Feb. 8 〜 Feb. 14 2010




” Love, It's All About Chemistry ”


ご存知のように2月12日からヴァンクーヴァー・オリンピックが開幕しているけれど、アメリカ国内では今回の開会式に  6750万人がチャンネルを合わせたと言われ、これは前回のトリノ大会よりも1700万人多い数字。
とは言っても、2月7日に行われ、史上最高視聴率となったスーパーボウルの1億650万人の視聴者数に比べると遥かに及ばない数字でもあったりする。
今回のオリンピックは、アメリカ西海岸では時差ナシ、東海岸でも3時間の時差という久々のリアル・タイム・オリンピック。
したがって、シドニー、アテネ、北京、トリノといった時差がある開催地のオリンピックの際に見られていた、 TV放映前にインターネットで結果が報じられて視聴率を失う というリスクが少ないとあって、 放映局のNBCは既に好調な視聴率を獲得していることを発表しているのだった。

開会式の日の朝には リュージュのグルジア代表、ノダル・クマリタシビリ選手(21)が公式練習中に死去し、 セレブレーション・ムード 一色という状況にはならなかった一方で、 肝腎の聖火の点灯の際に、4本せり上がってくるはずのコラムが一本上がらないというテクニカル・プロブレムにも見舞われたけれど、 後に聖火点灯の大役を務めたウェイン・グレンツキーがインタビューで語ったところによれば、 コラムが上がらなかった2分半の間、彼を含む聖火点灯アスリートの4人は、イヤ・ディバイスを通じて ディレクターから「問題が起こっているので、そのまま微笑みながら手を振り続けて欲しい」 といったアドバイスを極めて落ち着いた口調で 受けていたそう。 なので、彼らがパニックになることは無かったのだという。

そのカナダは過去に2回、モントリオール大会とカルガリー大会でオリンピックをホストしているけれど、 いずれの大会でもカナダはゴールド・メダルを獲得しておらず、初のホスト・カントリー・ゴールド・メダルが カナダにとって、国の威信を掛けた大きな課題になっていることが開催前から報じられていたのだった。
これを実現するために、カナダはオリンピックに向けて、様々な分野の科学者にウィンター・オリンピックの種目を テクノロジーとサイエンスの見地から分析させる120億円を投じた極秘プロジェクトを行ってきたとのこと。 そもそもカナダはアンチ・ヒーロー志向で、アメリカとは異なり アグレッシブに勝利を模索するような国民性ではないことが指摘されているけれど、 今回のオリンピックでは珍しく 30個のメダル獲得という目標を掲げているという。


さて、私がこのコラムを書いている2月14日はヴァレンタイン・デイ。
この日は、エンパイア・ステート・ビルディングもレッド&ピンクにライトアップされているけれど、 ヴァレンタインは 欧米では女性にプロポーズする男性が最も多い日として知られ、真っ赤なバラの売り上げが伸びると同時に、その値段が 大幅にアップする日。 日本とは異なり、男性にとってはチョコレートを貰うだけの日ではなく、女性にプレゼントをしたり、高額ディナーに連れて行くなど 何らかの愛情表現のアクションを起こさなければならない日であるだけに、アメリカ人男性の70%以上がヴァレンタイン・デイを ”疎ましい / 面倒な 習慣”と思っていることも明らかになっているのだった。

実際、アメリカでは最も多くのカップルが別れると言われるのが、年明けからヴァレンタイン・デイまでの間。
ホリデイ・シーズンは家族で集まるディナーなど、カップルで行動しなければならない行事が多いので、 惰性で関係を維持する傾向にあるけれど、それが過ぎれば 特に好きでない者同士がカップルで居る必要性が無くなるのは明らかな事実。 さらに男性側はヴァレンタイン・デイで余計な出費をさせられた上に、カップルの絆が強くなるのを恐れて、 女性側も特に好きとは言えない男性とヴァレンタインを一緒に過ごすことによる 後々の面倒を危惧するという。
また中には、ヴァレンタイン・デイに何もしないことによって、 相手に愛想を尽かさせて 別れようとする男性、 ヴァレンタインに無理な要求を突きつけて相手の反応とその愛情の深さをチェックしようという女性も居るというから、 昨今のヴァレンタイン・デイは、都市部の冷めたシングルにとっては 愛情の駆け引きにも使われているようである。

その一方で、ヴァレンタイン・デイは ”焼けぼっくいに火が付くこと (過去の女性との復縁)”を期待している男性、 もしくは ”いつかスコアを狙っている (ずっと思いは寄せている女性との関係を夢見ている)” 男性 にとっては、 恥をかくことなく、女性にアプローチが出来る日でもあったりする。
昨今増えているのが、こうした男性が、 真っ赤なバラの代わりにフレンドシップを示すイエローのバラや、 蘭のブーケなど、ロマンスよりも ”心遣い” を感じさせるギフトを贈るというもの。 女性なら誰でも 思わぬギフト、それも押し付けがましいロマンスが匂わない、フレンドリーなギフトを 贈られれば 気分が高揚するものだし、贈った男性に好感を持つのは当然のこと。
なので、男性側はそんなギフトをきっかけに 彼らの思惑通りに ゲームを展開することが出来るようになったりするという。 そして、こんな下心のあるギフトを贈るのは 既婚男性が多いことも伝えられているのだった。


