Mar. 5 〜 Mar. 11, 2012

” The Drunk Diet Vs. The Manhattan Diet ”

私がこれを書いている3月11日は、東日本大震災の一周年とあって、ニューヨーク・タイムズ紙の第一面、トップの写真は、 郡山の駅前広場で行なわれた「春蛍」の様子。
郡山で 伝統的な海老根和紙で作られた灯ろうに、鎮魂と復興の願いをこめて火が灯されている写真は、 震災で失われた命を思い起こさせるもので、その写真のキャプションでも 「A Year Later, Japan Remembers Loss and Heroism」と、震災1年後に、日本が失われた命と人々の勇敢さを 改めて 思い起こしている状況 が説明されているのだった。
今週は、アメリカのニュース番組がこぞって、震災から1年後の日本についてのセグメントを設けていたけれど、 多くは復興にフォーカスしたもの。でも復興が進みつつあっても、まだまだ状況が厳しいことは、 被災地だけでなく、日本の国自体に対しても一様に指摘されていたのだった。

さて、今週のアメリカはスーパー・テューズデイと称して、火曜日に10州で共和党予備選挙が行なわれたけれど、 中でも最も重要と言われたオハイオ州を含む6州で勝利を収めたのが、 とりあえず最有力候補と言われるミット・ロムニー。
スーパー・テューズデイ前は、多くの政治評論家が 「オハイオ州でロムニーが勝利を収めれば、共和党予備選挙は 決着がついたも同然」と予測していたけれど、例によってミット・ロムニーが勝利はしても、絶大な支持を集められなかっただけに、 まだまだ予備選が続く状況になっているのだった。
メディアの政治記者や 政治評論家の中には、共和党がロムニー支持で纏まれないのは、 彼に「米国大統領になるための重要な資質であるユーモアのセンスが無いため」と指摘する声が聞かれるけれど、 実際、今週もロムニーは南部に遊説に出掛け、彼の南部訛りを披露してメディアから失笑を買っていた状態。 ミット・ロムニーがジョークを語ると、聴衆がシラケるという状況は 彼のスピーチでは付き物で、 時にその様子はロムニーがウケを狙っているのが見て取れるだけに、痛々しくさえ感じられるのだった。

その一方で、オバマ大統領は 先月の雇用統計で、失業率こそは8.3%と横這いながらも、新たな仕事が22万7000も生み出され、 3ヶ月連続で経済の好転を感じさせる数字を記録していることもあり、 かなり落ち着いて共和党予備選挙を見守っていられるのが現在の状況。
メディアのアンケートによれば、現時点で選挙が行なわれた場合、共和党の予備選に立候補している どの候補者と戦っても、 オバマ大統領が勝利するという数字が得られているのだった。



私が個人的に今週面白いと思ったニュースは、フェイスブックがきっかけで、男性の二重結婚がばれたという報道。
フェイスブックには「People You May Know 」という、フェイスブック上に居る知り合いと思しき相手を紹介するシステムがあるけれど、 これがきっかけで、1人目のワイフが 何も知らずにアクセスしたのが 夫の2人目のワイフのフェイスブック・ページ。 そこで2人目のワイフと自分の夫のウェディングの写真を見て、二重結婚が発覚したというけれど、 問題の夫、アラン・オニール(41歳)は1人目のワイフと2001年に結婚。そして2009年に家を出て行き、その後 離婚の手続きをしないまま、名前を変えて2人目のワイフと結婚したとのことなのだった。
私がこの記事を読んだメディアのサイトには、「フェイスブックは過去数年に渡って、人々の不倫や浮気の手段になってきたと同時に、 それを暴く存在にもなってきた」というソーシャル・メディアの専門家のコメントが書かれていたけれど、 実際、アメリカに住んでいれば、フェイスブックがきっかけで浮気がバレたという実話を一度くらいは身近に聞いているもの。
中には、「病気の母親に会いに行く」といってガールフレンドに旅費を出させて、浮気相手と旅行に出かけ、 その浮気相手がフェイスブックに旅行の写真をアップしていたことから、ウソと浮気が発覚し、旅費の払い戻しをめぐって裁判になったケースなども あるのだった。

