Mar. 14 〜 Mar. 20 2011

” Apocalypse Now? ”

今週のアメリカも、引き続き「Disaster In Japan」と銘打った、日本における大災害のニュースを報じていたけれど、 報道のメイン・フォーカスはもっぱら原発事故に移っており、 日本が講じる対策が、逐一見守られていたのだった。
でもそんな日本のニュースを押しのけて、週末のアメリカの新聞各紙のトップを飾ったのは、 カダフィ大佐の退陣を求める欧米諸国連携によるリビアに対する軍事介入の報道。 これは国連による「内政干渉に当たらない」という決断を受けてのもので、イギリス、フランスを中心とする多国籍軍の 一部としての介入であるけれど、既にイラク、アフガニスタンという2つの戦争が続いているアメリカでは、 反対の声が非常に多く、オバマ政権の命取りにもなりかねないと指摘されているのだった。

その一方で、アメリカのメディアが今週、何度となく指摘していたのが、日本政府の煮え切らない情報公開の姿勢。
これに対しては、アメリカのメディアも日本国民同様にフラストレーションを覚えており、 諸外国が それぞれの国の専門家を起用して、福島原発の被害の実態の情報分析を行なう状況は大いに理解できるのだった。
現在指摘されている野菜、牛乳、水道水の放射能汚染についても、テスト件数やテスト・アイテムが少なすぎることが指摘され、 果たしてその汚染濃度が本当に信頼できる数字であるかも疑問視されているのだった。
また、世界各国では既に日本から到着した旅行者の放射能チェックが行なわれ、日本から輸入された食材についても 厳しい放射能チェックが行なわれているけれど、今のところは中国、アメリカでは 食材が全てチェックをパスしていることが報じられているのだった。

日本の状況を受けて、アメリカ人の70%が「アメリカでも同様の原発事故が起こることを恐れている」と世論調査で答えていることが 明らかになってるけれど、目下アメリカ人、特に西海岸、及びハワイの人々が恐れているのが、 偏西風にのって、福島原発の放射能がアメリカまで飛んでくるのでは?ということ。
これを受けて、アメリカ国内では、被爆による人体への危険を緩和するヨウ素のタブレットが完売状態となっているけれど、 日本でどうしてヨウ素のタブレットの奪い合いが起こらないのだろうと思ったら、日本はこの錠剤が処方箋薬になっているとのこと。 既に、危険地帯ではヨウ素のタブレット(詳細はここをクリックして、記事の説明でご覧下さい) の配給がスタートしているとニューヨーク・タイムズ紙が報じていたけれど、このタブレットは被爆前に飲まなければ十分な効果は無いもの。 もちろん、放射能汚染が続く中では飲み続けた方が、それ以上の被爆を防ぐために役立つけれど、 医療関係者の間でも飲み始めのタイミングが明暗を分けることが指摘されているのだった。
なので、私は国が何時ヨウ素タブレットを危険区域の人々に支給したかは分からないけれど、 それ以外の地域の人々に対しても、早めの対応をして欲しいと思うのだった。

スイス大使館では、原発に問題が生じた時点で、既にヨウ素タブレットを職員用にストックしていたことがアメリカのウェブサイトで報じられていたけれど、 日本から8000マイル離れた西海岸の人々について言えば、どんなに苦労して手に入れたところで このタブレットが必要になるような量の 放射能が日本から飛んでくることはあり得ないのが実情。
友人が暮らす中国では、塩がヨウ素タブレットの替わりを果たすというデマが流れて、「塩が完売状態になっている」と言っていたけれど、 先述の記事でも説明しているとおり、ヨウ素とはアイオダイド・ポタシウムというソルトの錠剤。 なので、食卓塩として一般的なアイオダイド・ソルトは、日常生活の中の放射能には若干の効き目があるという指摘もあるのだった。
でも一度、被爆と言える濃度の放射能を浴びた場合は、食卓塩では全くの役立たず。
このように、被災国でなくても、人々が様々な情報に翻弄されるのは同様の事情となっているのだった。


そんな中、今週発売されるニューズウィーク誌のカヴァーストーリーとなるのが、写真右の「Apocalypse Now」。
Apocalypseとは黙示録のことで、「津波、地震、原発問題、革命、経済危機、次は何か?」というサブタイトルが 打ってあるのだった。
確かに、今回の日本の出来事を外から見ている人は、世紀末現象の1つに見えるのかも知れないけれど、 数日前には CUBE New York のスタッフからも 「2012年に世界が滅びるっていう説、信じます?」と 訊かれたのだった。
私の答えは「No」。 その理由は、全ての生き物には生きる力、すなわち生命力が備わっていて、 それを最大限に発揮しようとするのが、大災害やテロに見舞われるなど、死に瀕する体験をした時。 殆ど頭脳が無いような小さな昆虫でさえ、死に瀕すれば自分の生命を守るために、必死にその力を使おうとするものだし、 人間ならば自分の命、そして他人の命を救うために戦うのは生命体の本能。
だから私はそんな生命力の強さを信じているだけに、どんな事態になっても、 生命体は 必ず生き残って行くと確信しているのだった。
実際、 ABCテレビが今回の大災害の取材の一環として行なった、子供の頃広島で被爆した 現在70歳前後と思われる 日本人男性2人と女性1人に対するインタビューを見ていた際、私にとって最も印象的だったのは、3人とも力強い目をしているということ。 その目に猛烈な生命力を感じて、被爆が致命的ダメージになりかねない子供時代に 原爆投下を乗り切った強さを改めて痛感してしまったのだった。