ところで、以前からこのコラムで書いている通り、欧米では人々が ”恋をする” という行為を語る時に 必ず出てくるのが ”ケミストリー” という言葉。これは言ってみれば化学反応という意味であるけれど、 実際のところ、熱烈に恋をしている人々の脳をMRIで調べた結果、 ドーパミンが多量に分泌されていることが明らかになったという。
この結果を発表したロングアイランドのストーニー・ブルック大学のソーシャル・サイコロジスト、アーサー・アロンによれば、 恋愛、それも恋をしたばかりの人々、恋愛関係がまだ新しく、フレッシュな人々の脳の状態は、 コカインを摂取してハイになった状態と非常に近いのだという。
通常、ドーパミンが分泌されるのは自分がとても楽しい事をしている時。 それはセックス、ドラッグに始まり、チョコレートを食べることに至るまで様々であるけれど、 要するにドーパミンは興奮をもたらすホルモン。 もちろんドーパミンが過剰になれば、コカイン・ジャンキーのように その言動や行動がおかしくなることが指摘されており、 恋愛の場合、夜も眠れないほど相手に夢中になったり、エネルギー過剰になる症状、相手のことばかり考えてしまう強迫観念、 相手の気持ちが知りたいと思う不安、もしくは相手に誰か別の意中の人が存在するのでは?といった執拗な詮索などが それに当たるという。
すなわち、相手の気持ちが知りたくて 夜を徹して、物に憑かれたようにトランプ占いやタロット占いに興じているような状態は まさにこのドーパミン過剰の状態。
でもこのドーパミンの分泌が無い限りは 燃えるような恋に落ちないのもまた事実。 心理学者の中には、恋というものは愛情の始まりというよりは、” ある種の錯乱状態 ”と表現をする向きもあるけれど、 私もこの意見には全く同感なのだった。

一度、ドーパミンが分泌されると、次の段階で分泌されるのが愛情ホルモンとも呼ばれる オキシトシン(女性ホルモン)とヴァソプレッシン(男性ホルモン)。 オキシトシンが分泌されるのは、目を見つめあったり、肌が触れ合うなど 親密さが深まっている時で、もちろんセックスの最中にも分泌されるもの。 オキシトシンは子供時代に母親に抱かれている時にも分泌されており、母子の絆、信頼といった意識を形成する役割も果たしているとのこと。
一方のヴァソプレッシンは、お互いを識別し、絆を結ぼうとするもの。すなわちこのホルモンの受容体が多いほど、パートナーと強い絆で結ばれるけれど、 昨今の研究結果では、第12番染色体の遺伝子334というタイプを持っている男性はヴァソプレッシンの分泌が少なく、 通常より離婚率が2倍、すなわち浮気性であることも立証されているという。

こうしたホルモンの分泌が一段落すると、殆どの男女の関係はスリルやエキサイトメントの無い安定期に入ることになるけれど、 それでも、ごく一部のカップルは安定期の中でもドーパミン、オキシトシン、ヴァソプレッシンといったホルモンが分泌されるような 新鮮な関係を保つことが出来るとのことで、そのためには2人で新しい体験をしたり、新しい環境に自分達を置くといった 努力が有効であるという。

話を恋愛に戻せば、男女の出会いが恋愛に発展する鍵を握る ”ケミストリー” というのは、 要するにドーパミン分泌のこと。
私の個人的な意見では男性側のドーパミン分泌の鍵を握っているのは何と言っても女性のルックス。 男性が女性を一目見て、電流が走るようなショック(=ドーパミンの分泌)が無い場合、男性が女性にぞっこんになることは決して無いというのが私の意見で、 女性はどんなに努力をしようと、相手に尽くそうと、その状況を変えることは出来ないのである。 私は随分何人もの女友達に このことをアドバイスしてきたけれど、私がこれを自信を持って言う理由は、 私がこれまで意見を聞いたほぼ全員の既婚男性が 「一目見た瞬間に 自分はこの相手と結婚すると思った」と語っていること。
これに対して女性側は、往々にして「この人だけはイヤだと思った」とか、「最初は何とも思わなかった」という気乗りがしない 第一印象を夫に抱いていたケースが多いけれど、 これは男性側に言わせれば、本当に好きになった女性の前では ある程度慣れるまで 自然に振舞うことが出来ないのだそうで、 相手の気分を害する事を口走ってしまったり、下らないジョークを言ってシラケさせてしまったりして、 後で自己嫌悪に陥ることも多いのだという。

このことから分かる通り、男性の愛情はスタート時点で決まってしまうけれど、 女性の愛情というのは育つもの。 なので、男性は努力次第で理想の女性を手に入れることは可能であるけれど、女性の場合、どんなに労力や時間を掛けても、その場しのぎのガールフレンドや、 セックス・パートナーになれるのがせいぜい。男性が第一印象でピンとこなかった場合で 結婚にたどり着くことは、よほどの資産家令嬢が お金目当ての男性と一緒になるといった例外を除いては あり得ないと断言できるのである。

