Mar. 19 〜 Mar. 25 2007




” テックス・ショートハンド ”



今週のニューヨークでは、アシスタントに対する暴力行為で有罪となり、5日間のコミュニティ・サービスを裁判所から言い渡された スーパーモデル、ナオミ・キャンベルが市の衛生局で 清掃作業を行っており、メディアが毎日のように異なるファッションで現れる ナオミの姿をスナップしていたのだった。
その一方で、今週には「スター・ウォーズ」 30周年の記念切手がアメリカで発売になっており、 このプロモーションのために一部のポストが、同映画の人気ロボット・キャラクター、R2D2にペイントされ 市内200箇所に設置されたとのことだった。

さて話は替わって、 アメリカでもブラックベリーのようなPDA(携帯端末機)の普及と前後して すっかり一般的に使われるようになったのがテックス(テキスト)・メッセージである。
でも、キーボードより遥かに小さな機器を使って いちいち言葉をタイプをするのは面倒であるため、 当然登場してくるのがテキストの”ショートハンド”、すなわち略語で、これらは時に ”NetLingo / ネットリンゴ” とも呼ばれるもの。(リンゴとは所謂スラングのこと)
当初”ショートハンド ” は、携帯のテックス・メッセージだけで使われていたものであるけれど、今では若い層を中心に Eメールはもちろん、手書きのメモなどにもこれらが登場するようになっており、アメリカの一部の大学では 事務の担当者に 学生達が頻繁に使うショートハンドのリストを配布して、学生から寄せられるEメールを解読出来るようにしているという。

でも、そもそもアメリカン・イングリッシュでは こうしたショートハンドが単語として根付くことは決して珍しくなく、 かなり正式な書類や、口語の中にも登場するもの。
昨今ではあまり使われなくなった YUPPIE / ヤッピーは、Young Urban Professionals / ヤング・アーバン・プロフェッショナルの略であるけれど、 この言葉に関してはヤッピーが何であるかを知っていても、何の略称であるかを知らない人は少なくなかったりする。 また、アメリカに週休2日制が導入された70年代に生まれた TGIF / Thank God It's Friday は、今では日本語の”花金”と同じくらい オールド・ファッションな言葉になっているけれど、 アメリカ人の間では「Thank God It's Friday」といちいち言うより 「ティー・ジー・アイ・エフ」 と言う方が遥かに一般的となっている。

この他、DWI (Driving While Intoxicated)、DUI (Driving Under the Influence)は共に飲酒運転や、ドラッグでハイになった状態で運転していることを 指すけれど、二コル・リッチーやパリス・ヒルトンがこれらで逮捕された際のメディアの見出しは このDWI、 DUI が用いられているし、 テレビのニュースでさえ、「DUI(ディー・ユー・アイ) で逮捕されました」と報じる例は珍しくない。 また、日本語の 「 続く 」を意味する TBC(To Be Continued)や、「 後日決定」 を意味する TBD (To Be Determined) は、 口語には使わないけれど、書類やスケジュール表に記載されていれば、特別な説明が必要でないほど広く用いられているものである。
また、「ご参考までに・・・」を意味する FYI (For Your Information)、「出来るだけ早く」を意味する ASAP (As Soon As Possible)などは、 かつては書面上だけで用いられてきた表現であるけれど、今では口語でも 「I’ll let you know ASAP!(アイル・レッテュー・ノー・エイ・エス・エイ・ピー/出来るだけ早く知らせます!)」などと 違和感なく使っているものである。

