Feb. 25 〜 Mar. 2, 2014

” Hollywood Gender Gap ”


今週のアメリカのメディアが最も大きく報じていたニュースといえば、引き続きウクライナ情勢。
ロシア寄りの政策を取っていたヤヌコビッチ政権が崩壊した後、ウクライナ南部のクリミア自治共和国において、 現地に駐留していたロシア軍が活動を活発化させたことから、緊張が高まったのがその情勢。 加えて、ロシア議会がプーチン大統領の要請を受けて、満場一致でウクライナにおける ロシア軍の活動を承認。 このため 発足したばかりのウクライナ暫定政権が、ロシアによる本格的な軍事介入を恐れて、 欧米諸国に対して、 サポートを求めているのが現状で、 アメリカは週明けにケリー国務長官をキエフに送り、ウクライナ暫定政権支持の姿勢を示すことになっているのだった。
ロシアが軍事介入を進めた場合、見込まれているのが欧米諸国によるロシアに対する経済制裁。 とは言ってもクリミア自治共和国は、地理的にもロシアに近く、ロシア系住民の多いため、ロシア寄りの政策を 支持しているエリア。地元民の一部は、ロシア軍は彼らに危害を加えることは無く、自分達をプロテクトしてくれるという 意識を持っていることも報じられているのだった。



ところで ロシアといえば、その反同性愛法が ソチ・オリンピック開催に当たって、世界中から批判を浴びており、 オバマ大統領は それに対する抗議の意味合いもこめて、アメリカ選手団の代表者として 往年のプロ・テニス・プレーヤー、ビリー・ジーン・キング等、 同性愛者を あえて選んで 送り込んでいたのだった。
ところが、そのアメリカでロシア同様のゲイ差別法案を可決したのが アリゾナ州。 アリゾナ州といえば、共和党保守派が強いことで知られる州であるけれど、 その州議会がソチ・オリンピックの開催期間中に可決したのが、Religious Freedom Restoration Bill / レリジャス・フリーダム・リストレーション・ビル。 これは宗教の自由を取り戻す法案というネーミングであるものの、この法案が意味するのはビジネス・オーナーがゲイの客を 拒んでも構わないというもの。

そもそも この法案は同性婚が合法化された州で、その宗教上の理由から ゲイ・カップルのウェディングのための フラワー・デコレーションを拒んだビジネス、ウェディング・ケーキの製作を拒んだビジネスが、 訴訟の対象になっていることを受けて、敬虔なキリスト教徒のビジネス・オーナーを守るために設けられた法案。 しかしながら 同法案は、 レストラン・オーナーがゲイの来店客を拒む権利も保障するもので、 1950年代、60年代の南部社会に見られたような黒人差別を、21世紀になってゲイ・ピープルに対して行うことを合法化するもの。
この法案可決以来、全米のゲイ・コミュニティはもちろん、人権運動団体、アップルを始めとする多くの大企業が猛反発を見せ、 アリゾナ州観光やアリゾナ産プロダクトに対するボイコット、及びアリゾナ州へのビジネス誘致のキャンセル等が取り沙汰され、 これを可決した議員でさえ、ビジネスへの悪影響を危惧していたのだった。
当然のことながら この法案は、水曜に女性州知事、ジャエット・ブリューワーによって拒否権が発動されて 無効となったけれど、こんな差別法案が議会で可決されたという事実は、少なからずアメリカ社会に衝撃を与えていたのだった。



さて、私がこのコラムを書いている3月2日はオスカー・サンデイこと 、アカデミー賞授賞式が行われた日。
ハリウッドといえば、ゲイ差別は論外と言える世界であるけれど、 オスカーに際して毎年のように指摘されるのが、ハリウッドが引き続き 圧倒的な白人世界であるということ。
そもそもアカデミーに所属する プロデューサーの98%、脚本家の98%、俳優の88%が白人。 過去85年間のオスカーの俳優部門の受賞者を見ても、主演女優賞は99%が白人。1%に当たる、唯一の白人以外の受賞者は 2002年に「モンスター・ボール(邦題:チョコレート)」で受賞したハリー・ベリー、ただ1人。
主演男優賞の受賞者は91%が白人俳優で、白人以外の受賞者としては、 今日のオスカー授賞式に アンジェリーナ・ジョリーと共にプレゼンターとして登場した シドニー・ポワティエ、 デンゼル・ワシントン、ジェイミー・フォックス、フォレスト・ウィテカーなど計9人のアフリカ系アメリカ人が受賞しているのだった。
でも過去10年間は、ラテン系、アジア系、ネイティブ・アメリカン(いわゆるアメリカン・インディアン)の俳優受賞者はゼロであることも 指摘されているのだった。
受賞者だけでなく、アカデミーは投票者の94%が白人。残りの6%を占めるのは、約2%が黒人系、 2%弱がヒスパニック系、1%がアジア系という比率。 したがって、圧倒的に白人がマジョリティの世界になっているのだった。


それと同様に指摘されるのがジェンダー・ギャップ。 すなわち男女比のアンバランス。
人口の男女比に見合うだけの 女性主役の映画が 製作されないことが嘆かれて久しいハリウッドであるけれど、 今日付けのニューヨーク・タイムズ紙に掲載されていたのが、同じ主演でも、助演でも 男優の方がスクリーン・タイム、すなわち映像に捉えられている時間が長いという調査結果。
この記事によれば、今年の主演女優にノミネートされた中で最もスクリーン・タイムが長かったのは「グラヴィティ」の サンドラ・ブロックで75分。これは、映画の3分の2が 彼女1人だけで演じられていることを思えば納得が行くけれど、 今年ノミネートされた主演女優の平均スクリーン時間は、それより遥かに短くて57分。
これに対して主演男優賞ノミネート者のスクリーン・タイムは平均85分になっているのだった。

