Mar. 13 〜 Mar. 19 2017

"Beethoven Symphony No.7 Tells You Something…"
ベートーベン第7シンフォニーで分かる、自分の世紀末思想!?


先週、貧困層や高齢者、既往症があるアメリカ人を見捨てるような健康保険案を打ち出した与党共和党であるけれど、 今週またしてもトランプ政権が打ち出したのが、防衛費、ホームランド・セキュリティ、メキシコとの国境の壁の建設に多額の予算を割く一方で、 環境保全省の予算31%カットを筆頭に、子供の教育、カルチャー&アート・プログラム、労働者の技術訓練、 ヘルス&ヒューマン・サービスなど、貧困層の生活を支えてきたプログラムが大幅にカットされてしまう予算案。
トランプ氏が選挙公約で「メキシコに払わせる」と言ってきた国境の壁の建設費も、 いつの間にか国民の血税によって41億ドル(約4600億円)が賄われることになっており、 「America First」という彼の施政方針が 実は「アメリカ国内の予算を最初にカットする」という意味だったのでは?と疑いたくなる状況。 そのせいで運営不可能の危機に瀕しているのが「セサミ・ストリート」で知られるパブリック・ブロードキャスティング、 低所得家庭の子供達を非行から防いできた課外プログラム。また公立校、 貧困層への食事の提供を行ってきたチャリティ、ニューヨーク市警察のテロ対策費、ガンやウィルスなどの医療研究費、 アメリカにおいて婦人科クリニックの役割を果たしているプランド・ペアレントフッド等の予算も 大きく削減されており、このシワ寄せはアメリカ社会のトップ1%以外が被ることになるのだった。

もうすぐ下院で投票に掛けられる新しい健康保険制度では、年収550万円の60歳の健康なアメリカ人が健康保険購入に当たって政府から受ける サポートは税金控除という形で与えられる4000ドルで、この金額はオバマケアの3分の1。 にも関わらず保険のプレミアムは若い層の5倍の金額を支払うことになり、 既往症があればさらに高額になるけれど、もしこれが貧困層で税金を1000ドルしか納めていない場合は、 健康保険費用も1000ドルしか国からサポートされないのだった。 そんな人々が健康保険に加入出来ないだけでなく、食事や介護を政府や地方自治体によって提供されなくなれば、 どんなことになるかは目に見えているというもの。
その一方で、オバマケアの支えていた富裕層への課税が無くなる結果、 トップ0.1%が新保険法案で得る税金控除額は日本円にして何と2300万円。 トランプ政権下における健康保険案と予算案が、アメリカで これまであり得なかったほどの貧富の差を生み出すのと同時に、 貧困層、高齢者、既往症があるアメリカ人に対する”民族浄化”がジワジワ行われることになるのだった。




そもそもトランプ政権が誕生した段階でアメリカ、および世界中で ”Apocalypse(黙示録)”というヘッドラインが飛び交い、 「ドゥームスデイ・クロック(世紀末時計)のカウントダウンが始まった」と言われたけれど、核軍備強化や貧困層を顧みない予算案を見ていると、 そんな世の中の終わりが近づいていると感じる人が多くても不思議ではないのが実際のところ。
そんな世紀末を象徴する音楽、世紀末のサウンドトラックと ソーシャル・メディア上でもてはやされているのが、 ベートーベンの第七シンフォニー、第二楽章のアレグレット。
ベートーベンのシンフォニーというと、日本では第五と第九があまりにも有名であるけれど、 ベートーベン自身が作曲後に「自己最高傑作」と語ったと言われるのが第七シンフォニー。 特に第二楽章のアレグレットは発表された当時から飛び抜けて人気が高く、 コンサートなどでもこのアレグレットだけが演奏されることが多いほど。

またアレグレットは、2011までに30本以上のハリウッド映画に使用されてきた音楽で、これはクラシック音楽としては極めて稀なこと。 特に、2016年には ハッカーが世紀末現象を起こすTVドラマ、「ミスター・ロボット」や、人気映画「Xメン」シリーズの最新作 「アポカリプス」の象徴的なシーンに使用され、この音楽が頭から離れなくなったミレニアル世代は少なくないのだった。

