Feb. 11 〜 Feb. 17 2008




” Save Money, Save Yourself ”



今週のアメリカでは 2月14日木曜のヴァレンタイン・デイに、イリノイ州のノーザン・イリノイ大学で またしても銃乱射事件が起こり、7人が死亡、約15人が負傷する事態となっているけれど、これよりも大きく報じられていたのが、 その前日、水曜に下院で行われた元ヤンキーズのピッチャー、ロジャー・クレメンズのステロイド使用の公聴会についてであった。
この模様は幾つものチャンネルが生放映していたので、私もこの日は仕事をそっちのけにして公聴会に見入っていたけれど、 ここでは、クレメンズにステロイド注射をしたと証言する彼の元トレーナー、ブライアン・マクナミーと ステロイド使用を否定する クレメンズ本人が 1つのテーブルに並んで座り、下院議員との質疑応答が行われていたのだった。 主張が真っ向から対立する2人であったけれど、私が見ていた印象でも 多くのメディア&スポーツ関係者等が指摘するのと同様、 証言の一貫性の無さが感じられたのがクレメンズで、それと同時にマクナミー側を支持する民主党下院議員、クレメンズ側をかばう 共和党下院議員という 政治的な駆け引き部分も浮き彫りにされていたのだった。

共和党側がクレメンズをかばう 言い分は 「ミッチェル・レポートの捜査前は ステロイドを選手に使用したことはない と ウソをついていた マクナミーを 今更 信用することはできない」というもの。 でも、共和党以外の人々が、ブライアン・マクナミーの言い分を信じる理由は、彼が以前の捜査でウソをついていたことを認めて、 ミッチェル・レポートでは 捜査に協力しているためで、私の考えでも こちらの方が真っ当な見解と思えるもの。
加えて、ブライアン・マクナミー側にしてみれば、自分がトレーナーとしてステロイドを使用した選手が少ない方が 彼の罪は軽くなる訳で、もしクレメンズにステロイドを使用したことが無ければ、わざわざウソをついてクレメンズをステロイド使用者に 仕立て上げる必要は何処にも無いのである。
一方のクレメンズ側にしてみれば ステロイド使用を認めれば、スポーツ選手にとっての不名誉であるだけでなく、 このまま彼が引退した場合 2012年に投票に掛けられる 彼のホールオブ・フェイム(殿堂入り)が危ぶまれるだけでなく、サイ・ヤング賞剥奪の可能性も出てくるのである。
それだけに 彼が偽証罪に問われるリスクを負ってまで、ステロイド疑惑を全面否定していると言われる訳だけれど、 公聴会後にメディアで報じられたのが、クレメンズ側は万一 偽証罪に問われても、彼がジョージ・ブッシュ大統領と 個人的に非常に親しいため、「プレジデンシャル・パードン (大統領恩赦)」が与えられて、無罪放免となることを見込んでいるという情報。 そもそもクレメンズ側は、ミッチェル・レポートが提出される以前に その内容を自ら雇った探偵に調べさせたり、 捜査が 7年前に雇っていたナニー(子供の世話人)に及ぶことを察知すると、 連邦捜査官が彼女にコンタクトする以前にナニーを自宅に呼び寄せていたり と、 野球選手というよりはマフィアのような 手回しぶり が明らかになっているのである。
現時点ではクレメンズの偽証罪を立証するのに十分な証拠は揃っていないと言われているけれど、 この捜査を続ける資金の出所は国民の税金。そして何ミリオンもの税金を使って 彼の有罪を立証したところで、 大統領恩赦が与えられてしまえば、今度は捜査を決行した側に国民の非難が集まることも見込まれる訳で、 「クレメンズが証拠不十分で起訴できないけれど、これ以上の捜査は国民の税金の無駄」 という理由で、疑惑を残したままこのケースが終焉する可能性も高くなってきていることが指摘されているのである。

