Jan. 24 〜 Jan. 30 2011

” Spend Money Wisely ”

今週のアメリカでは週末に入って、エジプトの政情不安の報道が大きく行なわれていたけれど、 それ以前のメジャーなニュースはもっぱら火曜日に集中していて、同日早朝に発表されたのが今年のオスカーのノミネーション
そして同く火曜日、アメリカ東部時間午後9時から行なわれたのが オバマ大統領のステート・オブ・ユニオン・アドレス(施政方針演説)なのだった。
施政方針演説は、メジャー・ネットワーク、及びケーブルのニュース・チャンネルが全て放映する、年に1度の大統領スピーチであるけれど、 私は、アメリカに来てからというもの、何故か施政方針演説は毎年TVで観る習慣があって、 ジョージ・W・ブッシュ前大統領のカリスマ性に欠く、退屈なスピーチでも 辛抱強く、任期8年分の 8回 も聞いていたのだった。
今回はオバマ大統領にとって3度目の施政方針演説であったけれど、誰もが指摘したのは盛り上がりに欠ける、 トーンダウンしたスピーチであったということ。

その理由の1つは、これまで会場の通路を挟んで右と左に分かれて座っていた共和党、民主党の議員を あえてミックスして着席させたためで、例年なら民主党が指示する方針や法案を大統領が語ると、民主党側が総立ちのスタンディング・オーベーションを見せて、 白々しいほどにそれを何度も繰り返して、スピーチを盛り上げるのが施政方針演説。 もちろん共和党も同調する方針や、アメリカ全体の利益や国力等に関わる部分では会場全体が総立ちになるのが通例なのだった。
ところが、今回は民主、共和両党の協調ムードを現わす演出として、両党の議員が隣同士にミックスして座ったことから、 民主党議員は、隣に居る共和党議員がシラっとしている中、 立ち上がって拍手喝采をするには抵抗があったようで、例年よりスタンディング・オーベーションの数が遥かに少なくなっていたのだった。
聴く側が静かであれば、スピーチする側のオバマ大統領も、淡々とした口調になっていくのは理解できるところで、 誰もが今回の大統領スピーチにパワーが感じられなかったことをし指摘していたのだった。

加えて そのスピーチ内容も、 アメリカ国民が通常 聞きたがるような、アメリカの偉大さや、アメリカという国が持つ力、可能性を誇示する部分が少なく、 逆に中国のテクノロジーへの投資や、韓国の学校教育を讃えて、それを「アメリカが見習わなければならない」といった内容が何度も出てきていたのは、 施政方針演説としては珍しいと言えることなのだった。
ちなみに、私は世間が称賛するほど オバマ大統領が卓越してスピーチが上手いと思ったことは無くて、 1時間以上にも渡るスピーチを 短く感じさせるのは、やはりクリントン元大統領だと思っているのだった。

話は全く変わって、今日、1月30日に男女シングルスの決勝が行なわれて終了したのがテニスのオーストラリアン・オープン。 そして、来週にはスーパーボウルが行なわれるけれど、私は試合自体を観る時間はさほどなくても、その結果はニュースで追っているので、 こうしたスポーツ・イベントの勝者を当てるのには割りに自信があったりするのだった。
そんな私に、昨今しつこくNFL (プロ・フットボール)のゲーム予測を訊いてきていたのが、金融業界に勤める私の女友達。 彼女はフットボールに全く興味が無くて、彼女とフットボールの話をしたら、1分も経たないうちに、 彼女がいかにフットボール音痴であるかが分かるような状態であるけれど、そんな彼女が突如フットボールの結果にこだわりだしたのは、 オフィス内で、プレーオフからスーパーボウルまでの間、毎週のように賭けが行なわれていたため。
フットボールに無知な彼女が予測をすると、チーム名やチームが所属する都市の印象で判断することになる上に、 彼女は そもそも かなり勘が悪い方。なので、ことごとく負けるチームに賭けようとしてきたけれど、そんな彼女に「シアトル・シーホークスなんて、 シーズン中負け越して プレーオフに進んだチームなんだから、勝つ訳無いでしょう!」と予測を全て逆にするようにアドバイスするのが 私の役割なのだった。
その結果、彼女は毎週のように賭けに勝ち続けて、フットボール音痴にも関わらず、勝率はオフィスで第2位。それも1位と僅少差で、 あまりの勘の良さが見込まれて、「トレーダーにならないか?」と上司にオファーされるほどになってしまったのだった。


