Mar. 13 〜 Mar. 19




World Baseball Not So Classic




今日、3月19日は、日本に住む私の長年の親友のバースデーなので、日本時間の19日、NYの18日夜に 電話を掛けたところ、電話の向こうでは彼女のハズバンドがワールド・ベースボール・クラシックの日本対韓国戦を見ていて、 日本が得点する度に歓声を上げていたのだった。
「アメリカでは盛り上がっていないの?」と友人に聞かれてしまったけれど、今アメリカは、「マーチ・マッドネス」(3月の熱狂)と 呼ばれる、NCAA アメリカ大学バスケットボール・リーグの真っ最中。 これは大学バスケットボールの甲子園的イベントで、TVのスポーツ・ニュースの大半と、新聞スポーツ欄の殆どは、NCAAの報道に割かれており、 毎年この時期はプロ・バスケットボールやホッケー、メジャー・リーグのキャンプ報道が、 手抜きになる時期なのである。
そんな時期にどうして、このアメリカの、アメリカによる、アメリカのためのワールド・ベースボール・クラシックが 行われたのか? 私は開催のタイミングに大きく首を傾げる部分があるけれど、 少なくとも、スポーツ・ニュースと新聞のスポーツ欄は毎日欠かさずに見ている私でも、このトーナメントが何時から始まったのかは 定かでないし、一体 試合が何時、何処の局で放映されているのかも セカンド・ステージに入るまでは知らない状態だったのである。

それでも、日本同様、アメリカでも選手が出場する、しないでギクシャクしていたせいもあって、ワールド・ベースボール・クラシックが この時期に行われるくらいのことは普通のアメリカ人なら知っていたのは事実で、私が話したアメリカ人は、皆 何処がチャンピオンになるか 賭けるとしたら「キューバ」という意見が圧倒的で、それと同時にドミニカ共和国や日本を挙げる人が2〜3人居た感じで、 「アメリカが勝つ」と言った人は、私が話したアメリカ人の中には皆無だったのである。
そのうちの1人などは、「世界一の野球チームは ラストネームがマルティネスとロドリゲスの選手を集めて、 イチローを加えれば出来上がり!」などと言っていたけれど、これはまんざらジョークの域を出ないものだったりする。

でもワールド・ベースボール・クラシックで、日本チームはもちろん、日本人を猛然と怒らせることになったのは、 言うまでも無く、3月12日に行われた日本VS.アメリカ戦の 前代未聞の ”判定覆し” 。 8回、3対3の同点で迎えた日本勝ち越しのチャンスで、犠牲フライで4対3になるはずだったにも関わらず、3塁ランナー、西岡の タッチアップが早過ぎるというアメリカ側の抗議があっさり認められて、西岡はアウト。 その後、9回にアメリカはアレックス・ロドリゲスのシングル・ヒットで後味の悪い勝ちを収めることになったのである。
ニューヨーク・タイムズ紙のこの試合の見出しは「Disputed Call Overshadows U.S. Victory Over Japan (覆された判定がアメリカの対日本戦勝利に影を落とした)」、 ニューヨーク・ポスト紙の見出しは「A-Rod RBI single caps controvercial win (A.ロッドのシングルヒットで勝ち取った、物議を醸す勝利)」、 というもので、共に気持ちの良い勝利ではないことをストレートに伝えるものだった。 既に日本でも報じられている通り、アメリカのメディアもこの覆しには批判的であると同時に、 アメリカのマネージャー、バック・マルティネスが タッチアップのタイミングなどという”セコいクレーム” を持ち出してくることにも 疑問を唱える声が聞かれていたのだった。

もちろんアメリカのメディアでは、日本側がカンカンに怒っていることも 報じられていたけれど、 「世界の王」と言われた王監督が、日本チームのマネージャーを務めていたメリットが感じられるのは、 多くのアメリカ人が知る日本野球のレジェンドが 「I've been involved in baseball for many, many years, and I've never seen that in Japan」 と言えば、その怒りのコメントがきちんとメディアに報道されることで、 実際、王監督の記者会見のコメントの数々は日本側の真っ当な言い分として、報道記事にかなりフィーチャーされていたのである。

ちなみに、私は もう何年も前、未だ野茂投手もメジャーでプレーする前に、フットボールとホッケーしか見ないアメリカ人の友人が、 いきなり「サダハロー」の話を始めたので、「それ、何?」と訊ねたところ、「君の国のホームラン・キングだよ」と言われて、 彼が「サダハル・オー」の話をしていたと 気付いて物凄くビックリしたことがある。 アメリカでは、日本のミスター・ベースボール、長嶋茂雄氏のことは知られていないけれど、 アメリカの最多ホームラン記録をハンク・アーロン(本名はヘンリー・アーロン)が持っていることを 知っている人ならば、日本の王貞治がそれ以上のホームランを打っていることは熟知しているものである。
でも、アメリカでは王監督の868本という最多ホームラン記録は、私が知る限り、これまでは あくまで「日本における記録」とされており、 アメリカが認める「ワールド・レコード」というのは、王監督の記録よりも113本も少ないハンク・アーロンの755本とされてきたのである。
しかし、今回のワールド・ベースボール・クラシックの報道では、ニューヨーク・タイムズ紙の2人の異なるスポーツ・ライターによる記事で、 王監督が、「メジャーリーグ・ベースボールズ No.1 ホームラン・ヒッター」、 「リーディング・ホームラン・ヒッター・イン・プロフェッショナル・ベースボール・ヒストリー」 というタイトルでそれぞれ紹介されており、アメリカの野球を 隔離された特別の存在と見なすスノッブなアティテュードは、 メディアからは消えつつあることが感じられたのは正直なところである。

