Mar. 15 〜 Mar. 21 2010




” Who's the Worst ”


今週のニューヨークは週明けこそは少し寒かったけれど、週の半ばからはすっかり春のような陽気。 加えて今週からサマー・タイムに突入して、先週までの午後4時が 今週は午後5時になっているため、 突然 日が長くなったように感じられて、一気に春になった気分を味わうことになったのだった。
なので土曜日は、久々にレストランの屋外テーブルで女友達とブランチをしたけれど、私を含めて皆、半袖やタンクトップに 足元はサンダルという出で立ちで、既に春を飛び越えて夏のようなアウトフィット。 でも、これは私達に限ったことではなく、ニューヨーカーは 少し暖かくなると あっという間に夏服を着始めるので、 春物がクローゼットに手薄なのは 誰にでも共通して言えることだったりする。

さて、久々の女友達とのブランチで一番の話題となっていたのが、今週、アメリカのメディアが最も大きく取り上げていた サンドラ・ブロックの夫、ジェシー・ジェームスの不倫スキャンダルについて。
サンドラ・ブロックと言えば、ご存知のように3月7日に行われたオスカーで 主演女優賞を受賞し、 そのスピーチの中で 涙ながらに夫のジェシーに感謝していたと同時に、2人が仲睦まじく レッド・カーペット上でスナップされていた姿(写真右、左側)が 人々の記憶にも鮮明であっただけに、 週半ばに明らかになった夫の浮気は ショッキングなニュースとして報道されていたのだった。
しかも、この不倫を暴露した愛人で、タトゥー・モデルのミシェル・マッギー(写真右、右側)というのが、全身だけでなく、顔にもタトゥーが見られる 良く言えばワイルド、 正直なところ かなり不気味な女性で、サンドラとは全く正反対と言えるタイプ。 報道ではジェシー・ジェームスは、ワンナイト・スタンド(一夜の関係)なら まだしも、 この女性と11ヶ月に渡って不倫をしていたとのことで、 サンドラが 家を出ても仕方ないといった印象なのだった。

今週は、月曜にケイト・ウィンスレットと映画監督サム・メンデス夫妻の離婚が報じられ、その離婚の原因として 本人は否定しているものの、メンデス監督と女優のレベッカ・ホールの関係が伝えられたばかり。
そうかと思えば、今週発売になったGQマガジンでは、民主党の元大統領候補、ジョン・エドワーズ(写真下、左側)の愛人で、 彼の子供を出産し、エドワーズを離婚に追いやったリエル・ハンターが(写真下、右側))、 不適切なまでにセクシーなグラビアと共に、エドワーズとの関係を告白するインタビューが掲載され、 これもメディアで大きな話題を集めていたのだった。


そして金曜には、タイガー・ウッズの愛人が、またしてもタイガーと取り交わした携帯メッセージを公開して、 大きな報道になっていたけれど、今回の愛人の公開した携帯メッセージのやりとりが 今更ながら スキャンダルになってしまうのは、やはりタイガーがカムバックを表明したことに加えて、 その内容があまりに常軌を逸しているため。
このタイガーのメッセージの内容は、性行為と SMプレーについてで、タイガーが「首を絞める」といったラフな行為を 行っていたことが明らかになっていたのだった。
これを受けて、タイガー・ウッズは ダメージ・コントロールのために 週末に入って ESPNとゴルフ・チャンネルのインタビューに5分間ずつ 応じているけれど、 「何を質問しても構わない」という条件だった割には、インタビューをする側が手ぬるく、タイガーも質問が答えにくいエリアに及ぶと、 「それはエリンと自分の問題だから」 とお茶を濁すだけで、このインタビューがそれほど彼のイメージアップになっているとは言えないだけでなく、 一部のメディアからは顰蹙を買う結果になっていたのだった。

アメリカでは、2年ほど前から不倫スキャンダルで地位を追われたり、イメージ・ダウンや世間での評価を大きく落とす セレブリティや政治家が非常に多いけれど、その先駆け的存在となったのは、 エスコート・サービスの売春婦と関係したことが明るみに出て、ニューヨーク州知事の地位を追われたエリオット・スピッツァー。(写真右)
彼は地位は追われたものの、謝罪会見に一緒に登場したシルダ夫人とは今も結婚関係を続けており、 娼婦と関係はしたものの その仕事の手腕には高い評価が与えられていただけに、 近々再び選挙に立候補が噂されている存在。
彼がエスコート・サービスで、”クライアント 9 (ナイン)”として知られる常連客だったというスキャンダルは、 当時は大顰蹙を買い、女性の敵のように思われていたけれど、その後あまりに多くの不倫騒動が 報じられたためか、徐々に彼に対する批判は下火になってきているのだった。