現在、まだインターン状態の彼女が、 トレーダーになるというのは大出世を意味すること。
なので、彼女は興奮を隠しきれない携帯メールを送付してきて、今度は私にテニスのオーストラリアン・オープンのシングル決勝の勝者を教えて欲しいと言ってきたのだった。
私はその携帯メールを受け取るまでは、単なるオフィスの賭けだと思って付き合ってきたけれど、 今度のオーストラリアン・オープンは彼女の勘の良さをテストするために、上司が特別にチャレンジしてきたもので、 彼女の仕事のポジションが懸かっているかもしれないものなのだった。
ちなみに、彼女の予測は男子がノヴァック・ジョコヴィッチ、女子が中国人プレーヤーとして始めてグランド・スラム大会の決勝に進出したリー・ナ。
男子は当たっていたけれど、女子はキム・クライスター(写真右)が勝利したので、こちらは外れていたのだった。

私が この一連のスポーツの賭けを通じて 複雑な気持ちになったのは、まず「金融会社が フットボールの賭けに 勝ち続けたくらいのことで、 インターンをトレーダーにして良いのか?」 という疑問が浮上してきたこと。 さらに、私の予測で友達がオフィスで第2位になってしまったということは、 少なくとも彼女の勤める金融企業では、私より 勘や分析力が劣る 男性達がトレーディング・フロアを占めているということを意味する訳で、 株式市場の先が読めない今、「こんな人々に財産を任せる貸付信託なんて、恐ろしくて出来ない」 という危惧が感じられてしまったのだった。
ちなみに、私の女友達は勘は悪くても、MBAを持つ才女。 でも勘が悪いというのは、人の心もあまり読めないということで、無駄な人間関係にお金や労力を使って、人付き合いには人一倍苦労をしているのだった。 なので、そんな彼女がマーケットの動向を読めるのかは、私は大きく疑問視するところなのだった。

そうかと思えば、私の知人の中には、高校中退の学歴でも、カジノのギャンブルと投資で、マルチ・ミリオネアになってしまった男性が居るけれど、 彼の印象は私の女友達と正反対。 勘や動物的本能を武器に生きているというオーラが身体中から出ていて、 彼はその嗅覚で、普通の人が見下すような投資チャンスを見つけて、大儲けをしたのだった。
週末のニューヨーク・タイムズ紙にも、ヘッジ・ファンド・マネージャーのジョン・ポルソンが、ゴールドに集中的に投資をした結果、 2010年に$5ビリオン(約4100億円)の利益を上げた記事がビジネス欄のトップになっていたけれど、 このジョン・ポルソンが経営するポルソン&カンパニーは、住宅ローンが破綻すると賭けて、2007年には$4ビリオン(約3280億円)を稼ぎ出したことでも 知られる存在。 ゴールドは2010年だけで 30%も値を上げている訳で、 ジョン・ポルソンは、コレと思った投資ターゲットに 大きく打って出ることで知られているのだった。

でも普通の人にとっては、私の友人のように人がリスキーだと思うビジネスに手を出したり、 ジョン・ポルソンのように、投資対象に思い切った大金を投じるようなことは そうそう出来ないもの。
だから地道な投資対象を選んで、地道にしか儲からない道を歩むことになるけれど、 そんな一般の人々が、知らず知らずのうちに 投資をして、その価値を知らずに終わっているケースが非常に多いのが、 ジュエリー。
私がここで言うジュエリーは、14K 以上のゴールドを使ったジュエリーで、18Kメッキのシルヴァーはもちろん対象外。 また、たとえシャネルでも、ルイ・ヴィトンでも、ファッション・アクセサリーはリセール・ショップやネット上で再販するのがせいぜいなので、 これも論外なのだった。