アメリカではこの「国民の税金の無駄遣いしないためにも・・・」という台詞は、捜査や裁判の打ち切りなどに 頻繁に用いられるもの。実際 世論の反発をかわすのには この台詞は非常に有効なもので、 国民は、国や裁判所の決断や判決に不服があっても、自分が払った税金が無駄になっていくことを考えたら 諦めざるを得ない訳である。
それほどにアメリカ人が ”払わされている” ことを痛感しているのが税金であるけれど、 これは、多くのアメリカ人が 毎年自ら 税金をファイル(申告)することによって、 自分が幾ら税金を支払っているかを 額面で見せ付けられている部分も大きかったりする。
その税金の確定申告締め切りを4月15日に控えて、現在 私もタックスのファイルの準備に追われている段階であるけれど、 アメリカの税金というのは、日本よりも落とせる項目が多く、着なくなった衣類や使わない家財をサルベーション・アーミーなどに寄付すれば、 その寄付分が税金から差し引けるし、美術館のメンバーシップ・フィー、NYUで仕事に関連したアダルト・エデュケーションのクラス等を取ればその学費、 就職活動をした場合は その就職活動費なども控除の対象になるのである。 したがって、アメリカで税金をファイルする場合、自分の収入に対して幾らの控除枠があって、何がその対象になるかを把握して、 しっかりレシートを残しておけば、かなりの節税が出来る訳である。
なので、毎年この時期は 「税金のファイル=レシートとの格闘」 ということになるけれど、私の場合、 グロサリー(食料品)ショッピングに至るまでの ありとあらゆる購入をクレジット・カードで済ませるので、 カードの明細書とレシートをチェックすることによって、 2007年に、自分が何にどれだけお金を使ったかを改めて見直すことになるのである。

その結果、確実に実感するのは まずここ1年で外食費を含む 食費が値上がりしているということ。
でもこれはレシートやカード明細を見比べるまでもなく 昨今 感じていたことで、先日も 自宅近所のターキッシュ(トルコ料理)・レストランに行って、 2人でワイン1本を飲んで、アペタイザーとメインをそれぞれオーダーし、デザートをシェアして、コーヒーを1杯ずつ飲んだディナー代が、 チップを含めて120ドルを超えたので、ちょっとビックリしてしまったのだった。 そもそもターキッシュ・レストランというのはそれほど高額料理とは見なされないカテゴリー。 しかも出掛けたのは 全く気取りも 飾り気も無い ご近所レストランで、 こういう店は頭の中では1人40ドル程度であがるものと思い込んでいる場所。 にも関わらず50%増しの支払いだったので、外食費の値上がりを実感していたのだった。
考えてみれば現在、マンハッタンで一流と言われる高額レストランに出掛けた場合、 チップを含めて170〜200ドルは覚悟の時代。これはパリやミラノの同じクラスのレストランで ユーロ払いでディナーをすることを思ったら 断然安いけれど、それでも2006年の時点で支払っていた金額に比べると、 確実に15%はアップしている印象である。
レストラン・メニューの中で値上がり傾向が強いのはメインとデザートで、 メイン・ディッシュは前の年に28ドル程度だったものが35〜38ドルにアップしているのはレストラン・ゴーワーならば誰もが実感するところ。 加えてデザートも 10ドル以下のものがどんどん減ってきていて、昨今では平均価格が12〜16ドルまでに上がってきているのである。 こうしたメインやデザートの値上がりは 合計で15ドル程度かもしれないけれど、 アメリカでは、食事代にタックスが掛かって、そのタックスの2倍をチップとして支払うので、請求書を受け取る段階では、 メニューで見ている金額以上の値上がりを感じることになる訳である。

レストランもさることながら、最近値上がりを感じるのが野菜、果物、パンなどの食料品類。 ことにオーガニックのものを買おうとすると、卵でも野菜でも ただでさえ値上がりしている価格の 1.5〜2倍になってしまうのである。 また私が気に入って買っていたクランベリーとウォルナッツが入ったパンも、ここ1年の間に 4ドル90セントが6ドル90セントになっていて、たった2ドルの違いなので、気付かずにそのまま買い続けていたけれど、 計算してみると40%以上というとんでもない値上げ率。 でもこのパンについては 値上げなど気にしないのは私だけではないようで、 6ドル90セントになっても、早く店に行かないと 直ぐに売り切れてしまう人気商品である。

この他の出費をチェックすると、2007年には レントも10%アップしているし、電気代も若干ではあるもののやはりアップ。 私の知人の中には、昨年から今年にかけて 携帯電話をブラック・ベリーやアイ・フォンなどの携帯端末に替えたことによって、 その料金が上がったことをぼやいている人も少なくないけれど、私の場合、携帯料金は据え置き状態であった。
こう 何もかもが値上がりしていると、収入の方も増えてくれないと・・・と思うけれど、その点の 明るいニュースとしては、リセール・ショップで売ったシューズや服の単価がアップしていたこと。 これはブランド物の服やシューズの値上がりが著しいので、恐らくその影響でリセール価格もアップしているのだと思うけれど、 この恩恵は そのまま自分のショッピングにネガティブに跳ね返っていて、2007年に買ったルブタンのセール品のシューズの価格は、 2006年のセールではないマノーロ・ブラーニックの価格とほぼ同じという悲しさ。 こんな状況だとせっかくセールで買っても、あまり得をした気になれないものである。

