Mar. 9 〜 Mar. 15 2015

"The Most Important Number of American's Life" ”
アメリカ人の人生で最も大切な数字とは?


今週のアメリカでは、引き続き 政治関連のニュースで最も時間が割かれていたのは、 ヒラリー・クリントンが国務長官時代に 政府から支給されたメール・アカウントではなく、 プライベートのEメール・アカウントを使用して、政府絡みの連絡を取っていたというスキャンダル。
今週はヒラリー・クリントンがこれを受けて釈明の記者会見を行っていたけれど、 それに対して「説明が不十分」として、非難を展開していたのが野党、共和党側。 しかしながら、ヒラリー氏を攻撃していた 2016年共和党大統領有力候補、ジェブ・ブッシュも、 彼がフロリダ州知事に、プライベートのメール・アカウントを使用していたことが明らかになり、 彼も自分の釈明を求められるという、米国大統領選挙に付き物の茶番劇が既にスタートしているのだった。

その一方で、アメリカの失業率低下よりも確実に景気回復を裏付ける数字として今週発表されたのが、 2014年に結婚したカップルのウェディング費用のデータ。
それによれば、2014年のウェディング費用の平均は 前年から3%アップして、3万1,213ドル(約380万円)。 これは全米の平均で、エリア別に見ると最も高額なのは、言わずと知れたマンハッタンでのウェディングで、 その平均コストは7万6,328ドル(約926万円)。でもマンハッタンに関しては、その平均が1年前より1万ドル下がっているとのことで、 2013年度は1千万円以上が平均的なウェディングの費用となっていたのだった。
ちなみに最もコストが低いエリアは、モルモン教徒が多いことで知られるユタ州で、その費用は1万5,257ドル(約185万円)。 全米の傾向としては、ゲストの人数を絞って、その1人当たりに掛ける費用を増やす傾向にあり、 2014年度の平均的なゲスト数は136人と、リセッション時代よりも少なくなっているのだった。




さて、目下アメリカは大学の合格発表シーズンの真っ最中。
今年、ハーバード(写真上左)、エモリー、バックネル(写真上右)といったエリート校は、史上最多のアプリケーション(入学願書)が寄せられたというけれど、 ここ2週間ほどの間に、ハイスクールのシニア(高校3年生)は、 願書を出した大学にアクセプト(入学受け入れ)されたか、リジェクト(入学拒否)されたかを通知されることになるのだった。
昨今、その通知手段は Eメールが一般的であるけれど、そのEメールで知らされるのは 合否発表のサイトへのリンク。 受け取った側は心臓をバクバクさせながら そのサイトにアクセスすることになるけれど、 合格しても 諸手を挙げて喜べないのは、その通知と同時に 学費の請求書も送られてくるとのこと。 親が支払うとしても、学費ローンを組むにしても、日本円にして約3000万円の学費は大きな経済的負担。
でもそうまでして、アメリカ社会が 現在、今まで以上にエリート学歴にこだわるのは、 学歴によって 仕事や収入など、その後の人生が決まってくると考えられているためなのだった。

よく、日本人は「アメリカの大学は入るのは簡単」などと誤解しているけれど、 私に言わせると、アメリカの大学、特にエリート校に入学するのは、日本とは比較にならないほど大変なこと。
高校における学業成績を示すGPA(Grade Point Average)のスコアと、日本の共通一時にあたるSATの得点で、 どの大学に願書が提出できるかが決まってくるので、アメリカの高校生が1ポイントでも多くの得点を獲得するために 必死で勉強するのがSAT。 この時点の彼らにとって 人生で最も大切な数字がSATのスコアなのだった。

でもアメリカの大学入学審査は、そうした学業の数字だけで決まるものではなく、願書、エッセイ、推薦状、 課外活動やチャリティ、地元コミュ二ティへの貢献など、学生を学力以外の要素を含めて総合的に評価するもの。
私の親友の息子も今年大学進学を控えているけれど、彼の場合、高校時代には 南米の貧困地域を救済するためのチャリティ活動を2つ、自らリーダーになって行なったのに加えて、 テニス部のキャプテンで、学生リーグのランキング・プレーヤーであったので、そのプロモーション・ビデオを作製するなど 受験というよりも売り込みという状況。 そんな学生のためのプロモーション・ビデオを作製するプロダクション企業が存在していることも凄いと思うけれど、 それを支払う親側も大変だと思うのだった。

そして一度入学しても、在学中は真剣に勉強しなければならないし、夏休みはインターンとして企業で働いて、 社会経験を積むのがアメリカの大学生。 したがって、アメリカの大学生活は日本の大学生とは比べ物にならないほどハード。 私は日本の大学を出ているお陰で、こんな大変な思いをせずに「大卒」と言えることを、心からラッキーだと思っているのだった。