ジュエリーと言えば、「買うときは高くても、売るときは安くなる」ので、投資には向かないものと見なされているけれど、 ジュエリーに使われているゴールドは、重さに応じて常にその時の時価で買い取ってもらえるもの。
例えば、CUBE New Yorkがネーム・プレート・ペンダントを扱い始めた2001年は、ゴールドが 今の5分1以下のお値段だったけれど、 ミス・スペルのペンダントやサンプルで製作したペンダントが、いくつも不良在庫となっていたのだった。 こうしたネーム・プレート・ペンダントや、修理不能なフープ・イヤリングなどが、何年もが経過するうちに かなり貯まってきたことを業者に話したところ、彼が仲介して 売ってくれることになり、 大学時代に付けていた18Kゴールドのリングなど、ゴールドがさらに安かった時代のジュエリーも含めて、 一気に売って貰ったところ、ビックリするような価格で買い取ってもらうことが出来たのだった。

また、今週には今まで付けていた14K ホワイト・ゴールドの3ストーン・リングをイエロー・ゴールドに仕立て直したいと思って 業者に相談したところ、彼がちょうど同じスタイルの18Kのリングを売りたがっていて、14Kゴールドと同じお値段にしてくれるとオファーしてきたのだった。 私はもちろんそのオファーに飛びついたけれど、それと同時に要らなくなった14Kホワイト・ゴールドのリングを売ってもらったので、 私が支払ったのは、僅かな差額だけ。 ちなみに私がこのリングを作ったのは2002年で、今や30gが1300ドル台で取引されるゴールドが、200ドル台だった時代。 今、同じリングを購入しようと思ったら、その小売価格は 私が2002年に支払った金額の4倍以上。 なので私としては、石のセッティングは同じでも、全く新しい18Kのリングが小額で手に入って 大喜びであったけれど、 こんなことが出来るのは市場価値が確立されているゴールドであるからこそ。


でも同じゴールド・ジュエリーでも、お金の無駄になりがちなのは、クォリティの低い、1カラット未満のダイヤモンドがセットされたジュエリー。
ダイヤモンドはデビアスが市場を上手くコントロールしているので、商品が溢れているにも関わらず値崩れしないプロダクト。 ところが、中古のダイヤになると、そうはいかないのだった。
しかも、一粒1カラット未満のダイヤは、 業界では財産価値があるとは見なされないもの。 鑑定書さえ付ける必要が無くて、もし付いていたとしても、意味の無い検定資格を取得するのと同じで、何の役にも立たないのだった。
なので、購入する際も 0.9カラットのダイヤと 1カラットのダイヤでは、素人は大きさの違いに気付かなくても、 価格は大きく異なるもの。だからこそ、あえて見た目の大きさは1カラットとさほど変わらなくても、お値段の安い 0.9カラットを購入する人は少なくないけれど、 これを売ろうと思った時には、購入時の1カラットとの価格差の3〜5倍は値崩れするのを 覚悟しなければならないのだった。

また大きさが1カラットに達していても、ダイヤは流通量が多いだけに、中古を売ろうとした場合、そのクォリティがVS1(ダイヤモンドのClarity / クラリティを示すグレードで、 石の内側にごく僅かなカラー・スポットや濁り、不純物が見られるレベル)より劣る場合は、 同様の値崩れを見込まなければならないのだった。
でもこれが、希少なカラー・ダイヤになると 話はまた別で、特にピンク・ダイヤ、新たに登場したレッド・ダイヤモンドなどは、 買う段階でも超高額であるけれど、たとえ1カラット程度の小さな石でも、投資になったと思える金額で買い取ってもらえるのだった。

なので、私は女友達には つけなくなったゴールドのジュエリーは、もう少しゴールドが上がるのを待って、まとめて売ることを薦めているけれど、 それと同時に、ジュエリーは上質のフェイクを薦めているのだった。
私は自分のCubicle Julesのビジネスで価格の内情を熟知しているから言えるけれど、Cubicle Julesで扱うようなシミュレーテッド・ダイヤモンドを あしらったジュエリーは、その価格の殆どがゴールドに対して支払っているもの。 だから石が小さくても、ゴールドの分量が多いリングは高額になるし、石が大きくても華奢なリングは比較的安価になるのだった。
したがって、もし将来的にリングに飽きてしまった時、もっと大きな石をフィーチャーしたリングが欲しくなった場合、 リングをジュエリーとしてではなく、ゴールドとして売れば、時価で買い取ってもらえる訳で、 その時点でゴールドの価格がアップしてた場合は、リングに支払った以上の金額になるのだった。
その意味では、いくらメッキのテクノロジーが発達したとは言っても、シルバーの18Kゴールド・メッキは お金の無駄。さらに、10Kゴールド、シルバーの18Kメッキのジュエリーにセットされているような、質の悪いキュービック・ジルコニアは、 暗い照明なら それなりに本物っぽく見えても、どこか安っぽい印象が漂うので、こういうジュエリーを付けていると、 女性としての価値まで見下されてしまうのだった。

