Feb. 7 〜 Feb. 13 2012

” Relationship Analysis ”

今週アメリカで 最も大きく報じられていたのはやはりエジプト情勢、そして週末に入ってからは、ムバラク大統領辞任のニュース。
今回の革命で改めて注目されたのが、インターネット、特にフィエスブックなどのソーシャル・ネットワークを使いこなす若い世代の機動力。 アメリカでも2008年の大統領選の際に、それまで殆ど無名だったオバマ大統領を当選させたのが、若い世代によるネット上のグラスルーツ・ムーブメント。
でもそ2年後には、その若い世代がオバマ政権に失望し、政治にも興味が薄れた結果、民主党が2010年秋の中間選挙で惨敗という結果に終わっているのは周知の事実。 それだけに、民主主義への移行という、もっと難しい課題を背負っているエジプトの将来が、決して明るいとは言えないのは世界中のメディアの 共通した見解となっているのだった。


さて、2月14日はヴァレンタイン・デイであるけれど、アメリカのヴァレンタインは、男性が女性にプレゼントを贈る、もしくはカップルが プレゼントを贈り合うもの。
かつてはバラの花束、ランジェリーが最も一般的な男性から女性へのギフトであったけれど、 アンケートによれば、女性にとって最も嬉しいギフトはジュエリー。 また アマゾンのキンドルのような ガジェット系のギフトを贈るケースも増えていることが伝えられているのだった。

アメリカでは、夫婦間でも きちんとヴァレンタインのギフトを贈り合うのは珍しくないこと。 リセッションに入ってからは、お金を節約するためにギフトをやめる場合があっても、ヴァレンタインのカードを贈って愛情表現をするなど、 心遣いを見せるのケースは非常に多いのだった。

1月末にニューヨーク・ポスト紙がニューヨークの既婚カップルを対象に行ったオンライン・アンケートによれば、 その結婚生活を10点満点で採点した場合、「8点以上」と答えたカップルが約60%。 最低の1点と採点したカップルは、全体の6%。
「人生がやり直せるなら、もう結婚はしない」と答えているのは、僅か20%で、 離婚が多いアメリカでも、ニューヨークの既婚カップルは比較的幸せに暮らしていることが明らかになっているのだった。

結婚していても、していなくても、カップルが長続きする要因というのは、 一説によれば 「相手と一緒にいる メリットと必要性」。
夫婦の場合、「メリットと必要性」として誰もが頭に浮かべるのが、男性による経済力と、女性による家事、育児。 でも私から見れば、「メリットと必要性」で結ばれているカップルというのは、長く続いていても、それが幸せであるとは限らないし、 時に本人達でさえ、一緒に居ることが ”関係” ではなくて ”環境”になってしまっていて、自分たちが幸せか?なんて考えたこともない ケースも存在するのだった。

私個人の意見では、理想的なカップル、長続きするカップルというのは、 相手によって、自分が より良い人間になっている、より幸せになっていることが実感出来る関係。
これは、お互いにポジティブな影響を与え合った結果であるから、相手と付き合い始めてからの自分を振り返ると、相手から受けたポジティブ効果が 自分の中に見出せるし、周囲もその変化に気付くことが非常に多かったりする。
人によっては、モチベーションやインスピレーションを得て、仕事や趣味にクリエイティブになる場合もあるし、 カップルが一緒に何かに取り組んで、生き甲斐になる趣味やプロジェクトを見い出だすケース、 相手と性格や趣味が合って、常に楽しい時間が一緒に過ごせるので、それによってストレスが緩和され、幸福感に満たされるケースなど、 そのポジティブな影響はカップルによって様々なのだった。

そんな「理想的な関係=自分を高められる関係」というのは、お互いに 「与え合う関係」。
愛情関係でも、友情関係でも、真の良好な関係においては、 相手の幸せが自分の幸せになって、幸せの分量が増えるからこそ、一緒に居て益々幸せになれるもの。
これに対して、ネガティブ要素の強い愛情関係、友情関係は、「奪い合う関係」であり、ジェラシー、競争意識、優越感&劣等感、 不満や疑いが介在して来るので、限られた幸せを2人で食い潰す状況。 幸せそうにしている相手に皮肉を言ったり、相手の楽しみを奪うような行為をすることによって、 お互いの幸せをどんどん減らしていくことになるのだった。

でも、世の中にはそんなポジティブ&ネガティブな関係だけでなく、ニュートラルで、全く何のインパクトも もたらさない 関係というのも存在しているのだった。
そもそも、私が今週のコラムでカップルの関係について書くきっかけになったのが、友人の38歳の男友達が、 1年7ヶ月も 一緒に暮らしたガールフレンドに突然別れを告げられてしまい、彼女が出て行くに際して 何の理由の説明も無かった という話を聞いたため。 その男友達は彼女と既に音信不通になってしまったために、別れた理由が何だったのかを本人に尋ねることも出来ず、 悶々と悩んでいるので、「女性の立場から分析して欲しい」と 友人に頼まれたのだった。