さて タックス・ファイリングの準備をしながら 様々な値上げを見せ付けられた私が感じるのは、 こんな調子で物価が上がって、出費が増えていったら、果たしてリタイアまでに幾らお金を貯めたら良いのだろう・・・ということ。
アメリカでは45%の人々が全くリタイアに備えて貯金をしていないことが伝えられているけれど、 その一方で、ニューヨーク・タイムズ・マガジンなどは そのファッション特集号の中で、「J.メンデルでセーブルのコートを買うお金を 投資に回すと・・・」という、「ファッションより投資」ともいえるような ページを設けていたりする。 実際、70年代初頭にウォルマートに1万ドル(約108万円)を投資した人は 今では30億円長者になっているのだそうで、 90年代初頭のデル・コンピューターに 3万ドル(約324万円)を投資した人も、今は6億円長者になっている計算とのこと。
アメリカではサブプライム問題を受けてか、最近メディアが それとなく貯蓄やリタイアメントの準備を促すような企画を 組んでおり、その中に頻繁に見られるのが いかに一定の収入から 生活レベルを落とさずに貯蓄金額を捻出するか?というアイデア集。 そして、その中で必ずと言って良いほど節約のターゲットにされているのがボトルド・ウォーターとスターバックスである。 この2つの購入を止めると環境問題に貢献するのに加えて、月に300〜500ドルの節約になるのとのこと。 こうした企画が影響してかどうかは定かではないけれど、昨今ではスターバックスが大きく業績を落としていることが伝えられており、 この業績悪化を受けて、 最近 スターバックスが 一部の店舗で試験的にスタートしたのが 1ドル・コーヒー販売の企画。 これはマクドナルドが行っているダラー・メニュー(1ドル・メニュー)にも似た企画だけれど、 そのマクドナルドは ここへ来てコーヒービジネスに力を入れており、同社のプレミアム・コーヒーは ブラインド・テイスティングでは、ファストフードで最もコーヒーが美味しいといわれるダンキン・ドーナツとスターバックスを抑えて、 No.1に輝いていたりする。(ちなみにこのブラインド・テスティングでNo.2となったのはダンキン・ドーナツのコーヒー。 No.3かつ最下位がスターバックスだった。)

貯蓄というのは自分の生活レベルを保ちながら行うところがポイントになっているだけに、スターバックスや ボトルド・ウォーターのようにお金を使っている実感が無い部分がターゲットとされていたけれど、 もう1つのターゲットにされていたのが 1000ドル以上のバッグやジュエリーなどの ラグジュリー・アイテム。 すなわち生活の中のハイ・エンドとロー・エンドをカットするのが、精神的な負担にならず生活レベルが保てる貯蓄の捻出法のようである。
そう思って自分の出費をチェックしてみると、私にとって2007年はここしばらくの間で初めて1000ドル以上のバッグを購入しなかった年。 これは自社で扱っているBKや、2006年以前に購入したバッグを使っていたこともあるけれど、 高額な値段を払ってまで 欲しいと思うようなバッグが登場しなかったというのが最大の理由であったりする。
さて、先述のように アメリカでは 多く人々がリタイアにそなえて貯金をしていないことが伝えられているけれど、 そんな多くの貯蓄をしていない人々にとっての心の支えになっているのがロッタリー(宝くじ)。 アメリカの宝くじは賞金が多額であるため、低所得者ほどこれに将来の夢を託す人は少なくないと言われている。
私がこれを目の当たりにしたのが、一昨日、金曜の夕方のこと。この日は賞金額が大きいことで知られる宝くじ ”メガ・ミリオン” の 賞金額が$170ミリオン(約184億円)であったため、近所にバッテリーを買いに出掛けた私は 宝くじを買い求める行列に 根負けして、別の店にバッテリーを買いに行かなければならなかったのである。
そんな行列を作っている人々を見て、私が心に誓ったのは 宝くじのような当たらなくて 当たり前のものに リタイア後の生活を 託すよりは 貯金と有益な投資をしよう! ということだった。





Catch of the Week No. 2 Feb. : 2 月 第 2 週


Catch of the Week No. 1 Feb. : 2 月 第 1 週


Catch of the Week No. 4 Jan. : 1 月 第 4 週


Catch of the Week No. 3 Jan. : 1 月 第 3 週






執筆者プロフィール

秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。
丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、1989年渡米。以来、マンハッタン在住。
FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。
その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.設立。以来、同社代表を務める。