Mar. 18 〜 Mar. 24, 2013

” Marketing Strategy? ”


今週は、オバマ大統領がイスラエルを含む中東を訪問していたけれど、アメリカ国内では特に大きなニュースはなく、 それだけに、日頃はあまりフォーカスされない 小さめのニュースが大きく報じられていたのだった。

その1つは、ヨガウェアの人気No.1ブランド、ルルレモンが 全製品の17%に当たる同社のヨガパンツを、 「素材が透ける」という理由でリコールしたというニュース。 ルルレモンといえば、2009年2月には3ドル以下だった株価が、昨年9月には77ドルをつけるほどの 大躍進を遂げた企業。今では女性用のヨガ&ランニング・ウェア以外に、メンズも手掛けているけれど、 新たに生産された同社の特許素材のヨガパンツが、「殆どシースルーだ」というリコールの理由に、 全米各地のヨガクラスの常連達の間では、「ヨガパンツがシースルーなのは、今に始まったことではない」 という声が聞かれていたのだった。

でもルルレモンに関しては、素材の目が密なので、ヨガパンツの中では透けないと言われるブランド。 逆に 「透ける」と言われるのは、ヴィクトリアズ・シークレットのヨガパンツで、特に洗濯を重ねると 素材が薄くなって、ダウンワード・フェイシング・ドッグの ポーズをした時に、下着やヒップが透けて見えるのは常。
今回の大報道で、「ヨガ・クラスを取る男性が増えるのでは?」 とさえメディアが予測していたけれど、 その一方で、今週は ”ホット・ヨガ”として知られる ビクラム・ヨガの創設者、ビクラム・チョードハリー(67歳)が 元側近である教え子(29歳)からセクハラで訴えられたニュースも報じられているのだった。
彼は、マドンナ、デヴィッド・ベッカム、元クリントン大統領にもヨガを教え、ロールス・ロイスを乗り回し、ダイヤ入りのロレックス時計をする マルチ・ミリオネア。熱心で若い女生徒をピックアップしては、 自分の髪の毛をブラッシングさせたり、ボディ・マッサージをさせた後、性的行為を迫っていたことが 訴えで明らかになっており、今週起されたセクハラ訴訟は彼にとって2度目のもの。

もう1つ、人々を驚かせたのは、 ガレージ・セールで 3ドルで売られていた陶器のボウルが、 実は中国の1000年以上も前の出土品であることが明らかになり、サザビーズのオークションで、222万(約2億円)ドルで 落札されたという報道。(写真上右側)
昨今、アメリカでは 地方のアンティーク・マーケットで見つけた安価な品に、以外なお宝バリューがあり、 それで大金を得る様子がリアリティTVとして放映されているけれど、これほどまでに 価値が跳ね上がるのは例を見ないとあって、やはりこのニュースも大きく報じられていたのだった。


ところでアメリカの地方の州では、高齢者が集うイベントの1つに ビンゴ・ゲームがあるけれど、 今週、ケンタッキー州では、大勢の高齢者がビンゴ・ゲームに勤しむ中、18歳の少年が ふざけて「ビンゴ!」と 叫んだことから、 逮捕されるという事件が起こっているのだった。
「そんな些細なことで逮捕しなくても」と考える人は多いけれど、これは 満員の映画館やシアターで「Fire!(火事だ!)」と 叫ぶのと同様の迷惑行為。したがって、「ディスオーダリー・コンダクト(治安を乱す行為)」という立派な軽犯罪で、 その結果、少年が 判事から言い渡されたのが、「6ヶ月間 ”ビンゴ”という言葉を一切使わないこと」という ちょっと変わったペナルティなのだった。

その一方で、男性が犬に追いかけられて「Help!ヘルプ!」と叫んでいるのを目撃した人が警察に通報したところ、 実は「ヘルプ」はその男性の愛犬の名前。彼は ただ愛犬の名前を連呼していただけだったというニュースもあったけれど、 そんな傍迷惑な名前を 犬につけた男性は、無罪放免となっているのだった。

