Mar. 14 〜 Mar. 20 2016

”Another March Madness!?”
アナザー・マーチ・マッドネス!?



今週、アメリカのメディアで最も報道時間が割かれていたのは、大統領選挙のニュースよりも”マーチ・マッドネス”こと NCAAバスケットボール・トーナメント。
フットボールを除く 米国カレッジ・スポーツの80%の収益を稼ぎ出しているといわれるのが NCAAバスケットボール・トーナメントで、その2016年のトーナメント・ブラケット(写真上右)が発表されたのが先週日曜のこと。 その後、オバマ大統領を含むNCAAファンから カレッジ・バスケットボールのことなど何も知らない人までもが、 トーナメントがスタートする木曜までに取り組んだのがブラケット予想。
ブラケットの全63試合で正解予測をする確率は、9,223,372,036,854,775,808分の1という宝くじの当選より難しい数字。 2014年にはウォーレン・バフェットがブラケットの完全予測をした人に10億ドル(約1200億円)の賞金を提示していたけれど、 それほどまでに完全予想が不可能なのがNCAAバスケットボール・トーナメント。 その予測を難しくしているのが ”マーチ・マッドネス”というネーミングの由来にもなっている 毎年起こる大番狂わせ。
たとえ奨学金を貰って、エリート・アスリートとしてカレッジにリクルートされたプレーヤーでも、 プロのスカウトを含む アメリカ中が大注目するこの大舞台は かなりのプレッシャー。 そのため「まさか!」の番狂わせが 立て続けに起こるのが同トーナメント。
今回も、金曜に 誰もがチャンピオンに予測していたミシガン・ステート(ミッドウエスト第2シード)が、 ミドル・テネシー(ミッドウエスト第15シード)に敗れるという事態が起こっているけれど、 15シードが第2シードを破ったのはNCAAトーナメントの歴史上たった8回しか起こっていない異例の事態。
こんな番狂わせのせいで、NCAAに詳しい人のブラケットの正解確率と 6歳児が適当に埋めたブラケットの正解確率は ほぼ同じと言われるけれど、一度でもブラケットを埋めると ワールドカップ並みに はまってしまうのがNCAAトーナメント。
今やブラケットは、殆どの人々がオンラインで予測を埋めて、プライベートやパブリックのコンテストに登録しているけれど、 毎年その数は増え続ける一方。今年はESPNのサイトだけで 1300万の ブラケットが登録されているけれど、そのオンライン・データによれば 番狂わせが連発したトーナメント2日目、 金曜の時点で 無キズで全試合正解のブラケットは 約1%。 でもトーナメントが第3ラウンドを迎えるころには その数がゼロになっているのが毎年のことなのだった。




多くのメディアが 「アナザー・マーチ・マッドネス」、すなわちもう1つのマーチ・マッドネスとして報じていたのが 例によってドナルド・トランプの選挙キャンペーン。
今週はトランプが選挙活動に訪れる先々で、彼への抗議活動が起こっており、 今週もそのスピーチ会場で起こっていたのが、トランプ支持者が抗議活動者を殴るという暴力沙汰。 その一方で、アリゾナ州ではトランプの抗議活動者がハイウェイをブロックする事態(写真上右)も起こっていたけれど、 ここニューヨークでも週末には コロンバス・サークルのトランプ・インターナショナル・ホテル&タワーから、 5番街のトランプ・タワーまで 抗議デモが行われたばかり。

