Mar. 12 〜 Mar. 18 2007




” マイルド・レイシズム ”



今週のニューヨークは またしても金曜に大雪が降って、400便ものフライトがキャンセルされることになったけれど、 晴天だった週末も、除雪されて 山積みになった雪が解ける気配も見せない寒さで、一体何時になったら 春が来るのか?という感じである。
今年の冬を経験して、多くのニューヨーカーが感じているのが 「冬は飛行機での旅行は極力避ける」 ということ。 私の友人は、ジェット・ブルー・エアラインの機内で9時間 閉じ込められた経験をしているし、別の友人は 空港で2時間待たされた挙句、便が欠航となって、荷物を抱えてさらに2時間掛けてJFKから戻ってくるという大変な思いをしていたりする。 かく言う私も 2月にイタリア行きを考えていたけれど、今となっては「行けなかった事の方がラッキー」 とさえ思える状態である。

さて 先週水曜日、もう忘れかけているくらい音信不通となっていたアメリカ人の女友達から突然電話が掛かってきた。
彼女とは 以前仕事の関係で毎週のように会っていて、当時は自宅のパーティーなどにも呼んでもらっていた仲。 その頃、彼女はどの国だか忘れたけれどヨーロッパ人のボーイ・フレンドと一緒に暮らしていて、彼とは何時も一緒だったし、 彼女自身のヨーロッパかぶれも 大変なものだったので、結婚する、しないは別として とても上手く行っているカップルだったのを記憶している。
しかし電話を掛けてきた彼女によれば、その彼との4年に渡る付き合いが 昨年秋に終止符を打ったとのこと。 彼女は暫くショックで 食事も喉を通らなかったというけれど、ホリデイ・シーズン頃から落ち込んでいるだけでは始まらないと思い、 シングル・マーケットに復帰する心を決めて 徐々に何人かの男性とデートをするようになったという。
ブロンドで北欧系に見える彼女は、周囲がブラインド・デート(所謂アメリカ版お見合い)をセットアップしてくれることが多いそうで、 予定では 私に電話を掛けてきた日に、生まれて初めてアジア人男性とブラインド・デートすることになっていたという。 ところが、前日になって彼にビジネス・トリップが入ってしまい、2人はブラインド・デートの前に携帯電話で話すことになったけれど、 彼女は 彼の声と喋り方を聞いた途端に、「これはもうダメだ!」と確信したという。
でも電話で断っては ブラインド・デートをセットアップしてくれた友人に失礼ということで、 彼が水曜のデートの代わりに 仕事が入る可能性の無い土曜日のブランチを提案してきた際、 「ブラインド・デートは緊張して苦手だから、お互いに友達を1人連れて来て 4人でブランチをしては?」と提案したのだという。 そこで相手がアジア人男性なので、「アジア人の女友達を誘った方が喜ばれるのでは?・・・」と思った彼女が 私にお誘いの電話をしてきたという訳だった。

彼女は相手の男性が、日本人なのか、コリアンなのか、チャイニーズなのかも覚えていないし、分からないという 典型的な ”アジア人に関心を示さないアメリカ人” の姿勢を見せており、しかも相手の名前は紛らわしいことに 「ケン」。 これでは日本人の「健」とか「賢」なのか、チャイニーズやコリアンが ”Kenneth / ケネス” という 英語名を付けて、「ケン」の略称を名乗っているのか、全く見当も付かないのである。
でも相手の国籍に関わらず 私は土曜の午後は既に予定があったため、彼女にフィードバックを頼んで その日は電話を切ったのだった。
そしてその先週末、彼女はギリシャ人の女友達を連れて、ミートパッキング・エリアの人気レストラン、パスティスで ”ケン” &その友達と 4人でブランチをしたそうで、ケンは銀行勤めのコリアンだったという。 また友人も 同じ大手銀行に勤めるコリアン・アメリカンを連れてきており、結局このブランチは こうした設定ではありがちのシナリオ、すなわち お互いが連れてきた友人同士だけが盛り上がっているという結末に終わったという。
彼女のギリシャ人女友達も、ケンの友人も以前は家族と共にクイーンズに住んでおり、お互いに自分の好きなグリーク(ギリシャ)・レストランと コリアン・レストランに連れて行く約束をして、2人の間では携帯番号を交換していて なかなか楽しそうにしていたとのことだった。

ところで、私の友人がどうして電話で話しただけで、「ケン」に見切りを付けてしまったかといえば、 ケンは、ブランチに連れてきた彼の友人のようにアメリカン・ボーン(アメリカ生まれ)のコリアンではないため、 コリアン・アクセントが強くて 「その話し方を聞いていると、どうしてもロマンティックな気持ちになれない」 というのがその理由。
では何故、彼女の友達がコリアンとブラインド・デートをセットしようとした段階で断らなかったのか?と言えば、「自分が今までヨーロッパ人の男性 ばかりに固執してきたので、アジア人の男性にも 会うだけ会ってみたら・・・ という友人のアドバイスを受け入れた」のだという。 また彼女自身、ヨーロピアン男性、ヨーロピアン・ルーツのアメリカ人男性でないとすれば、アフリカン・アメリカンはダメ、 南米&ヒスパニック系もダメ、中東系は論外という消去法で、あとはアジア人男性くらいしか残っていない・・・と悟っており、 アジア人男性は「礼儀正しく、真面目」なので、会ってみるのは良いかも・・・と考えたとのことだった。