今週、心温まるニュースとして報じられていたのは、カンサス州のホームレス男性、ビリー・レイ・ハリス(写真上、一番右)が、 彼の集金用のカップに 女性(写真上、中央上)がコインと一緒に 間違えて 入れてしまった婚約指輪を 女性に返却。 お礼に 彼女の婚約者がインターネット上で 彼のための募金を行なったところ、その美談に動かされた人々から 多額の寄付が集まったというニュース。
ビリー・レイは カップの中のリングをジュエリー・ショップに持って行ったところ、 4000ドルで買い取ると言われたものの、売却せず、 再び彼女が通りかかるのを待って、返却したという。 女性は、指がかぶれたため、リングをお財布に入れておいたところ、 誤って コインと一緒にビリー・レイのカップに入れてしまったとのことで、 まさか見つかるとは思っていなかっただけに、婚約者と共に大喜びであったという。
今では、このカップルとビリー・レイは一緒にホッケー観戦に行くなど、すっかり仲良しになったというけれど、 ビリー・レイに何とかお礼をしたいと考えた婚約者が、「ギブ・フォワード・ドット・コム」上で募ったのが、 彼への寄付。 そして それがソーシャル・メディアやTVニュースで大きく取り上げられた結果、 90日間で1000ドルを集める目標を遥かに上回り、48日間で 8000人以上の人々が、合計18万ドル(約170万円)以上を寄付。
それだけでなく、ビリー・レイには住宅の提供者や、仕事のオファーが舞い込み、もう物乞いをする必要が無くなった上に、 離れ離れになっていた妹が、 メディアで彼のことを見て連絡をしてきたことから、その再開も実現。 リングを持ち主に返却したことで、彼の人生は180度好転することになったのだった。



でも、今週最もメディアが報道時間を割いていたのは、何と言っても タイガー・ウッズ(37歳)が、オリンピック・スキーヤーの リンジー・ヴォーン(28歳)との交際を、フェイスブック上で正式に認めたというニュース。
2人の交際はかねてから噂されていたもので、特に2月にオーストリアで行なわれたスキー選手権で、 リンジーが大怪我を負った際には、タイガー・ウッズがプライベート・ジェットをチャーターして、 彼女を帰国させており、 2人が交際を認めたのは決してサプライズではなかったのが実情。
その発表のタイミングは絶妙と言えるもので、前の週にタイガーはキャデラック・チャンピオンシップで勝利したばかり。 そして今週末、悪天候で最終日の日程が月曜に順延になってしまったアーノルド・パーマー・インヴィテーショナルで、 もしタイガーが 優勝すれば、彼は不倫スキャンダル以降、初めてワールド・ランキングのNo.1に返り咲くという、 キャリア面のビッグ・カムバックに際しているのだった。

プロのフォトグラファーによって撮影された、2人の幸せそうなスナップは、発表後にあっと言う間にメディアに広まったけれど、 これによって、タイガー&リンジーが、それまでのゴルフ界のNo.1セレブ・カップル、 ロリー・マッキロイ(23歳)&テニス・プレーヤーのキャロライン・ウォズニアッキ(22歳)を 遥かに上回る ビッグな存在になったと指摘したのがニューヨーク・タイムズ紙。
それもそのはずで、タイガー・ウッズは14のメジャー大会の優勝に加えて、PGAツアー76勝を誇る歴史上のトップ・ゴルファー。 一方のリンジー・ヴォーンはヴァンクーバー・オリンピックで、ゴールド&ブロンズ・メダルを獲得し、ワールドカップで 4回優勝を飾る、歴史上最もサクセスフルな女子スキーヤー。男女を含めてワールドカップで4勝しているのは彼女だけ。
ニューヨーク・タイムズ紙では、2人がグレッグ・ノーマン&クリス・エヴァート、アンドレ・アガシ&ステフィ・グラフを 超える、史上最もサクセスフルなアスリート・カップルであると位置づけ、 同2カップルが キャリアのピークを超えてから交際&結婚したのに対し、リンジー&タイガーは 卓越したアスリート同士が お互いのキャリアのピークに交際をしている、極めて珍しい例であることも指摘していたのだった。


その点では、ロリー・マッキロイとキャロライン・ウォズニアッキも同様とは言えるけれど、2011年にドイツで行なわれた ボクシング・マッチで知り合った2人が交際を始めてからというもの、キャロラインは 2012年には マイナーなトーナメントで2勝したのみで、 それまでのワールド・ランキング No.1から転落。
ロリー・マッキロイは、2012年に ワールドNo.1となったものの、今年に入ってからは成績不振や、親知らずの痛みから棄権するといったトラブルが続き、 今週末のアーノルド・パーマー・インヴィテーショナルに至っては、キャロラインと一緒に時間を過ごすために トーナメントに参加しておらず、その交際が お互いのキャリアにプラスになっている印象は 与えていないのだった。

