Feb. 16 〜 Feb. 22 2015

"Aging and Beauty" ”
エイジング & ビューティー


毎週のようにこのコラムの最初で この冬の厳寒ぶりをお伝えしているけれど、 今週もメディアが最も報道時間を割いていたのは アメリカ北部を襲ったシベリアン・エキスプレスという寒気団のニュース。
今週金曜日の朝には、ニューヨークのセントラル・パーク(写真上左)の気温が−17.2度に達し、これは過去60年で最低の記録。 マンハッタンの西側を流れるハドソン川(写真上右)も流氷だらけだったけれど、 ミネソタ州エンバラスでは、マイナス41度が記録されており、人体に危険なほどの低気温。
こんな寒さなので、アメリカでは今週 少なくとも20人が低体温で死亡しており、 各州で ハイウェイ凍結による交通事故が相次いでいる状況。 今年の冬の厳しさは、アメリカの経済に10億ドルを超えるダメージをもたらしていることが伝えられているのだった。




ところで、私がこのコラムを書いている2月22日、日曜に行われた今年のオスカーでは、 映画「ボーイフッド」のパトリシア・アーケットが助演女優賞を獲得したけれど、 彼女はアカデミー賞だけでなく、今年の授賞式シーズンのありとあらゆる助演女優賞に輝き続けてきた存在。
「ボーイフッド」は1人の少年の成長ぶりを12年間に渡って追いかけて、ドキュメンタリーのように製作された映画で、 撮影が行われたのは毎年夏休みの2週間。 この中で母親を演じたパトリシア・アーケットは、その12年間、リアリスティックなアメリカン・マザーを演じるために ボトックスもフィラーも打たず、プロのトレーナーを付けたエクササイズや特殊なダイエットも行わず、 ハリウッド女優ならば誰もがつけるヘア・エクステンションも拒み、 ごくごくナチュラルなエイジング・プロセスを披露していることは、彼女の演技同様に評価されているのだった。


その一方で 今週 ソーシャル・メディア上で出回って物議を醸していたのが スーパーモデル、シンディ・クロフォード(写真上右側、現在59歳)と、 ビヨンセ(写真上左側、現在33歳)のフォトショップ修正前の写真。
シンディ・クロフォードについては、そのストレッチ・マークが見られる腹部やセルライトのある太腿、ビヨンセについてはブツブツの肌や 首のたるみが指摘されていたけれど、一般の人々のリアクションは「それらがあっても彼女らはゴージャスだし、かえって人間らしい」、 「グラビアや広告で完璧に見える女性たちは 実は完璧ではないし、完璧である必要もない」というポジティブなもの。

また、今週のニューヨークではファッション・ウィークが行われていたけれど、 これまで完璧な美を追求してきたビューティー&ファッション業界が、今シーズンの広告でフィーチャーしているのが ナチュラルなエイジング・ビューティー。
この傾向は、昨年 マーク・ジェイコブス・ビューティーが女優、ジェシカ・ラング (現在65歳) を広告モデルに起用したのがきっかけと言われるけれど、 2015年春の広告では サンローランがベテラン・シンガー、ジョニ・ミッチェル (写真下左側、現在71歳) を、 ロレアルが ヘレン・ミレン (現在69歳) を、セリーヌがアメリカ人作家、ジョアン・ディディオン (写真下右側、現在80歳) を、 そしてドルチェ&ガッバーナは年配のイタリア人女性をその広告(写真下中央)にフィーチャー。 女性のエイジング・ビューティーが これまでになく もてはやされているのが今シーズンなのだった。




でもエイジング・ビューティーがもてはやされるのは決して新しいことではないもの。
例えばオスカーを始めとする授賞式イベントでは、若いセレブリティについてはそのアウトフィットやヘア&メークが厳しく評価される傾向にあるけれど、 ベテラン女優になるとアウトフィットはさておき、スリムな体型や顔の表情が若く見えるヘアやメークで登場しただけで 「She Looks Great!」と手放しに評価されるのは例年のこと。 メリル・ストリープや今年のオスカーにプレゼンターとして登場したジュリー・アンドリュースなどはその好例。
要するにエイジングがハンディキャップになって、評価がアップしている訳で、 年齢の割に若く見える、年齢を重ねても美しさや体型を保っているということが 評価に値するという見解は 世の中一般に共通したものなのだった。 でも、これまでは敬意を表する範囲に止まっていたエイジング・ビューティーに対する評価が、 ビジネス広告にも通用するというコマーシャル・ヴァリューを持ってきたのは 2015年の新しい傾向と言えるのだった。

この傾向は、ハリウッドやアメリカのリアリティTVで見られる、いかにも美容整形を繰り返したという印象の 不自然な若さや美しさを演出した エイジング女性へのバックラッシュとも言えるもの。 でも この春 デザイナー・ブランド、ビューティー・ブランドの広告に登場しているのは、優れたシンガーであり、作家であり、女優であるなど、 そのエイジングのシワの1本にまで、それまで歩んできた彼女らの人生の意味合いやメッセージが感じられる女性像。 したがって、これらの女性達が普通に年齢を重ねた70歳や80歳の女性と並んだ場合、例え若くは見えなかったとしても、 存在感やオーラが全く異なるのは容易に想像が付くところなのだった。

