Mar. 7 〜 Mar. 13 2011

” 「Disaster in Japan」 その米国での報道 ”

今週のアメリカでの報道は、木曜の早朝以降は、日本を襲った東北関東大地震と津波による大被害のニュース一色という 印象で、アメリカに暮らしていて、自分の祖国の大災害のニュースをこんな大々的な報道で見る日が来るなんて、 夢にも思わなかったというのが私の正直な気持ちなのだった。

私は今回の地震のニュースを、NY時間の午前2時半頃、キューブのスタッフからの電話で知ったけれど、 その時は状況を全然把握していなくて、「日本が地震で大変なことになっているんです!」というスタッフの言葉で、 TVをつけてみたところ、CNN、FOXNEWS、MSNBC等が全て、 日本の地震と津波のニュースを報じていたのだった。
そこで、まずは両親に電話を試みたけれど、案の定、NTTのアナウンスが流れるだけで不通状態。 被災地停電のニュースが伝えられていたけれど、電気が戻った時に両親がメッセージを受け取れるようにと Eメールを打って、朝までずっと地震のニュースを見守っていたのだった。
メジャー・ネットワークは、ABCのワールド・ニュースが夜中の3時から、 NBCやCBSの朝の報道番組が5時からスタートするけれど、 いずれもトップ・ニュースで伝えていたのが日本の地震と津波のニュース。
日本の民家や車、畑が津波に押し流されるショッキングな映像が、何度も何度も放映されて、それと同時に、 津波の危険がハワイと西海岸にも迫っていること、ハワイで避難警告が出されたニュースなども 併せて伝えられていたのだった。

その後、私はTVを見ていても新しい情報が無いので、午前5時半を回ったところで、眠ることにしたけれど、朝の6時半を過ぎた頃から 今度は主にアメリカ人の友達が、ニュースで日本の大災害の様子を知って、携帯メッセージを送ってくれて、 それによって目を覚ますことになったのだった。 でも、いずれも日本に居る両親や友達のことを気遣ってくれるメールで、これには思わず 胸が熱くなってしまったのだった。
今や、アメリカ人は若い世代を中心に、新聞を取らず、TVのニュースも見ない替わりに、何か新しい事件やニュースが起こると、 携帯電話にニュース・メディアからの速報が届いて、そのメディアのリンクから 記事や動画でニュースの内容をチェックするというのが かなり一般的になってきているけれど、早朝に携帯でお見舞いメールをくれたのは、金融の仕事をしているか、子供が居る関係で早起きをしている友人と、 こうしたニュース速報を携帯で受け取っている友達。
金曜朝の新聞は、プリントの時間の関係で 全然ニュースが追いついていなくて、写真上のように ニュースが第一面を飾ったのは、土曜日のこと。なので、この時ばかりはペーパー・メディアの限界を感じてしまったのだった。

金曜の午前中には、停電後に両親が送ってくれたEメールが届き、日本の友達や、日本に帰国したCUBE New Yorkの元スタッフとも連絡が取れて、 少し安心したけれど、余震が続いていたり、停電、断水、交通機関の問題など、心配の要素が山積している上に、 アメリカのニュース・メディアには どんどん災害の新しい映像が入ってきていて、改めてその災害の大きさを思い知らせることになったのだった。

金曜は、ほぼ1日中、友人や取引先からのお見舞いメールや電話の対応に追われることになったけれど、インドのパシュミナ業者や、 CUBE New York でバッグを扱っている香港のBKなどからも、日本の家族や友人、そしてCUBEのお客様を気遣うメールが来ていたのだった。 また、アメリカの取引先の中にはCUBE New York の今後のビジネスのことまで心配してくれる人達も居て、 日ごろ冗談ばかり言い合っている仲なのに、真剣にそんな親切な心遣いを見せられてしまうと、 本当に何て答えて良いか分からなくなってしまって、例え日本に居て大地震を体感した訳では無くても、 僅か半日の間に世の中が変わってしまったという思いを痛感するばかりなのだった。



アメリカの多くのメディアにとって、ショッキングに映っていたのは、悲惨な映像の場が世界第3位の経済大国である日本で、 押し流されている家や建物が、ハイチのような安作りのものではないという事実。
その一方で、東京の高層ビルが大きく揺れる映像を見て、初めて耐震構造が どういうものかを理解した メディアのキャスターや、アメリカ人の視聴者は多く、 土曜のニューヨーク・タイムズ紙でも、被害の甚大さを伝える記事と共に、第一面を飾ったのが、 日本が1995年の神戸の震災以来、耐震構造に最新のテクノロジーと何兆円もの資金をつぎ込んできたという記事。 その耐震技術はアメリカよりはるかに先を行っていること、そして日本の建築基準がアメリカよりもずっと厳しいことなどが 伝えられていたのだった。
ロサンジェルスなど、西海岸の高層ビルも、もちろん耐震建築がなされており、専門家はマグニチュード7.6までに耐えられると語っているけれど、 今回の日本を襲った、マグニチュード9.0の場合、多数のビルが崩壊しているであろうことを予測するコメントが聞かれており、 さらに、日本が地震や津波に対して最も周到な備えと警戒がなされた国家であることも 様々なメディアが指摘していたのだった。
しかし、その周到な備えや日ごろからの避難訓練、避難コードなどが、被災規模を一部では食い止めることが出来ても、やはり 津波という自然界の巨大なパワーの前には、人間の努力は虚しいという見方もあり、そんな記事が今日、3月13日付けのNYタイムズのウィークエンド・レビューに 掲載されていたのだった。