さて、私の女友達とのブランチで話題になったのが、エリオット・スピッツァーのようにお金で娼婦を買って性欲を満たしている夫と、 ジョン・エドワーズのように大統領選挙という一生のイベントを控えているにも関わらず、当時ガンだった妻を裏切って浮気をする夫、 タイガー・ウッズのようにクリーンなイメージを装って、実は多数の愛人とラフなセックスを繰り返している夫、 そしてジェシー・ジェームスのようにキャリアの上でサクセスフルな妻の恩恵を受けているだけでなく、連れ子の面倒まで妻にみさせておいて、 自分はしっかり浮気をしている夫という、4人のうち ワーストは誰か?という疑問。

驚くなかれ、私を含む4人の全員一致で、”一番マシ”に選ばれたのは、お金を払って不特定の女性と関係して 性欲を満たしていたエリオット・スピッツァー。彼の場合、関係したのは娼婦であって、愛人ではない訳で、純粋にセックスだけと割り切った関係。 なので、夫人の側にしてみればスキャンダルは屈辱的ではあっても、最も心の傷が浅いと察せられる状況でもあったりする。
でも、残りの3人、すなわちタイガー・ウッズ、ジョン・エドワーズ、ジェシー・ジェームスについては、全員があまりに程度が悪すぎて 誰がワーストか 結論が出ないような状態になってしまったのだった。

タイガー・ウッズに関しては、今更説明の必要も無いと思うけれど、女性の趣味が悪いだけでなく、 自分のイメージを守りながら不倫をしようとする小細工をする一方で、避妊をせずにラフな性関係を愛人達と続けてきた様子は、 詳細が明らかになればなるほど、彼がいかに屈折した性癖の持ち主であったかを感じさせるもの。

ジョン・エドワーズは、民主党の大統領候補選挙戦の最中に、妻のガンを同情票の獲得に利用しておきながらの不倫関係で、 当初は愛人、リエル・ハンターの子供が自分の子供ではないと否定していたけれど、その背後では偽のDNA情報をでっち上げるようにスタッフに命じたり、 生まれた赤ん坊のオムツを入手して事前にDNA検査をするように手を回すなど、裏工作を必死に行っており この不倫の全容は やがて彼の元スタッフであったアンドリュー・ヤングが 「ザ・ポリティシャン」という暴露本として出版して ベストセラーになったのだった。
エドワーズが不倫の事実を認めざるを得なかったのは、暴露本もさることながらセックス・テープの存在が明らかになったためで、 民主党の大統領候補たる人物が、ビデオに撮られていることを知りつつ愛人と性行為をしていたという事実は、政治の世界だけでなく、 メディアや一般の人々をも呆れさせていたのだった。

ジェシー・ジェームスについては、バイクのメカニスト兼、リアリティTVのスターとしてサンドラ・ブロックと出会い、約5年前に結婚。 自分より 収入も知名度も高いハリウッドの人気女優とパワー・バランスが逆転した夫婦関係を続けてきたけれど、 彼 はサンドラの夫ということで、キャリア面で恩恵を受け続けてきた存在。
そして表向きには、彼女をしっかりサポートしている様子を装ってきたけれど、今週のメディアでは 彼が多くのオスカー主演女優受賞者の夫やボーイフレンド同様に、自分よりサクセスフルな女性より 自分がイニシアティブを握れる 相手を求めている、すなわち、男女のバイオロジカル・ヒストリーが 示す通り 「男性は女性より優位にあるべき」という 状況を実践していると捉える声が聞かれていたのだった。