では、男性はどうして第一印象で自分の運命の相手を嗅ぎ分けるのか?、女性の愛情は何故 時間を掛ければ育つのか? という疑問が出てくるけれど、前者については男性の方が自分の求めるものを嗅ぎ分ける本能に長けているから、というのが私が考えるところ。 でも それが男性自身にとって有益か否かはまた別問題である。
これに対して、女性の愛情というのは男性のような本能的な部分が無い分、理性的なものであるから、特に結婚という問題になると 自分がどれだけ相手を好きか よりも、相手がどれだけ自分を幸せにしてくれるか?という視点から相手を選ぶ傾向が強くなる訳である。 特に、仕事をしないハウスワイフ志向の女性、すなわち社会的に受身の立場を選んでいる女性にとっては、 男性の様々な社会的クォリティ、すなわち地位、収入、家柄、 学歴といったものが その男性の「付加価値=魅力」となって加わっていくことになるから、そうした理性的判断が 愛情を高めていくのは言うまでも無いこと。
その一方で、男性は過去に同じような女性に何度 酷い目にあっても、やはり同じような女性に魅かれるケースが多いけれど、 女性の場合はもっと理性的なアプローチをしている分、学習能力にも長けているので、一度失敗したタイプ、 一度酷い目に遭わされたタイプには近寄らなくなり、自分と相性が良かったタイプ、自分を楽しまれてくれるタイプ、また時に ”放って置けないタイプ ”などを 好むようになって行くので、相手にそんな側面を見出すことによって 愛情が高まっていくもの。 これは母性に通じる部分も大きいと言えるけれど、いずれにしても基本的には男女間というのは、男性が運命の女性を嗅ぎ当てて、 熱心にアプローチをすれば、纏まる可能性が大きく出来ているのである。

でも、このコンセプトが徐々に時代遅れになりつつあることが指摘されているのが昨今。
というのも、今や女性が社会進出を果たして久しい時代。夫より妻の稼ぎが多かったり、夫が家事や育児を担当して、 妻が稼ぎ頭になることも珍しくない時代。
そんなアメリカで現在起こっているのが、男性も女性を選ぶ際にそのキャリアや学歴を考慮するようになっているという現象なのである。
それを裏付けるように昨年末のニューヨーク・ポスト紙に掲載されていたのが、昨今のスピード・デーティングの状況。 スピード・デーティングとは、同数の男女を一部屋に集めて、1人と約5分ずつ 全員と会話をしていき、自宅に戻って相性が良かった相手をウェブサイトから 指名して、それが相手とマッチした場合、デートをアレンジしてもらえるというサービス。
このスピード・デーティングの前に男女別々にインタビューをしたところ、男性は「女性のルックスにこだわる」という意見が大半で、 女性は「男性の収入や仕事が大切」という意見が多かったというけれど、実際スピード・デーティングが始まると、 男性側は女性のキャリアをかなり重視し、女性側は男性のルックスを重視していることが明らかになったという。

もちろん男性側としては、ルックスを見て気に入った女性のキャリアが気になるのかもしれないし、女性側とて 仕事とちゃんとした収入があっても、健康そうで、家族や友人に紹介して恥をかかないような ルックスを求めているのかもしれないけれど、特にリセッションに入ってから言えるのは、 男性にとっては「女性にも稼いで欲しい」という願望が強くなり、 実際に仕事をして稼いでいる女性にとっては「男性は稼ぐだけじゃ役不足」という 考えが強くなってきていること。
後者の女性ににとっての「稼ぐだけじゃ役不足」という部分は、自分と同じような高学歴、洗練された趣味やテイストを持って欲しいという場合もあれば、 「トラディショナルな男女関係のように束縛されるのはまっぴら」という場合もあるし、 「自分が稼いでいる分、相手も家の中のことが出来る人でないと困る」、「自分を母親だと勘違いして、面倒を見させられるのは御免!」と 考えている場合などがあって、保守的な男性であればあるほど 女性が扱いにくくなっているように感じられるのは確か。
その反面、これまでの男性の肩に圧し掛かっていた経済的負担は驚くほど軽減されるのが、この新しい時代の ”男女同等”の関係。
長く続いたリセッションがこの傾向に益々拍車を掛けたと見る向きもあるけれど、そもそもアメリカの保守的な田舎町では 古くから「美しさではお湯は沸かない」という言葉があったという。
すなわち、女性が一家の労働パワーとしてカウントされるのは 昨今に始まったことではない訳で、 女性が男性化した訳でもなければ、男性が女性化している訳でも無いのである。





Catch of the Week No. 1 Feb. : 2月 第 1 週


Catch of the Week No. 5 Jan. : 1月 第 5 週


Catch of the Week No. 4 Jan. : 1月 第 4 週


Catch of the Week No. 3 Jan. : 1月 第 3 週





執筆者プロフィール

秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。
丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、1989年渡米。以来、マンハッタン在住。
FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。
その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。





© Cube New York Inc. 2009