Feb. 1 〜 Feb. 7 2010




” Super Gap ”


私がこれを書いている2月7日、日曜日はスーパーボウルが行われるスーパー・サンデー。
スーパーボウルは年間で最高視聴率を獲得する番組であるだけに、CM放映料も30秒で3億円という高額ぶり。 昨年はリセッションの影響でその広告放映スポットが当日も売れ残っていたことが伝えられていたけれど、 今年は、スポンサーが全スポットを開催2週間前に買い取っており、 放映局のCBSが大きな利益を上げることが見込まれているのだった。

通常、アメリカでこれに次ぐ視聴率を獲得するのはアカデミー賞の授賞式であるけれど、 ここ数年、その視聴率に起こっている異変と言えば オスカー授賞式よりも スーパーボウルを観る女性の方が多いという状況。
かつてはスーパー・サンデーに夫やボーイフレンドがスーパーボウルに夢中で相手にしてもらえない妻やガールフレンドのことを 「スーパーボウル・ウィドウ」、すなわち ”スーパーボウル未亡人”と呼んだものだけれど、 今やそんな言葉は死語になりつつある感じである。 実際NFL(ナショナル・フットボール・リーグ)のグッズのセールスは、女性消費者の購入が男性消費者を上回っていることも伝えられるのだった。

ところで、今年のスーパーボウルはニューオリンズ・セインツVS.インディアナポリス・コルツの対決であったけれど、 アメリカ国民のエモーショナル・フェイバリット、すなわち感情的サポートを受けながら、今年のスーパーボウルを制したのは、 ハリケーン・カトリーナの被害から 未だ立ち直っていないニューオリンズのホーム・チーム、セインツ。
セインツにとって、今回は初のスーパーボウル出場であったけれど、かつてニューオリンズ・セインツと言えば、 対戦チームは 戦う前から「勝った」と思っているような軟弱チーム。 そのチームが今年は連勝に次ぐ連勝を続けてたせいで、ニューオリンズはすっかりフットボール・フィーバーで明るくなったとのことで、 市民の幸福指数が全米No.2にまでアップしてしまったのだった。
セインツがスーパーボウル出場を決めた瞬間などは、ニューオリンズ市内の交通がストップし、人々が車から降りて 見ず知らず同士が、抱き合って喜び合ったという光景も伝えられており、 セインツの選手達も、「単なるフットボールの勝利のためでなく、ニューオリンズの街に明るい話題とインスピレーションをもたらすために 戦う」 と語っていたのだった。

こんなコメントを聞いて私が思い出したのは2001年の9・11のテロの直後のニューヨーク・ヤンキーズ。
この年のヤンキーズは2000年までの黄金時代のピークが過ぎたのを感じさせる ピリッとしない試合ぶりが続いたシーズンで、 プレイオフに入ったものの、オークランド・アスレチックスを相手に大苦戦。 でも、デレク・ジーターの絶妙の守備をキッカケにチームが生き返って、 ワールド・シリーズの第7戦でアリゾナ・ダイアモンドバックスに敗れるまで、テロで沈みきっていたニューヨークは ヤンキーズの勝利で湧き上がっていたのである。
なので、ニューオリンズにもスポーツによって 明るい話題がもたらされるのが必要な状況は非常に理解できるけれど、 内心ちょっと複雑に思ったのは、今やアメリカ中の被災チャリティの関心が集中しているのがハイチ。 なので、ニューオリンズがこのスーパーボウルの勝利であまりに盛り上がりすぎると、アメリカ国民が 「もうニューオリンズは大丈夫」 と勝手に判断して、 まだまだ復興段階のニューオリンズに対するチャリティ・サポートが手薄になっていくのでは?という懸念なのだった。

ところで私は毎年 スーパーサンデーには友人宅で行われる スーパーボウル・ウォッチ・パーティーに出かけるけれど、 スーパーボウル・パーティーに付き物なのがベット、すなわち賭け。
フットボールの賭けは、勝利チームを予測するだけでなく、両チームのスコアも当てなければならないけれど、 私は毎年、勝利チームはもちろん、スコアもかなり近かったり、ドンピシャに当ててしまった年もあるくらいで、 スーパーボウル・ベットにはかなり自信を持っているのだった。 今年も、インディアナポリスのペイトン・マニングを応援しながらも、ニューオリンズ・セインツの勝利に賭けていて、 スコアはコルツの得点を1ゴール差で外してしまったけれど、掛け金を取り戻しただけでなく 僅かながら儲けてしまったのだった。