現在、携帯のテックス・メッセージで使われているショートハンドで、最も初歩的なものは2を「to」、4を「for」の替わりに、Uを「you」の 替わりにタイプするもので、「For You」が 「4U」、「To You」が「2U」となったり、フォーエバーが「 4ever 」、トゥナイトが 「2Nite (”Night” を ”Nite” とわざと書くのは 非常に一般的 )」 となるのは、初めて読む人にも簡単に想像が付くもの。 でも「B4」をBefore(ビフォア)、「L8R」を Later(レイター:後で) というのは すぐにはピンと来ないものである。
テックス・メッセージ慣れしている人の間では、 「See You Later (後で(会おう)ね)」を意味する ”CJL8R” や、 「Talk to You Later (後で電話する)」を意味する ”TTUL” 、 ”TTUL8R”は 非常に良く使われるショートハンドである。
私も「L8R」で エイトの読み方を覚えてからは、「GR8 (Great/グレイト)」、「STR8 (Straight / ストレート)」は分かるようになったけれど、 これまで数字関係で最も分からなかった言葉の1つは、「X-I-10!」というもの。 これは「エックス・アイ・テン」で ”Exciting / エキサイティング”と 読ませるダジャレの感覚のショートハンドだった。
また、時にインフォメーションのことを 「411」 とタイプする人が居るけれど、これはアメリカ国内の電話案内、すなわち インフォメーションの電話番号。 わざわざ意味を理解する人が少ない 「411」などとタイプせずに、一文字増えても 「 Info 」 とタイプすれば誰もが理解できる訳だけれど、 ブラックベリーのような携帯端末を使っている人にとっては数字を3文字打つのと、 「 Info 」 とタイプするのとでは、 手間が異なるようである。

ショート・ハンドはこのように数字やアルファベットを言葉の代替にするものと、一般的な言い回し表現の頭文字を取るものがあるけれど、 後者の方はある程度英会話を理解していないと分からないもの。
英語の会話に頻繁に登場する 「You Gotta Be Kidding (冗談でしょ)」は ” YGBK ” 、 「To Be Honest (正直なところ)」は ” TBH ”、 「You Know What (口語でよく用いられる言い回しで ”ねぇ、知ってる?”のような感じ )」は ” YKW ” となる。
「Give Me A Break! (いい加減にして!)」は ” GMAB ! ” となるけれど、 更に腹を立てて フラストレーションを強調したい場合は、 ” GMAFB! ” (Give Me A F***ing Break !) とすると 放送禁止用語である「F」ワードが その心情を伝えてくれることになっている。
これらは、テックス・メッセージの世界では頻繁に用いられても、メディアに登場するような一般的な表現ではないし、 いきなり 「GMAB !」 と言ったり、書いたりしても 殆どの人は理解してくれない訳で、 先述の 「ASAP」や「DUI」 のような誰もが知る ショートハンドとは全く区別されるもの。 でも それだけに若い世代を中心に暗号的に広まり、ユーモアが感じられて面白かったりするのが テックス・メッセージのショートハンドである。

こうしたテックス・ショートハンドの利点として第1に挙げられるのは、まず短時間と少ない手間で 文字にした以上の言葉が伝えられる点。
また、全ての文字をタイプする正式な表現だと 読む側の心理状態によっては必要以上にキツく受け取られたり、 読んだ相手が気分を害してしまう場合があり、それがEメールの難しさと言われてきたもの。 でも同じ表現でも ショートハンドで略されている場合は、言葉が持つ意味が緩和されるので キツさが伝わらず、誤解を招き難いので、 これは大きな利点とされている。
例えば、「貴方には関係ないでしょ」という意味の 「None Of Your Business 」 という言葉も、このままメッセージで送られた場合 タイプした側が冗談半分のつもりであったとしても、読む側の受け取り方によっては 相手が怒っているとか 横柄な態度を取っていると 判断されても仕方がないもの。 でも” NOYB ” と打てば、それほどシリアスに受け取られることは無いのである。
加えて、相手に文句を言おうと腹を立てている時に、いちいち単語を1文字1文字 入力するのは更なるフラストレーションを招くもの。 しかも、メッセージを送った後に怒りが収まれば 表現がキツかったことを反省したりするものだけれど、 ショートハンドを使用していれば、メッセージが簡単にタイプできる上に、後からも罪悪感を覚えることも非常に少ないという。
更に、面白いショートハンドを使えば 喜ぶ相手は多いし、ビジネスの世界でも 相手が知らないスマートなショートハンドを披露するのは コミュニケーションを良好にしてくれて、クールなユーモアだとも解されるのである。