アメリカでも金曜の夕方から、福島第一原子力発電所で 水素爆発が起こり、 日本が今度は原子力災害の危機に見舞われているというニュースが報じられており、報道のフォーカスも 被害状況のレポートから、原発の動向にシフトしていっているのだった。 でも、アメリカにおける一連の報道を見ていて、今回ほどアメリカにとって日本が近しい国だと感じたことは無かったというのが私の偽らざる感想。
日本を ”最も近しい同盟国の1つ” と位置づけて、同情心溢れるセンシティブな報道が行なわれているのが感じられて、 多くのレポーターが、「Thoughts and Prayers for Japanese People(日本の人々のことを思い、祈りを捧げます)」という言葉で、 報道を締めくくっていた様子は、家族と連絡が未だ取れず、不安だった時の気持ちを僅かながら慰めてくれたもの。
またメジャー・ネットワークは、ABCのダイアン・ソーヤ、NBCのアン・カリーなど、トップ・ジャーナリストを日本に送り込んでおり、 週末の段階から既に、配信されるニュースや現地レポーターのコメントではなく、ネットワークが派遣したジャーナリスト達によって ニュース報道が行なわれているのだった。
さらに、寄付を募る呼びかけも、報道番組の合間に盛んに行なわれており、被災地の映像を紹介しながら、 ウェブサイトや携帯のホットラインを通じての寄付を呼びかけているのだった。

その一方で、政治家やコメンテーターは現在の日本の状況を注意深く見守っているのが実情で、 まずその理由の1つは、日本で起こった震災、及び津波は、やがてアメリカの西海岸で起こりうると予測されること。
2つ目は、アメリカが原子力発電の強化に予算をつぎ込もうとした矢先に、今回の原発における地震被害が起こったこと。 これまで、日本は原発が問題なく機能している最もサクセスフルな国として、世界の原発のお手本のような存在であり、 アメリカで原発を推す政治家も日本の例を必ず持ち出してきていたほど。 なので、今回の日本の原発の動向は、今後、石油離れをしたいアメリカの原子力発電の未来に大きな影響を及ぼすと見込まれているのだった。

そして、もう1つアメリカが見守っているのは、今回のような大災害に見舞われた際の政府とメディアの対応。
アメリカで、その醜態をさらした例と言えば、ニューオリンズを襲ったハリケーン・カトリーナで、 ブッシュ政権がこれをきっかけに 大きく支持率を落としたのは、アメリカ人にとっては記憶に新しいところ。
昨日の朝、アメリカの報道番組に登場したジャーナリストのコメントでは、 日本の一部のメディアの報道が国民の反感を買っているのことで、 日本のようにオーガナイズされた社会でも、一度大災害に見舞われると、様々な側面でギクシャクした部分を露呈するといった内容の 指摘がなされていたのだった。


海外に暮らしていて、自分の祖国の悲惨な映像を立て続けに見せられると、本当に胸が苦しくなってしまうし、 自分でも気が付かないうちに、精神的にかなり打ちのめされてしまうもの。
昨日、見ていたFOXニュースの番組の最後に、私が日ごろ嫌いなキャスターが、「今の日本の被災者は、その日その日を生きることしか考えられない。 アメリカ人みたいに住宅ローンや、年金の心配なんかしていられない状態になっている。 でも、そういう状態から見事に立ち直って、その強さを示して欲しい」と語ったの聞いて、思わず涙ぐんでしまったけれど、 まさかFOXのキャスターの言葉に自分が涙ぐむ日が来るなんて思わなかったし、まさかFOXのキャスターの言葉に これほど共鳴する日が来るとも思わなかったのだった。
こうした精神的に打ちのめされている時というのは、報道でも、人の発言でも、たった1言が心の琴線に触れたり、 大きな反感を買ったりするもの。 それは9/11のテロの時にも味わった状況であったけれど、それも早10年前のこと。
この時は、言論の自由を謳うアメリカでさえ、不謹慎発言に過敏になり過ぎていたのを記憶しているけれど、 日本でも報道には繊細さが要求されても、一言一句に過敏になって攻撃し合うような事態にはならないで欲しいと望む限りなのだった。

またハイチのような、日ごろから日本人よりずっと栄養価の低い食事をしているような国でも、地震の6日後に女性生存者が発見されているくらいなのだから、 生存者救出の努力を最優先で強化しすると同時に、決して諦めないで欲しいというのが、今一番強く望むこと。
こんな大災害が起こってつくづく感じるのが、人の命が何より大切だということ。 生きている限りは、失った物を取り返すチャンスは幾らでもやってくるのである。





執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。 丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。


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