Mar. 16 〜 Mar. 22 2015

A Week of "Think Before You Speak" ”
セレブリティの失言&バックラッシュと、全米を震撼させた殺人犯の告白


今週のアメリカでは、政治の世界で大きく報じられていたのは、イスラエルのベンジャミン・ネタニアフ首相が、 事前の予想に反する圧勝で再選されたニュース。
ネタニアフ首相と言えば、オバマ大統領と個人的に仲が悪いことで知られる存在で、 通常、イスラエルの首相が選出されれば、米国大統領は真っ先に祝辞を述べるのが通例であるけれど、 オバマ氏とホワイトハウスは この再選に極めて冷めたリアクション。 現在のアメリカとイスラエルの関係は史上最悪と言われるだけに、今後の両国間の行方を懸念する声も聞かれているのだった。

ニューヨーカーにとって 今週最も歓迎出来ないニュースとなっていたのは、地下鉄&バスの運賃が 私がこのコラムを書いている3月22日、日曜日を境に、従来の2ドル50セントから 2ドル75セントに値上げされたこと。
ニューヨーカーがこの値上がりに批判的なのは、地下鉄の利用者数が史上最高レベルに達しているにも関わらず、 運行の本数が逆に減っているためで、通勤時間の混み合いが悪化する一方で、電車の待ち時間が長くなるという悪状況。 したがって、値上げについてのニューヨーカーのリアクションは「値上げをするなら、もっとマシなサービスをしろ!」 という声が大半となっているのだった。




それ以外で、今週大きな話題になっていたのが、相次ぐ セレブリティの失言とそれに対するバックラッシュ。
まず月曜には、ドルチェ&ガッバーナのデザイナー、ドミニコ・ドルチェとステファノ・ガッバーナが、 雑誌のインタビューで、ゲイの養子縁組に反対すると同時に、サロゲート出産や人工授精を批判するコメントを展開。 これによって ゲイ・カップルだけでなく、人工授精で子供を作ったストレート・カップルからも大批判を浴びることになったのだった。
今週はドルチェ&ガッバーナのブティック前で抗議活動を行う人々の姿も見られていたけれど、 同発言に対して、ツイッター上で一早く反旗をひるがえし、ドルチェ&ガッバーナのボイコット運動を働きかけたのが、 自らの子供が人工授精のサロゲート出産で生まれているエルトン・ジョン。 彼の批判には、ヴィクトリア・ベッカム、リッキー・マーティン、マドンナ等も同調して、ソーシャル・メディア上でも ドルチェ&ガッバーナに対する猛烈なバッシングが巻き起こっていたけれど、 そのエルトン・ジョンは、ボイコット運動を呼びかけた翌日に、ドルチェ&ガッバーナの 紙袋を持って歩いている姿がスナップされているのだった。


それに次いで今週メディアで批判を買う発言をしたのは、ヒスパニック系TV局、ユニヴィジョンのスター、ロドナー・フィギュロラ。
彼の失言は番組内で、ミシェル・オバマ大統領夫人を「サルの惑星のキャストに似ている」と発言したこと。 この発言は、特に黒人層から、「ヒスパニック系の黒人に対する人種差別と偏見」と批判を浴びる結果となり、 ロドナー・フィギュロラは 直ぐに謝罪をしたものの、ユニヴィジョンに解雇されているのだった。

そうかと思えば、トーク番組で このロドナー・フィギュロラの発言を巡るディスカッションが行われている際に、 失言をして批判を浴びたのが、黒人女優のレイヴェン・シモーン。
ゲスト・コメンテーターとしてトーク番組に出演していた彼女は、「ミシェル・オバマ大統領夫人がサルの惑星のキャストに似ている」という ロドナー・フィギュロラの発言を肯定するかのように、「動物に似た顔をした人は珍しくない」と発言。 これがまた 人々からのバックラッシュを受ける結果になっていたのだった。
とは言っても、オバマ夫人を「サルの惑星」のキャストと比べたビジュアルは、夫人が前髪をカットした2年前からネット上に 掲載されていたのも事実(写真上右)。 ビジュアル表現はユーモアとして受け取られても、著名人が発言すると 人々が腹を立てるという セレブリティ・ペインを感じさせていたのだった。