でも そのアティテュードは今回の問題の審判、ボブ・デビッドソンの中では、根強く生き続けていたようで、 彼は日本戦に続いて、メキシコ戦でも明らかなホームランをエンタイトル2ベースするなど、信じられない判定を見せてくれていた。 このメキシコがアメリカを下した1戦の報道については、ニューヨーク・タイムズ紙は ボブ・デビッドソンの度重なる疑惑の判定について言及したものの、 ポスト紙は言及ゼロであったし、全体的に、判定は批判しても、ボブ・デビッドソン自身に対する批判が 聞かれていなったのは、私にとってはいかにもアメリカ的と感じられるところだった。
これは「身内びいき」が奨励されるという意味ではなく、アメリカは、裁判でもスポーツでも「ジャッジ」の判断が秩序としてまかり通る社会であり、 判決や判定を不服とすることはあっても、ジャッジ(判事、審判)本人の資質や能力を問うことは、 システムを根本から否定する行為として、まずは行わないことなのである。

それでも、ワールド・ベースボール・クラシックの審判団が2流だったのは誰もが認めるところで、 こうなってしまったのも、メジャー・リーグのアンパイア組合が同トーナメントへの参加を拒否したことにより、 メジャー・リーグ経験を持つマイナー・リーグの審判によってアンパイアリングが行われたためである。 「ベース・ボールのワールドカップ」を銘打ったイベントが、アメリカの審判だけで行われるのもおかしいけれど、 それにマイナー・リーグのアンパイアが起用されているというのは、まともな常識で判断すれば「論外」というべき状況である。
問題のアンパイア、ボブ・デビッドソンは、1999年にアンパイア組合のメンバー21人と共にメジャー・リーグからクビにされており、 メジャーには珍しい「ボーク」の判断を頻繁に下すので、「ボーキング・ボブ」というニックネームが付けられていた人物。
今日付けのニューヨーク・ポスト紙には、千葉ロッテのボビー・ヴァレンタイン監督の 「日本の審判の方がずっと優秀なのに、彼らは(ワールド・ベースボール・クラシックに)招待さえされなかった」というコメントが掲載されていた一方で、 「アジアの審判団を呼ぼうと試みたけれど、労働法の問題で、日本の審判は参加を断った」というメジャー・リーグ側の言い分も報道もされていて、 果たして どちらが本当なのかは不明である。
でも、メジャー・リーグは怪我を理由に不参加の選手が何人もいた一方で、アンパイアも非協力的であった訳で、 それぞれに「調整優先」、「体力温存」、「条件が折り合わない」など、言い分はあるだろうけれど、 この中に本当に野球が好きな人が一体どのくらい居るのだろう?というのが私の頭を掠める疑問である。

いずれにしても、ファイナル4として、日本、韓国、キューバ、ドミニカ共和国が勝ち残った段階で、 アメリカ人の知人に、「本当に実力がある4チームが勝ち残ったね」と言われたけれど、私もこれには全く同感の思いだった。
でもこれらは同時に、メジャー・リーグに一流選手が流れている国でもあるけれど、 昨今のアメリカの野球は、ステロイド問題などもあって、1994年〜95年に掛けてのストライキ以来の 不人気と指摘される状況で、特に「ここ2〜3年のメジャーリーグはつまらない」 というのは、 アメリカのベースボール・ファンの偽らざる気持ちである。
ワールド・ベースボール・クラシックのアメリカの敗退を受けて、ニューヨーク・ポスト紙は、 ベースボールがアメリカの”National Past Time ”と言われるのをもじって、 ”Our Time Has Passed (我々の時代は終わった)” という見出しを打っていたけれど、 アメリカが世界のNo.1であることを誇示するために企画されたトーナメントによって、 逆にメジャー・リーグの問題点をメディアに指摘されるというのは、いかにも皮肉な結末である。
私個人の意見としては、このワールド・ベースボール・クラシックをきっかけに、日本の野球選手に 「メジャーに挑戦する」ということが 果たしてそんなに意味や価値があることなのか?を今一度考えて欲しいと思っている。


ニューヨーク・エリア在住女性のためのネットワーク・パーティー開催のお知らせ

前回の開催から1年が経過してしまいましたが、来る4月9日、日曜日、午後2時より、 CUBE New York主催のニューヨーク・エリア在住女性のためのネットワーク・パーティー開催を予定しています。
レジデンシャル・ビルディングのパーティー・ルームが会場となりますので、セキュリティの関係で、 参加御希望の方には事前のご登録をお願いすることになります。既に過去のパーティーにご参加いただいた方には、 追ってEメールでご案内を差し上げますが、今回初めて参加を御希望になる方、もしくはEメール・アドレスを過去1年の間に 変更された方は、Eメールでの お申し込みを頂くようお願い致します。
詳細は追って、サイトでお知らせいたします。



Catch of the Week No.2 Mar. : 3月 第2週


Catch of the Week No.1 Mar. : 3月 第1週


Catch of the Week No.4 Feb. : 2月 第4週


Catch of the Week No.3 Feb. : 2月 第3週





執筆者プロフィール

秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。
丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、1989年渡米。以来、マンハッタン在住。
FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。
その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.設立。以来、同社代表を務める。