さて、今日付けのニューヨーク・ポスト紙に掲載されていたのが、「Japan will rise again / 日本は必ず再び立ち上がる(復興する)」というタイトルの短い記事。
これは2005年から2009年までアメリカの日本大使を務めたトム・シーファー氏を取材した記事なのだった。 ちなみに、英語で 「Will」 という未来系は、「必ずそうなる」という状況にのみ使う言葉で、「なるだろう」程度の確実性が無い場合は「Would」、「Could」といった言葉を使うもの。
なので、その強いヘッドラインを見て 思わず記事を読んだけれど、記事の締めくくりになっていたシーファー氏のコメントは、 「日本人は、大被害の後の長い困難に耐える信じられない許容力を持っている。彼らは既にそれを第一次大戦、第二次大戦後に示してきた。 だから私は日本人がその力を再び呼び起こして、今回の悲劇を乗り越えると信じている。」というものだった。
今から振り返ると、2つの原爆投下を含む2つの世界大戦や関東大震災を乗り越えて、戦後の日本の再建に寄与した 明治生まれの祖父母の世代は本当に強かったと思うし、 私自身、亡き祖母の言葉から その強さを感じ取ったことは 何度もあったけれど、 その世代のDNAが、日本人の中に流れているという事実は決して忘れてはいけないこと。
私は、祖父母の世代が過去に成し遂げたからというだけでなく、そのDNAを信じるからこそ、日本は再建、復興できると信じて疑わないのだった。

そんな祖父母は、今のように親に過保護にされたり、何でも欲しいものが手に入るような便利な世の中には育ってこなかった世代。 なので、子供が居る人達にはこれを機に、過保護だった場合はそれを改めて、どんな状況も乗り越えられる 心身ともに強い人間になれるように、 日本の子供達を育てて欲しいと 心から望んでいるのだった。
それと共に、生命力というのは親の姿を見て子供が学んでいくものであるから、強い人間に育って欲しいと願うのであれば、 まず親が強さを示すと同時に、人の命の大切さ、助け合うことの大切さを、どんなに幼い年齢の子供にでも教えていって欲しいと思うのだった。
子供というのは、サイズが小さいだけで立派に人間であり、大人ほど雑念や利害的な打算がない分、 口に出さなくても ピュアに、そしてダイレクトに物事を感じているもの。 両親の離婚で、3歳児でさえ ストレスで頭髪が抜けたりするのである。


私自身、最も幼い頃の記憶として2歳か3歳の頃のことを覚えているし、当時の父母の言葉、当時同居していた祖父の言葉などが しっかり脳裏に焼きついているので、「どうせ分からないだろう」、「まだ早すぎる」などと考えずに、 様々な機会を見つけて、出来る限り子供達には、いろいろなことを教えてあげて欲しいと思うのだった。
特にこうした日常からかけ離れた状況下で起こったこと、見聞きしたことは、たとえ幼くても記憶に深く刻まれる場合が非常に多いもの。 大人は、ビデオ録画さえ何度教わっても出来ない人が少なくないけれど、子供は少し教われば、それ以上のことを自分でどんどん習得していく脳の柔軟さと キャパシティを持ち合わせていることを、決して軽視するべきではないのである。

最後に、日本のウェブサイトで、春の選抜高校野球が予定通り行なわれることに懸念を示す意見を呼んだけれど、 私は9・11のテロの経験から、これを行なうことには大賛成の立場である。
当時テロで意気消沈していたニューヨーカーが、2001年のヤンキーズのプレイオフの大健闘で どれだけ救われたかは、テロから10年経とうとしている今でもはっきり覚えていること。 対オークランドA's戦でのデレク・ジーターのまさかの守備のファイン・プレーや、 ヤンキー・スタジアムでの7回裏の連夜の逆転劇は、今もヤンキー・ファンが懐かしく語り合うエピソードなのである。
残念ながら、その年のヤンキーズは、ワールド・シリーズで、アリゾナ・Dバックスに敗れてしまったけれど、 そんな息抜きの瞬間やエキサイトメントが無かったら、テロのダメージや その後 襲った たんそ菌テロのダブル・パンチを 乗り越えるのは本当に難しかっただろうと思うのだった。
当時のヤンキーズも「ニューヨークのために戦っている」選手が口々に語っていたけれど、 日本の高校球児たちにも、国民を勇気付けるようなプレーを見せて欲しいと思うのだった。





執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。 丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。


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