また冗談まがいのコメントで、今週バックラッシュを浴びたのは女優のエヴァ・メンデス。
クロージング・ラインのプロモーションのために、出産後、久々にメディアに登場した彼女は、「いつもドレスアップしているけれど、スウェットパンツとかは 日頃履かないんですか?」とレポーターに尋ねられ、 「No, No, No! スウェットパンツを着ることは、アメリカの離婚原因のNo.1」と、笑いながら答えたけれど、 これが「スウェットパンツの何処がそんなに悪い」という反発をソーシャル・メディア上で巻き起こしていたのだった。
これに対しては、エヴァ・メンデスはツイッターで、「単なるジョークのつもりだったけれど、気分を害した人々が居たのは申し訳ない」と謝罪。 また彼女のボーイフレンドで、子供の父親でもある俳優のライアン・ゴスリングが 彼女のスウェットパンツ発言をサポートするツイートを展開しており、 こちらは、直ぐにバックラッシュが収まっているのだった。

さて、目下アメリカは大学バスケットボール選手権、NCAAトーナメントの真っ最中であるけれど、 今週末には そのプレーヤーまでもが失言ツイッターをして、チームのメンバーから外されるという事態が起こっているのだった。
その失言ツイートをしたのはブルームバーグ・ユニヴァーシティの選手で、彼が批判したのが 昨年リトル・リーグ・ベースボールで、 パーフェクト・ゲームを達成した女子ピッチャー、モネイ・デイヴィス。 その失言ツイッターの内容は「ディズニーがモネイ・デイヴィスの映画を製作するって? 冗談だろ?(試合で)ネヴァタに負けたくせに」というもの。
大学側は、これを受けて 「学生アスリートの発言と ブルームバーグ・ユニヴァーシティとは一切関係が無い」とツイートをした上で、 この事態を深刻に受け止めて、その学生アスリートをチームから外したことをやはりツイーター上で説明しているのだった。




でも今週全米を震撼させたと同時に、メジャー・メディアがこぞって特集を組んで報じたのが、 3件の殺人事件の容疑者として30年以上に渡って、アメリカのメディアと警察がフォーカスしてきたロバート・ダーストが ケーブル局、HBOが制作したドキュメンタリー「THE JINX / ザ・ジンクス」の中で、独り言として その殺人を告白したというニュース。
ロバート・ダーストは、大手不動産業を営む裕福なファミリーに生まれたマルチミリオネア。 若くしてミドルクラスの妻、キャサリンと結婚したものの、スタジオ54などのクラブで 毎晩のように夜遊びをし、マリファナ、ドラッグに興じる彼と、ドクターを目指して勉強を続ける妻の距離は開くばかり。
そんな2人の離婚が囁かれ始めた矢先に、妻が行方不明となり、その後の不審な行動から、ロバート・ダースは 最有力容疑者となるものの、肝心の死体が見つからず、警察は立件さえ出来ないまま、捜査は打ち切りに…。 この時に、ロバートを強力にサポートする証言を行ったのが、彼の長年の友人で、ラスヴェガスを仕切るマフィアの娘である スーザン・バーマンなのだった。

やがて数年後に、警察は再び同事件の捜査を再開。 再度、事情聴取を行う予定にしていたのがスーザン・バーマンであったけれど、 その直前に彼女は、自宅で 後頭部を処刑スタイルで銃で打たれ、 死亡しているのが発見されたのだった。
警察が彼女の死体を発見するに至ったきっかけは、匿名の手紙による通報が寄せられたためで、後にこの手紙は筆跡鑑定者によって ロバート・ダーストによって書かれたものだと判明。 その一方で、スーザン・バーマンの友人は、 彼女が当時金策に追われていたこと、 そして「近々大金が入る予定」と語っていたことを明らかにしているのだった。


