Mar. 3 〜 Mar. 9, 2014

” Millennial Profile”


今週のアメリカでは、週末からは クアラルンプール発、北京行きのマレーシア航空 370便が南シナ海上空で消息を絶ったニュースが大きく報じられ始めたけれど、 それ以外で報道時間が割かれていたのは、やはりウクライナ情勢。 加えて 先週日曜に行なわれたオスカーのフォローアップ報道も盛んに行われていたのだった。

中でも、一番のセンセーションになっていたのが 主題歌賞ノミネートのプレゼンターとして登場したジョン・トラヴォルタが、 アニメ映画「フローズン」の主題歌 『Let it go / レット・イット・ゴー』のシンガー、Idina Menzel / イディナ・メンゼルを "Adele Dazeem / アデル・ダズィーム" と紹介したこと。 アカデミー賞授賞式とあって、もちろんジョン・トラヴォルタはリハーサルをしており、 リハーサルの時は全く問題なく 発音していたといわれるのが イディナ・メンゼルの名前。 ところが 何故か本番で、 似ても似つかない名前で紹介されたことは、ソーシャル・メディアから、通常メディアに至るまでが大々的にフォーカスして、 今週の夜のトークショーでは何度となく このトラヴォルタ関係のジョークが飛び交っていたのだった。


さらにウェブサイト、スレート上では、ジョン・トラヴォルタと同じように名前を読み違えたらどうなるかを実践するアプリが登場。 どんな名前でも ”Travoltify / トラヴォルティファイ” してくれるこのアプリは、今週大人気を博していたのだった。 早速私も 試してみたけれど、結果は ”Yusuf Alexernder / ユスフ・アレクザンドラー” というロシア人のような名前。
いずれにしても、ジョン・トラヴォルタのお陰で、ブロードウェイ・ミュージカルの世界でのみ知名度が高かった イディナ・メンゼルの名前は、 あっと言う間に アメリカ中で知られるようになったのだった。


また、今週ニューヨーク・エリアでちょっとした報道になっていたのが、3年前に家を飛び出したニュージャージー州の女子高校生(写真上左)が 大学の学費支払いを求めて、 両親を訴えたというニュース。
この女子高校生は、現在は知人宅に滞在しており、訴訟の弁護士費用はその知人が支払っているとのこと。 女子高校生側の言い分は、両親に虐待されながら育ったので、家を飛び出したものの 、大学学費の積立金は受取る権利があるというもの。
ところが、実際にはこの女子高校生は とんでもない我がまま娘で、両親の言う事を聞かないだけでなく、その留守番電話に放送禁止用語を何度も 用いながら両親を罵るメッセージを残しており、現在彼女の面倒を見ている知人にしても 未成年者の彼女が道に倒れるほどのアルコールを 飲ませてしまうようなモラルの無さ。
今週の裁判では、両親が学費を支払う必要が無いという判決が出たものの、まだ訴訟は継続しており、 この女子高校生はフェイスブック上で、「自分の両親は、お金がある状態に甘やかされている。直ぐに行きたいところに旅行をして、 特に必要でも無いものを自分に買って、非現実的なほど贅沢なリタイアメントを夢見ていて、子供にはお金を使おうとしない。子供のことをアクセサリー程度にしか思って居ない。」 と訴えて、社会的プレッシャーを与える作戦に入っているのだった。 ちなみに、女子高校生のこんな身勝手で勘違いした言い分でも、200人が「いいね」をクリックしているというから、 ソーシャル・メディアというのは、不可解なものと言えるのだった。

私がこの報道を読んで、直ぐに思い出したのが、HBOで放映されている「ガールズ」の初回エピソード。
主役であり、脚本とプロデュースを手掛けるリナ・ダーハム扮する ハナ(写真上右)が、両親に「大学を出てから、2年も養ってきたのだから、 もうこれ以上、金銭的にサポートできない」と 言い渡されるところからスタートするのが同エピソード。 無給のインターンをしながら、半永久的に著書を執筆中のハナは そんな両親に対して、「国の経済が悪いから、友達も皆、親にサポートしてもらっている」と反発して、 「私がドラッグ中毒にならないだけ、ラッキーだと思うべき」、「友達のソフィーは一夏に2回も中絶をしているから、 それに比べて自分はどんなにまともか!」と御託を並べるけれど、 両親の決意が固く、受け入れるしかないというのがそのオープニング・シーン。