私の知り合いの男性によれば、自分のガールフレンドの友達で興味がある女性がいたら、 フェイスブックで ”フレンド”になっておくと、そのガールフレンドと別れた場合、 彼女の女友達、それも複数の女友達が、 フェイスブックを通じて 彼にコンタクトしてくる場合が非常に多いという。
シングル男性が少ないニューヨークなので、こうした状況は仕方が無いのかも知れないけれど、 そうやって男性が元ガールフレンドの女友達と付き合い始めれば、またフェイスブックがきっかけで 元ガールフレンドがそれを知って、彼女とその女友達が絶交状態になるのはありがちなシナリオ。
やはりフェイスブックの”フレンド” に友情やモラルを要求するのは、無理があるようなのだった。



ところで、常に新しいダイエットが登場しているアメリカで、新たに出版されたのが写真上の2冊のダイエット本。
左側は、リュク・カール著の「The Drunk Diet / ザ・ドランク・ダイエット」、右側はアイリーン・ダスピンの「The Manhattan Diet / ザ・マンハッタン・ダイエット」。
リュク・カールは、つい最近ダウンタウンにバーをオープンしたばかりで、インターネット・ラジオのDKなども勤めるヘビー・メタル・ロッカーであるけれど、 彼の名前が知られている理由は、彼が2005年〜2010年まで、オン&オフで レディ・ガガのボーイフレンドであったということ。
一方のアイリーン・ダスピンは、Wマガジン、ウォールストリート・ジャーナル、ピープル・マガジンなどで仕事をしてきたジャーナリストで、 夫はイタリアン・シェフのセザール・カセーラ。
どうしてこれらの本をCUBE New York のダイエットのセクションで御紹介しないかと言えば、 2人は共にダイエットの専門家ではなく、そのダイエットのセオリーには医学的、科学的根拠が無いためなのだった。

この2冊には共に長いサブタイトルが付いているけれど、「ザ・ドランク・ダイエット」のサブタイトルは、「How I Lost 40 Pounds . . . Wasted / 如何に40パウンド(約18キロ)を 落としたか・・・、酔っ払って」。 一方の「ザ・マンハッタン・ダイエット」のサブタイトルは、「Lose Weight While Living A Fabulous Life / ファービュラスな生活をしながら 痩せる」 というもので、 このサブタイトルから分かる通り。リュク・カールの本は40パウンドを落とした自分の体験に基づくもので、 アイリーン・ダスピンの本は、ダイエットとソーシャル・ウォッチングを絡めたもの。一部では「セックス・アンド・ザ・シティ 」と ダイエット・ライフスタイル本を合体させたようなコンセプトとも言われているのだった。



リュク・カールが体重を落とす決心をしたのは、レディ・ガガと別れ、彼女が猛然とサクセスを収め始めた時。 元ガールフレンドのサクセスをハッピーに思う反面、自分の事を歌った「ポーカーフェイス」、「ラブ・ゲーム」といった ヒット曲が生まれる中、彼自身は暴飲暴食が原因の肥満体で 惨めな状態。当時の彼は、 常に酔っ払っているか、二日酔いだったそうで、1日にキャメルを2箱吸うというヘビー・スモーカーでもあったという。