もちろん中には、ハリー・ウィンストンのジュエリーをつけていても、似合わない、何故か本物に見えないというような 女性も居る訳で、お金では人間的魅力が補えないのもまた事実なのだった。


さて、2月にはヴァレンタイン・デイを控えているけれど、ヴァレンタイン・デイはアメリカでは最も婚約するカップルが多い日。 レストランで、シャンパン・グラスにエンゲージメント・リング(婚約指輪)を入れてプロポーズするのは よくある演出なのだった。
男性がヴァレンタインにプロポーズする理由の1つは、エンゲージメント・リングをヴァレンタインに贈るプレゼントと兼ねられるので、 プレゼント代を1回節約できるからとも言われるけれど、実際、独身男性とって頭が痛いのが、こうしたヴァレンタイン・デイ、 バースデー、アニヴァーサリーの度に ガールフレンドにギフトを贈らなければならないこと。
私がこうした独身男性に、よく冗談で薦めるのが、 ガールフレンドと婚約して、3カラット以上のフローレス・クォリティのダイヤを贈って、それをローンで支払うこと。
そうすれば、誕生日が来ようと、アニヴァーサリーが来ようと、「僕はまだエンゲージメント・リングの支払いが終わっていないんだ」と 言い訳しながら、そのあたりで調達した1ダース12ドル程度のバラの花束さえガールフレンドに贈っていれば、 決して文句は来ないのだった。
また女性は、一度婚約すると 将来的に銀行口座や税金の申告が一緒になることを考えて、相手の出費を自分の出費と考えるようになるもの。 なので、ボーイフレンドに対しては「自分のためにお金を使うのは愛情の証」という考えを持つ女性でも、 フィアンセには「将来のために お金を貯めて欲しい」と考えるので、ギフトだけでなく、 高額なレストランに連れて行くように せがむこともなくなり、デートの出費も激減が見込まれるのだった。

それで、ガールフレンドと別れたくなったらどうなるか?といえば、男性側は婚約さえ解消すればエンゲージメント・リングを取り戻すことが出来るのである。
というのも、エンゲージメント・リングはアメリカでは「コンディショナル・ギフト」、すなわち条件付きのプレゼントと見なされていて、 婚約をしているからこそ、女性には受け取る権利があるギフト。 なので、婚約を解消したら男性に返却しなければならないもので、これについては既にいくつもの訴訟の判例があるので、 女性がどんなに有能なロイヤーを雇ったところで覆せないのだった。
でも一度結婚してから 離婚する場合は、婚約という行為を遂行していることもあり、婚約指輪が女性の財産となるケースは少なくないのだった。 もし、男性がどうしても婚約指輪を取り戻したかったら、結婚前に結ぶ協約であるプレナプチャル・アグリーメントで その旨 主張しておけば、女性は無条件でリングを返却しなければならないことになるのだった。

こうして別れたガールフレンドからリングを取り戻した男性は、また別のガールフレンドを見つけて、そのリングを リサイクルすることが出来る訳だけれど、 エタニティ・リングでない限り、リングのサイズ直しは比較的簡単で、それほど費用がかからないもの。
また、ゴールドとダイヤモンドの価格がアップしている場合は、リング本体を売るか、さもなくばリングをゴールドとダイヤモンドに分けて スクラップ売りをすれば、利益を上げることも出来るのだった。
私が知る限り、未だこれを実践した男性は居ないけれど、こんな冗談として語るストーリーにおいても、 その中核を成すコンセプトは、いかに財産価値があるものに対してお金を使うべきかということ。
財産価値があるものにお金を使うということは、結果的に投資をしているのと同じこと。 もちろん、自分自身に対しても投資は必要であるけれど、それが果たして投資なのか、投資に見せかけた詐欺まがいのセールスなのか、 それとも自分が無駄遣いの口実を探しているだけなのかを、 しっかり見極める必要があると思うのだった。





執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。 丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。


PAGE TOP