そのベートーベンの第七シンフォニーのインパクトが最も強い映画の1本と言われるのが、 2009年に公開されたニコラス・ケイジ主演の「Knowing / 末日預言」。 上のビデオは、映画のシーンを編集したものであるけれど、 「ミスター・ロボット」や、「Xメン:アポカリプス」でこの音楽を聴いて、同映画を思い出した人々は少なくないのだった。




「Xメン:アポカリプス」については、ベートーベン第七シンフォニーをバックに悪役、アポカリプス(写真上)が語る台詞、 "Always the same, and now all this. No more stones. No more spears. No more slings. No more swords. No more weapons! No more systems! No more superpowers… You can fire your arrows from the Tower of Babel, but you can never strike God! /  いつも最後にはこうなる、もはや石も、槍もスリングも剣も、武器も存在しない。もはやシステムも無ければ、スーパーパワー(超大国)も存在しない。 バベルの塔から矢を放つことは出来ても、決して神を討つことは出来ない" という台詞に 世紀末を感じる人が非常に多く、これをグーグルしてまで調べる人が少なくなかったのだった。

こうしてすっかり”世紀末ミュージック”になってしまったベートーベンの第七シンフォニーであるけれど、 もう1本この楽曲を用いた極めて有名なシーンで知られるのが、2010年に公開され、映画内でジョージ6世を演じたコリン・ファースが オスカー主演男優賞に輝いた「King's Speach / 英国王のスピーチ」(以下のビデオ)。1939年にイギリスのドイツへの宣戦布告を受けて、 ジョージ6世がラジオを通じてイギリス国民に向けて行ったスピーチのシーンのBGMとして流れるのがベートーベン第七で、 訥々ながらも 吃音症を克服して国民に語りかける感動的なスピーチを盛り上げるのがこの音楽なのだった。






そんな映画による先入観無しに、ベートーベン第七シンフォニーを聴いて何を想像するか?に現れると言われるのが、 その人の世紀末思想。 実際にこれを聴いて「Doomsday/ドゥームスデイ」、「エンド・オブ・ザ・ワールド」と答える人が非常に多いというけれど、 そう答える人は やがて世界が崩壊する日が来ると信じている人。
グローバル・ウォーミングの異常気象や自然災害、 核兵器、惑星の衝突などによる、アポカリプスを信じる人々が「来るべき時が来た」という不思議な興奮や 全てが清算されてゼロになるという完全な破壊がもたらす世の中のリセットへの想像力を掻き立てるのがこのメロディなのだった。

そうでない人は、この音楽から苦境、逆境と戦いながら盛り返してやがては乗り越える強さ、 崩壊と復活、眠っているものが目覚める様子をイメージする傾向にあり、そうした人々は 世紀末論を信じない傾向が顕著なのだった。
かく言う私も後者で、どうして仏教徒の私が世紀末だけキリスト教徒と一括りの扱いを受けなければならないのか?という疑問があるのに加えて、 世紀末論というのが時にキリスト教において信仰心を煽るコンセプトのように使われてきたように見受けられる部分があるためで、 私は惑星が衝突しようと、自然災害や異常気象が続いて地球が半分海面下に沈んだとしても、世の中が継続すると信じて疑わないのだった。
それだけでなく昨今の私にとって、ベートーベン第七シンフォニーはメディテーションをスタートする音楽になってしまって、 気持ちが乱れた時もこのメロディを頭の中でリプレイするだけで気分が落ち着くのだった。

トランプ政権のアドバイザーで、白人至上主義として知られるスティーブ・バノンが、果たしてベートーベン第七を聴いて 何を想像するかは定かではないけれど、彼はアポカリプスを信じると公言する人物。 「第三次世界大戦は避けられない」とも語ったそうだけれど、 「Xメン:アポカリプス」の台詞を借りれば、 ”You can fire your arrows from the Tower of Trump, but you can never strike God! /  トランプ・タワーから矢を放つことは出来ても、神を討つことは出来ない” 訳で、 トランプ政権には世界を支配することなど出来ないと思うのだった。

執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。 丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。

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