ところで、私は昨年の2月4週目のこのコラム に、” Things Make You Look Older ”というタイトルで 外観で老けて見える要因について書いているけれど、当時 ネット上でリサーチの結果、老けて見える要因として挙がっていたのは以下のポイント。

・ 頭髪の量の乏しさ、ツヤの無さ、 白髪
・ 二重顎や、首につながっている顎のライン、口の周りの皮膚のたるみ
・ 薄くて細い眉、黄ばんだ歯、濁った白目、薄い唇、こけた頬 
・ ベージュやグレー等、無彩色でバギーなシルエットの服、 ウエストがゴムのパンツやスカート
・ 肌に食い込んだブラのラインや、肌色の太いブラ・ストラップがネックラインや アームホールから覗く様子
・ 肌色のストッキング、ストッキングやタイツの上からソックス履いて、サンダルを履くこと
・ オールド・ファッションなアクセサリー(ブローチ、コサージュ等)、眼鏡、眼鏡にストラップをつけて首からかけること
・ 太めのウエスト、下がったバスト、姿勢の悪さや老けたボディ・ランゲージ
・ 血管が浮き出た手足、白過ぎて血色の悪い肌


肌の血色というのは、一般の人々が頭に描く以上にルックスに影響を及ぼすもので、 写真上右側は、今日のオスカーに登場したジェニファー・ロぺス。左側は、ニューヨークで1月23日にスナップされたジェニファー・ロぺス。 ブロンザーを使っていると、いないで 彼女のルックスに10歳程度の開きが出るとソーシャル・メディアでは指摘されていたのだった。
アメリカではドナルド・トランプ、下院議長のジョン・ベイナー等、女性だけでなく男性もがブロンザーで 若さを演出しているけれど、 不自然なオレンジ色にならない限りは、ブロンザーで血色をごまかすのは かなり効果的と言えるのだった。

では外観のポイントを抜きにして、若さを保つ秘訣をライフスタイルとしてネット上でリサーチをすると、出てくる結果は以下のようなごく一般的なもの。

・ 定期的にエクササイズをして、野菜&果物中心の食生活をする
・ 極力オーガニックの食材を使い、オーガニックのコスメティックを使う
・ 加工食品を食べず、塩分、脂肪分、糖分、アルコールの摂取を控える
・ 十分な睡眠を取り、ストレスの対処法を持つ
・ サンブロックを使い、タバコを吸わない



ファッション&ビューティー業界のみならず、理想的に最も若さを保っている存在として広く知られるのは写真上の2人。
写真上中央の2枚は現在83歳の現役モデル、カーメン・デロレフィスであるけれど、 年齢を重ねて これだけ美しくあるためには、20代で写真上左のようなルックスでなければならないのだった。
写真上右は昨年60歳を迎えたスーパーモデルの走り、クリスティ・ブリンクレー。 アメリカではどうやったら彼女のようにエイジングが出来るのか、不思議がられている存在で、 離婚をする度に一時的に老け込むことはあっても、必ずカムバックしてくるのが彼女なのだった。

2人は奇しくも、上に列挙されている若さを保つポイントを 自らの若さの秘訣として常々語っている存在。
また仕事柄、外観に気を配り、社交的で、ソーシャル・ライフがアクティブなのも彼女らの若さのポイントであるのは言うまでも無いこと。 カーメン・デロレフィスについては、上記に加えて 恋愛とセックスが その若さと美しさの秘訣ともコメントしているのだった。
2人ともゴージャスなヘアを保っているように見えるけれど、クリスティはエクステンションの長年の愛用者。今では自らのブランドを持つほど。 カーメンは生え際からつけるウィッグで、上手く自分のヘアのように演出しているのが見て取れるけれど、 このタイプのウィッグはビヨンセも愛用していることで知られているのだった。

私の考えではどんなライフスタイルをしていても、 20代で老け込む人と、40代でも 60代でも若さが保てる人を分けるのは エネルギー・レベル。 顔や身体の表情が豊かで、コミュニケーション力があって、 会話の反応が早い人というのは、 例え老け顔であっても、存在が若々しく感じられるもの。
また、自分のスタイルや様々な趣味を持っている人も、 外観や豊富な知識、行動力で、若々しい存在感がアピールできるもの。 要するに、人を惹きつけるエネルギーや魅力が 年齢では測れない若さの指針だと私は思うのだった。

医学の見地では、年齢より老けて見える人というのは、何らかの健康障害、もしくはその火種を抱えていると 考えて間違いないというけれど、それとは別にエイジングが最も早く進むのは 無表情、無口、無反応、物事に無関心で、ミニマムにしか動かない人。 情熱を注ぐ対象を持たない人で、ライフスタイル全般が エネルギーを使わない低燃費走行になっているタイプ。
日頃から身体と脳を使わない人は、不摂生を続けている人と同様、もしくはそれ以上に老化が早く進むとのこと。 すなわち、人間の身体と脳は 鍛えれば鍛えるほど若さが保たれるように出来ているのだった。


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執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。 丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。




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