それだけ、ハードに勉強してエリート大学を卒業すれば、エリート企業への就職や、エリートとしての人生が待っているかと言えば、決してそうではないのが実情。
例えば、昨年Cube New Yorkの留学生のためにデート・インストラクターをしてくれたアメリカ人男性は、ジョージ・W・ブッシュ元大統領の母校でもある 名門イエール大学を卒業しているけれど、Cube New Yorkのビジネスに協力してくれた時点では、 ニューヨークに拠点を移したばかりとは言え 31歳にしてジョブレス。 彼には弟が居て、弟のことも紹介してくれるというので、一応学歴を尋ねてみたところ、その弟は名門中の名門、コロンビア卒。 でも職業を訊ねたところ、「スタートアップ」という返事が返ってきたので、「That means jobless? (それってジョブレスっていうこと)」と 突っ込んでみたら、あっさり認めていたのだった。

この時私は、この兄弟のDNAの優秀さに感心した一方で、エリート大学の学歴が 必ずしもエリート・ジョブを約束するものではないことを痛感してしまったけれど、 彼らがラッキーなのは、学費ローンを一切抱えていないこと。 したがって 借金を心配せず、人生設計をゆっくり考えることが出来るけれど、 多くの大卒アメリカ人は、約3000万円の学費ローンを抱えて社会人生活をスタートするケースが多く、 その返済のプレッシャーから 学歴に見合わない低収入の仕事に就いて、 親元に戻って暮すのが ミレニアル世代に顕著なトレンド。
現在25歳〜34歳の男性の17.7%、女性の11.7%が親元で暮らしているとのことで、 この数字は史上最高になっているのだった。

そうかと思えば、昨年の今頃行われたミートパッキングの大人気レストラン、 パスティスのクロージング・ナイトで出会ったJ.P.モーガン・チェイスの 27歳のバンカーは、自分が勤めるバンクのCEO、ジェイミー・デイモンが、彼のファミリーの長年の友人とあって、 彼を「ジェイミー」と呼び、その若さにも関わらずアメックスのセンチュリオン・カードを持って、 「Money is no object / 金は問題じゃない!」とさり気なく言い切っていたけれど、友人と私の分のドリンクを何杯も払ってくれたので、 口先だけではないのだった。
その彼は、プリンストン大学に進学して欲しいという父親のたっての望みを振り切って、2段格下げした某大学に進んだものの、 家族のコネクションでしっかりJ.P.モーガン・チェイスに就職し、トライベッカのコンドに住んで、出世コースを歩む身分。
要するに家柄さえ良かったら、学歴はさほど人生に影響を及ぼさないということになるけれど、ジェイミー・ダイモンと 交友の無い家庭出身の人でも、人生を悲観するべきでないストーリーが掲載されていたのが、今日、3月15日のNYタイムズ紙のウィークエンド・レビュー第一面。

その記事には、優秀でありながら一流校にリジェクトされた現在28歳の男性、SATのスコアが悪く、やはり希望通りの大学に進学できなった26歳の 女性のその後のストーリーが書かれていたけれど、2人はいずれもエリート校に進学していたら、平均的な学生として、 平均的なカレッジ・ライフを送っていたであろう存在。
ところが格下げした大学においては、彼らは極めて秀でた存在。そのため直ぐにリーダー的な存在となり、 在学中に様々な課外プロジェクトに積極的にかかわり、結果的にはエリート校に進んだ学生と同じ職場に就職。 来た道のりは異なっても、同じ目的地に到達した様子が描かれていたのだった。
その記事には、「人生が花開くタイミングは人それぞれ」とも書かれていたけれど、 私に言わせれば大学時代に人生の華が終わってしまう方が 嘆くべきこと。 したがってSATスコアは高校時代の学業の優秀さの指針にはなっても、決して人生のサクセスの目安にはならないのだった。


むしろSATスコアよりもはるかに人生を左右するのは、クレジット・スコア。
クレジット・スコアについては、以前のこのコラムで書いたことがあるけれど、これは ”信用偏差値” とも訳されるもので、クレジット・カードを含む様々なローンや、公共料金の支払い状況とその履歴、 借り入れ総額やローンの種類などから割り出す、 個人の経済信用力の格付け。 最低が300ポイント、最高が850ポイントで、このポイントに応じて、住宅や自動車のローンの利率が 決まるだけでなく、賃貸契約や就職活動にまで影響する大切な数字。
ミレニアル世代で、裕福な家庭に育っていない若者は、前述のように大金投じた挙式やハネムーンにお金を使うよりも、現在の低金利を利用して、 結婚前にカップルで家を買うケースが非常に多いとのこと。 その時に問題になってくるのがクレジット・スコアで、カップルでローンを組む場合、どちらかのクレジット・スコアが低ければ、 低い方に合わせて金利が設定されてしまうので、結婚相手を選ぶ際に自分と同等以上のクレジット・スコアであることを 条件に挙げる人は、男女を問わず、非常に多いのだった。
以前の記事でもご説明しているけれど、同じ金額のローンを組んでも、 クレジット・スコアが最高レベルと、最低レベルでは、 利率にして5%以上の開きが出てくるのが通例。 そして それが生涯に渡って 数千万円〜億円単位の金額の差になって表れるので、クレジット・スコアは、SATスコアよりも、エリート学歴よりも、 アメリカ人の人生において大切な数字と言えるのだった。


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執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。 丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。




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