ハナと両親は、今週報じられた女子高生と両親のように敵対関係にある訳ではないけれど、 「親が自分が自立するまで 金銭的サポートをするのは当たり前」 と考えているのは、1981年〜1995年に生まれ、今年19歳〜34歳になる Millennials / ミレニアルズ世代に ありがちな傾向なのだった。


今週、そんなミレニアルズ世代に関する調査結果を発表したのがピュー・リサーチ・センター。
ミレ二アルズは、彼らの親であるベビー・ブーマー世代(4億1900万人)より数が多い4億5800万人。 過去のアメリカのジェネレーションで、白人層の割合が最も低く、替わってヒスパニック系が増えているのが このジェネレーション。
そのピュー・リサーチ・センターの調査結果によれば、ミレ二アル世代は、


下から2番めの結婚については、同じ年齢層に達した段階の調査で、 1965〜1980年生まれのジェネクサーズ(GenXers / ジェネレーションX世代)の36%、1946〜1964年生まれのベビー・ブーマーの48%、 1928〜1945年生まれのサイレント・ジェネレーションの65%が結婚していたのに対して ミレニアルズの既婚率は26%で最低の割合。 この世代は、親が離婚しているケースが歴史上最も多いためか、結婚にさほど価値を見出していないと指摘されているのだった。

さらにミレニアルズは人をあまり信用しない世代でもあり、ジェネクサーズの31%、サイレント・ジェネレーションの37%、 ベビー・ブーマーの40%が「世の中の大半の人々は信用できる」と回答しているのに対して、 ミレニアルズは上記のように 僅か19%という極めて低い数値になっているのだった。



そのミレニアルズは、大学を出た途端に高額な学費ローンの借金を抱える一方で、失業率が高く、 「ガールズ」のハナのように、無給のインターンをしているケースが非常に多いジェネレーション。 その「ガールズ」のエピソードでは、ハナが親からの金銭サポートを失って インターンシップの雇用主に「給与を払って欲しい」と 言った途端に 解雇されていたけれど、実際のところ人件費が経営を圧迫している企業にとっては、 無給のインターンは有り難い戦力。
ベビーブーマー世代のアメリカン・ドリームといえば、とにかくガムシャラにお金になる仕事をして、 やがては豪邸に住む億万長者を目指すというもの。それに比べてミレニアルズは、お金が儲からなくてもカッコが良い仕事をして、 そのうち本を書いたり、アプリを作ったりして一山当てようと思っている世代。 なので彼らから、毎日断わりきれないほどのインターンシップの申し込みが寄せられるのは ソーシャル・メディア、広告&出版会社、 アート&デザイン関係の企業。
でもインターンとして重宝がられる割には、雇用主やHR(人事)部門からの評価が低いのがミレニアルズ。 上のデータはその状況を象徴するもので、それと同時にミレニアルズは 自らが思い込んでいる自己像と 周囲が見ているキャラクターが最も食い違うジェネレーションでもあるのだった。


ミレニアルズについては、今週のピュー・リサーチ・センターのデータ以外にも、様々な調査や分析が これまでに行なわれてきているけれど、 総じて共通の結果となっているのは、ミレニアルズが 政治的にインディペンデント、すなわち特に支持政党は無いものの リベラル派。そして忠誠心が欠落していて、セルフィーの世代とあって 自己中心の自己陶酔型。 批判されると直ぐにキレる など、あまり褒められないキャラクターが列挙されているのがこの世代。

でも、生まれた時からコンピューターやEメールが普及していたデジタル・ネイティブとあって、 テック・サヴィ(テクノロジーに通じている)ぶりについては、評価されているのだった。
それと同時にインティマシー(親密さ)の無いセックスをする世代で、社会に出て 未だ何もしていないにも関わらず、自分が未来のVIPのように振る舞うというのもミレニアルズのキャラクター。 そんな同世代の特徴は、HBOの「ガールズ」が非常に良く捉えていると思うのだった。