男友達が彼女を気に入った理由は、顔はそこそこでも 長身でスタイルが良く、エクササイズが好きで、スポーツ観戦も好き。 なので2人は 一緒にスポーツをしたり、ゲーム観戦に出掛けたり、スポーツ・バーで 気取らずにビールを飲み交わせる仲で、彼は デートで自分が好きなことを一緒に出来る女性に初めて出会ったと語っていたという。
また話を良く聞けば、2人は出会って4ヶ月目に一緒に暮らし始めて、出会いから半年後に彼女の方から結婚を持ち出してきたという。 でもその時点では 男性側はその気になれず、断りはしたものの、2人はその後も一緒に暮らし続けたとのこと。 したがって、一緒に暮らしたのは1年7ヶ月でも、付き合い自体は1年11ヶ月という長さなのだった。


「彼が一度結婚を断った」という話を聞いて、私が最初にひらめいたのは、時に男性が結婚を渋っていると、 女性が一時的に姿を消したり、別れたりして、自分の存在の重さを男性に知らしめて、結婚に持ち込もうとするのは良くある手だということ。
でも、さらに話を聞くうちに、このケースは違うと思い始めたのだった。
この女性は弁護士であったというけれど、一緒に暮らし始めて 彼のアパートに持ち込んだのは、日ごろ着用する服やシューズのみ。 一切インテリア関係のもの、すなわち家具やフレーム(額縁)、女性が通常好むクッション、キャンドルといったインテリア・アクセサリーを一切持ってこず、 洗面所のミラーの内側の戸棚を開けても、彼女のものは、フェイシャル・クレンザーなどが数点ある程度。
時間が経過しても、彼女はアパートを自分の好みにデコレートしようという気は全く無く、 2人が暮らしていた空間は、男性が1人暮らしをしていた時のアパートと全く同じ状態。黒いレザーのソファーに、 ビッグ・スクリーンTVがリヴィングにあるだけで、女性が転がり込んだとは思えない、 女々しさゼロのアパートであったという。

私は基本的に、こういうタイプの女性の頭の中は理解に苦しむけれど、思ったのは2人が恋人同士というよりは ルームメイトのようだということ。 というのも どんな話を聞いても、2人の間にエモーショナル・コネクション、すなわち感情的な繋がりが全く感じられないためで、 2人の個人が同じ空間で一定期間生活していただけにしか見えないのだった。
この話を私に持ちかけた友人は、これに対して「ルームメイト同士だったら、セックスなんてしない」と反論していたけれど、 「セックスに愛情が必要が無いのは、ニューヨークに住む男性が一番良く知っているはず」と言ったら、 それはあっさり認めていたのだった。

この2人は趣味が同じであることで結びついたけれど、 友人によれば、2人は一緒にバスケットの試合を観ていても、ただ隣同士で座って観ているだけ。 お互いに突っつき合ったり、試合結果を喜び合ったりすることもなく、 私の友人は、2人がたまたま そういう性格なのだと思って見ていたという。
でも私から見れば、2人は お互いに好きなことを同じ場所で同時にやっているだけで、”一緒に楽しんでいる” という感覚は無い、距離を置いた関係。
なので友人を通じて尋ねたところ、その男友達は 「彼女によって 自分が変わったと思う部分は特に無い」 と語っていたというし、恐らく女性側も同じように思っているように感じられるのだった。
事実、彼にとって彼女と一緒に居た時のメリットはと言えば、先述のように自分の好きなことを一緒に出来る女性であったこと。 加えて、もそも女性に対して奥手である彼は、決まった相手が居て ガールフレンドを探す必要が無い状態、 知人の結婚式など、デート同伴のイベントに連れて行く相手が常に居る状態を、楽で便利だと感じていたという。

よく、”幸せな人間関係というのは 「Do you remember when we...(私達が・・・した時のこと、覚えている?)」 と語り合える、心に残る思い出や、忘れられないエピソードが、 良いことでも、悪いことでも、沢山ある関係” と言われるけれど、このことはカップルだけでなく、友人関係にも当てはまること。
恐らくこのカップルには、そうやって語れる思い出やエピソードは2年近く交際し、そのうちの大半を一緒に暮らしていても、あまり無いように思えるのだった。
そんなニュートラルな関係であっただけに、男性側は 今は相手が去ってしまったことに空虚感を覚えても、 次の相手さえ現れれば、それほど彼女を思っていた訳ではないことに気付くのでは?というのが私の推測。
そもそも人間は、苦境や辛い経験から学ぶことは多いけれど、幸せからも学ぶことは沢山あるもの。 こうしたニュートラルな関係や状況を幸福だと錯覚する人は少なくないけれど、 本当の幸せ、幸せをもたらしてくれる関係に巡り会ってしまえば、そうしたニュートラルな関係は、結局は 色褪せていくだけの存在となるのである。





執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。 丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。


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