こうした彼女の理屈を聞いていると、世界地図がどんどん消去法で塗りつぶされていくのを頭に描いてしまうけれど、 ニューヨークのような人種の坩堝に暮らしていると デート相手選びというものに、人種や出身国が深く絡んでくるのは紛れも無い事実である。 しかもニューヨーク生活が長くなればなるほど、Datable / データブル(”デート可能な” という意味の造語) な人種はどんどん限られてくる 傾向にある。
これは自分がニューヨークで暮らすうちに特定の人種の嫌な部分を見てしまったり、自分や友人の交際相手として 特定の人種を詳しく知るうちにその習慣や人間性に理解しがたい部分を見出したり、面倒な気持ちを抱いてしまうため。 その反面、 自分にしっくり合うカルチャーを見つけると それが益々好きになるような環境が整っているのもニューヨークで、 ニューヨーク生活が長い人ほど デートしたい人種&付き合いたい人種、逆に 絶対デートしたくない人種 というものを 明確に持っているものである。
また普段の会話でも、「どんな男性(もしくは女性)が好みなの?」という質問に対する答えの中に 特定の人種を挙げる人は決して少なくない訳で、 マッチ・メイキングのサービスでも、人種というのは相手を選別する重要な条件になっているのである。

でも、こうした人種の選別基準というのは 時に他愛の無い理論に基づいている場合も少なくなかったりする。
フランス人が苦手な人はフランス人の「外人嫌い」のキャラクターや、特に男性はデオドラントを使わずにフレグランスを沢山つけるので 「体臭とフレグランスが混ざった匂いが嫌だ」という人も居る。イギリス男性を嫌う人は、「冷たくて、皮肉っぽい」とか、 「仕草が気取っていてゲイみたい」、「礼儀正しすぎて疲れる」などと言うし、 ラテン系の男性は「時間にルーズ」、「貸したものが戻ってこない」、「自分で言った事を忘れる」、 「ムード・スウィング(感情の起伏)が激しい」などと指摘される訳で、 こうしたことは、考えようによっては 「マイルドなレイシズム(人種差別、人種的偏見)」 とも言えるもの。 これらのキャラクターが、その人種や国籍の全ての人々に当てはまるものではないのは 言うまでも無いことである。
逆に「どこの国 出身の人が好き!」という理論も、自分の周囲に居た僅か数人の特定国籍の人々が良い人だったとか、自分に合う人だった、 自分好みのルックスだったという論拠に基づいているだけであったりするのである。

でも日本人女性が時に 「付き合うならアメリカ人男性よりも ヨーロピアン男性の方が楽な場合が多い」と語る理由には 頷けることが多く、私がこれまで話した多くの日本人女性が語るのは、 「アメリカ人男性で アジア人と付き合いたがる男性は、アメリカ人女性の強さに嫌気が差す半面、 アジア人女性のことを 未だに ”大人しくて、扱い易い” とか、”自分の面倒を見てくれる” などと勘違いしている場合がある」ということ。 その一方で陸続きで様々な国が隣り合って存在するヨーロッパの男性は、何処の国でも 「女性は強い」ことは熟知しているので、 余計な妄想は抱いていない上に、他国のカルチャーに対してレスペクト(敬意)を示し、関心を寄せてくれるので、 日本食や日本の習慣を生活の中に取り入れ易いということ。
もちろん、アメリカ人男性にも外国のカルチャーを理解する人は沢山居るし、アメリカ人ほど ひとくくり に語れない 国籍は無いので、この理論は一概に通用するものではないけれど、アメリカ人とヨーロピアンの両方と付き合ってみた結果、 こう感じる日本人女性は少なくないようである。

さてニューヨークだけでなく、諸外国で暮らしている日本人なら誰でも感じるのが、 いくら外国人の友達が出来ても、「直ぐに仲良くなれて、いろいろな面で頼りになるのは、やはり 同じ日本人の友達」であるということ。
私もニューヨークに来たばかりの頃は、アメリカ文化やニューヨークという街に馴染もうとするあまり 日本人より外人の友達との付き合いを 優先させて来た時期もあったけれど、そうやって諸外国の友人と交流を持った後で感じるのは、 やはり日本人というのは まともで信頼できる人が多い人種であるということ。 そして、日本人が諸外国で生活していく際に とても大切だと言えるのが、そんな信頼できる 日本人の友達の存在。
でも職場など、自分の生活圏以外の日本人の友達に巡り会うのは ここニューヨークでは そう簡単な事ではない訳で、 「そんなNYの日本人女性のための交流の場を持てたら・・・」と 2002年の12月に初めて行ったのが、CUBE New York主催の 在NYエリア日本人女性のためのネットワーク・パーティー。 この時は22人ほどの参加者で、2回目にはその数が30人を超え、3回目には40人を超えて、 過去3回のパーティーは60人を超える方々にご参加いただいています。
このところ、すっかり年に1度の ”七夕イベント” になってしまったネットワーク・パーティーですが、 今年も 4月14日の土曜日の午後2時より パーティーを行うことにいたしました。場所はマンハッタンのミッドタウンです。
既にご参加いただいた皆さんには、来週にも詳細をお知らせするメールを差し上げます。 もし、これまで未参加で、参加を御希望の方はカストマー・サービスまで、ご連絡をいただければ、 詳細のメールをお送りいたします。 お1人でも、お友達同士でも 気軽に参加していただけるパーティーですので、多くの方々のご参加をお待ちしています。



Catch of the Week No.2 Mar. : 3 月 第2週


Catch of the Week No.1 Mar. : 3 月 第1週


Catch of the Week No.4 Feb. : 2 月 第4週


Catch of the Week No.3 Feb. : 2 月 第3週






執筆者プロフィール

秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。
丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、1989年渡米。以来、マンハッタン在住。
FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。
その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.設立。以来、同社代表を務める。