その反面ショートハンドの問題点と言えるのは、感謝、愛情、友情というコミュニケーション上最も大切な 人間心理が的確には伝わらないという点で、ショートハンドを嫌う人の多くはこの理由を挙げている。
例えば 「Thanks」 の替わりに ” TNX ” などタイプすれば、受け取った相手はそれほど感謝の念を感じないもの。 「Take Care Of Yourself 」も ”TCOY ” などと テックスで送られて来ると とても無機質な感じがするもの。
「I Love You」 にしても ハイスクールの学生の中には ”143” とタイプする場合があるというけれど、これは見ての通り、 アルファベットの文字数で暗号化したもの。でも全く反対の意味の「I Hate You」も ”143”となる訳である。
この他にも「I Love You」 は ” ILVU ” ともテックスされる場合があるけれど、これは私から見れば 「アイ・ルイ・ヴィトン・ユー」 のように読めて、相手がヴィトンのバッグでも買ってくれるのかと思えてしまうもの。 もちろん愛情が無ければヴィトンのバッグなど人には買ってあげないものであるから、マテリアリスティックな見地から考えれば ” ILVU ” でも愛情は伝わるものなのかもしれない。
その一方でショートハンドばかりを使っていると、どんどんスペルを忘れていくのも事実のようで、 特にアメリカの学生の間では 現在これが問題視されているという。

さて、以前から存在しているショートハンドで、インヴィテーションに必ず印刷されているのが "R.S.V.P."。 これはフランス語の 「Reponce S'il Vous Plait / レスポンス・シルヴープレ」の略で、「出欠の連絡をお願いします」 という意味。
先週もこのセクションでお知らせしたとおり、CUBE New Yorkでも 4月14日にニューヨーク在住の日本人女性のための ネットワーク・パーティーを企画していて、このパーティーでも毎回 "R.S.V.P."をお願いするので 時に 「R.S.V.P って何でしょう?」というお問い合わせを頂くこともあるけれど、 大きなイベントやパーティー、ファッション・ショーなどであれば、出席者のみがレスポンスするのが一般的。 でも 知り合い宅のパーティーやウェディングのインヴィテーションなど、ホストを個人的に知っているような場合は 欠席でも R.S.V.P. をするのがマナー。
英語では 「I R.S.V.P.ed yesterday (昨日RSVPをしました)」のように動詞としても使われているものである。

さて、そのネットワーク・パーティーについては先週のコラムを読んで下さってお申し込みいただいた皆さんや、 以前パーティーに参加して下さった方々には 今週詳細をお知らせするメールを差し上げます。 もし以前参加したにも関わらず、今週中にメールが届かなかった方は、恐れ入りますがカストマー・サービスまで ご連絡をお願いいたします。 セキュリティの関係で お名前がゲスト・リストに載っていないと会場に入れないため、 参加御希望の方には是非とも R.S.V.P. をお願いいたします。
私自身、沢山のお友達と出会うきっかけになっているのがこのネットワーク・パーティーなので、 ご参加いただければ ニューヨーク生活に有益なお友達に巡り会えるかと思っています。 これまで未参加で、参加を御希望の方はカストマー・サービスまで、ご連絡をいただければ、 詳細のメールをお送りいたします。
またこの日にニューヨークを訪れている旅行者の方の参加も歓迎ですので、お気軽にお申し込みいただければと思います。





Catch of the Week No.3 Mar. : 3 月 第3週


Catch of the Week No.2 Mar. : 3 月 第2週


Catch of the Week No.1 Mar. : 3 月 第1週


Catch of the Week No.4 Feb. : 2 月 第4週






執筆者プロフィール

秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。
丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、1989年渡米。以来、マンハッタン在住。
FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。
その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.設立。以来、同社代表を務める。