ミレニアルズが未来のVIPのように振る舞う要因と言われているのは、 この世代が、瞬く間にビリオネアになるようなサクセス・ストーリーが生まれる時代に生きているため。
例えば、2月半ばにフェイスブックが買収したアプリ、What;sApp/ワッツアップの ジャン・コーム(37歳、写真上)にしても、 ティーンエイジ時代にウクライナからアメリカにやってきたばかりの頃はフード・スタンプ (貧困層に対して政府が支給する 食料購入用のスタンプ)に頼って生活する貧困状態。 でも、大学卒業後、コンピューターのセキュリティ・エンジニアとして、ヤフーを含む2社に勤め、2007年にヤフーを去った2年後に パートナーのブライアン・アクトンと共にスタートしたのがワッツアップ。
そして僅か5年足らずの間に4億5000万人のユーザーを獲得して、フェイスブックに買収された訳だけれど、 それによってジャン・コームの個人資産は、今や68億ドル(約6800億円)。 あっと言う間にマルチ・ビリオネアになってしまったのだった。
彼はミレ二アルズではなく ジェネクサーであるけれど、このように友達と始めたビジネスが数年で大化けして メガリッチになるというシナリオは、ミレニアルズが夢見るものであると同時に、 彼らが無給でもインターンをして、一山当てられる世界に関わろうとする要因になっているのだった。

もちろんその背景には、アメリカで最もパワフルで 経済力のある ベビー・ブーマー世代の親達からのサポートがあるけれど、 ベビー・ブーマー世代は、親の面倒を見て、子供が自立しない という2世代のしわ寄せが来ている ジェネレーション。 先述の「ガールズ」のファースト・エピソードでも、 「本を書くまでのあと2年、月々1100ドルで良いからサポートして欲しい」という ハナにほだされそうになった夫を見て、母親が「私は生涯一生懸命働いてきたんだから、老後はレイク・ハウスを買って暮らしたいのよ」と、 怒鳴りつけるシーンがあったけれど、「2世代からむしり取られるのはもう沢山!」というのはベビー・ブーマー世代の本音と言えるのだった。

ところで、インターンといえば 実は Will New York の滞在施設を現在利用しているのも、フランスやイタリア等、ヨーロッパからの20代のインターン。 彼女らのインターンの勤務先は PR会社やアートギャラリーなどで、海外からアメリカの無給インターンを フィーを支払って獲得しているのだった。
彼女らは 時々不思議な表現を使うけれど、英語は堪能で 即戦力として仕事をするために雇われている存在。 ヨーロッパ諸国では、アメリカにおけるインターン経験というのはレジュメ(履歴書)の格を上げるために必要なもの。 なので同じインターンでもヨーロッパからのインターンは、アメリカのミレニアルズよりも ずっとキャリア・ハングリーな印象を受けるのだった。

ところでミレニアルズへのアピールに苦慮するといわれているのが、彼らの考えとその政策が全くマッチしない共和党。
それと同時に苦戦が予測されるのが、一流ブランド。 というのも、この世代は 食品から、日用品に至るまで、ブランドへのこだわりが無く、 親の世代よりも 進んでオーガニックの野菜を購入するものの、ブランド・ロイヤルティは親の世代の半分程度。
加えてステータス意識が乏しいので、高額ブランド品に さほど魅力を見出さない世代。 このことはブルックリンがどんなにホットになって、家賃が上がってきたとは言え、一流ブランドや、 デザイナーのブティックが進出しないことからも明らかなのだった。

さて、 2月2週目のこのコーナーでアナウンスをした、CUBE New York ディナー・クラブですが、初回、第2回のレストランと日程が発表されました。 ご参加いただけるのは、ディナー・クラブにご登録くださったメンバーのみとなっています 登録は無料ですので、レストラン・ダイニングを楽しみながら、新しい交流関係を広げたいとお考えのニューヨーク在住女性は、 是非お申し込みをしていただければと思います。





執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。 丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。


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