実や、 トマトを青いうちに収穫して、エチレン・ガスによって真っ赤に、そして傷つきにくいトマトに仕上げているプロセス、 さらに牛をトキシックなケミカルを含む餌で太らせている様子などで、 映画のキャッチフレーズにもあるように、この作品を観たら 誰もがディナーで何を食べるかを深く考えるようになってしまいそうな 内容なのだった。
ちなみにエチレン・ガスによって真っ赤になったトマトは、普通に熟したトマトのような栄養素は持ち合わせていないとのことで、 例えばトマトに豊富に含まれている 日に焼けた肌のダメージを防ぐライコピンなどは、こうした人工的なプロセスで 生産されたトマトには望めないのだという。すなわち、野菜を食べるメリットが全くなくなってしまうのが、こうした人工的な生産工程なのである。

かく言う私は、30代に入ってエクササイズを始めてから 食べ物には至って気をつけるようになったつもりでいたけれど、 20代までは 本当に食べたいものを食べて生きてきたような状態で、気をつけていたのは野菜と炭水化物とたんぱく質のバランス程度。
でも30歳になった途端にメタボリズムが下がり始め、当時これと言った運動をしていなかったこともあり、 気が付くとスカートのウエストラインから脂肪がはみ出す状態。そこで、建物内にジムがあるアパートに引っ越したのをきっかけに、 エクササイズとダイエットを始めたのだった。
この当時のダイエットは、大根、にんじん、ごぼうを大きな鍋で45分煮て、アクを取った煮汁を毎日、朝晩1杯ずつ飲むのに加えて、 煮終わった大根、にんじん、ごぼうを、スープにしたり、温製サラダにしたり、カレーや煮物にして食べることで、 このダイエットとエクササイズで、私は7キロほどを落としたのだった。

でも同じ食材ばかり食べると どうしても飽きてくるもので、ある時からこの根菜煮汁のダイエットを止めて、 キャベツのサラダなどを食べるようになり、炭水化物はもっぱらベーグルを食べる生活に変わって行ったのだった。
そして、この食生活でもさらに2キロほど落としたけれど、基本的にこの時私がしていたのは低脂肪ダイエット。 砂糖よりも、炭水化物よりも、とにかく脂肪を抑えるというダイエットで、これは当時のアメリカで爆発的に流行っていたダイエット。
スーパーマーケットに出かければ、ファット・フリーのチーズやローファットのマヨネーズ、ロー・ファットのクッキー、 アイスクリームといったプロダクトが幅広いセレクションを見せていた時代だったので、 私は当時のジム仲間に薦められたこともあり、ローファット・ヨーグルト、ローファットのハムなどを 徐々に食生活に取り入れるようになっていったのだった。
そうするうちに朝食も、ベーグルより繊維質が取れるという理由で、シリアルに変えたけれど、 これがきっかけで私の体重は徐々に5キロも戻ることになってしまったのだった。

アメリカではTVを見ていると、シリアルがダイエットに良いという CMが出てくるけれど、 私の場合、朝食をシリアルに変えた直後は、痩せはしないものの 気分が変わって新鮮な思いをしていたのだった。
でも 徐々に、腹持ちの悪さを実感するようになり、日に日にボールに注ぐシリアルの量が増えていって、 さらにはシリアルを朝食時だけでなく、空腹時のスナック代わりに食べるようになっていったのだった。 なので、次第にシリアルの消費量が増えて、常に3種類くらいのシリアルの箱が自宅に常備されるようになってしまったのだった。
それに連れて、どんどんコントロールが出来なくなってきたのが食欲。 私は、日記をつける習慣があるので当時の日記を読むと良く分かるけれど、 自分でもどうしてしまったんだろう?と思うほどに、空腹感が抑えられなくて、 当時流行りに流行っていたローファット・フードとシリアルを空腹時に食べ続けることになってしまったのだった。
そしてそうするうちにローファット・フードでは飽き足らなくなって ドーナツやケーキなど、 それまで避け続けてきたタブー・フードに手が伸びるようになり、せっかく落とした体重が3ヶ月程度をかけながら5キロも戻ってしまったのだった。

この時に感じたのが、大手食品会社が生産するローファット・フードやシリアルには、 食欲を刺激する何らかのトリックがあるのでは?ということ。
そもそも、私はポテト・チップやポップコーンといったスナック類が大嫌いで、子供の頃から殆ど食べてこなかったもの。 そんな私が空腹時のスナックとしてシリアルを食べていたなんて、今から振り返ると自分でも信じられない訳で、 このシリアル中毒を自覚してからというもの、私は一切シリアルは口にしないと決めたのだった。

私の周囲にもシリアル・ダイエットで最初は2キロ程度を落として喜んでいたものの、やがては体重を増やして終わった人が何人か居るけれど、 実際、シリアル中毒というのは決して珍しい症状ではなくて、アメリカの子供でシリアルしか食べないというケースは決して少なくないし、 親達もシリアルには繊維やヴィタミンが入っているから と安心してそれを放置する傾向にあるという。
でも実際にはシリアルには繊維質やヴィタミンといった一見身体に良さそうなもの以上に、糖分、ケミカルが含まれており、 さらに大手食品会社のプロダクトは脳を刺激してそれを食べる幸福感を与えながら、それが持続しないようにプロダクトをデザインして、 また食べたくなるように操作している訳で、大人でも子供でも中毒的に食べたくなっても不思議ではないのである。