そんな自分に嫌気が差した彼は、ダイエットを決心して専門家のアドバイスを仰いだというけれど、 誰もが一様に指摘したのが、アルコールをやめなければ痩せられないということ。 加えて専門家達が ボディ・ビルダーになるかのような クレージーなエクササイズのプログラムを薦めているのに呆れた彼は、 そんなアドバイスを全て無視し、自己流のやり方で体重を落として、自分の力でハッピーになることを決意したという。
彼がまず行なったのは、 それまで食べていた高脂肪のチャイニーズやチーズ・バーガー、ソーセージ等のプロセス・フードを一切食べず、 ナチュラル・フード、フレッシュな野菜や肉魚中心の食生活に切り替えること。そして 1週間に50〜70マイル(80〜112キロ)を走り続けたそうで、すっかりエクササイズにはまってしまった彼は、 2010年12月にはラスヴェガスでマラソンを完走。 その間もアルコールとソーシャル・ライフをギブアップすることはなかったという。
そうして40パウンドの減量に成功し、それと同時に人生も好転させたリュク・カールであるけれど、この本は、 彼が人生の楽しみを維持しながら、 自己流で成し遂げたダイエットのサクセスと そのプロセスを描いているのだった。


「ザ・マンハッタン・ダイエット」は、アイリーン・ダスピンが ニューヨーク・タイムズ紙の肥満の少ない街の記事を読んで、 思いついたコンセプト。
その記事によれば、マンハッタンは肥満が少ないニューヨーク市の中でも、他の4つのボロー(ブルックリン、クイーンズ、ブロンクス、スタッテンアイランド)に比べて さらに肥満度が低いのだそうで、マンハッタンの女性達の食事やライフスタイルを観察しながら、その理由を 分析していたアイリーン・ダスピンが、彼女自身のダイエットや、彼女の友人のライフスタイルなどを盛り込みながら 纏め上げたのが「ザ・マンハッタン・ダイエット」。
この本の中で奨励されているのは、通勤の際に とにかく歩くこと。 そしてトレンディなジムで激しくワークアウトすること、食べたいものを我慢しないこと などがあるけれど、 だからと言って沢山食べても良い訳ではなくて、「何でも味わって良いけれど、全て食べきってしまってはいけない」というポーション・コントロールの条件つき。

同書の中では、マリオ・バターリなどのスター・シェフが「ザ・マンハッタン・ダイエット」のためにデザインしたサラダのレシピなども フィーチャーされているけれど、基本的にこの本は如何に食欲を抑えて、小食にするかというのがコンセプト。 なので、マンハッタンの女性が食欲を抑えるために食べている、ダンボールのようなクラッカー、GGブラン・クリスプブレッド(写真上、右)が 紹介され、ローカロリーのスナック、グリーン・ティーにミルクを入れて飲むアイデアや、 ハーブティーで食欲を散らすなどのテクニックが書かれているのだった。
もちろん、ワインやカクテルも少量であればOKなのがこのダイエットで、 ファスト・フードと言えば マンハッタンの女性の間ではマクドナルドではなく、スターバックスのカプチーノであるとのこと。
一部では「拒食症のライフスタイル・ブック」という批判も聞かれている同書であるけれど、 実際、キャンディ1つやリゾットをスプーンに数杯食べるのがご褒美に値することを思うと、かなり拒食症型のダイエット。 とは言っても、著者のアイリーン・ダスピンは サイズ10で、 どんなに長身でも、それほど痩せているというイメージにはならないサイズなのだった。

「ザ・マンハッタン・ダイエット」は先週半ばに出版されたばかりで、「ザ・ドランク・ダイエット」は来週の半ばの出版であるけれど、 この2冊の違いは、リュク・カールが実際に40パウンドを落とした自らの経験を本にしているのに対して、 アイリーン・ダスピンは、それまでの自分がトライしては 挫折してきたダイエットの知識と、人からの請け売りコンセプトをトレンディに纏めようとしているという点。
なので、「ザ・ドランク・ダイエット」は痩せて人生を好転させたいと思う人のインスピレーションになると思うけれど、 「ザ・マンハッタン・ダイエット」は、「太っていると男性にモテない」というオブセッション(強迫観念)で ジムに通い、食欲を散らして 小食を貫くマンハッタンの一部の女性が描かれているだけなので、タイトルはキャッチーでも さほど得るものは無いという印象なのだった。





執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。 丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。


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