タイガー&リンジーが交際を明らかにしたのは、「メディアが2人の関係を詮索する理由を排除して、 プライバシーを守りたい」 という意図からであると説明されていたけれど、 その発表の2日後に NYポスト紙が報じたのが、2人の交際発表が 念入なマーケティング・プランに基づいたものだったということ。
タイガーにとっては、不倫スキャンダルのイメージダウンを払拭するには、まずゴルフで勝利することに加えて、 女性と真剣な交際をすること。
リンジーは、美人トップ・スキーヤーとは言え、セレブ・アスリートとしての知名度やマーケティング・パワーは確立されていない存在。 でも、タイガーとの交際でネーム・ヴァリューをアップさせて、 それに2014年のソチ・オリンピックにおける怪我からのカムバックというシナリオが加われば、 引退後も、著書の執筆、広告出演など、多額の収入をもたらすプロジェクトが転がり込んでくるのは言うまでもないこと。
スポーツ選手といえば、その賞金よりも広告出演による収入が圧倒的に多いだけに、 不倫スキャンダルで その多くを失ったタイガー・ウッズ側も、スキーという地味なスポーツのせいで、 なかなか大手のスポンサーが付かないリンジー・ヴォーン側も、この交際が お互いにとって格好のイメージ戦略であることを 十分に心得ているというのが、ポスト紙の報道なのだった。



また、モデルやポルノ女優と不倫を重ねてきたタイガー・ウッズにとって、リンジーがアスリートであるというのは 真っ当な関係をアピールできる理想的なシナリオ。 加えて、リンジーも 彼女のコーチであった夫と 16ヶ月前に 離婚しており、お互いバツイチというのも 大人同士の交際をアピール出来る状況。
さらには、リンジーがブロンドで、若干イレン元夫人(写真上、中央、33歳)に似ているというのも、 人々がタイガーに 同情を注ぐであろうと指摘されるポイントなのだった。

そのイレン夫人はと言えば、タイガーから受取った 1億ドル(約95億円)の慰謝料で購入した1200万ドル(約11億円)のフロリダの豪邸(写真上、右)に住み、 その隣人で、タイガーよりリッチな ビリオネア・ビジネスマン、 クリス・クライン(写真上、左)との交際が伝えられる状況。 タイガーとイレンは、3月に入ってからは子供のスポーツ試合を揃って観戦し、お互いがそれぞれにハッピーであることを明らかにしているのだった。

タイガー&リンジーの”マーケティング戦略”は、ゴルフ界、スキー界で共に歓迎されていて、 それというのも、あれだけスキャンダルで叩かれても、やはりトーナメントが行なわれれば、最もギャラリーが付くのがタイガー・ウッズ。 タイガー不在のPGAトーナメントのTV視聴率が低調だったのに対して、昨今調子を盛り返してきたタイガーが出場するトーナメントは、 高視聴率を記録しているのだった。
スキー界にしても、これまでピープル誌が表紙で報じるような ニュース性のあるスキーヤーが存在しなかったこともあり、 オリンピックを控えて、リンジーとタイガーの交際を大歓迎するのは当然のこと。
したがって、この交際は 本人達を含めて 様々な恩恵をもたらし、全てが丸く収まるという理想的なシナリオになっているのだった。

ところで、この先リンジーや、イレンの新しいボーイフレンド、クリス・クラインが、タイガー&イレンの子供と 一緒に時間を過ごそうとした場合に、受けなければならないのがバックグラウンド・チェック。
これは、タイガーとイレンの離婚の際の協約条項の1つで、幼児虐待者から我が子を守るために、 お互いの交際相手が子供と一緒に過ごす場合、その犯罪歴のチェックをすることを義務付けているのだった。
これは、言ってみれば、お互いがお互いの選ぶ相手を 簡単には信用できないという 意思表示でもあるけれど、 タイガーの不倫相手にポルノ女優が何人も含まれていたことを思えば、イレン側がその条件を提示するのは納得。
タイガー側にしても、自分があれだけ沢山の不倫をしても気付かずに居たというイレンが選ぶ男性を、 疑って掛かるのは、当然といえば、当然と言えるのだった。





執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。 丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。


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