今年ノミネートされた作品の中で、男女主演、助演の4部門に全て出演俳優がノミネートされていたのが、「アメリカン・ハッスル」であったけれど、 同作品を見ても、主演男優のクリスチャン・ベールのスクリーン・タイムは60分、主演女優のエイミー・アダムスのスクリーン・タイムは46分、 助演男優のブラッドリー・クーパーと、助演女優のジェニファー・ローレンスのスクリーン・タイムはそれぞれ41分と20分で、 男優陣の方が銀幕にフィーチャーされている時間が圧倒的に長いのだった。
でも昨年はもっとこのギャップが広く、主演女優賞ノミネート者のスクリーン・タイムの平均が42分だったのに対して、主演男優の ノミネート者のスクリーン・タイムの平均は100分であったという。

このようにスクリーン・タイムでジェンダー・ギャップが出来てしまうのは、 男優を主役にした映画が、アクション・ムービーや、物事を達成するストーリー等、 メイン・キャラクターを中心に展開するのに対して、 女優を主役にした映画は ロマンティック・コメディやメロドラマ系のものが多く、主役を取り囲むキャラクターや背景に スクリーン・タイムを割いた作品が多いことが指摘されているのだった。
今年のオスカーで主演女優賞を受賞したケイト・ブランシェットが、そのスピーチの中で、 女性の興味深いキャラクターをフィーチャーした作品が増えてきたこと、 そうした作品が観客を呼べるようになってきたことを指摘していたけれど、 実際のところは まだまだそうした作品が非常に少ないのが実情なのだった。

ハリウッドの男性優位は、女優と男優のギャラのギャップにも反映されているもの。
毎年俳優の長者番付を発表しているフォーブス誌によれば、 女優の長者番付トップ10が2013年度に稼ぎ出した総額は 2年連続で下がり続けて$181ミリオン(約181億円)。 これは前年比10%ダウンの数字。
これに対して男優のトップ10のギャラの総額は、そのほぼ2.5倍に当たる$465ミリオン(約465億円)。 中でも2013年度のNo.1、ロバート・ダウニー・ジュニアは 女優のトップ5、5人の合計収入より多い$75ミリオン(約75億円)を 1人で稼ぎ出していたとのこと。

でも、今年に関して言えば 女優として例外的にギャラを稼いだのがサンドラ・ブロック。
彼女の「グラヴィティ」の出演ギャラは、既に約70億円に達しており、これは ギャラとして支払われた20億円に加えて、映画の利益の15%を報償として受取るという出演契約による結果。
そもそも「グラヴィティ」のメイン・キャラクター、ライアン・ストーン博士は、当初アンジェリーナ・ジョリーがキャストされていた役どころ。 ところが彼女がそれを断わったために 白羽の矢が立ったのがサンドラ・ブロックで、 たった1人の演技で 観客の関心を引きつけて居られる女優がハリウッドに数多く存在しないことから、 その出演交渉がサンドラ側に有利に進んだことが伝えられているのだった。
ちなみに、サンドラ・ブロックが2010年のオスカーで主演女優賞を受賞した「ザ・ブラインドサイドィド」で演じた テキサス州の主婦のキャラクターも、当初はジュリア・ロバーツが演じる予定であったもの。 でもそれをジュリアが蹴ったことで、サンドラに転がり込んできたキャスティングなのだった。


ハリウッドでは、ギャラやスクリーン・タイム 以外でも、 女優の方が演技以前に 外観でジャッジされることが多く、 ルックスに厳しいスタンダードが設定されているのは周知の事実。
そんなこともあり、昨今のハリウッド映画では 女優達がデジタル修正の対象になっていることも指摘されているのだった。
例えば、写真上は今年のオスカー・ノミネート作品の「ウルフ・オブ・ウォール・ストリート」であるけれど、 同シーンを含む、作品中の幾つかのシーンで レオナルド・ディカプリオ扮するメイン・キャラクターの妻を演じた マーゴット・ロビーの脚をより長く見せるためのデジタル修正が 行われたというのは、幾つものメディアが報じていたニュース。 スタジオ側はその指摘にノーコメントを貫いているけれど、 写真上のシーンは 彼女の167cmという身長を考慮すると、有り得ない脚の長さであることが指摘されているのだった。
このように脚を長くしたり、ボディをスリム・ダウンしたり、顔のシワを改善する というデジタル修正の対象となるのは もっぱら女優陣。

でも女優の方がルックスでジャッジされる分、授賞式イベントのレッド・カーペット上では、 そのファッション、ジュエリー、シューズ、バッグ、ヘアやメークに至るまでがスナップされて、 翌日のメディアを賑わすのは毎年のこと。 映画のプレミアにおいても、レッド・カーペット上でフラッシュを浴びるのは、 主演男優よりも助演女優のファッション。
そうした華やかさにカモフラージュされているせいか、 ハリウッドのジェンダー・ギャップは 一般の人々の目から見ると、実際ほどは開いていない印象に映るようなのだった。

さて、 2月2週目のこのコーナーでアナウンスをして、先週金曜日から正式にメンバー登録をスタートしたCUBE New York のディナー・クラブですが、 1週間に30名を超えるニューヨーク在住の女性からのお申し込みを頂きました。
登録は無料ですので、レストラン・ダイニングを楽しみながら、新しい交流関係を広げたいとお考えのニューヨーク在住女性は、 是非お申し込みをしていただければと思います。
お申し込みはこちらのサイト詳細はこちらのサイトでご覧いただけます。





執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。 丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。


PAGE TOP