これらの事実から浮上してきたのが、 ロバート・ダーストの妻殺害事件の捜査再開を受けて、 それまで彼をかばう証言をしてきたスーザン・バーマンが、 経済状態の悪化を食い止めるために、今度はブラック・メール、すなわち事実を警察に明かすと脅して、ロバートから 大金をせしめようとして、彼に殺害されたのでは?というシナリオ。
ロバートとスーザンは互いに裕福で、あまり親に構われないという 似通った境遇に育っており、 スーザンは ロバートがキャサリンと結婚してからも、彼だけでなく、キャサリンとも親しくしていたとのこと。 したがって ロバートが書いたと思われる通報の手紙は、死体が放置されて腐敗しないようにという 彼の長年の友達への配慮だと推測されていたのだった。

しかしスーザン・バーマン殺人事件も、手紙以外の手がかりに乏しく、再び不起訴処分となったロバート・ダーストは、 その後しばしの間、不明状態になっていたのだった。 その間、彼は事件のことを知る人が殆ど居ない 小さな町に移り住み、女装をして暮らしていたものの、 口うるさい隣人に正体を見破られてしまい、やがてその隣人は身体のパーツが切り離された死体で発見されるのだった。
この事件でも容疑者として浮上したロバート・ダーストは、逮捕時に 初めて隣人の殺害を自供。 「ようやく彼が有罪になる日が来た」と検察側が自信を深めたのも束の間、 マルチミリオネアの彼は、最高の弁護団を雇い、「殺害はしたものの、正当防衛であった」と主張。 そして2003年に無罪判決を勝ち取ってしまったのだった。


彼が関わったと思しき3つの殺人事件については、何冊もの本が出版されており、 ライアン・ゴスリング主演の映画 「オール・グッド・シングス」(写真上左)は、 このロバート・ダーストの実話に基づいて製作された映画。
しかしながら、ロバート・ダーストの無罪判決から10年以上が経過した現在は、同事件のことを覚えている人々は少なく、 ほぼ忘れられかけていたのが実情。 ところが、その事件が再び脚光を浴びるきっかけとなったのが、 ケーブル局HBOが製作した複数エピソードから構成されるドキュメンタリーの放映。
HBOが大々的なプロモーションを行った このドキュメンタリーは、「ザ・ジンクス、ライフ&デス・オブ・ロバート・ダースト」と 名付けられたもので、彼が絡んだと思われる殺人事件とその背景、事件の手がかりの詳細を、 ロバート・ダースト本人とのインタビューを交えて描いたもの。

その最終エピソードが放映されたのが、先週の日曜日であったけれど、その中でインタビューを受けていたロバート・ダーストは、 質問に対する答えが纏まらず、トイレに行くために中座したけれど、彼が衣類につけていたインタビュー用のマイクはオンになったまま。 しかしロバートは それには気付かず バスルームで呟いたのが 「What the hell did I do? Killed them all, of course/ 自分が何をしたかって?全員殺したに決まってるじゃないか」というセンテンス。
これは ドキュメンタリーを制作する側にしてみれば、夢のような爆弾発言であり、 毎週のようにドキュメンタリーのエピソードを観て、彼への疑いをつのらせてきた視聴者にとっては、 「まさか!」の殺人犯の告白なのだった。

でも この最終エピソードが放映された時点で、彼は既にルイジアナ州で銃とマリファナの不法所持で逮捕されており、 この容疑だけでも彼が拘留刑を言い渡されるのは確実。 加えてHBOのドキュメンタリーがきっかけで、 再び捜査が再開されたスーザン・バーマン殺害事件でも、 ロバート・ダーストは起訴が見込まれているのだった。
ロバート・ダーストは、過去数ヶ月に渡って、銀行から毎日のように9千ドルを引き出すなど、 逃亡を計画していたと見られており、現在は留置所で自殺をしないよう監視下に置かれているとのこと。
でも彼の弁護士は、「TV番組のエピソードで、ロバート・ダーストを有罪にすることは出来ない」と 強気の発言をしていることが伝えられており、メディアの専門家は、 「彼が再びその財力で無罪を勝ち取る可能性も高い」と指摘しているのだった。


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執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。 丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。




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