なので、私が以来 心に決めているのが 工場で生産されたフードは食べないということ。
これは冷凍食品、クッキー、スナック、缶詰、アイスクリームなど挙げていったらきりがないけれど、パンにしてもベーカリーで作られたものは購入するけれど、 アメリカのスーパーで売られている工場生産のものは一切口にしないようにしているのだった。
さらに 殆ど と言ってよいほど食べない、口にしないのが、挽き肉、プロセス・フード、揚げ物、ソーダ&ソフト・ドリンク類。
挽き肉はどんな肉が混ざっているか分からないためで、年に1〜2回ハンバーガーを食べる際は、 シェイク・シャックや、DBGBのように、肉の出所をちゃんと明かしている店や、インハウスで挽き肉にしているところで 食べるようにしているのだった。なので、ファスト・フード・チェーンなどは論外の存在。
プロセス・フードは チーズ、ハム、ソーセージなどで、身体に悪いだけでなく老化を促進させるために食べないようにしているけれど、 もちろんイタリアン・レストランの自家製ソーセージなどは頻繁には食べないものの タブー視はしてないフード。
揚げ物については、日本に一時帰国した際に たまにてんぷらなどを食べることはあっても、 アメリカでは食べる頻度は恐らく1ヶ月に1回以下。 レストランでステーキをオーダーしてサイドにフライド・ポテトが付いて来る場合は、マッシュ・ポテトかベイクド・ポテトに変えてもらうのが常である。
ソーダとソフト・ドリンクは、そもそも好きではないのと、ソーダは飲み続けるうちに骨に悪影響を及ぼすといわれ、 ソフト・ドリンクはたとえダイエット・ヴァージョンでも飲めば体重が増えるので、もっぱら紅茶、緑茶、コーヒー、もしくは水を飲むのが習慣になっているのだった。

逆に食べるように心かけているのはオーガニック・フードで、野菜やナッツ、果物は極力オーガニックを購入するようにしているのだった。 加えて、肉よりは魚、それも水銀の危険を考えてあまりサーモン、マグロといった巨大魚は食べないようにも心掛けているのと、 いわゆるお惣菜というものは、調理のプロセスや食材を信頼できる店でしか買わず、 その辺のデリのサラダ・バーなどでは一切食べ物は買わない主義なのだった。
さらに、調理に使う油は料理の種類に関わらず、必ずオリーブ・オイルで これは体内のグッド・コレステロールと呼ばれるHDLを高めてくれるため。 あとは、甘いものは極力ダーク・チョコレートを食べるようにしているけれど、実際にこうした食生活は、 しきりとローファット・フードを食べてダイエットをしていた頃に比べると、遥かに食欲が安定していることが実感できるのだった。

先日、日本から来た私の友人に私の食生活を説明したところ、「そんな事をしていたら、食べる物がなくなっちゃう」と言われてしまったけれど、 食物は毒にも薬にもなるもの。身体に悪いフードは 体重が増えたり、糖尿病などのリスクもさることながら、エイジングをスピードアップさせるけれど、 身体に良く、ケミカルの混入量が少ないフードは、その逆の効果をもたらす訳であるから、 高いモイスチャーライザーを使うより肌に良かったりもするのである。

でも私の持論では、どんなに食べ物に気をつけていても必要なのはサプリメントの摂取。
というのも、たとえ野菜を食べたとしても 現在の怪しげな生産工程のせいで、 味や見た目は変わらなくても、その野菜に含まれる栄養素が確実に失われているためで、 食べ物から摂取できるヴィタミンやミネラルの量は頭で描くほどは多くないというのがその理由。
中には、サプリメントに含まれるケミカルを嫌う人も居るけれど、専門家はサプリメントに含まれるケミカルが 大手食品会社のフードに含まれるケミカルよりも遥かに少ないだけでなく、健康面にもたらすメリットが大きいことを指摘しているのだった。

ところで、ファスト・フードを毛嫌いして もう何年も食べていない私でも時々 食べてみたくなるのがマクドナルドのフライドポテト(英語ではフレンチ・フライ)。
あの匂いを嗅ぐと、空腹時などは本当に食欲をそそられるけれど、 以下のドキュメンタリー「スーパーサイズ・ミー」のシーンを見てからというもの、もう恐ろしくて口に入れるのも嫌になってしまったのだった。 このビデオは英語であるけれど、やっていることは単純なので、英語が分からない人にも何が起こっているかは簡単に想像が付くもの。
ここで行われている実験は、マクドナルドのビッグマック、チキン・マッグリル、フィレオ・フィッシュ、クォーター・パウンダー、フライド・ポテトを それぞれ別々のジャーに入れて、さらに普通のレストランからテイクアウトしたハンバーガーとフライド・ポテトを それぞれジャーに入れて、時間の経過で観察するというもの。
マクドナルドのシグニチャー・バーガーである ビッグ・マックは3週間ジャーの中で、カビることもなく 買ってきたばかりの様相を保っており、 その他のマクドナルドのバーガーも一般のレストランのフードより「ずっと持ちが良い=保存料が沢山入っている」のが見て取れるのだった。
でも最も驚くべきはフライド・ポテト。10週間が経過しても、昨日買ってきたかのようなルックスを保ち続けて、 カビることもなければ、腐ることもなく ジャーの中で存在している様子は、 「一体、このポテトのように見える物体の中には何が入っているんだろう?」と真剣に考えさせられてしまうもの。
何が入っていたとしても、これを食べ続けていたら 頭でも身体でも 何処かがおかしくなっても不思議ではないように思えてしまうのだった。








Catch of the Week No. 4 Jan. : 1月 第 4 週


Catch of the Week No. 3 Jan. : 1月 第 3 週


Catch of the Week No. 2 Jan. : 1月 第 2 週


Catch of the Week No. 1 Jan. : 1月 第 1 週





執筆者プロフィール

秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。
丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、1989年渡米。以来、マンハッタン在住。
FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。
その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。





© Cube New York Inc. 2009