この3人に共通の問題点と言えるのは、自分の身の程をわきまえていないということだけれど、 その一方で 3人の夫人、すなわちタイガー・ウッズとよりを戻すことが伝えられるエリン夫人、夫の選挙戦のために 尽くしながら、愛人問題で離婚したエリザベス・エドワーズ、そしてサンドラ・ブロックのうち、誰に一番同情するか? という疑問については、 私達全員が 最も同情したのがサンドラ・ブロックなのだった。
エリンについては、今回のスキャンダルがきっかけでタイガーとの結婚生活を自分の優位で 続けられるだけでなく、離婚をしてもマルチ・ミリオネアになれる訳で、メディアによる屈辱を受けても、一生お金に困らない財産が確保されている訳である。
エリザベス・エドワーズについては、全員が ジョン・エドワーズをスキャンダル以前から鼻持ちならない存在と思っていただけに、 「あんな男と結婚する方が悪い」という冷たい意見で一致していたのだった。
実際、私はこの愛人スキャンダルの遥か前に、日本の友人に ジョン・エドワーズが大統領になる可能性について訊かれたことがあるけれど、 その時点で私は「絶対に無い!」と断言しただけでなく、その理由として 「彼はバカだから・・・」と説明したことがあるほどで、 彼のスキャンダルについてはみっともないとは思っても、驚きはしなかったのである。

私達がこぞってサンドラ・ブロックに同情したのは、彼女のように女優兼プロデューサーとしてハリウッドでサクセスを収めている存在だと、 自分に見合う男性にめぐり合うこと自体がとても大変である上に、寄ってくるのは ジェシー・ジェームスのように 彼女と結婚することによって恩恵を受ける男性が多いであろうこと。
そして、結婚生活を続けるうちに 自分より もてはやされて 稼ぎが良い妻というのは、男性にとって面白くない存在になっていくものであるから、 サンドラ・ブロックがどんなに努力をしても、絶対に浮気をされたり、離婚に追い込まれる状況にあるということ。
しかもジェシー・ジェームスの場合、自分もちょっとしたセレブリティであるだけに それなりのエゴもある訳で、 妻のお陰で生活していける無名の男性より ずっと性質が悪いというのが私達の意見なのだった。

ところで、3月7日のオスカーで、「プレシャス」の演技で助演女優賞を獲得したのが、黒人コメディアンのモニークであるけれど、 オスカー直前のインタビューで彼女が明らかにしたのが、彼女と夫のシドニー・ヒックス(写真左)が ”オープン・マリッジ” の関係であるということ。
”オープン・マリッジ”とは、浮気公認、すなわち 「お互いに お互いが 他の相手と関係してもOK」 という合意に基づいた結婚関係のことで、 このことはメディアでちょっとしたセンセーションと物議をかもしていたのだった。
モニークによれば、彼女と夫は25年間も友達であり続けた関係であるから、例え夫が自分以外の複数の女性と関係したとしても、 それが理由で離婚をしたいとは思わない とのこと。
モニークと夫は、サンドラとジェシー・ジェームスのダウン・スケール・バージョンのような夫婦関係で、成功の規模こそは異なるものの、 モニークの方が夫より有名で、稼ぎも良いという状態。 彼女も数々の演技賞を受賞するたびに、夫に感謝のスピーチをし続けてきたけれど、もし今、シドニー・ヒックスの愛人が名乗り出てきても、 モニークのようなオープン・マリッジの場合、恐らくスキャンダルにさえならない以前に、愛人とて名乗り出ようと考えるかさえ疑問視されるところ。

モニークがオープン・マリッジを明らかにした時点では、多くの人々が 「誰とでも関係して良いなら、何故結婚しているんだ?」と疑問を持ったことが 伝えられるけれど、もし夫というものが最初から浮気するものだという原点に立った場合、「浮気はOKだけれど、 隠し事はNG」という関係にしておいた方が、結婚生活自体は長く続けられるように見受けられるのだった。
とは言っても、相手に対して愛情があればあるほど、相手が別の女性と関係しているという事実を受け止めるのは女性にとっては 酷なこと。でも信じていた夫の不倫をある日突然、寝耳に水の状態で知らされるよりは、精神的なダメージは少ないようである。

私の見解では、男性に浮気されたくないと思ったら、浮気をしない男性を見つけること。
浮気をしない男性というのは、女性側がどうであれ 浮気という形は取らないもので、別の女性に走るのは 通常、 前の関係を清算した後。
でも浮気をする男性にしか縁が無い女性にとっては、残念ながら モニークになるか、サンドラになるかしか 選択の道は残されていないのである。





Catch of the Week No. 2 Mar. : 3月 第 2 週


Catch of the Week No. 1 Mar. : 3月 第 1 週


Catch of the Week No. 4 Feb. : 2月 第 4 週


Catch of the Week No. 3 Feb. : 2月 第 3 週





執筆者プロフィール

秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。
丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、1989年渡米。以来、マンハッタン在住。
FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。
その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。





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