そんな中、注目を集めた今週のスーパー・チューズデイでは ドナルド・トランプがフロリダ州は征したものの、 オハイオ州で 現職州知事のジョン・ケイシックに敗れたため、 いよいよ可能性が高まってきたのが、2週間前のこのコーナーに書いた”ブローカード・コンベンション”
これは、ドナルド・トランプを阻止しようとする共和党上層部が狙っている選挙戦シナリオであることは この時のコラムでご説明したけれど、昨今メディアで用いられているのは ”オープン・コンベンション”という言葉。
そして今週に入って浮上したのが、 オープン・コンベンションに突入した場合に 共和党上層部が 現在選挙戦を戦っている候補者以外から 共和党大統領候補を擁立しようとしているシナリオ。 その代替候補の筆頭に名前が挙がっているのが 現在下院議長で、4年前にミット・ロムニーが大統領候補であった際の 副大統領候補、 ポール・ライアン(写真下左)なのだった。

そもそも、現時点で見込まれるオープン・コンベンションには3つのシナリオがあって、 1つは、ドナルド・トランプがコンベンションの場で共和党候補となるために必要な1237のデリゲート(代議員)を獲得して、 大統領候補になるというもの。 2つ目は、トランプがコンベンションで1237デリゲートを獲得できず、替わりに現在2番手につけているテッド・クルーズが 仕切りなおしの投票で1237デリゲートを獲得して候補として擁立されるというもの。 でもトランプ、クルーズ、ジョン・ケイシックのいずれの候補も1237デリゲートが獲得できない場合、 候補選びはオープン・コンペティション、すなわち現在選挙戦を戦っていない人物も 選出対象となるため、そこでポール・ライアンに票を集めて、彼を共和党大統領候補として選出しようというのが 共和党上層部が描く オープン・コンベンションのブルー・プリントなのだった。




この報道を受けて、ドナルド・トランプは「自分がコンベンションで大統領候補にならなかったら、 大変なことが起こるだろう。自分がそれを煽るつもりは無いが、暴動が起こる」と、 支持者に暴動を呼びかけるかのようなコメントをしているのだった。
その一方で、コンベンションが行われるオハイオ州クリーブランド(写真上右)のホテルでは、 共和党党大会のためにオハイオ入りするゲストが、その滞在をコンベンションの日程である7月18〜21日 以降まで伸ばして予約をしていることがレポートされており、 既に参加者がオープン・コンベンションでの仕切り直し投票に備えているのが実情。

クリーブランドでは、オープン・コンベンションでトランプ以外の候補が擁立された場合の暴動を危惧する声が 既に聞かれているというけれど、 通常民主党、共和党のコンベンションと言えば、スーパーボウルほどではないものの、 多くの党員が訪れて、ホテルやレストラン、小売店が賑わうため、 街が積極的に誘致するイベント。 でも今回の共和党党大会に関しては シンプルにビジネス・チャンスとして捉えられない要素をはらんでいるのだった。



政治評論家が 暴動よりも危惧しているのは、共和党がオープン・コンベンションを行って予備選挙でトランプに投票した 共和党支持者を無視しても良いのか?という問題。
そもそもトランプに投票している人々は、「誰に投票しても政治なんて同じこと」と 考えて 過去何年も投票をしてこなかった”ロスト・ヴォーターズ”と呼ばれる人々。 こうした人々が久々に投票所に足を運んだお陰で、 共和党予備選挙の投票率がアップしたのは既に報道されている事実。 でもそれらの人々の票を無視して、オープン・コンベンションで全く異なる候補者を擁立することは、 今後の共和党予備選挙に臨む支持者の考えや姿勢に大きな悪影響を及ぼすと見込まれているのだった。

その一方で、民主党側はヒラリー・クリントンが既に独走状態に入ったけれど、 7月25日〜28日の日程でフィラデルフィアで行われる党大会まで 選挙戦を続けると主張しているのが対立候補のバーニー・サンダース。 民主党内には彼が選挙戦を続けて、ヒラリー・クリントンを批判し続けることで 大統領本選挙でヒラリーが票を失う原因になることを恐れる声も聞かれる状況。
でもバーニー・サンダースがどんなに選挙活動を継続したところで、混沌とした共和党側の候補選びに メディアと人々の関心が集中することだけは確実なのだった。

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執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。 丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。

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