昨年のスーパーボウルは、リセッションの最も暗い時期だったこともあり、「エコノミーの話はナシ」というのが スーパーボウル・パーティーのルールになっていたけれど、 今年は 今週金曜に発表されたアメリカの失業率が9.7%に下がり、小売の売り上げもアップ。 そして、昨年はガラガラだったスキー・リゾートもヴィジターが10%アップしているといった景気の回復を 伺わせるニュースが報じられていることもあり、そんなルールはナシ。
なので ゲームの前後には経済の話になってしまったけれど、 金融関係の仕事をしている友人達が、こぞってリセッションを「昨年までのもの」 という過去形で語っている姿には 少々ギャップを感じてしまったのだった。
というのも、私が商品を仕入れている業者などは リセッションを現在進行形で語っているだけでなく、 回復前にはもっと悪くなることを予測している状態。 そうやって今も苦しむ人々と仕事をしている私としては、金融の友人達がゴールドマン・サックスの CEO、ロイド・ブランクフェインの9億円のボーナスは「安過ぎる」などと語っているのを聞くと、 真剣に 「頭が変なのでは?」 と思えてしまって、 ウォール・ストリートとメイン・ストリート(ウォール・ストリート以外の主に中小企業)が 同じアメリカでも全く別世界に、全く別意識で存在していること 思い知らされてしまうのだった。


話は変わって、大きな収入を上げているスーパーボウルとは正反対に、放映局の大赤字が見込まれているのが 2月12日にヴァンクーヴァーで開幕する ウィンター・オリンピック。
同オリンピックの放映権を買い取ったNBCは、2週間のオリンピックで200〜250億円の損出を見込んでいるのだった。
そもそも冬季オリンピックは、アメリカではフィギュア・スケート以外は あまり視聴率を獲得しないといわれるイベント。 それだけに、放映局のNBCは昨年末から、ヴァンクーヴァー・オリンピックで活躍が予想されるアスリート達のCMを作成・放映し、 彼らにスター性と知名度をもたらそうとしていたのだった。
そんな中、突如 メディア・フォーカスを浴び始めたのが写真左の ブロンド美女スキーヤー、リンジー・ヴォン、25歳。
彼女は2006年のトリノ大会では怪我で実力が発揮できなかったものの、アメリカの女性スキーヤーとして初めて 2008年、2009年のワールドカップを 2年連続で制するという快挙を成し遂げており、今回のオリンピックでもダウンヒルとスーパーGでゴールド・メダルが期待される存在。

でも彼女がここへ来て大きな注目を集めたのは、その美貌もさることながら、写真左のスポーツ・イラストレーテッド誌のカヴァー・フォトが 物議を醸したため。
スポーツ・イラストレーテッド誌は、女性アスリートを表紙にフィーチャーする確率は僅か4%。 加えて同誌は、年間最多売り上げを誇る スイムウェア・イッシュー(水着特集号)で スポーツとは無縁の ポルノまがいのグラビアを展開することで、女性運動家や活動グループから非常に嫌われているメディア。
その同誌が やっと女性アスリートを表紙にフィーチャーしたと思ったら、 セックスをウリにするような挑発的なポーズで、「もし男性スキーヤーだったら 決してこんなポーズで表紙にフィーチャーされることは無い」 というのが リンジーをフィーチャーした表紙に対する批判。
インターネット上では 目下、2月10日水曜に発売される同号の表紙の是非を巡って 論議やアンケートが盛んに展開されているのだった。

でも、そのお陰でリンジー・ヴォンという存在を認識して、彼女に注目するアメリカ人が増えたのは紛れも無い事実。
結局女性というものは、実力より ”色” の線でアプローチした方が効率的に知名度があげられるということなのかもしれないけれど、 私は 合法である限りは 女性が使えるものを使って のし上がることについては 決して悪いことだとは思わないのである。





Catch of the Week No. 5 Jan. : 1月 第 5 週


Catch of the Week No. 4 Jan. : 1月 第 4 週


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執筆者プロフィール

秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。
丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、1989年渡米。以来、マンハッタン在住。
FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。
その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。





© Cube New York Inc. 2009