Feb. 22 〜 Feb. 26, 2012

” Media Guideline To Covering Asian Americans ”


私がこれを書いている2月26日、日曜はアカデミー賞授賞式が行なわれたオスカー・サンデー。
今年のオスカーは、作品賞にノミネートされている9つの作品の中で、メガヒットの目安と言われる1億ドル以上の興行売り上げを記録しているのは、 「ザ・ヘルプ」のみで、2011年は質の高い作品が多いと言われながらも、興行成績は振るわなかった年。
興行成績が2010年に比べて10%以上 落ち込んでいるにも関わらず、映画館内でのポップコーンの売り上げは 前年より22%も伸びていることが伝えられているのだった。
さて 今年のオスカーでは、「ジ・アイアン・レディ」でマーガレット・サッチャー英国元首相を演じたメリル・ストリープが主演女優賞を受賞し、 ほぼ30年ぶりに 3つ目のオスカーを手にしているけれど、 オスカーの主演女優賞受賞者に顕著な傾向が、受賞後の離婚。
過去の受賞者の63%が離婚をしており、近年の受賞者ではサンドラ・ブロック、ヒラリー・スワンク、 ケイト・ウィンスレット、リース・ウィザースプーンなどがその例。また結婚していなくても、受賞後に交際相手と別れた例としては、ジュリア・ロバーツ、 シャリース・セロンなどがあり、これは”オスカーの呪い” とも表現されるもの。
この ”オスカーの呪い” の要因は、夫が妻のスターダムにジェラシーを抱いたり、周囲に妻のサクセスと比較されること だというのが専門家の分析。
すなわち、ハリウッドのカップルの間でも 「夫が妻より勝っていなければならない」という意識が強いということになるけれど、 実際のところ、主演&助演男優賞の受賞者には 離婚のジンクスは見られていないのだった。

その一方で 今年の助演男優賞を受賞したのが、82歳のクリストファー・プラマー(写真右)。これは彼にとって 初のオスカー受賞であると同時に、 史上最年長での受賞。
クリストファー・プラマーは、私が生まれて初めて劇場で観た映画、「サウンド・オブ・ミュージック」で、 ジュリー・アンドリュース扮するマリアと結婚する フォン・トラップ大佐を演じたのがキャリアのビッグ・ブレイク。
この映画は1965年の作品で、私はリバイバル公開を母と姉、従姉妹と観に行った記憶が今も鮮明であるけれど、 彼の俳優生活は1953年にTV俳優としてスタートしており、今年で59年目。 2011年は 受賞作品の「ビギナーズ」に加えて、「ザ・ガール・ウィズ・ザ・ドラゴン・タトゥー」を含む4本の映画に出演し、 ビデオ・ゲームの吹き替えも担当するという多忙ぶりで、目下 キャリアの最高峰を極めているのだった。



今週のアメリカでは、 当然のことながら オスカー関連の報道にかなりの時間が割かれていたけれど、 それと同時に 引き続き報道の中心になっていたのが、NBAニューヨーク・ニックスのライジング・スター、 ジェレミー・リン。
彼は台湾生まれの移民で、アジア系アメリカ人であるけれど、彼に関する報道で スポーツ・ケーブル・チャンネルESPNのウェブサイトが人種差別と取れる表現を使ったことで、ツイッター上で抗議が相次ぎ、 ESPNは30分後にその表現を書き換え、ライターを解雇。それ以外にも、 ジェレミー・リンに関する人種差別ジョークをツイートしたレポーターが、停職処分になるなど、 メディア関係者が差別意識を感じる事無く、軽率にアジア人蔑視、人種差別と取れる 報道をしていることが問題視され始めたのが今週なのだった。
これを受けて、アジアン・アメリカン・ジャーナリスツ・アソシエーションは、 特定のメディア報道に抗議をし、謝罪を求める一方で、何と今週末には、 ジェレミー・リンを含む アジア系アメリカ人に関する報道のガイドラインなるものを発表しているのだった。
そのガイドラインは2部に分かれていて、前半はジェレミー・リン関連のファクト・シート。 それは以下の4点からなるものなのだった。



ガイド・ラインの後半は、「DANGER ZONES/デンジャー・ゾーン」、すなわち ”危険区域” とタイトルされており、 アジア人、及びアジア系のカルチャーや特徴と思って軽率にそれについて触れることが、 人種差別報道になると判断されるテーマの数々。




この「デンジャー・ゾーン」の7点には、アジア人、もしくはアジア系アメリカ人に対する偏見、 一般が描くステレオタイプ(典型例)が現れていると言えるけれど、80年代に日本が経済力をつけて、どんどんのし上がった時代には、 ハリウッド映画の中で、日本人観光客をからかうようなシーンが多数登場したにも関わらず、そうした人種偏見を 差別問題としてメディアに釘を差すことは出来なかったし、してこなかったもの。
でも、中国人及び、中国系移民は、こうした問題にかなりシリアスに取り組んでいるのが実情で、 中国という国が経済力をつけて久しいとは言え、アジア系のスタープレーヤーに対する 人種差別の見だしが30分ウェブ上に掲載されただけで、 それを書いた人間がクビになるというのは、かなりの変化と言えるもの。
これまでは、アフリカ系アメリカ人やヒスパニック系/ラテン系アメリカ人に対する差別用語で、メディアがバッシングを受けることがあっても、 アジア系をからかってメディアが批判されるというのはそれほど起こらなかったこと。 それだけに、これまでアメリカのメディアが 「アジア人に対しては、何が人種差別報道に当たるか」について、 あまりに無知であったことが、 ジェレミー・リン報道で一気に露呈したと言えるのだった。

今日のオスカーにプレゼンターとして登場したサンドラ・ブロックが、中国映画や中国人俳優がノミネートされている訳でもないのに、 中国語で短くスピーチをしたことからも分かる通り、今ハリウッドを含む世界 が中国に向いていることは 言うまでもないこと。 今月行なわれたニューヨークのファッション・ウィークでも、中国という巨大マーケットを意識して、 アジア人モデルが過去に無いほどに数多くランウェイに登場していたけれど、 経済力を高めたことで、中国人、アジア人という人種イメージに対して 主張を強めてきているのが 昨今の中国系アメリカ人、及び中国人。
そんな中、世界のメディアの中心地である ニューヨークのニュース・メディアは 今や新聞を売るため、そしてウェブサイトのアクセスを増やすために、 毎日のようにジェレミー・リンについての報道を行なわなければならない状態。
したがって、メディア関係者は彼の報道を通じて、嫌でもアジア系アメリカ人、及びアジア人に関する報道のセンシティビティを 学ばざるを得ない状況を強いられていると言えるのだった。





執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。 丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。


PAGE TOP